続いて、道内産地におけるたまねぎとばれいしょの生産・出荷および輸送実態を紹介する。
(1)JAきたみらい
JAきたみらいは、オホーツク海沿岸部のほぼ中央に位置し、北見市(一部地区を除く)、置戸町、訓子府町の1市2町を区域とする。2021年度現在、組合員7495人(906戸)、販売取扱高491億円の総合農協である。農用地は3万1260ヘクタール(うち耕地2万4775ヘクタール)で、耕種作物は、たまねぎ(4619ヘクタール)、ばれいしょ(2146ヘクタール)を主体に小麦(5105ヘクタール)などが、生産されている。中でも、たまねぎの生産量は日本一であり、全国の約2割が生産されている。そこで、以下では、たまねぎとばれいしょを取り上げる。
ア たまねぎ
たまねぎの出荷販売について見ると、2022年産の出荷予定量は24万5000トンの見込みであるが、用途別では、約75%が生食用(一般消費向け)、残り約25%が加工・業務用となっている。生食用は大半が卸売市場向けであるが、出荷地域別は、道外が92.5%で大半を占めており道内は7.5%に過ぎない。道外は関東信越の比率が3割弱と最も高いが、中京2割強、関西・中四国2割、九州1割強、東北1割弱と、全国各地に出荷されている。なお、北海道では1989年から農協系統によるたまねぎの全道的な共同販売体制が確立し、その下で、需給と価格動向に応じて、生食用と加工・業務用への出荷が行われてきた。このうち加工・業務用は契約により安定した価格を実現してきている。
たまねぎ選果は、管内5カ所の選果施設で行われており、1日当たり計1100トンの処理能力を有している。選別されたたまねぎは自動箱詰機で計量して段ボールに詰め込まれ、さらにロボットパレタイザー
(注5)によって自動でパレット積みされ、フォークリフトでコンテナやトレーラーに積載される。なお、選果場の現場操業は、通運事業者に委託されている。このように、たまねぎ出荷では大規模で効率的な選別・包装・出荷システムが確立されている。
生食用の荷姿は、正品は段ボール箱(20キログラム用)が基本であるが、規格外品と一部の正品には鉄コンテナとフレキシブルコンテナバックが使われている。また、パレットについては、シートパレット
(注6)が多く使用されている。
(注5)段ボール箱や袋詰めされた荷物を自動でパレットに積み付けるシステム。
(注6)従来のパレットと比べて軽量・省スペース・耐水性・耐薬品性・衛生的など多くの特長を持つ特殊クラフト紙や合成樹脂製で構成された薄いシート状のパレット。
イ ばれいしょ
ばれいしょの出荷販売については1950年代半ばまでは個人で選別する個選出荷であったが、農協の選別施設が整備されるとともに共同選別・共同販売が広がってきた。現在の用途別出荷比率は、生食用が4割弱、加工用が4割弱、でん粉原料用が1割強、種子用が1割強である。生食用の主な出荷先は全国の卸売市場であるが、ばれいしょの嗜好性は地域によって異なるため、品種によって主な出荷市場は異なっている。
現在、ばれいしょは3カ所の選果場での共同選果が行われており、10キログラム用段ボール箱に自動箱詰され、さらにパレタイザーでパレット上に積載されていく。たまねぎと同様に、大規模で効率的な選別・包装・出荷システムが確立されている。
生食用の荷姿は、段ボール箱(10キログラム用)が基本であるが、規格外品は鉄コンテナとフレキシブルコンテナバックで出荷されている。なお、パレットについては、シートパレットがほぼ100%使用されている。
ウ 輸送体制と実態
輸送についてはたまねぎ、ばれいしょとも、基本的にホクレンが品目ごとに出荷先、コスト、品質などを考慮して各農協に配車している。輸送手段別の比率は、年次や出荷時期によって変化するが、近年たまねぎはJR貨物が約6割、トラック・フェリー等(以下、RОRО船を含む)が約4割弱、ばれいしょはJR貨物が約7割、トラック・トレーラー等が約3割になっている。
JR貨物の場合、選果場で段ボール箱はJRコンテナに積み込まれ、最寄りの北見駅まで通運事業者が輸送し、コンテナ列車に積載される。出荷量の多い8月から翌4月には北見駅から札幌ターミナルまで「たまねぎ列車」が1日1往復走行している(写真2)。ただし、路線状況から貨車数は11両(コンテナ55基)に制約されている。コンテナ1基に20キログラム詰め段ボール箱が約250箱として、1日1列車約275トンが出荷可能である。しかし、JAきたみらいのたまねぎ出荷量は日量1000トン以上に及ぶため、北見駅からのコンテナ列車だけでは積みきれない。このため「たまねぎ列車」に積載しきれないコンテナは、通運事業者が近距離ながら165~180キロメートル、3時間弱の北旭川駅(貨物駅)まで輸送し(写真3)、コンテナ列車に積載している。しかし、それでも全ての出荷量は輸送しきれないため、トラック・フェリー等による輸送との組み合わせが不可欠になっている。
