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調査・報告 野菜情報 2021年10月号

国際果実野菜年2021特集コーナー~四季の野菜と健康~

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四季の野菜の健康と栄養 ~抗酸化ビタミンが豊富なかぼちゃと 消化促進効果のあるやまのいも~

武庫川女子大学 食物栄養科学部 鮫島 由香
武庫川女子大学 食物栄養科学部・栄養科学研究所 松井 徳光

1.かぼちゃ ~抗酸化ビタミンA・C・Eがそろった優良野菜~
 かぼちゃは、果実の部分を食用とする野菜で、果菜類に分類されている。
 かぼちゃには中央アメリカ原産の品種をルーツとする日本かぼちゃ(モスカター種)と南アメリカ原産の西洋かぼちゃ(マキシマ種)がある。
 日本かぼちゃは、メキシコのマヤ文明、アステカ文明の主要作物であった。ヨーロッパを経て、日本へはカンボジア産が16世紀に渡来した。かぼちゃの名称は、「カンボジアの瓜」が「カボチャ瓜」となり、「カボチャ」と呼ばれるようになったといわれている。西洋かぼちゃは19世紀に渡来した。
 西洋かぼちゃはでんぷん質が多く、ホクホクとした食感と強い甘味が特徴である。野菜売り場で並んでいるかぼちゃのほとんどは西洋かぼちゃである。黒皮栗かぼちゃ、赤皮栗かぼちゃ、坊ちゃんかぼちゃ、栗マロンかぼちゃ、雪化粧などがある。
 日本かぼちゃはでんぷん質が少なく、ねっとりとした舌触りで味は淡白である。煮崩れしないことから煮物など長時間の加熱料理に適している。1960年台まで主流であったが、西洋かぼちゃが出回るようになってからは、市場では見つけにくくなっている。黒皮かぼちゃ、菊座かぼちゃ、ひょうたんかぼちゃ、鹿ケ谷かぼちゃ、バターナッツかぼちゃなどがある。
 また、ぺポかぼちゃがある。北米南部の乾燥した地域で作られた品種の総称で、ヨーロッパでは春の訪れとともに食べられる野菜である。日本での栽培は少なかったが、近年、ズッキーニや金糸瓜などが日本でも出回るようになった。そのほか、ハロウィーンのランタンに使われるおばけかぼちゃなどがある。
 かぼちゃは、ビタミンやでんぷんを多く含み、カロテンが豊富な緑黄色野菜の一つである(表1)。三つの抗酸化作用を示すビタミンA、C、Eが体内での酸化を防ぐことから、免疫力強化が期待できる。特に多く含まれているβ-カロテンは体内でビタミンAに変換され、免疫機能を高めると共に、目、皮膚、髪などの健康維持のみならず、アンチエイジングにも役立つ。また、コラーゲンの生成を促し、美肌を保つビタミンCが豊富であり、風邪やガン、動脈硬化の予防、疲労回復効果も期待できる。さらに、かぼちゃに含まれるビタミンE含有量は野菜の中ではトップクラスであり、抗酸化作用により細胞を若く保つほか、心疾患や脳卒中、がんの予防など体に欠かせない栄養素が豊富である。
 β-カロテンもビタミンEも脂溶性であるため、天ぷらなど油を使って調理することで体内での吸収が良くなる。また、かぼちゃの皮には果肉以上のβ-カロテンが含まれているため、皮をつけたまま食べると栄養素がより多く摂取できる。
 かぼちゃは、抗酸化ビタミンA・C・Eがそろった優良野菜である。
 






