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調査・報告 野菜情報 2021年7月号

地理的表示(GI)保護制度 登録されたばれいしょ「今金男しゃく」 ~JA今金町ブランド構築に向けた取り組み~

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札幌事務所 石井 清栄

【要約】

 北海道の今金(いまかね)町農業協同組合(以下「JA今金町」という)は、昭和28年に同町で作付けするばれいしょを「男爵」に統一し、30年から「今金男しゃく」の名前で出荷を始めた。その後、出荷する同品種のでん粉含有率(以下「ライマン価」という)を13.5%以上にするなどのブランド構築に取り組んだ。
 こうした取り組みなどにより、今金男しゃくは令和元年9月に農林水産省(以下「農水省」という)により地理的表示(GI)保護制度(注1)に登録(以下「GI登録」という)された。JA今金町は、これを契機にさらなるブランド強化を目指して、加工品の開発や輸出にも力を入れていくなど販売戦略の拡大を図っている。

1 はじめに

 農水省では、平成19年から「知的財産戦略」(注2)を策定し、戦略的に農林水産物・食品の知的財産関連施策を推進している。
 「知的財産戦略2020」では、「わが国の農林水産物・食品の高付加価値化を図り、農山漁村における6次産業化や国際競争力による地域活性化を推進するためには、植物の新品種、技術開発の成果、デザイン(意匠)、ネーミング(商標)、現場の技術やノウハウ、地域ブランドや食文化といった知的財産を戦略的に生み出し、それを経済的価値につなげて農山漁村の所得向上を図るとともに、模倣品・海賊版からこれらを守ることが必要である。」とされている。
 JA今金町は、昭和28年に同町で作付けするばれいしょを「男爵」に統一し、30年から「今金男しゃく」の名前で出荷を始めた。出荷する同品種のライマン価を13.5%以上にするなどブランドの構築に取り組み、平成27年にはポテトチップス(加工品)の販売を始めた。令和元年9月には生産者の協力や行政の支援もあり、今金男しゃくは農水省によりGI登録された。JA今金町では、これを契機にさらなるブランド強化を目指して、新商品の開発や輸出にも力を入れていくなど販売戦略の拡大を図っている。
 本稿では、こうしたJA今金町のブランド構築に向けた取り組みやGI登録後の販売戦略などについて報告する。
 
注1:長年培われた特別な生産方法や気候・風土・土壌などの生産地の特性により、高い品質と評価を獲得するに至った産品を、知的財産として保護する制度。利点など詳細については、以下を参照  (https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/outline/attach/pdf/index-232.pdf)。
注2:令和3年4月30日現在では「知的財産戦略2025」が策定されている。詳細については、以下を参照(https://www.maff.go.jp/j/kanbo/tizai/brand/b_senryaku/)。

2 今金男しゃくのブランド化への取り組み

(1)JA今金町の地域概況、農業概況
ア 地理
 JA今金町は、北海道渡島半島北西部に位置する今金町(札幌市から約180キロメートル)を管内としている(図1)。同町は、日本屈指の清流、後志利別川に沿って、有珠山をはじめとする火山噴火で形成された水はけが良い肥沃な農地が広がっている。

図1
イ 気候
 冷涼な気候で春と秋の昼夜の寒暖差が大きい内陸性気候であり、初夏の6月から7月には「やませ」(偏東風)が吹くことが特徴的であるが、北海道の中では比較的温暖な気候である(図2)。

図2

ウ 農業概況(令和3年2月時点)
・ 総農家戸数(組合員数):286戸、うち65歳以上の経営個数(体)51%
・ 総面積:1万1000ヘクタール
・ 耕地面積:4734ヘクタール  うち1568ヘクタールが畑作・野菜うちばれいしょは約26%  (小麦:約22%、豆類:同34%、てん菜:同10%)
・ 1戸当たりの平均耕地面積:16.5ヘクタール
・ 農畜産物の販売高(令和元年度):49億円
 
エ 北海道における今金町のばれいしょ生産の位置付け
 北海道における今金町のばれいしょ生産の位置付けは表1の通り、作付面積、生産量、出荷量とも1%未満となっており、数量的にも希少と言える。

表1

(2)生産動向
ア 栽培面積
 直近10年間の栽培面積は50年以上前と比べると40%以上増加し、種子用、食用併せて350ヘクタール前後で推移している。令和2年の栽培面積は前年比1.1%減の約345ヘクタールとなった(図3)。

図3

イ 生産量および食用出荷量
 平成26年以降の生産量は50年以上前と比べると45%以上増加しており、8000トンから1万2000トンで推移している。また、食用出荷量についても、相乗的に推移している。令和2年の生産量は、前年比16.3%減の8820トン、出荷量は同22.8%減の6972トンとなった(図4)。

図4

 栽培面積や生産量はその年の天候要因に左右される。特に、生産量については、農協関係者によると天候により1000トン規模で増減してしまうとのことである。
また、今後の作付見込みについては、GI登録後の販売を受けた今後の価格動向によるとのことである。
 
