(1)産地振興計画の策定
部会の長期計画の達成に向けて、「産地振興計画」の策定および実現に向けた取り組みを進めることを振興局からJA、市町へ提案し、合意を得た。そこで、平成30年に全部会員との個別経営面談による課題抽出を行い、現状分析と各農家の将来意向の把握を行った。KJ法(ブレインストーミングなどで得た情報をカードに書き、同じ系統のカードをグループ化して、データを整理、分析し、まとめる方法)で問題解決の糸口を探り、これらの結果をもとに、農家と関係機関が共通認識を持ちながら、いつ・誰が・どのように取り組むかを記した「産地振興方針」およびそれをより具体化した「産地振興計画」のたたき台をJAと作成した。その後、いちご部会総会の場で農家と合意形成を図り、(1)世代別営農モデルの実現(2)生産・出荷体制の強化(3)新規栽培者の確保・育成―の3つの柱で構成する「産地振興計画」を策定した(図6、7)。
(2)関係機関との連携
「産地振興計画」達成のため、JA、市町、県振興局で組織する「いちご担当者会」を定期的に開催し、持続的に発展できるいちご産地づくり実現に向け、進捗状況確認や情報共有を行った(表2)。
(3)世代別営農モデルの実現
世代別に目指すべき営農モデルを設定し、農家を3区分(モデルⅠ、Ⅱ、Ⅲ)に分類した。営農モデルⅠ(対象者34戸)の所得目標は、地元のサラリーマン世帯と同等の所得540万円/戸と設定した(表3)。子育て世代である営農モデルⅠは早急な所得向上が必要なことから、指導の重点化と環境制御技術の推進を行った。
ア 重点指導対象者支援
平成30年に重点指導対象者8人を選定し、本人の同意を得て、個別経営面談を通じて重点対象者の課題を明確化し、自ら経営目標を設定した。その解決に向けた支援を3年間実施し、この取り組みで得られた成果を横展開させることとした。
イ 環境制御技術の推進
環境制御技術の推進にあたり、平成29年に県内初となる環境制御技術勉強会組織「きゃもん会」をモデル農家5人で設立した。モデル農家選定にあたっては、振興局内部から「もっと大人数で実施してはどうか」という声があったものの、今後の技術普及を踏まえて確実に成果を上げる必要があったため、地域の模範となる農家および技術に関心があり勉強会の趣旨に理解のある農家から選抜し、少数精鋭とした。同年は関係機関にとっても初めての勉強会支援だったため、営農指導員と普及指導員に加えて、専門技術員および農林技術開発センター野菜研究室と連携した支援を実施した。特に、農家自らが定期的な生育調査を行い(写真)、その結果をもとに栽培管理を改善することの重要性を実感できるよう、個人の理解度に応じた支援を行った。
30年、環境制御技術未導入者へ推進するにあたり、先行導入しているハウス(飽差管理
(注)のため日中湿度を高く管理している)で現地検討会を開催し、その温湿度を体感させたところ、未導入者らはこれまでの管理との違いに気付き、温湿度やCO2を意識した管理を行うようになり、燃油1リットル当たりいちご生産量が40%改善する事例もあった(図8)。また、生育調査に
躊躇する新規会員に対して、29年からの会員が「自らがするものだ」と説明する 環境測定機器については、メーカー協力の下、デモ機を設置し、機能および価格面での優位性を確認し、産地への導入を進めた。また、メーカーには、環境測定データの表示のみならず、出荷実績との連動や生育調査の入力機能の追加など、産地にとって使いやすく改良してもらい、技術の推進に協力してもらった。
技術の推進に必要不可欠な環境測定機器については、メーカー協力の下、デモ機を設置し、機能および価格面での優位性を確認し、産地への導入を進めた。また、メーカーには、環境測定データの表示のみならず、出荷実績との連動や生育調査の入力機能の追加など、産地にとって使いやすく改良してもらい、技術の推進に協力してもらった。
注:植物が正常に生育するための適正な温度・湿度管理
(4)生産・出荷体制の強化
平成27年からパッケージセンターは稼働していたものの、出荷量に占めるパッケージセンターの利用割合が6%程度と伸び悩んでいたため、他産地の状況を調査し、目標とする取扱量や選果速度を設定した。また新たな取り組みとして、若手農家2戸の全量共選を支援するため、農家と関係機関で運営協議を実施し、選果員の増員や選果ラインの見直しなどの改善を支援した。
(5)新規栽培者の確保・育成
従来から実施していた(1)部会の篤農家をインストラクターとした研修生の育成支援(2)部会の若手農家の栽培技術・経営能力向上・相互研さんを目的とした「県北若手いちご塾」の開催に加えて(3)新規栽培者の経済的負担を軽減できるJAリースハウス事業実現に向けた先進事例調査―を実施した。