2.やまのいも ~独特の粘り成分で消化吸収・胃腸を改善する健康機能野菜~
 「やまのいも(やまいも)」は、ヤマノイモ科ヤマノイモ属に分類される芋類の総称名で、山で取れる自然薯やながいも、やまといもなどがある。村(里)で栽培されるさといもと区別するためにこう呼ばれるようになった。
 関東では、いちょう形のいちょういもを「やまといも」、関西では、げんこつ形のつくねいも(伊勢芋、丹波芋を含む)を「やまといも」と呼んでいる。棒状の「ながいも」もあり、これらをあわせて食品成分表などでは「やまのいも」としてまとめている。しかし、植物学的な分け方では、これらはながいもに属し、やまいもは自生している「自然薯」のみである。
 分類が複雑で、食物繊維やビタミン、ミネラルなどの栄養素の成分値も異なるが、体への効果はいずれもほぼ同じである。
 やまのいもの主たる効用は、食欲増進、消化促進、疲労回復、滋養強壮である。
 「やまといも」(いちょういもやつくねいも)はうま味や風味が強く、濃厚な粘りがある。ながいもは水分が多いため、やまといもに比べると粘り気が少なくあっさりとしている。どちらも生で食べられるのは、消化酵素ジアスターゼを含み、でんぷんの一部が分解されているため胃もたれしないからである。
 栄養価の違いはほとんどなく、両方ともに粘り成分が特徴で、水溶性食物繊維を豊富に含んでいて、消化吸収を助ける。また、粘膜を潤すことから呼吸器の粘膜を保護してウイルスなどの侵入を阻止し感染症の予防、胃の粘膜を保護して胃炎や胃潰瘍の予防などが期待できる。さらに、カリウムが豊富で体内の水分バランスを整えて便秘やむくみに予防効果が期待できる。
 また、ビタミンE、葉酸も豊富に含まれている。ビタミンEは、動脈硬化をはじめ老化や生活習慣病予防、冷え性や肩こりの改善が期待できる。葉酸は、貧血予防や胃腸の粘膜の健康維持に効果が期待でき、胎児の成長に不可欠である(表2)。
 漢方では滋養強壮として、すりおろしたものは腫れ物、やけど、しもやけ、歯痛などに用いられている。
 やまのいもは、独特の粘りで胃腸を改善する健康機能野菜である。
 



 
 

四季の野菜産地便り ~茨城県JA稲敷の“江戸崎かぼちゃ”と JAゆうき青森のながいも~

野菜業務部・野菜振興部


畑で完熟させたホクホクとした食感と
ほどよい甘味が大人気の「江戸崎かぼちゃ」

~半世紀の積み重ねで“江戸崎かぼちゃ”のブランドを磨く JA稲敷~

1 半世紀を積み重ね“江戸崎かぼちゃ”のブランドを磨くJA稲敷
 かぼちゃは、β-カロテン、ビタミンC、ビタミンEなどの栄養成分が豊富な免疫力の強化が期待できる緑黄色野菜である。かぼちゃの生育適温は昼間20~22度で、比較的冷涼な気候を好み、初夏にはハウスやトンネルなどを利用した栽培により鹿児島県や茨城県で、夏から秋にかけては北海道を中心に生産される。茨城県は、北海道、鹿児島県に次ぐ全国出荷量第3位を誇る全国有数のかぼちゃ産地である(図1)。
 

 
 稲敷市は、茨城県南部の霞ヶ浦と利根川の間に位置し、土壌は関東ローム層と呼ばれる火山灰層に広く覆われており排水性が高い。また、年間を通して適度な降水があり、土壌は過乾燥や過湿状態になりにくいため、過湿に弱く、排水性の良い圃場(ほじょう)を好むかぼちゃの生産に適しているという利点を活かし、昭和41年に江戸崎町君賀地区(現稲敷市)を中心に生産者7人、70アールの面積で栽培が始まった。かぼちゃを圃場で完熟させてから出荷するブランド産地となったきっかけは、ある生産者がたまたま収穫時期を逃して畑で完熟状態にあったかぼちゃを出荷したところ、おいしいと評判になったことだといわれている。当時は栽培のノウハウも乏しく苦労も多かったが、試行錯誤を繰り返しながら完熟出荷の栽培技術や厳正な検査体制を確立し、国内有数のブランド“江戸崎かぼちゃ”の産地をつくり上げた。57年には県内初の茨城県青果物銘柄産地の指定を受け、平成27年には国内で最初の「地理的表示(GI)保護制度」に登録された。現在は生産者24人が約20ヘクタールの圃場で生産しており、ハウスやトンネルの保温設備を利用し、半促成(ハウス)栽培と早熟(トンネル)栽培、普通(露地)栽培との作型を組み合わせ、5月から8月に収穫・出荷される(写真1)。抑制栽培ものは11月から12月に収穫・出荷される(図2)。
 



