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調査・報告 野菜情報 2024年1月号

「儲かる農業」実現へ~収益性の高い農業構造の実現に向けて~

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茨城県農林水産部 農業政策課、産地振興課、農業技術課

1 「茨城農業の将来ビジョン」の策定

 茨城県の農業は、広大で肥沃な農地や首都圏に位置する地理的優位性などの強みを背景に、農業者および産地が、消費者ニーズを的確に捉え、高品質で安全・安心な農産物の生産に取り組んでいます。
 一方で、人口減少社会とともに農業者の減少が見込まれており、本県における2050年の農業経営体数を予測すると、主要な個人経営体は現在の3割程度まで減少し、法人経営体は現在の2倍以上に増加するものの、全体として現在の経営体数の約3分の1まで減少することが見込まれます(図1)。

タイトル: p041
 
 こうした中、茨城農業を魅力ある産業として次世代に引き継いでいくためには、「儲かる農業」の実現を目指し、本県農業の収益性を高めるための構造改革を進めることが重要です。
 このため、おおむね30年後を展望した本県農業の目指す姿を明らかにし、中長期的な視点に立った課題や政策の方向性を示す「茨城農業の将来ビジョン」(以下「農業ビジョン」という)を2023年5月に策定しました(図2)。

タイトル: p042

URL:https://www.pref.ibaraki.jp/nourinsuisan/noseisaku/senryaku/2kaikaku/230525agrivision.html
 
 農業ビジョンでは、2050年までに農業産出額を5000億円(2021年時点では4263億円)、経営体当たりの所得を1000万円に向上させることを目指し、政策の方向性として、(1)意欲ある担い手が牽引する農業構造への転換(2)収益性の高い農業構造への転換-を掲げています(図3)。
 意欲ある担い手がけん引する農業構造の実現に向けては、意欲ある担い手への施策の重点化を図り、農地の集積・集約化や法人化に力を入れていきます。また、それとともに、地元農業者との連携により相乗効果が期待できる、域外の大規模農業法人や新規参入企業などを新たな担い手と捉え、農業への参入促進に取り組んでいきます。
 また、収益性の高い農業構造の実現に向けては、需要に応じた生産への転換による高付加価値化や、ブランド化による高付加価値化、輸出による海外市場の開拓などを推進することが必要です。具体的には、米から高収益作物などへの転換や、水田地帯における農業団地の形成、有機農業の拡大、高品質な贈答用高級メロンの創出などブランド化の推進、常陸牛の世界トップブランド化などに取り組んでいきます。

タイトル: p043

2 農業ビジョンにおける野菜の目指す将来の姿

 本県の農業産出額の拡大を目指す上で、野菜など園芸作物の振興は大変重要であり、農業ビジョンにおいては、野菜に関する「収益性の高い農業構造の実現」に向けた政策の方向性として、施設園芸および露地園芸が目指す将来の姿を描いています。
 まず、施設園芸については、(1)高度な環境制御技術の導入による飛躍的な生産効率の向上と高付加価値化の実現(2)水田からの転換による施設園芸産地の拡大-を目指します。具体的には、ICT技術活用による生産性向上や産地の拡大に向けた支援を行い、従来の勘と経験に基づく施設園芸からデータ駆動型への転換や、メロン・いちごなど贈答・輸出向けプレミアム商品の創出と展開、大規模施設経営を志向する法人の誘致と生産基盤の整備などを推進します。
 次に、露地園芸については、(1)廉価販売からの脱却と付加価値の高い差別化商品へのシフト(2)多様な販路に対応できる生産体制の構築により、価格転嫁が可能な『選ばれる産地』の確立-を目指します。具体的には、差別化による茨城独自の高品質な商品づくりや、輸出・加工業務用産地づくり(かんしょ、はくさい、キャベツなど)の支援を行い、販売単価の向上や、植物検疫や長時間の輸送に耐え得る対策、労働力確保などによる規模拡大などを推進します。
 さらに、野菜は、日本人の食生活の変化や人口減少・高齢化を背景に主食用米の需要が年々減少する中で、水田農業の高収益化を図るための重要な転換品目の一つに位置付けられています。
 今後は、目指す将来の姿を実現させるための施策を立案・展開してまいります。

