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【特集】国際果実野菜年2021~野菜プラス一皿で健康な生活を~ 野菜情報 2021年8月号

食を通じて社会課題の解決に取り組む ~『トマトの会社』から『野菜の会社』へ~

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カゴメ株式会社 代表取締役社長 山口 聡 氏
山口
 2021年の国際果実野菜年には、地球規模での持続可能な農業食料システムの構築に向けた活動や、果実や野菜が人間の健康に貢献する重要な役割について、人々の意識を高める機会となることが期待されている。
 
 トマト加工食品のイメージが強いカゴメ株式会社は、2016年に「トマトの会社」から「野菜の会社」となるビジョンを掲げ、これまで培ってきたトマトや健康に関する知見を生かしてさまざまな社会課題の解決に取り組んできた。国際果実野菜年の目的とも共通するカゴメ株式会社の取り組みについて、代表取締役社長 山口 聡 氏にお話を伺った。

健康寿命の延伸について

Q トマト加工食品のイメージが定着し歴史もある貴社が、「トマトの会社」から新たに「野菜の会社」となることを目標に掲げたのはなぜでしょうか。
A 当社は創業以来、皆さまの健康的で豊かな食生活に貢献したいと考え、「自然を、おいしく、楽しく。KAGOME」を皆さまとのお約束として、トマトをはじめとするさまざまな野菜や果実などの自然のめぐみを活かした商品や食育活動を通して、人々の健康に貢献してまいりました。
 
 2025年のありたい姿を、「食を通じて社会課題の解決に取り組み、持続的に成長できる強い企業」としております。とりわけ当社が取り組むべき課題は「健康寿命の延伸」「農業振興・地方創生」「世界の食糧問題」だと考えておりますが、なかでも「健康寿命の延伸」に貢献するために、生活者一人ひとりの野菜摂取量を増やすことが鍵となります。厚生労働省が推奨する、生活習慣病予防のために必要な1日の野菜摂取量は350グラムですが、現状は約290グラムであり、あと60グラムほど足りていません。この状況は10年間継続しております。野菜の摂取量を増やすためには、トマトだけでなく、野菜全般をもっと摂取してもらうことが重要です。トマトから野菜へ、事業の領域を広げることは、健康課題の解決と当社の成長フィールドの拡大、両方の実現につながると考えています。
 
Q 「野菜の会社」となるために行っている具体的な取り組みを教えてください。
A 2020年1月から「野菜をとろうキャンペーン」を全社一丸となって展開しております(写真1)。1日350グラムの野菜摂取が必要であると理解している人は少なく、また、多くの方が「自分は野菜不足ではない」と答えるものの、実際の食生活を調べてみると足りていない、ということがアンケート調査から明らかになっています。そこで、『野菜をとろう あと60g』のスローガンのもと、野菜の大切さや野菜の効率的な上手な摂り方を伝え、皆さまの行動変容を促進するさまざまな活動を行っています。当社は、野菜を生鮮、冷凍、飲料、調味料、スープといったさまざまな形態で提供しているからこそ、手軽で多様な野菜の摂り方を提案することができます。また、「野菜をとろうキャンペーン」の活動趣旨に賛同くださった19の異業種の企業・団体の皆様と共同で、野菜の魅力を伝える活動「野菜摂取推進プロジェクト」を多面的に展開しております。

写1

Q 「野菜をとろうキャンペーン」による野菜の需要喚起の取り組みを進めていく上での、国際果実野菜年の意義をご教示願います。
A カゴメは、国際果実野菜年の「野菜・果実を多用したバランスの取れた健康的な食事・ライフスタイルの促進、および持続可能な食料システムへの貢献」という主旨に深く賛同しております。野菜の消費拡大による健康への貢献と農業振興、これはカゴメが創業時から脈々と継続してきた活動であります。その結果、日本で供給される緑黄色野菜の17.3%を当社が供給しております。
 
 特に、国際果実野菜年である2021年は、テレビCMや新聞広告、WEB、店頭などを通じて、『野菜をとろう あと60g』や簡単で楽しいレシピ、野菜摂取のメリットなどを大々的に発信しております。事業者の立場から、国際果実野菜年を最大限盛り上げていきたいと考えております。
 
 また、野菜摂取量を増やすためには、野菜が足りているかどうかを自覚頂くことが重要であると考え、ドイツの企業と共同で野菜摂取量推定機「ベジチェック」を開発しました。この機器を使えば、その場で数十秒のうちに、野菜摂取の充足度が把握できます。企業や自治体の健康支援ツールとして幅広くご活用頂いております(写真2)。

