北海道におけるトマトなどの施設果菜類に対する既存の減肥技術について、下層土の硝酸態窒素診断技術(以下「下層土診断」という)がある。下層土診断では深さ20~60センチにある硝酸態窒素の量を追肥窒素と見なして減肥する。本技術と下層土診断は併用可能であるため、硝酸態窒素が下層にも蓄積している圃場では、下層土診断の活用でより大幅な窒素減肥が可能である。
堆肥の施用に伴う施肥対応では、堆肥現物1トン当たりの窒素減肥可能量を単年~連用4年までは2キログラム、連用5年以上では3キログラムとしている。一方、堆肥を長年連用している圃場では、これまで施用した堆肥由来窒素の一部が土壌の熱水抽出性窒素として蓄積していることから、堆肥の施用にあたっては連用効果の重複評価を避けるため、連用年数にかかわらず単年の減肥可能量(現物1トン当たり2キログラム)を用いることとする。
図5はトマトにおける窒素施肥設計の手順を示している。それぞれの施肥対応技術を併用する際は、(1)作土の土壌硝酸態窒素と熱水抽出性窒素に基づく診断(2)下層土の硝酸態窒素診断(3)堆肥の施用に伴う施肥対応―の順に活用し、窒素施肥量を決定する。これらの技術の活用により、適切な生育管理と肥料コスト低減が図られる。
坂口 雅己(さかぐち まさみ)
【略歴】
地方独立行政法人 北海道立総合研究機構 農業研究本部 十勝農業試験場 研究部 生産技術グループ 主査(園芸)。
1995年帯広畜産大学卒業。北海道立農業試験場、北海道原子力環境センター、北海道立総合研究機構で主に野菜の栄養診断や施肥法などの研究に従事し、2014年に博士(農学)を取得。2021年から現職。