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調査・報告 野菜情報 2024年9月号

令和5年度における野菜価格安定制度の実施状況について

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野菜業務部・野菜振興部
 野菜価格安定制度は昭和41年の制度創設から今日まで、野菜生産者の経営安定を通じて、消費地への野菜の安定供給と価格の安定を図ってきました。半世紀以上が経過した今、改めて、同制度の役割や直近の実施状況について紹介します。

1 はじめに

 前月号において、農林水産省農産局園芸作物課価格班から、野菜価格安定制度について、各事業の概要や役割、最近の動きについてご紹介いただきました。
 今月は機構から、令和5年度における野菜価格安定制度の事業ごとの実施状況について報告します。

2 指定野菜価格安定対策事業

(1)交付予約数量等
 令和5年度事業の交付予約数量は、前年度より、4万5562トン減少して255万5772トンとなりました。
 指定野菜別では、たまねぎが53万325トン(全予約数量に占める割合20.8%)で最も多く、次いでキャベツが46万7568トン(同18.3%)、レタスが23万7845トン(同9.3%)、にんじんが23万2000トン(同9.1%)、だいこんが20万7423トン(同8.1%)となり、この5品目で65.5%を占めました(図1)。
 なお、事業利用者数は、延べ約9万人となっています(令和4年度調査)。

タイトル: p061
 
(2)価格差補給交付金等の交付
 令和5年度事業の価格差補給交付金等の交付額は、81億5517万円(前年度比87.8%)となり、2年連続で100億円を下回りました。
 品目別では、レタスが29億519万円(同103.8%)、トマトが26億8270万円(同139.9%)、キャベツが8億3723万円(同52.6%)となり、上位3品目で全体の約8割を占めました(図2)。道府県別では、熊本県が20億4809万円(同131.9%)、長野県が11億9876万円(同72.3%)、愛知県が6億9347万円(同131.2%)、群馬県が6億4581万円(同47.2%)となり、上位4県で全体の半分以上を占めました。

タイトル: p062

3 契約指定野菜安定供給事業

(1)交付予約数量
 令和5年度事業の交付予約数量は、前年度より、38トン増加し、2万2238トンとなりました。
 事業タイプ別では、価格低落タイプが2万1323トン(前年度比2%増)、出荷調整タイプが272トン(同10%増)、数量確保タイプが643トン(同35%減)となりました(表)。

(2)生産者補給交付金等の交付
 令和5年度事業の生産者補給交付金等の交付額は、レタスを中心に価格が前年度を下回ったため、前年度より1億1046万円増加し、2億2452万円(前年度比97%増)となりました。
 事業タイプ別では、価格低落タイプが2億1525万円、出荷調整タイプが75万円、数量確保タイプが852万円となりました(表)。
 種別別および対象出荷期間別では、冬レタス結球(1~2月)が8337万円と最も多く、冬レタス非結球(1~2月)が2426万円、夏秋レタス結球(8~10月)が2292万円、冬レタス結球(12月)が1644万円が続きました。
 道県別では、静岡県が1億2396万円、長崎県が3562万円、長野県が2759万円等となりました。

タイトル: p063a

4 特定野菜等供給産地育成価格差補給事業

(1)特定野菜事業
ア 交付予約数量
 令和5年度の交付予約数量は、前年度より約9441トン減少して20万4372トン(前年度比4.4%減)となりました。
 特定野菜別では、ブロッコリーが5万3311トン(全予約数量に占める割合26.1%)で最も多く、次いですいかが2万5627トン(同12.5%)、ながいもが1万7778トン(同8.7%)、セルリーが1万4007トン(同6.9%)、ごぼうが1万1387トン(同5.6%)となり、この5品目で全体の59.7%を占めました(図3)。
 前年度より増加した主な品目は、こまつなが8215トン(前年度比2.1%増)、セルリーが1万4007トン(同0.6%増)、みずなが2161トン(同0.1%増)で、減少した主な品目では、にらが6530トン(同27.1%減)、ふきが766トン(同24.1%減)、わけぎが291トン(同19.5%減)となりました。
 道府県別では、沖縄県(425.6トン、同7.0%増)、愛知県(9085.5トン、同4.8%増)、茨城県(1万2476トン、同1.0%増)などで増加し、大分県(3392トン、同37.0%減)、石川県(5366.1トン、同20.6%減)、秋田県(4246トン、同17.1%減)などで減少しました。
 なお、事業利用者数は、延べ約5万人となっています(令和4年度調査。(2)の指定野菜事業を含む)。