 
2 畑で完熟させたホクホクした食感とほどよい甘味が大人気の「江戸崎かぼちゃ」
 江戸崎かぼちゃの特徴は、完熟ならではのホクホクした食感とほどよい甘味である。一般的にかぼちゃは、着果して45日程度後の完熟前に収穫し、貯蔵庫で追熟させるが、江戸崎かぼちゃは、着果して55日以上経過後に収穫する。この収穫基準は5年の歳月をかけて、試し割りによる熟度調査を繰り返すことで得られた、最もおいしいかぼちゃに仕上げるための基準である。完熟し収穫したかぼちゃは、果皮の緑色が濃く、ゴツゴツした質感だが、果肉は濃いオレンジ色になり、完熟ならではのホクホクした食感とほどよい甘味があるかぼちゃに育つ(写真2)。
 

 
 着果後55日以上という収穫基準を設定しているが、圃場や気象条件により完熟の度合いには違いが生じる。早めに完熟しそうな場合は、試し割りで熟度を確認するなど、作型ごとに全ての圃場を巡回して生育状況の確認と収穫時期の予測を行う。収穫前には全ての圃場で試し割りによる熟度確認を行い、圃場ごとに収穫・出荷開始日を指定し、完熟での収穫を徹底している。完熟を迎えつつあるかぼちゃの下には土に触れないよう「ざぶとん」と呼ばれる発泡スチロールなどが敷かれ、日焼けしないよう日によって少しずつかぼちゃの向きを動かす。収穫後水洗いをして乾かした後、傷、重さ、形状などでA~C、規格外にランク分けして箱詰めをする。さらに、出荷前には専門の検査員が全品の品質検査を実施し、未熟品や規格外品の混入を防いでブランド価値を向上させている(写真3)。厳正な品質検査に合格した江戸崎かぼちゃには黄金に輝く認定シールが貼られ、首都圏の市場や地元の直売所に出荷される(写真4)。
 

 

 
 稲敷農業協同組合(以下「JA稲敷」という)江戸崎南瓜部会では、健康な土づくりにもこだわり、研究を重ねて独自で調合した堆肥や油かすなどの有機質肥料を、部会員全員が使用している。江戸崎かぼちゃは、市場で一般的なかぼちゃの約2倍の値で取引されている。完熟かぼちゃ特有の粉質感と糖度のバランスが良い高品質なかぼちゃであることに加え、専門の検査員などによる厳正な品質検査体制を構築したことで、生産者や年ごとのばらつきが少ない、品質が均一化したかぼちゃが出荷され、高い評価に繋がっている。江戸崎南瓜部会長の池延美千男さん(写真5)は、「わずかな傷でもランクが下がるほど、1箱1箱厳しい目で品質検査しています。専門検査員と役員が二重にチェックしており、過剰ともいえる品質検査体制だからこそ、長年にわたって江戸崎かぼちゃのブラントを守り続けていくことができます。消費者の皆様に喜んでもらえるよう、手間ひまをかけて大切に育て、品質に気をつけて、自信をもって良いものを出荷しています。栗のようにホクホクした口当たりと完熟ならではのほどよい甘味を是非味わってほしいです」と話す。
 

 
3 地理的表示(GI)保護制度登録で更なるブランド化を目指す
 半世紀にわたり地域が一体となって取り組んできた江戸崎かぼちゃの栽培方法や品質管理が認められ、平成27年に「夕張メロン」「神戸ビーフ」「但馬牛」と共に、農林水産物や食品を国が地域ブランドとして保護する「地理的表示(GI)保護制度」に初登録され、GIマークを表示し差別化して販売をすることが可能となった。新たな取り組みとして、贈答用の化粧箱をリニューアルし、2個入り箱に加え1個入りの箱を作成した。また、PRにも力を入れており、イメージキャラクター「パンプちゃん」(図3)と「江戸崎南瓜音頭」に続く「たべようホクホクえどさきかぼちゃ」のイメージソングやプロモーションビデオを制作し、JA稲敷江戸崎南瓜部会のメンバーなどがスーパーで試食販売や販促活動を実施している。
 