3 茨城県産野菜のブランド化に関する取り組み

 次に、農業ビジョンの実現に向け、現在具体的に事業を進めている、メロンにおける贈答向けプレミアム商品づくりの取り組みをご紹介します。
 
贈答用高級メロンの創出について
 全国一の生産量を誇るメロンは本県を代表する農産物であり、特に出荷の最盛期を迎える5月から6月には、県や県内メロン産地などが主体となって、試食宣伝などの販促活動や各種メディアを通した情報発信などによる消費拡大に取り組んでいます。
 一方で、近年のメロンの消費量の低迷に伴い、本県産メロンの作付面積や生産者は減少し、農業産出額も低下しています。また、本県のメロンは主に家庭消費向けに生産されており、贈答用の高価格帯のメロンの生産は極めて少ないため、東京都中央卸売市場の平均単価は、全国の平均単価よりも低い状況にあります。さらに、資材などの価格高騰の影響を受けて、メロン経営を取り巻く環境は一層厳しいものとなっています。
 そこで、今年度から、本県が育成したオリジナル品種メロン「イバラキング」などを活用し、高級果実専門店などが求める外観や食味などにこだわった贈答用のメロンを、産地と協働して作り出し、本県産メロンのブランド力の更なる強化によるイメージアップや価格向上につなげる取り組みを始めました。
 具体的には、外観や食味などが優れた贈答用メロンを創出するため、ハウス内のきめ細かな環境管理による高品質メロンの生産技術の実証や、実需者などが求める品種選定や栽培方法の検討を進めています。
 また、本県オリジナル品種メロン「イバラキング」については、その品質の高さを県内外にPRするとともに、プレミアム商品の創出につなげることを目的に、今年度初めてコンテストを開催し、食味や外観が特に優れたメロンを選出しました(写真1)。

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 コンテストでは、全国的に名声の高いシェフや高級果実専門店、青果物に精通する流通関係者など、専門家による審査を行い、最優秀賞のゴールドマイスター賞をはじめとする各賞が生産者に贈られました。受賞者の 「イバラキング」については、高級果実専門店などでの販売や各種メディアを通じたPRなどを行い、新たな販路開拓を支援したところです。
 さらに、全国的にも希少な赤肉の「アールスメロン」に着目し、都内高級果実専門店等において試験的な高価格販売に取り組んでいます。
 これらの贈答用メロンの取り組みを産地と協働して実施し、量と質を両立する日本一のメロン産地の育成を目指すことで、メロン農家の所得向上や産地の活性化につなげ、メロンの生産振興を図っていきます。

4 茨城県における有機農業の推進に関する取り組み

 次に、農業ビジョンにおいて分野横断的な政策の方向性の一つに掲げている有機農業の推進に係る取り組みをご紹介します。
 化学的に合成された「肥料」や「農薬」を使用しない有機農業は、環境負荷低減を目指した持続的な社会の実現に重要であり、その生産物は付加価値の高い有機農産物として、生産と流通の両面で注目されています。
 
(1)有機農業の推進目標と現状
 有機農業は、中山間地域といった土地条件の優劣や経営規模の大小にかかわらず、「儲かる農業」を実践する取り組みであることから、本県では、2009年に「第1期茨城県有機農業推進計画」を策定し、その拡大推進に取り組んでまいりました。
 22年策定の第3期計画では、27年に有機JAS認証取得面積を560ヘクタールへ拡大する目標を掲げております。
 22年4月1日現在、本県の有機JAS認証取得面積は321ヘクタールで全国第10位となっており、その7割強が普通畑での野菜生産です。
 
(2)有機農業に係る施策の展開
 有機農産物の供給強化と販路拡大を分野横断的な政策として位置付け、「有機農業と言えば茨城」というポジションを確立すべく、各種の施策を展開しています。
 19年には、県北地域に有機農業のモデル団地を形成する「いばらきオーガニックステップアップ事業」を創設しました。23年からは有機農業の関連予算を「有機農業推進関連事業」としてパッケージ化し、有機農産物の生産・流通拡大の支援を一層強化しています。
 
