ホーム > 野菜 > 野菜の情報 > 地理的表示保護制度(GI)を利活用したさといも産地振興の取り組み ~二子(ふたご)さといも協議会〈岩手県北上市(きたかみし)〉の事例を中心に~
協議会では、GI登録の際に定めた生産工程管理の遵守し、品質保持に努めている。
具体的には、(1)品種の存続(2)GI取得時に定めた生産工程管理適合性確認票などの提出・管理(3)協議会内でのチェック体制の強化―の3点が挙げられる(表1)。
このように、生産者のほか、地域内の普及指導機関と農業団体が連携して取り組むことによって生産工程管理の遵守につながり、「差別的優位性」を有するブランド・プレミアムの保持が可能となっているものと理解できる。
なお、「生産工程管理適合性確認票」には、生産者は品種および栽培方法の確認、出荷規格・最終産品の確認を、GI登録申請に必要な審査要領で定める書類(以下「明細書」という)の内容に従って行う義務があり、それを怠った生産者は講習会への参加・指導が入ることが定められている。講習会などの指導に従わなかった場合、一定期間において二子さといもの名称使用が困難となるなどの罰則も存在しており、強制力がある内容となっている。
また協議会は、JAによる出荷だけでなく個人による出荷についても、出荷規格や販売金額を把握することにより、管理体制を強化している。
また、総会や栽培講習会において上記明細書の内容を毎年周知し、協議会全体でサポートする仕組みとなっている。その他、協議会が主管する栽培講習会や種芋に関する研究などがある。また、JAの生産部会が主催する圃場巡回、作柄調査に協議会が参加するなどの取り組みも行っている。
以上に加えて、GI登録後に開始した取り組みとして、アグリフードEXPO(2018年)、GIフェスティバル(2019年)、いわて・みやぎ・ふくしまフェスタ(2019年)など催事への出展が挙げられる(写真2)。これらの催事はGI登録産品を対象としたものが多く、従前とは異なるプロモーションの場を得ることが可能となっている。とりわけ、イベントなどに参加することによって、協議会員である生産者が消費者の反応を直に体感できる機会が設けられていることも、顔の見える流通による食と農の距離の縮小や生産者の意欲向上という効果につながっている。
それ以外にも、二子さといもの先行事例として位置付けられる「上庄さといも」(注2)の視察を実施した(2018年)。
また、食味調査会では、二子さといもと他産地のさといもを食味試験により比較しており、協議会が二子さといもの産品特性を把握することにつながり、セールスポイントを明確化することに貢献している。
注2:福井県大野市上庄地区で生産される「大野在来」と呼ばれる在来系統のさといも。肉質が非常に緻密で固く締まっており、煮崩れしにくく、モチモチとした独特の食感が特徴である。詳細は、https://pd.jgic.jp/register/entry/43.htmlを参照されたい。