タイトル: p063b
 
イ 価格差補給交付金および価格差補給助成金の交付額
 令和5年度の価格差補給交付金は、前年度より3億5034万円減少して5億955万円となりました。このうち、機構から野菜価格安定法人に交付した価格差補給助成金は、2億985万円(前年度比38.2%減)となりました。
 品目別では、ブロッコリーの2億2399万円が最も多く、ごぼうの9298万円、みつばの3969万円が続きました。
 道府県別では、愛知県の1億1672万円が最も多く、青森県の7624万円、群馬県の6697万円が続きました。
 
(2)指定野菜事業
ア 交付予約数量
 令和5年度の交付予約数量は、8万1084トン(前年度比4.4%減)でした。
 指定野菜別では、キャベツが1万6542トン(全予約数量に占める割合20.4%)で最も多く、次いでトマトが1万2496トン(同15.4%)、ねぎが1万478トン(同12.9%)、ピーマンが7897トン(同9.7%)、だいこんが7293トン(同9.0%)となり、この5品目で全体の67.5%を占めました(図4)。
 交付予約数量が前年度より増加した主な種別は、秋にんじんが1670トン(前年度比421.9%増)、春ねぎが2153トン(同3.9%増)、夏秋トマトが3536.5トン(同3.4%増)で、減少した主な種別は、秋冬さといもが200トン(同82.7%減)、秋冬はくさいが972トン(同49.9%減)、夏秋きゅうりが2139トン(同22.1%減)となりました。
 都道府県別では、福岡県(803トン、同31.4%増)、青森県(6161トン、同24.3%増)、滋賀県(1304トン、同14.0%増)等で増加し、三重県(270トン、同61.6%減)、愛媛県(670トン、同57.8%減)、佐賀県(1441トン、同36.0%減)などで減少しました。

タイトル: p064
 
イ 価格差補給交付金および価格差補給助成金の交付額
 令和5年度の価格差補給交付金は、前年度より1億81万円減の3億4516万円となりました。このうち、機構から野菜価格安定法人に対して交付した価格差補給助成金は1億7260万円(前年度比22.6%減)となりました。
 品目別では、春レタスの4843万円が最も多く、冬レタスの4214万円、冬春トマトの3857万円が続きました。
 都道府県別では、長崎県の9128万円が最も多く、次いで愛知県(4326万円)、茨城県(3485万円)が続きました。

5 契約特定野菜等安定供給促進事業

(1)交付予約数量
 令和5年度の交付予約数量は、3県野菜価格安定法人、5業務区分の1114トン(前年度比14%増)となり、内訳は価格低落タイプが571トン、数量確保タイプが543トンとなりました。
 
(2)契約特定野菜等安定供給促進助成金の交付額
 令和5年度の交付金交付額は810万円となりうち助成金額は270万円でした。
 県別および種別の内訳は、青森県のごぼうが交付金額572万円、助成金額191万円、長崎県の春レタス結球が交付金額238万円、助成金額79万円となりました。

6 緊急需給調整事業

 令和5年度の緊急需給調整費用交付金の交付状況は、価格が大幅に低落したキャベツ、はくさい、レタスについて、9件(フードバンクなどの社会福祉施設への提供や出荷抑制)を対象に、7億7594万円を交付しました。

7 おわりに

 野菜は気候の変動による影響を受けやすいため、野菜価格安定制度の実施状況、特に交付金の交付額は年度により変動します。例えば、指定野菜価格安定対策事業では、令和5年度に約82億円の交付金が交付されましたが、直近10年間の推移をみると、100億円を超えた年度が5回も発生しています(図5)。
 野菜価格安定制度は、主に野菜の価格低落時において、交付金を交付することで、国産野菜の安定生産・安定供給に務める野菜生産者を支えてきました。また、消費者にとっても、「国産野菜をより安定的に手にすることができる」というメリットがあると考えます。
 機構は、農林水産省や関係機関と連携しながら、野菜価格安定制度を通して、国産野菜の安定生産や安定供給に引き続き努めてまいります。

タイトル: p065