 
 また、海外輸出を視野に入れ、GAP(農業生産工程管理)の勉強会や現地検討会を開催し、令和元年5月に茨城県GAP第三者確認制度に登録され、消費者や実需者に生産者の顔が見える安全・安心なブランドの構築にも取り組んでいる。このほか、毎年6月にJA稲敷新利根直売所で「江戸崎かぼちゃフェア」の開催や(写真6)、種まき・収穫体験ができる食育イベントの開催(写真7)、JAホームページやパンフレットにて江戸崎かぼちゃを使ったレシピを紹介している(写真8)。さらに、大手コンビニエンスストアとのタイアップによる加工品の販売を期間限定で行うなど、地域での販売促進にも取り組んでいる。
 

 

 

 
 全国有数のブランド産地にとっても担い手の確保が重要な課題である。2年に、稲敷市外の人を対象に江戸崎かぼちゃ栽培で新規に農業を始める「地域おこし協力隊員」を募集したところ、茨城県外出身の男性が採用された。江戸崎地区のシンボルでもある江戸崎かぼちゃの担い手として独り立ちできるよう、稲敷市とJA稲敷、県普及センターが協力して栽培技術、経営管理などの習得のための研修や支援を行っている。
 
4 栄養価が高くホクホクでほどよく甘い江戸崎かぼちゃを食べて免疫力の向上を!
 かぼちゃは、ビタミンやでんぷんが豊富な栄養価の高い緑黄色野菜で、抗酸化作用のあるβ-カロテン、ビタミンC、ビタミンE、高血圧の進行を抑えるカリウム、腸内環境を整える食物繊維などをバランス良く含んでいる。夏に採れたかぼちゃを冬至に食べる風習は、緑黄色野菜の少ない冬場に、保存が効くかぼちゃで栄養補給をするためである。特に多く含まれるβ-カロテンが体内でビタミンAに変換され、粘膜や皮膚の抵抗力を高め、免疫力を向上させる働きが期待できる。てんぷらや炒め物などにすると食味もよく、β-カロテンの体内への吸収率もよい。江戸崎かぼちゃは、完熟ならではのホクホクした食感とほどよい甘味があるため、少ない調味料でも素材の味が引き立つ「江戸崎かぼちゃのほくほく煮」、ばれいしょの代わりに江戸崎かぼちゃを入れた「かぼちゃのクリームシチュー」「江戸崎かぼちゃのキッシュ」「江戸崎かぼちゃのガーリック炒め」「江戸崎かぼちゃのプリン」などがおすすめである。江戸崎かぼちゃをおいしく食べて健康と免疫力を維持しましょう!

 
太く真っ白でさくさくネバネバな
健康機能野菜・青森のながいも

~冷涼な気候を活かした日本有数のながいも産地・JAゆうき青森~
 
1 全国出荷量の4割を占める“ながいも大産地・青森県”
 ながいもは、中国では「山薬(さんやく)」と呼ばれ、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富で食欲増進、消化促進、疲労回復、滋養強壮などの効用がある健康機能野菜である。青森県は作付面積全国1位、出荷量全国2位を誇るながいもの大産地である(表1)。ゆうき青森農業協同組合(以下「JAゆうき青森」という)は、県内一の作付面積と生産量を誇る全国有数のながいも産地で、青森県東部の東北町、七戸町、野辺地町、六ヶ所村の3町1村で構成されている(図1)。この地域は、西側には八甲田連峰を望み、そのすそ野には広大な大地が広がっており、北部は県内でも有数な豪雪地帯で冬は雪に覆われ、夏はオホーツク海高気圧からの冷気が東方海上から吹き込む季節風「やませ」の影響を受ける冷涼な地域である。JAゆうき青森は、この冷涼な気候を生かし、やませの影響を受けにくいながいもやにんにくなどの生産拡大により発展してきた。
 



 
2 太く真っ白でさくさくネバネバなながいもの産地・JAゆうき青森~春堀りは濃厚ネバネバ、秋 堀りは堀りたてシャキシャキの食感~
 JAゆうき青森のながいもは、太く真っ白で、さくさくネバネバした食感が特徴である(写真1)。品種は、青森で誕生した在来種「ガンクミジカ」という系統で色白で粘りが強くアクが少ないのが特徴である。「ガンクミジカ」とは「首が短い」という意味である。青森のながいもは、国内のみならず海外市場でも評価が高く、米国や台湾などにも輸出されている。台湾では、ながいもは滋養強壮に効く健康食品として珍重され、台湾産(野生種)と違い、断面がきめ細かく白い青森のながいもは根強い人気がある。
 

