多くの野菜類では、農業従事者の高齢化や少子化などによる後継者不足の進行により、安定供給に向けた生産規模の維持・拡大が求められている。このため、
圃場準備から育苗、
播種・定植、管理、収穫、調製、出荷までの全工程について、作業の効率化、機械化やスマート化が必要となっており、これに対応した品種開発が重要な課題となっている。
(具体的な事例)
(1)ほうれんそう「ドンドン」シリーズ(株式会社サカタのタネ):草姿が立性で葉数が多く、株が強健で葉軸が折れにくいため、収穫・調製の作業性に優れる。作期に合せて、「ドンキー」「ゴードン」「ハイドン」「ピンドン」の4品種が育成されている(写真5)。
(2)だいこん「秋のきらめき」(渡辺農事株式会社):コンパクトな草姿で機械利用などによる栽培管理が容易。根部は円筒形で揃いが良いため、箱詰め作業性にも優れる青首品種である(写真6)。
(3)にんじん「冬ちあき」(タキイ種苗株式会社):高温期を経過する作型において、肩部障害(根部の首や肩に凹凸を生じる生理障害)の発生が比較的少ない。根部の肥大性、根部形状の安定性や斉一性、低温期における葉部の耐寒性に優れ、根部の割れが少なく、機械収穫に高い適応性を示す。
(4)単為結果性ナス「PCシリーズ」(タキイ種苗株式会社):ハウス栽培などにおける着果ホルモン処理や交配用ハチを必要としない単為結果性品種であり、産地や消費者の嗜好に対応して、長卵形なすの「PCお竜」「PC鶴丸」、長なすの「PC筑陽」が育成されている(写真7)。
(5)西洋かぼちゃ「栗五郎」(カネコ種苗株式会社):直播・放任栽培を推奨する黒皮品種であり、着果性に優れ、生育初期の節間が短いため、放任栽培でも栽培密度を高めることで収量を確保できる。
(6)ミニトマト「TS28017-7s」(福井シード株式会社):花房が直枝型で枝分かれが少なく、圃場におけるへた離れが少ないため、作業効率の向上が可能で房どり栽培適性が高く、流通過程での裂果も少ない(写真8)。