写2

農業食料システムについて

Q トマトの加工・販売だけでなく、種苗開発、土壌管理、生産者の支援も行うのはどのような考えからでしょうか。
A 当社の創業は1899年、農業を営んでいた創業者蟹江一太郎がトマト栽培に着手し、その発芽をみた日にはじまります。カゴメが国内外で農業・生産の領域にも着手しているのは、創業者が農家出身であること、そのDNAを受け継いでいることが大きく関わっています。カゴメが保有するトマトの遺伝資源は約7500種、その種子から、土づくり、栽培、収穫、製造、そして最終商品に至るまで、ワンストップで価値を創造しています。世界的にもユニークな垂直統合型ビジネスモデルが、カゴメの強みです(写真3)。

写3

 創業時から変わらぬ「畑は第一の工場」との哲学のもと、国産トマトジュースの原料となるトマトに関して、指定品種の栽培を契約農家に委託し、国内生産拡大を進めてきました。契約栽培では、作付け前に農家と全量買い入れの契約を結び、その後フィールドマンと呼ばれる担当者が畑を巡回し、きめ細かな栽培指導を行っています。契約栽培を行うことで価格変動の不安がなくなり、高品質の原料を作ることに専念いただけます。同時に、高齢化する日本の農家において、経験の浅い若手農家の育成にもつながります。また、農業機器メーカーと共同で加工用トマト収穫機を開発するなど、農家の負担を軽減し効率化を図る取り組みも行っております。
 
 1998年より本格的にスタートした生鮮トマト事業では、温室内の温度や湿度、潅水などをコンピューターで自動制御した大型ハイテク菜園を全国で展開しています。単位面積あたりの収穫量の最大化と共にクリーンエネルギーの活用、CO2削減対策、節水、生態系への配慮など、環境にやさしいトマト栽培を実現しています。
 
 
Q 国内外のパートナーと行っているビジネスモデルの例を教えてください。また、そこでの目的や目標はどのようなものでしょうか。
A 新たな取り組みとして、2021年1月に、北海道でたまねぎを加工・販売する合弁会社「そうべつアグリフーズ株式会社」を、現地の農業生産法人「ミナミアグリシステム」と共に設立しました。たまねぎはさまざまなメニューで使われる汎用性が高い野菜です。昨今の中食・外食産業の現場における深刻な人手不足から、調理の手間や時間を削減できる「オニオンソテー」などの加工品の需要も高まっております。たまねぎの貯蔵庫や加工場は洞爺湖近くの廃校になった中学校の校舎や敷地を活用しています。たまねぎも地元の農家から調達するので、農業の6次産業化につながります。雇用創出などの地域活性化、農業振興などの社会課題解決にも貢献できると考えております。
 
 地域に根差した取り組みとして、全国の自治体などと協定を結び、地元の農産物を使用した商品の展開やレシピの共同開発、食育やトマトの栽培指導など、地域の農業振興や健康づくりを積極的に推進しています。「野菜生活100」季節限定シリーズも、その活動の一環です。また、当社の通販事業において、地方に眠る特色ある果実や野菜を、当社の通信販売事業「健康直送便」でお届けするビジネス「農園応援」を展開しています。地域生産者と日本の消費者をつなぐことで、地域農業活性化に貢献したいと考えております。
 
 一方、海外での取り組みとして、ポルトガルで、農業ICTプラットフォームとAI(人工知能)を活用した営農支援事業をNECと共同で開始しています(写真4)。人工衛星やドローンにより撮影した画像や、気象環境・土壌環境の測定用センサーから収集したデータを基に、水や肥料の最適な投入量と時期を提示します。ポルトガルの圃場(ほじょう)での実証実験では、窒素肥料の投入量を一般的な量より20%程抑えつつ、1ヘクタール当たりの平均収量が約3割増加しました。顧客は主に欧米のトマト一次加工メーカーですが、日本国内での展開も視野に入れています。

写4

農業振興について

Q 長野県富士見町にある体験型野菜テーマパークについて、開園の背景や運営の目的、詳しい施設の内容やサービスについて教えてください。
A 2019年4月、「農業・ものづくり・観光」が一体化した体験型「野菜のテーマパーク」をコンセプトに、「カゴメ  野菜生活ファーム富士見」を長野県諏訪郡富士見町に開業しました(写真5)。1968年に操業を開始したカゴメ富士見工場に隣接する、約10ヘクタールの休耕地を有効活用しております。八ヶ岳の雄大な自然を背景に、野菜と豊かにふれあいながら農業や食、地域の魅力を体験できる施設です。2019年は県内外から3万人を超える方々に来場いただきました。野菜の収穫体験(写真6)、生物多様性が学べるクイズラリー、工場見学(現在はVR映像を使ったプチガイドツアーを実施)、地元の野菜や食材が楽しめるレストラン、地域の特産品やオリジナルグッズを販売するショップの他、夏には地域の方々と一緒に種を植えて育てた「ひまわり畑の迷路」もお楽しみいただけます。また、隣接する「八ヶ岳みらい菜園」では、温室で生鮮トマトを栽培・出荷しておりますが、カゴメ富士見工場の排CO2、排温水を利用しており、環境に配慮した農業を実現しております。「野菜生活ファーム富士見」は、持続可能な農業や地方創生にも貢献しており、SDGsの考え方に根差した施設です。

