ホーム > 野菜 > 野菜の情報 > ブロッコリーの産地づくりと出荷予測システムの導入 -JA香川県の新たな取り組み-
(1)全国における香川県のブロッコリー産地の位置付け
2000年以降、国内のブロッコリー生産は拡大してきているが、香川県のその拡大スピードは極めて速い。香川県は、ブロッコリーの秋冬どり栽培産地であったが、年内どり、春どりなどの多様な作型を組み合わせ、11月から翌6月にかけての長期出荷を実現することで、栽培の拡大を実現してきた。その結果、今や香川県のブロッコリーの作付面積は、全国では北海道に次ぐ第2位を誇る。図2は、香川県におけるブロッコリーの作付面積と全国シェアの推移を示したものである。2000年の香川県の作付面積は187ヘクタール、全国シェアは2.3%に過ぎなかったが、この20年で作付面積は7倍にも跳ね上がり、作付面積は1380ヘクタール、シェア8.3%まで拡大している。
とりわけ京浜市場を中心に、香川県のブロッコリー産地の地位はますます高まってきている。図3は、東京都中央卸売市場におけるブロッコリー主要産地の入荷量シェアの推移を示したものである。香川県の場合、2000年時点では入荷量が少なく、そのシェアはわずか0.9%であったが、2020年になるといずれの産地と比べても最も入荷量が多くなり、そのシェアは20%を占めるまでになっている。埼玉県、愛知県といったブロッコリーの主要産地を超えるまでに、香川県のブロッコリー産地が成長したことを強調しておきたい。
図4は、東京都中央卸売市場におけるブロッコリー主要産地の月別入荷量を示したものである。先述のように、香川県は、早生・中生・晩生・促成の品種と、年内・年明け・春・初夏どりの多様な作型を組み合わせながら、11月から翌6月までの8カ月間にわたる長期出荷産地となっている。特に、12月から翌5月の6カ月間は、香川県が京浜市場の基幹産地となっていることを確認することができる。
(2)ブロッコリーの産地づくり
県内でのブロッコリー栽培は、1970年代、野菜品目の多様化需要を踏まえ、冬期においても温暖で年間降水量の少ない瀬戸内海式気候を生かして始まった。1980年代に入ると、地域を代表する新しい品目を育てようという動きが当時のJA(豊中農業協同組合)の中で高まっていった。新品目といっても、販売を卸売市場に全面委託するような競争力のない品目では収益性は望めない。そこで、自らが販売計画を立て、安定した収入が見込める特産品づくりを目指し、80年代前半、当時の担当者と組合長が中心となってブロッコリーの導入を図った。
1983年に組合員農家わずか2戸でブロッコリー生産がスタート、89年にブロッコリー研究会が発足し、10年後の99年には組合員は175人にまで増加した。導入当初は輸入ブロッコリーに押され、拡大は思うように進まなかったが、後述するJAによる手厚い支援事業と、「JAの支援を得て栽培に専念すれば、安定した収入が得られる」という組合員の口コミも相まって、ブロッコリーは転作田や水田裏作の主力品目として広まっていく。そして、三豊地域(豊中地区)で始まったブロッコリー栽培は、2000年のJA香川県の誕生を契機に、県下全域へと普及していったのである(写真1)。
JA香川県は、2000年以降、県内8カ所に育苗センターを設置し、県内全域にブロッコリーの苗を供給できる体制を整備した。併せて集出荷施設の大型冷蔵庫を利用した氷詰め出荷のコールドチェーンを確立した。さらに、2018年には出荷予測システムの導入を図った。
JA香川県は、県下市町村にあった43のJAが合併した県域JAであり、現在(2021年度)の組合員数は14万735人、うち正組合員数は5万8457人、組合員数や貯金残高など、その規模においては全国トップクラスにある。販売品取扱高は379億2500万円、うち野菜が171億円(45%)となっている。
図5は、合併した2001年度からのJA香川県のブロッコリーの年度別取扱実績などの推移を示したものである。ブロッコリーの販売数量・金額はともに2001年度以降、年度によって変動があるものの増加傾向で推移している。ブロッコリーの作付組合員農家数については19年度の1740戸まで増加したが、その後は減少傾向に転じ、22年度には1523戸になっている。しかし、ブロッコリーの生産拡大は、作付組合員農家数の増加を伴って展開してきていることは同図からも十分推察できよう。
ブロッコリーを基幹とする野菜作経営体(組合員農家)では、1戸当たりの平均耕地面積は50アールであるが、レタス、たまねぎ、にんにく、夏ねぎなどの他品目との複合経営体も少なくない。
図6は、JA香川県の7つの地域別(地区営農センター別)に見たブロッコリー作付組合員農家数の現況(2022年度)を示したものである。県西部の三豊地域は、県全体(1523戸)に占める割合が最も大きく(532戸)、前述の通り、香川県のブロッコリー生産を常に先導してきた地域でもある。三豊地域における経営主の年齢別に見たブロッコリーの作付組合員農家は、「70歳以上」の高齢者が主となる経営体(組合員農家)が4割、そして「60~70歳未満」が4割で、いわゆる60歳以上の高齢者専従経営体が全体の8割ほどを占めている。香川県のブロッコリー生産は、高齢労働力に依存した多品目の野菜作経営体によって担われている。