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野菜業務部・野菜振興部
肉厚で甘くて柔らかい栄養満点の“飛騨ほうれんそう”
~日本一のほうれんそう産地 飛騨高山~
1 独自の雨よけハウスで日本一のほうれんそう産地に ~飛騨高山~
ほうれんそうは暑さに弱く、15~20度と冷涼な気候を好み、かつては都市近郊で夏以外の期間に生産される野菜であった。飛騨地域でほうれんそうの栽培が始まったのは、今から約60年前の昭和30年代である。当時、夏が涼しい飛騨地域でも雨が降ると立枯病を引き起こすことから、ほうれんそうの夏作は難しいと言われていたが、飛騨地域で開発された「雨よけハウス」による栽培技術の導入で本格的な生産がスタートした。飛騨式雨よけハウスの特徴は、ほぼ全面がスクロールによって解放できる点である(写真1、2)。日中は冷涼な外気を取り入れ、雨よけ効果も手伝って収穫量が安定し、生産農家が増加した。その後、真空予冷施設の導入や遮光資材の活用などで夏場の暑さによる品質低下を克服し、高品質な夏ほうれんそうとして高い評価を得るようになった。飛騨蔬菜出荷組合ほうれんそう部会は、高山市、飛騨市、下呂市の3市を対象地域とし、このうち高山市は出荷量第1位の日本一のほうれんそう産地である(表1)。夏ほうれんそうは、生育期間が1カ月ほどであり、冬ほうれんそうに比べて短いため年5連作も可能である。飛騨ほうれんそうは、4月から11月まで京阪神地域を中心に関東・中京・北陸地域に出荷されており、出荷最盛期は5月から10月である。
2 肉厚で甘くて柔らかい栄養満点の“飛騨ほうれんそう”
飛騨地域は、東に3000メートル級の乗鞍岳をはじめとする北アルプスや御岳、西に2700メートルの白山連峰を望む高い山々に囲まれた地域で、1年を通して冷涼で昼夜の気温差が大きい。冷涼な飛騨地域で栽培されるほうれんそうは、日中に光合成によって栄養分を蓄え、気温が下がる晩から朝にかけて糖分を貯める。高冷地の気象条件と生産者の高い技術が“葉に厚みがあって甘くて柔らかい飛騨ほうれんそう”をつくり出している(写真3)。JAひだでは、生産者がほうれんそうの収穫後、調製・袋詰め・箱詰め作業を行い、管内10カ所の集荷場に持ち込み、直ちに真空予冷装置で30分ほどかけて5度まで冷やされる(写真4)。予冷されたほうれんそうはコールドチェーンで鮮度を保持したままの状態で京阪神や関東などの店舗まで輸送される。
3 安全安心で環境にやさしい「ぎふクリーン農業」
岐阜県では、消費者がより安全に安心して食べられる農産物の供給と、環境への負荷に配慮した農業生産を推進するため、化学肥料・化学合成農薬の適正で効率的な使用とそれらに代わる各種代替技術の利用により、化学肥料(窒素成分)と化学合成農薬の使用量を従来の栽培と比べていずれも30%以上削減した「ぎふクリーン農業」の取組を進めている。 ほうれんそうでは、県内2大産地の飛騨地域と岐阜地域が産地単位で生産登録しており、雨よけハウスや防虫ネット、フェロモン剤、天敵などで化学合成農薬などを削減した安全安心で環境にやさしい「ぎふグリーン農産物」として生産されている(写真5)。
4 スマート農業を積極的に推進 ~飛騨蔬菜出荷組合ほうれんそう部会「若菜会」
飛騨蔬菜出荷組合ほうれんそう部会には、20~30代の若手生産者の勉強会である「若菜会」が組織されており、5年前は会員38人であったが、現在は70人に拡大し、若者同士の横のつながりとともに、先輩農家やほうれんそう以外の葉物類の産地を訪問して勉強するなど、産地の発展を目指してさまざまな活動を行っている(写真6)。 「若菜会」は、2020年度から県、市、JAひだ、東海地域生物系先端技術研究会、民間企業と共同で、スマート農業技術や無線通信基地局の共同利用を通じた生産力と販売力の強化の取組を進めている。 雨よけハウスの遮光カーテンの自動制御、ラジコン草刈機の導入、AIなどによる出荷量予測、通信基地局の共同利用などを通じ、生産コストの5%低減と単収の3%向上により、農業所得の8%向上を目指している。 「若菜会」の川尻会長は、「他県や他の産地に視察に行くと、飛騨蔬菜出荷組合ほうれんそう部会の若手生産者の多さや後継ぎが多いことに気付かされる。日本一のほうれんそう産地の飛騨地域も、人口減少や高齢化による労働力不足の課題を抱えており、若菜会が中心となってスマート農業技術の導入などに積極的にチャレンジし、さらに産地を発展させていきたい」と話す。
5 “ひだのほうちゃん”とセブン-イレブン・ジャパンとのコラボ商品“ほうれん草の胡麻和え”
JA全農岐阜では、毎年、量販店を対象に「売り場コンテスト」を行っている。 参加者の売り場にはJA職員も驚くようなすばらしい創作展示がある(写真7)。 商品の包装や売り場に飾られたポスターには飛騨ほうれんそうのイメージキャラクター「ひだのほうちゃん」が表示されている。 チャームポイントは赤くて丸い頬で、口が「ひだ」の「ひ」になっているかわいらしいキャラクターであり、販売促進活動に大活躍している。 飛騨ほうれんそうと株式会社セブン-イレブン・ジャパンのコラボ惣菜企画として「ほうれん草の胡麻和え(飛騨ほうれんそう使用)」を開発し、5月20日から6月30日の期間限定で、中京圏を中心とした地域のセブンイレブン店舗限定で販売されている(写真8)。
6 栄養満点の飛騨ほうれんそうを食べて暑い夏に負けない健康な身体づくりを!