(3)有機農業のモデル団地育成支援
 国の補助事業を活用し、県北地域における有機農業モデル団地の整備に必要なパイプハウス資材の導入や、農業機械などのリース導入を支援しています。
 これまでに、常陸大宮市三美地区において、基盤整備と事業活用を契機に地域外の有機農業に取り組む法人が2社参入し、露地にんじんや施設こまつな、ほうれんそうなどを栽培しています。
 地元法人も追随して有機野菜の露地栽培を開始しており、現在は、同地区を中心に20ヘクタール超の大規模有機モデル団地が形成されています(写真2)。

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(4)有機農産物の供給能力向上
 生産した農産物を「有機」「オーガニック」などと表示して販売するためには、有機登録認証機関に認証を申請(有料)し、有機JAS認証を取得することが必要となります。
 このため、県では、有機農業の規模拡大や生産性向上を目指す有機JAS認証取得者および新規取得予定者などを対象に、認証の取得費用や生産拡大に向けた農業機械の導入などを支援しています。
 22年には、省力化のための掘り取り機や播種(はしゅ)機、除草機などの農業機械の導入や、作期拡大のためのパイプハウス資材の導入を支援し、これにより、25年までに有機JAS認証取得面積が大幅に増加する見込みです。
 
(5)消費者の理解度向上に向けた内容成分調査
 本県における有機農業の更なる拡大には、有機農産物に対する消費者の理解度向上により、消費機会の増加を図ることが重要です。
 県では、有機野菜と一般野菜の内容成分の違いについて、消費者へ有機野菜の特長をアピールする差別化指標づくりのため、県内の有機栽培で多く生産されているにんじんやこまつななどを対象に、生活習慣病や老化の要因となる「活性酸素」を抑制・除去する「抗酸化物質」の含有量などの分析調査に取り組んでいます。

(6)有機農業関係者によるネットワークの構築
 生産者、流通業者、消費者、学識経験者など、有機農業の関係者が有機農産物の生産方法、販路開拓、需要動向などについて意見交換を行い、相互理解を深め、本県有機農業を推進することを目的に、22年3月に「いばらきオーガニック推進ネットワーク」を設置しました。
 これまで、年2回の意見交換会を実施し、本県における有機農業推進のための提案をいただいています。
 
(7)有機農業指導員の育成と有機農業技術推進チームの設置
 22年から、有機農産物の栽培技術や有機JAS認証制度などについて指導・助言を行う「有機農業指導員」を育成しています。23年5月には、研究・普及・教育の有機的な連携を図る部内機関である農業総合センターに「有機農業技術推進チーム」を設置し、有機農業担当の専門技術指導員を配置することで、生産者への技術指導や情報提供、現地栽培技術のデータ化、栽培技術事例集の作成などの支援を実施しています。
 また、有機栽培土壌の総合的な評価手法の開発や、有機農産物生産に適した土壌条件の解明など、生産現場における課題解決のための試験研究を、茨城大学や農業総合センター農業研究所・園芸研究所で実施しています。
 
(8)有機農産物のプロモーションと販売促進
 本県産農産物の販売・流通対策を担う庁内組織と連携して、有機農産物のイメージアップおよび認知度向上を図るためのプロモーションや、オーガニック専門店や量販店での茨城県産オーガニックフェアの開催、県内有機農業者への商談会やフェアなどを通した販路拡大などの支援を実施しています。
 
 県では、こうした取り組みを通じて、計画目標の達成に向けて有機農業の拡大を強力に推進するとともに、より付加価値の高い農業への構造転換を図ることで、本県農業の持続的発展に取り組んでまいります。

5 「儲かる農業」の実現に向けて

 県では、農業ビジョンの内容を踏まえ、PDCA(業務の品質や効率を高めることを目的とした業務管理手法の1つで、Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Action:改善、を表す)に基づく不断の検証を行いながら、本県農業の収益性を高めるための施策を立案し、農業者の所得向上を実現させていくため、今後も「儲かる農業」の実現に向けた各種施策の展開を図ってまいります。