トラック・フェリー等の場合は、選果場で段ボール箱がトレーラーに積載され通運事業者によって苫小牧港まで輸送される。苫小牧港ではトレーラー部分だけフェリーに積載され、着地の最寄港で降ろされると、ヘッドがつなぎ直されて着地まで輸送される。ただし、主な積出港である苫小牧港までは、片道約330キロメートル、5時間近い中距離輸送となる。
JR貨物とトラック・フェリー等を比較すると、一般的にJR貨物の方が長距離輸送になるほど低コストである。しかし、貨物鉄道は停車などにより庫内が高温となることがあるため、高温期の8月にはトラック・フェリー等が用いられることが多いという。ただし、地域内で調達できるトラックやトレーラーの台数、確保できる運転手数からして、トラック・フェリー等だけで輸送するのは困難である。
(2)JAふらの
JAふらのは北海道中央部に位置する上富良野町、中富良野町、富良野市、南富良野町、占冠村の1市3町1村を区域とする2021年度現在、正組合員2125人(1168戸)、販売取扱高267億円(その他に加工・直販44億円)の総合農協である。2万2100ヘクタールの農用地で、たまねぎ(約1800ヘクタール)、ばれいしょ(約600ヘクタール)、にんじん、生乳などの農畜産物が生産されている。
たまねぎの出荷販売について見ると、8月上旬から9月頃に収穫されるが、常温貯蔵、保冷庫、エチレン貯蔵庫、CA貯蔵庫で翌年7月上旬まで貯蔵され、生食向けの場合は選果場で選別、箱詰されたうえで、8月上旬から翌7月上旬まで全国の卸売市場を通じてスーパーマーケットなどに出荷されている。2022年産の出荷量は約10万トンであるが、用途別では、約7割が生食用(一般消費向け)、約3割が加工・業務用となっている。生食用の出先は、道外が約90%で、道内は約10%に過ぎない。道外は関東信越の比率が5割弱と最も高く、次いで関西・中四国3割強、九州2割弱と、これらの地域に分散して出荷されている。
たまねぎ選果(写真4)は、これまで管内4カ所の選果施設で計400トン/日の処理能力を有していたが、2023年には1カ所の施設に集約統合される。新施設では、AIを用いた光学選別システムによって、選別精度を向上させるとともに作業の省力化、低コスト化が進められる予定である。
生食用の荷姿は、段ボール箱(20キログラム用)が約9割を占めているが、業務用の納品には鉄コンテナも使われている。パレットの利用については、これまで4選果場のうち2カ所がパレット輸送に対応できない選果場であったため利用率は50%程度であったが、2023年度より稼働する新選果場では全発送をパレット対応とすることができる。
輸送手段はJAきたみらいと同様に基本的にホクレンが品目ごとに出荷先、コスト、品質などを考慮して各農協に配車している。たまねぎの輸送手段別の比率は、年次や出荷時期によって変化するが、JR貨物が約9割と大半を占め、トラック・フェリー等は約1割に過ぎない。選果場で箱詰めされたたまねぎはコンテナに積み込まれ、通運事業者が最寄りの富良野駅までトレーラーで輸送し(写真5)、同駅でコンテナ列車に積載している(写真6)。富良野発のコンテナ列車(ふらのベジタ号)は、秋冬季には15両編成で札幌貨物ターミナルとの間を1日1往復走行している。1列車への積載コンテナを75基とすると、最大約375トン出荷可能なため、JAふらのの1日当たり出荷量の9割程度は富良野駅からJR貨物で出荷可能とみられる。ただし、最盛期にはコンテナ列車に積みきれないこともあり、その場合は札幌貨物ターミナルまで通運事業者が輸送し、そこでコンテナ列車に積載している。
JR貨物とトラック・フェリー等を比較すると(表1)、運賃は長距離になるほどJR貨物の方が低い傾向にあるため、コスト面からするとJR貨物が有利であるという。したがって、現状のJR貨物の輸送体制が存続する限り、今後もJR貨物主体の輸送が選択されるとみられる。ただし、8~9月の高温期には、鉄道コンテナは庫内が高温となり荷傷みのおそれがあるが、トラック・フェリー等は、着地への到着日数が相対的に短く、陸上で停車する時間も少ない。海上航送中は温度上昇しにくいため品質低下も少ない。このような点から、繁忙時や高温期にはトラック・フェリー等による補完は必要であろう。