緑色の野菜の代表格であるほうれんそうは、栄養価が高く、「緑黄色野菜の王様」と呼ばれている。 ほうれんそうは、カリウム、βカロテン、鉄を多く含み、体内の過剰な活性酸素を除去し、免疫機能を高める働きや、高血圧、貧血の予防に効果的である。 ほうれんそうの優れた点は、βカロテンをはじめとするビタミン類に加えて、カルシウム・鉄などミネラルも豊富に含んでいることである。
ほうれんそうは、おひたし、炒め物、和え物、スープなど、どんな調理法にも合い、1年を通じて栄養満点の食卓づくりにかかせない食材である。 肉厚で甘くて柔らかい栄養満点の“飛騨ほうれんそう“をおいしくいただいて暑い夏に負けない健康な身体をつくりましょう。
甘さ・コク・香り豊かな新潟のえだまめを“いっぺこと”食べて暑い夏を乗り切ろう!
~日本一の“えだまめ王国新潟”~
1 日本一の“えだまめ王国新潟”
新潟県は、米どころとして知られているが、日本一のえだまめ産地である。えだまめの作付面積は全国1位だが、出荷量は7位(表1)である。これは、新潟のえだまめがあまりにおいしくて家族、親戚、友人たちで食べてしまうからといわれている。茹でたてのえだまめをザルにあげたときに立ち上がる甘い香りの湯気は食欲を刺激する。甘くてコクがあり香り豊かな新潟のえだまめはビールなどのお供に最高である。新潟市は政令指定都市の中でえだまめ(えだまめなどのさやのある豆)の購入量が日本一である。生産量、消費量とも多い新潟県は日本有数の“えだまめ王国”である。
2 甘さ・コク・香り豊かな新潟のえだまめ ~早朝収穫し鮮度を保持したままで店舗へ~
えだまめは未成熟な大豆であり、えだまめ専用の品種を選び、えだまめ用として栽培している。大豆が開花後60日程度で収穫するのに対し、えだまめは開花後30~40日で収穫する。えだまめのうち、さやに生えた毛の色と豆の粒を覆う薄皮が茶色のものを“茶豆”という。えだまめが出荷される5~10月の新潟県の日照時間の合計は、1002時間と東京の874時間より長い。日照時間が長いと養分が蓄積されてうま味が増し、最もえだまめが成長する時期にたっぷり日光を浴びて育つ。えだまめは、収穫適期が短く、収穫後はすぐに食味が落ちてしまう。このため、生産者は、収穫期は朝早くから畑に出て収穫し、さやもぎ、洗浄、選別を行って午前中に選果場に持ち込む。選果場ではえだまめを1~2度の冷水で洗い、冷蔵庫で品温を下げ、保冷状態のまま店舗に輸送する。甘くてコクがあり香り豊かな新潟のえだまめは、日照時間が長い新潟の土地条件と生産者の努力のたまものである(写真1)。新潟みらい農業協同組合(以下「JA新潟みらい」という)のしろねえだまめ部会では、おいしいえだまめをつくるため、廃棄するキノコの菌床を堆肥に混ぜたり、卵の殻が含まれた肥料を畑にまくなどの創意工夫を重ねているが、部会長の佐藤和人さんは、「新潟市南区旧白根地区の“しろねのえだまめ”は、長い日照時間と信濃川と中ノ口川に挟まれた肥沃な土地で育まれるため、とても甘味が強く香り豊かでおいしい。一粒一粒にうま味が凝縮されていると自信を持っています。“しろねのえだまめ”の出荷のピークは7月中旬~8月末。ぜひこの時期に旬の“しろねのえだまめ”を味わってみてください」と話す(写真2、3)。
3 約40の品種をつないで5~10月に“えだまめリレー”
新潟のえだまめは、5~10月までの期間、途切れることなく約40のさまざまな品種をリレーして出荷している。品種系統や特性によって大別すると、時期によって栽培できる品種が異なり、「新潟えだまめ」「新潟茶豆」「新潟あま茶豆」の3つに分類される。5月中旬から最初に出荷が始まるのは、新潟えだまめ極早生のフレッシュで爽やかな甘みのある「弥彦むすめ」である。6月下旬からはスタンダートな味わいの新潟えだまめ早生の「初だるま」「湯あがり娘」などの品種が出回る。これらの品種はまだ霜が降りる寒いころから作付けが始まる。トンネルやマルチでの栽培だが、北陸地方では春先に強風が吹くことが多く、生産者は被覆がはがれないように苦心している。7月中旬からは口の中で甘みや香りが広がる生産者も一押しの新潟茶豆である「新潟系14号」「茶香り」「くろさき茶豆」などが楽しめる。