(1)生産者の身体・作業負担の実態把握
生産者の身体・作業負担把握のため、平成29年に236人を対象にアンケートを実施した結果、腰痛のある人は54%(うち通院30%)認められ(図1)、特に負担のかかる作業が、土押さえ(人力による白ねぎ株元への土寄せ作業)、収穫、運搬(収穫した白ねぎを包んだ十数キロの束の運搬)であることが明らかとなった(図2)。
そこで、身体面の専門である鳥取大学医学部と連携するため「白ねぎ作業改善PT」(メンバー:農業改良普及所、専門技術員、鳥取大学医学部、JA、白ねぎ生産部、生産者若手組織)を平成30年3月に設置した(図3)。
白ねぎ作業改善PTでは、毎年度活動の方向性を検討し、活動を行った。
平成30年度には、より詳細な実態把握のための調査(アンケート、身体的特徴、腰痛、発生状況、作業実態のビデオ撮影)を行い、対策が必要な項目を整理した(図4)。
(2)負担の大きな作業(土押さえ、収穫、運搬)の軽減に向けた対策案の開発・実証検討
ア 土押さえ農具の改良および開発
従来の市販品では、(1)中腰の作業姿勢が多いこと(2)柄が長く、柄の後ろがねぎに当たり、作業がしにくいこと(写真1)(3)作業を続けるに連れて、土が付着し、農具が重くなる(写真2)―といった生産者の声を基に、農具メーカーとともに土押さえ農具(ねぎレーキ)の改良を行い、試用実施し、さらに改良を加えていった。再度改良品を試用実施し、評価も高いことから、商品化に向けて関係機関と調整を進めた。
また、新たに開発された土押さえ用培土機については、まずは県内の主産地に多い砂丘畑での3回の試運転を実施した結果、ねぎレーキと比較し2倍以上の効率となった。軽労で誰でも操作できることを確認し、これを基に砂丘畑での実演会を令和2年度に開催した。また、ねぎ産地は全県下に拡大しており、水田転換畑での作付けもかなり広がっていることから、水田転換畑でも試運転を実施し、砂地より土が重い当該
圃場での効果も確認することができたため、その後、水田転換畑での実演会を令和3年度に開催した。
イ 収穫作業姿勢の改善の検証
手堀り作業では、負担の少ない作業姿勢モデル3つを農家とともに検討し、筋電計(筋の活動状態を計る装置)を用いて腰部にかかる負荷を比較し、それぞれの腰部への負担軽減効果を農家5戸で検証した。
収穫機での作業では、中腰姿勢改善のための「高さ調整作業台」を農家5戸で実証した。また、活動途中に、土落としに課題があるという農家からの声があったことから、「土落とし装置(ブロア)」を農家1戸で検討した。
ウ 運搬作業の改善
腰痛予防対策指針の姿勢による運搬方法について、筋電計を用いて1戸で検証した。また、ブロッコリー収穫運搬台車を利用した、ノーリフティング法(持ち上げない運搬方法)を農家1戸で検討した。
(3)身体的側面における腰痛対策の検討(鳥取大学医学部との連携)
若手組織の会長3人と、鳥取大学の研究担当者を参集し、身体面での対策案を検討し、整形外科の先生による腰痛の基礎知識についての講演(腰痛対策講演セミナー)を開催した。
また、理学療法士による筋肉強化・ストレッチの指導も行った。
(4)腰痛対策案の普及
腰痛の基礎知識、腰ラクラク白ねぎ体操(以下「白ねぎ体操」という)、負担の少ない作業姿勢などについては、動画を作成し、YouTubeやホームページへの掲載、DVDの作成・貸出体制を整備し、生産者への情報浸透を図っている。また、動画紹介のパンフレットを作成し、JA経由で生産者全戸に配布した。
白ねぎ体操については、野菜専門分野普及員と連携し、各地区の指導会、勉強会、出荷打ち合わせ会などを通じて実演指導を実施し、普及に努めた。
負担の少ない作業姿勢の紹介動画については、白ねぎ作業改善PTの若手組織に協力を要請し、4人の協力を得た。
作業(土押さえ、収穫、運搬)の負担軽減に向けた対策案の普及については、実演会を開催し、生産者への普及を図った。