(1)市場施設の概要
現在の市場施設の概要は表2の通りである。場内の施設配置については図1を参照されたい。石巻市場の総敷地面積は7万3100平方メートルであり、敷地内には青果部関連施設以外に駐車場や花き部卸売場、後述するスーパーの集配センターなども設置されている。このうち青果物を扱う主要施設としては、青果部卸売棟と同物流棟が該当している。
このうち青果部卸売棟には石巻青果の事務所や常温青果売場、市場周辺で生産された個人出荷野菜を扱う近在個選売場、仲卸業者店舗、さらには小売業者の組合や運送業者の事務所などが入っている。青果部物流棟内の施設の大部分が低温青果売場(仲卸分荷場を含む)として使用されており、それ以外に2基の冷蔵庫やバナナ熟成室、後述の株式会社アイエス食品(以下「アイエス食品」という)がパッキング業務で使用する加工施設などが設置されている。低温青果売場はトラックへの積載を行う物流ターミナルに直結しており、そのプラットフォームの長さは80メートルとなっている。卸売棟と物流棟の特徴としては、後述する3温度帯管理に加えて、衛生面などに対する配慮からシャッターにより外部と施設内とを遮断できるクローズド型の施設が採用されている点が挙げられ、これにより強風などによるちりや埃などの侵入を防いでいる。ちなみに石巻青果は市場の清掃活動を重要視しており、その一例として業務終了後は毎日、職員全員で一斉清掃を行っている。
なお、表中には記さなかったが2018年に設置された花き部卸売場、買参人組合の事務所なども設けられている。
(2)3温度帯による品質管理
石巻市場においては青果物の鮮度保持や衛生対策を目的に、常温、18度、5度という三つの温度帯による管理が行われている。具体的には、常温により管理されているのは青果部卸売などの常温青果売場であり、同売場においては常温管理で問題が生じない品目が扱われている(写真3、4)。常温青果売場の一角はパーテーションにより2区画に区分けすることが可能であり、同区画は季節により空調機器を使用することで18度による低温管理が行われている。同区画は主として近在個選売場として使用され、鮮度要求が高い葉物野菜などの品質維持に役立っている(写真5)。
一方、青果部物流棟の低温青果売場は常時外気を遮断するとともに、空調管理により室温は常時18度に維持されている(写真6)。同売場においては石巻青果からスーパーなどに販売される青果物が仕分け
(注5)られるだけでなく、売場の一部は仲卸業者の分荷場としても利用されているため、室温が管理された環境下で分荷に係る各種作業を行うことができる。特に、近年は地球温暖化の影響もあって、石巻市周辺においても盛夏を中心に気温30度を超える日が続く傾向にあることから、市場における品温管理の重要性はより高まりつつある。
3温度帯の最後として5度による管理が挙げられるが、これについては青果部物流棟内に設置された2基の冷蔵庫が該当している(写真7)。同冷蔵庫は野菜と果実にそれぞれ1基ずつ供用されており、特に低温管理が求められる青果物が保管されている。このように石巻青果においては、卸売場を区分することで品目特性に適した温度帯による管理を徹底し、市場全体として鮮度保持機能の高度化を実現している。
(注5)後述するように、石巻青果がスーパーなどに直接販売する青果物の仕分作業は主として株式会社宮城物流サービスの職員が担当している。
(3)市場の物流ターミナル機能
卸売場の温度管理に加え、石巻市場の施設面での特徴は市場に物流ターミナルとしての機能を持たせた点が挙げられる。具体的には、青果部物流棟の低温青果売場に接続する形でトラックの荷台と同じ高さのプラットフォームが設置されているため、低温青果売場でスーパーなどの店舗単位に仕分けた青果物を店舗ごとに行き先の異なるカーゴに入れた状態で搬出し、そのままトラックに積載することが可能である。プラットフォームはトラックを同時に8台まで横付けできる設計となっているため、積載作業に要する労力負担を軽減し、作業時間を短縮することができる(写真8)。
(4)仲卸制度の導入
ここで市場機能の高度化と関連して仲卸制度の導入についてみておきたい。同市場には現在6社の仲卸業者が入場しているが、これらは1972年の旧市場設立当時は存在していなかった。しかし、経年的に松島市やその周辺地域にスーパーの店舗が増えていくなかにおいて、市場としてこれらに対する仕入代行機能や各種機能の強化を図るには仲卸業者が必要との判断から、1996年に仲卸制度が導入された。その際には売買参加者や場外の青果物流通業者を対象に入場業者を公募したことから、現在の仲卸業者の前身は青果物一般小売店や青果問屋などとなっている。これら仲卸業者は市場の移転後も引き続き新市場に移転し、現在に至っている(写真9)。
なお、現在では6社の仲卸業者に大きな経営規模の格差が生じている。比較的規模の大きな2社は全国規模のスーパーなどを主要販売先としているが、他の4社については地元の地域スーパーなどへの販売が中心となっていることもあって、経年的に格差が拡大し、市場の課題となっている。仲卸業者のうち1社についてはスーパーに青果物を販売するだけでなく、後述するようにスーパーが石巻青果から購入した青果物に対するパッキング業務や仕分作業を受託
(注6)していることから、同業者は単に仲卸業者としてだけでなく加工業者的な機能も果たしている。
(注6)この場合、仲卸業者はスーパーに青果物を販売するのではなく、スーパーが他業者から購入してきた青果物に対してパッキング作業を行うことにより手数料を徴収している。