  
 寒冷地である青森のながいもは、5月に種いもの植え付けがはじまり、収穫は11月から12月に収穫する「秋堀り」と、越冬後の3月から4月に収穫する「春堀り」の年2回ある(表2)。「秋堀り」は、まさに堀りたての新物で、皮が薄くアクも少なく、みずみずしいシャキシャキした食感を味わうことができる。「春堀り」は、冬を越すことで追熟が進みでんぷんが糖質に変化し、粘りが強く、甘さが際立ち、熟成した濃厚なおいしさを楽しむことができる。ながいもは地中深くで育つため、専用の掘削機で幅15センチメートル、深さ1メートル程度に圃場(ほじょう)を耕し、秋堀りは5月上旬に種いもを植え、11月に葉や茎が黄色くなり枯れてきたら収穫する。(つる)の丈は、大人の身長くらいまで伸び、葉の色や茎の太さなどで地中のながいもの生育状況をみる(写真2)。収穫されたながいもは、低温貯蔵庫で保管され、厳しい規格・品質面でのチェックを経て、一年を通して全国へ出荷される。JAゆうき青森は、平成21年に1日当たり最大約48トンを処理できる「東北町ながいも洗浄選別・貯蔵施設」を整備し、周年出荷への体制拡充、選別基準の統一、さらに実需者ニーズに応じた迅速な対応を図っている(写真3)。
 

 

 

 
 就農30年目となるJAゆうき青森野菜振興会ながいも部会の前部会長である向井博徳さん(写真4)は、ながいもの高品質多収生産技術と、地域農業のリーダーとしての生産振興への貢献が評価され、平成29年に青森県から「ながいもの達人」の認定を受けている。向井さんが育てたながいもは、令和元年11月の天皇陛下御即位に伴う大嘗祭の供え物として供納された。向井さんは「栄誉ある大嘗祭の供え物として自分が育てたながいもが選ばれたのは、親の代、先輩方が50数年間努力してこの地域を全国トップクラスのながいもの産地にしてくれたおかげです。青森のながいもは、雪のように真っ白でアクが少なくサクサクっとした歯ごたえと濃厚な旨味が特徴です。大嘗祭の供え物に決まったことで産地のPRにつながり、多くの消費者の皆さんにおいしくて体にもいい青森のながいもを是非味わってもらえればと思います」と話す。
 

 
3 「エコファーミング認証システム」と「ながいも残渣バイオガス発電」
 JAゆうき青森では、天候に左右されにくく、病害虫の影響を最小限に抑え、化学肥料や化学農薬の削減など、消費者が求める「安全・安心」に向けた生産体制の構築のため、「健康な畑に健康な野菜が育つ」との信念から「エコファーミング認証システム」による徹底した健康な土づくりに取り組んでいる。これは、生産者とJAが一体となり、基本となる圃場目標値を設定し、土壌診断結果と巡回確認によって、登録された生産圃場ごとに認証するシステムである(図2)。
 

 
 また、ながいもの洗浄選別や加工の際に発生する残さの有効利用のため、平成30年に国内の再生可能エネルギー企業が出資した合同会社が、小規模なバイオガス発電施設(発電規模約350kwh/日)を整備し、ながいも残さのメタン発酵によるバイオガス発電で得られた電力を売電し、その収益の一部をJAゆうき青森に還元している(写真5)。このほか、JAゆうき青森では、発電で出る温水排熱を利用したにんにくの乾燥施設、メタン発酵の消化液の液肥利用などを計画している。こうした廃棄物処理費用の削減や売電収入体制の構築などへの取り組みが、循環型社会形成の推進に貢献したと評価され、令和3年1月に青森県知事から表彰された。
 

 
4 「おいしいながいも決定戦」と「米国でのながいものバター焼き試食販売」
 JAゆうき青森ながいも部会は、顔が見える産地づくりとながいものブランド力強化のため、積極的に消費者との交流イベントを実施している。平成26年から県外ショッピングモールや管内小学校などで各生産者が育てたながいもを試食してもらい、最もおいしいと感じたものに投票し順位を決める「おいしいながいも決定戦」を開催し好評を得ている(写真6、7)。これまでに13回開催し、県外ショッピングモールでは年々投票数が増加していることから、関係者は消費宣伝活動の成果を実感している。
 