「くろさき茶豆」は、7月下旬から8月上旬に新潟市西区旧黒埼地区などで生産されており、栽培が難しい品種だがサクッとした歯応えと口の中に広がる優雅な甘みと芳醇な香りが特徴で、国による地理的表示(GI)制度に登録されている。8月中旬からは大粒でコク甘な「新潟あま茶豆」が味わえ、9月中旬から10月中旬に出荷される晩生の「肴豆」「秘伝」などでシーズンが締めくくられる。茶豆は、8割程度の実入りのうちにそのうま味成分であるアミノ酸や糖がピークを迎え、その時期に収穫している。品種が違えば味も違う。品種それぞれの一番おいしい時期に収穫し、時期によってさまざまな品種の味を楽しめることも新潟のえだまめの醍醐味である(図1)。
4 新選果場と鮮度保持フィルム袋でより鮮度の高い“しろねのえだまめ”を食卓へ
新潟市南区旧白根地区は、作付面積70ヘクタール、出荷量約300トンを予定する県内2位(令和2年)のえだまめ産地である。新潟平野のほぼ中央に位置し、信濃川と中ノ口川の2本の川によって運ばれた堆積土を有する肥沃な田園地帯で、中ノ口川を挟んで対岸にある白根地区と味方地区の間で行われる“凧合戦”が有名である。
JA新潟みらいは、2020年にしろね野菜流通センターの敷地内に「しろねえだまめ選果施設」を建設した(写真4)。生産者が収穫したえだまめを選果場に持ち込むと、冷蔵庫で品温を下げ、コンピューターが色や形によって青果用と加工用に選別し、冷水での洗浄・脱水・袋詰めまでの作業を行い、保冷状態のままで出荷される。この選果場のおかげで以前は手作業で行っていた選別から袋詰めの作業を自動化できたことで、鮮度を落とさずに出荷できるようになり、生産者の選果作業が大幅に軽減された。また、JA新潟みらいでは、ハーベスターなどの農業機械のレンタル支援を開始しており、同支援制度を活用している11人のうち5人は昨年からえだまめ栽培に新規参入した生産者である。
以前は料亭や居酒屋向けに枝付きでも出荷していたが、今はすべてさやのみの袋詰め出荷となっている。包装袋はP-プラス®という特殊な機能を持つフィルム製品を採用している。この袋には包装する野菜に合わせた目に見えないミクロの穴が開いており、えだまめの呼吸をコントロールすることで鮮度を保持している(写真5)。新潟のえだまめは、新潟県内だけでなく東京都内のスーパーなどにも並ぶ。現在は新型コロナ禍で中止しているが、毎年JAや生産者代表がスーパーや大田市場を訪問し、市場関係者や消費者の方々に直接試食と販売促進活動を行っている(写真6)。
5 甘さ・コク・香り豊かな新潟のえだまめを“いっぺこと”食べて暑い夏を乗り切ろう!
えだまめは、豆と野菜の両方の栄養を含む。大豆は「畑の肉」と呼ばれるほど栄養価が高く、たんぱく質のほか、カルシウム、ビタミン、食物繊維、鉄、カリウムなどの栄養成分を豊富に含んでいる。また、葉物野菜に比べビタミンB1やビタミンB2を多く含んでおり、手軽に食べられる野菜として、夏バテ防止や疲労回復に効果的である。えだまめは購入したらすぐに茹でるのがおすすめだが、新潟では、塩を入れたお湯で茹でて、ザルにあけて塩を振り、うちわなどで粗熱を取ってザルのまま大盛で食卓にあがったものを皆で食べる。水をかけて冷ますのは風味を損なうので避けたい。新潟地方の方言で「たくさん、多く」のことを「いっぺこと」と言う。全国一多く作付けされたえだまめは、家族、親戚、友人たちと一緒に「いっぺこと」食べてしまうくらいおいしい。甘さ・コク・香り豊かな新潟のえだまめを“いっぺこと”食べて暑い夏を乗り切りましょう!
「ほうれんそうの簡単白あえ」
「えだまめとたらこの卵焼き」
6.奥の空いたところに油を少々塗り、卵焼き器の手前を持ち上げるようにして、卵を滑らせて奥へ送る。
7.手前の空いたところにさらに油を塗り、残りの卵液を流し入れ、奥の卵焼きの下を軽く持ち上げるようにして、下にも卵液を行き渡らせる。
8.気泡が出てきたら、箸で軽く叩くようにして潰し、流した卵液の表面が少し乾いたら、ゴムべらを使って、奥から手前に折り畳む。卵焼き器の角に押しつけて全体に形を整え、取り出す。
9.粗熱を取り、食べやすい大きさに切り分けて器に盛る。
レシピ作成者:高松 京子