写5

持続可能な開発目標(SDGs)

Q 畑(農業)から食卓まで携わっている貴社は、生産から販売までのすべての場面でSDGsに貢献していることと思いますが、持続可能な成長のため、貴社独自で取り組まれている(向き合われている)ことがあれば教えてください。
A 当社は自然の恵みを生かした商品で人々の健康に貢献したいと願っており、そのためには、高品質な原料の安定的な調達が必要不可欠であり、自然環境の保全は、当社にとって優先度の高い重要な課題です。現在、植物性由来素材やリサイクル素材のプラスチックの利用を推進したり、一部の紙容器飲料に紙ストローを採用したりすることで、環境負荷の低減に取り組んでおります。
 
 また、2021年9月に国連食料システムサミットが開催されますが、持続可能な食糧システムの実現に向けたコミットメントとして、以下を掲げております。
 
1.野菜を摂ることの大切さや上手な野菜の摂り方の普及に努め、健康的な食生活に貢献します。
  本活動により野菜摂取の需要を高めることで、農業振興・地方創生に貢献します。
2.環境に優しい事業活動を推進します。
 (1)CO2排出量を2030年までに20%削減、2050年までに50%削減します(2016年対比)。
  ※現在SBT(Science Based Targets)1.5℃水準に対応した更に高い削減目標への見直しを進めております
 (2)飲料ペットボトルは2030年までに、樹脂使用量全体の50%以上を、リサイクル素材又は植物由来素材とします。
 (3)紙容器飲料は2030年までに、石油由来素材のストローの使用をゼロとし、資源循環可能な素材(植物由来素材や紙素材)へ置き換えます。
  (4)日本国内食品廃棄量を2030年までに50%削減します(2018年対比)。
(カゴメ統合報告書https://www.kagome.co.jp/library/company/ir/data/integratedreport/2020/pdf/report_1.pdf
 
 当社は、2020年10月1日に、子ども食堂の活動を支援することを目的に、一般財団法人カゴメみらいやさい財団を設立しました。当財団は、子ども食堂が継続的に活動を行う上で必要となる食材の調達費や施設の維持費などを助成しています。現在の子どもを取り巻く食環境においては、貧困による栄養バランスの悪化や孤食による家族・地域とのつながりの希薄化といった社会課題が深刻化しております。当財団はこの課題の解決に向けて、共助の精神をもって取り組んでまいります。

コロナ禍での取り組みについて

Q コロナ禍で人々の生活や意識にさまざまな変化が起きた中、貴社の「ニューノーマルで生まれた新野菜生活様式」と題した野菜定点調査 2020を大変興味深く読ませていただきました。これらについて「野菜の会社」として感じたことや消費者に訴求したいことなどお聞かせください。
A 2020年12月に全国の男女4860名に「野菜定点調査2020」としてアンケートを実施したところ、ニューノーマル下において、約7割もの方が「健康のため、栄養を摂るために、野菜をなるべく食べるようにしている」ことが分かりました。2020年1月から「野菜をとろうキャンペーン」をスタートしましたので、コロナ禍と重なっており、キャンペーンを通じて、手軽で効率的な野菜の摂り方やメニュー提案を強化、継続していることは、こうしたニーズに少しでもお役立ちできているのではと考えております。また、コロナ禍による意識変化として、免疫力アップも生活者の大きな関心事となっております。「野菜をとろうキャンペーン」の一環として、野菜のビタミンAが免疫力を高めることについて、広告や動画を通じて広く発信しています。
 
 また、「野菜定点調査2020」では、野菜購入時の重視点として、2人に1人以上が「保管のしやすさ」、「保存期間/消費期限の長さ」を意識していることが明らかになりました。当社の野菜に関するお役立ちサイト「VEGE DAY(ベジデイ)」https://www.kagome.co.jp/vegeday/store/ では、野菜ごとの栄養、選び方、下ごしらえや調理法、育て方などに加えて、上手な保管方法や、余らせがちな野菜を無駄なく使いきるコツについても詳しくご紹介しております。「VEGE DAY(ベジデイ)」の1日の訪問者数は、2020年、緊急事態宣言が全国に拡大された最初の週末である4月19日(日)に、14万人となり、過去最高を記録しました。また、外出の頻度が減っている中で、野菜飲料が「保存できる野菜」として評価され、備蓄需要にもつながっています。
 生活者の野菜への関心・期待がますます高まっていることを実感しており、これからも野菜に関するさまざまなお役立ち情報を、テレビ、新聞、WEB、店頭などを通じて、発信し続けていきたいと考えております。
 
山口 聡(やまぐち さとし)
【略歴】
1983年 東北大学農学部卒業
同年  カゴメ株式会社入社
2010年 執行役員
2019年 取締役常務執行役員
2020年より現職



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