 

 
 31年には輸出先である米国での販売促進活動にも参加した。米国ワシントン州シアトルの日系スーパーで簡単に調理できる「ながいものバター焼き」の試食販売を実施し好評を得た。特に、食べ方を知らない人にとっては非常に効果的であったと感じており、その後の意見交換からも、今後の試食販売やレシピの提案、健康効果や安全性のPRなどの必要性を感じた(写真8)。
 

 
5 滋養強壮・食欲増進・消化促進・疲労回復に効く青森のながいもを食べて健康なカラダづくりを!
 ながいもは、「山のうなぎ」とも呼ばれ、昔から滋養強壮のために食べられてきた。消化酵素のアミラーゼが多く含まれ、一緒に食べた食材の消化を助けてくれる。ビタミンEや葉酸を豊富に含んでおり、生活習慣病予防、冷え性・肩こりの改善、貧血予防、胃腸粘膜の健康維持などの効果が期待できる。いも類の中では珍しく生で食べられるのも特徴で、そのままでもおいしく食べられるが、煮ても焼いても蒸してもおいしく、シャキシャキ、トロトロ、フワフワといったさまざまな食感を楽しむことができる。また、冷凍保存が可能であることから、ながいもを1本購入し、皮をむき、使いやすい大きさにカットして冷凍すれば、必要な分だけを解凍して食べることができる。JAゆうき青森では、ホームページに長いもバター焼、長いも中華風サラダ、長いもジュース、長いものそぼろ煮、長芋ヘルシープリンなど、手軽でおいしいおすすめレシピを動画付きで掲載している(図3)。太く真っ白で、さくさくネバネバした食感を味わえる青森のながいもをおいしくいただいて健康な体づくりに取り組もう。

四季の野菜のおすすめ簡単レシピ ~かぼちゃのガーリック&ベーコンソテーとやまのいものポテトサラダ~

野菜業務部

 この季節は、かぼちゃは北海道、長野、やまのいもは青森、北海道などが主産地です。今月は、抗酸化ビタミンA・C・Eがそろった“かぼちゃ”と独特の粘り成分で消化吸収・胃腸を改善する“やまのいも”のおすすめ簡単レシピを紹介します。
 
「かぼちゃのガーリック&ベーコンソテー」

かぼちゃのホクホク感とガーリック&ベーコンチップのカリカリとした食感が楽しくおいしい一品です。
(野菜重量:130グラム)

 
■作り方
1.かぼちゃは耐熱皿にのせラップをかけ、500Wの電子レンジに1分30秒間かける。粗熱が取れたら、5mm幅の厚さに切る。
2.にんにくは薄切り、ベーコンは1cm幅に切る。
3.フライパンにオリーブ油と2を入れ弱火にかける。にんにく、ベーコンがきつね色になったら、一旦取り出す。
4.3のフライパンにバターを入れ1を加え炒め、3を戻し入れ塩、黒こしょうで味を整える。

 
(ポイント)
・かぼちゃをにんにく、ベーコンの風味が加わったオリーブ油とバターで炒めることで、かぼちゃの甘味が引き立ちコクのある一品に仕上がります。
・ガーリック&ベーコンチップを作る時は、弱火で熱し焦げないように気をつけてください。




 
「やまのいものポテトサラダ」

やまのいものホクホク感がおいしいポテトサラダです。
  (野菜重量:135グラム)

 
■作り方
1.やまのいもは、皮をむいて1cm幅に切り、耐熱皿にのせラップをかけ、500Wの電子レンジに3分間かけ、熱いうちにフォークでつぶす。
2.たまねぎは薄切りにし、3~4分程水にさらし水分を絞る。にんじんは千切りにし、塩をまぶして3~4分程おき、しんなりしたら水分を絞る。ハムは細切りにする。
3.ボウルにやまのいも、たまねぎ、にんじん、ハムを入れマヨネーズ、塩、黒こしょうで味を整える。
 
 
(ポイント)
・やまのいもは、電子レンジで加熱した後、熱いうちにフォークなどでつぶしてください。
 
レシピ作成者:菊間 恵子