(3)今金男しゃくの特徴
 今金町は上記の土壌条件や気候により、ばれいしょの生育に適している。特に、昼夜の寒暖差が大きい内陸性気候が、ライマン価の高いばれいしょの生産を可能にしている。
 一般的に、男爵品種は、粉質系のホクホクとした日本人好みの食感といった長所があり、中でも今金男しゃくは、ライマン価が13.5%以上と他の男爵品種の平均値より1割程度高い。このため、ホクホクとした食感が優れている。また、自然に溶ける舌触りが良く、外観についても皮が白く色目も美しい(写真1)。品質にばらつきも少なく、形状や外観が良いことから皮むきを行った際の歩留まりも高い。このような品質の高さから青果市場関係者からは、品質、食味ともトップクラスとの評価を受けており、市場では他産地の男爵品種に比べて2割以上高値で取り引きされている。  

写1

 ちなみに、オンライン上では、令和3年4月19日現在の今金町の農協系スーパマーケットの今金男しゃくLサイズ(120グラム以上190グラム未満)10キログラム当たりの価格は、他の4地域の男爵品種の合計の平均価格2850円を2割以上上回る3500円であった。
 一方、男爵品種は、農協関係者によると、他のばれいしょ品種に比べ「病気に弱い」「収量が少ない」「選別に時間がかかる」などの欠点もあり、生産者に負担がかかる品種でもある。
 
(4)生産者部会
 令和2年6月時点で62戸が所属し、平均年齢は52歳、このうち20代から40代の担い手世代である生産者は20人である。部会では、「今金全体の品質向上のためには、情報を共有し技術の遅れた人を作らない」ことが重要であるとし、毎月1回の部会関係者を対象とした品質向上に係る会議や、年に1度の生産者を対象とした勉強会を開催している。また、毎年6月から7月に巡回により病気の株や育ちの悪い株の抜き取りを一つ一つ手作業で行っているほか、定期的にライマン価の測定などを行っている。「早出馬鈴薯振興会(8月から9月に出荷)」などのグループもあり個別に活動も行っている(写真2)。

写2

(5)出荷時のルール
 選別時に食用ばれいしょとの混入を防ぐため、他のばれいしょ栽培同様、今金男しゃくも種子用(種子用生産者と原種生産者)と食用を栽培する生産者に分ける「専門栽培」が行われている。
 種子用生産者については、食用以上に徹底した栽培管理が求められ、ジャガイモウイルス病(注3)(以下「ウイルス」という)株の確認など、毎年同じ生産者が「専門職」として技術の向上に努めている。
 なお、JA今金町管内の種子用および食用の生産者数は、以下の通りである。
・ 種子用生産者:19戸
・ 原種生産者:2戸
・ 食用生産者:84戸(うち早出しばれいしょ生産者25戸)
 
注3:代表的なものは、ジャガイモYモザイク病が挙げられ、感染するとえそ症状やれん葉症状がみられる。原因となるウイルスは、アブラムシによって伝播することが知られている。
 
 こうした中で、前述の特長を守るため、同農協では以下のルールを定めている。
 
ア ライマン価基準(13.5%以上)の設定
 JA今金町は、平成6年から市場に出荷することができる今金男しゃくのライマン価の基準を13.5%以上とした。30年のライマン価の平均は15.8%(生産者の最高は18.6%、最低は13.5%)であった。農協関係者によると、20年前の生産者部会で今金男しゃくの食べ比べを行ったところ、ライマン価が「13.5%以上」のものが食感(ホクホク感)などを顕著に出すことができたとのことである。
 
イ 種子ばれいしょの全量毎年更新
 原々種を農水省の種畜管理センターから仕入れ、原種を上記の原種生産者で育成し、種子用生産者が生産した無病(ウイルスフリー)の種子ばれいしょを用いることにより、毎年全量を更新する。
 
ウ 厳格な選別
 まず、選果場出荷前に生産者が自ら形や大きさなどの選別を行う。生食用の場合、この段階で4割近くが除外される。農協関係者によると、生産者段階でこのような厳しい選別を行う事例は、全国でJA今金町しかないのではないかとのことである。
 次に、選果場での選別では、数十人の熟練のパート職員が3段階で少しでも形が悪いものや傷が入っているものを選果ライン(ベルトコンベヤー)から手作業で除外する。また、ライン上で精密カメラが形や大きさを区別し、赤外線センサーがばれいしょの芯に空洞がないかを確認して選別する(写真3)。

写3

エ 全作付け圃場(ほじょう)検査
 生産者は次年度ばれいしょを作付けする圃場の土を調べ、ジャガイモシストセンチュウ(以下「センチュウ」という)が発生していないか検査を行う。また、収穫前にも生産者部会全体で各作付け圃場の巡回を行う。
 さらに、種子ばれいしょについてはウイルス株の確認を毎日行うほか、年3回の防疫検査に合格したばれいしょのみを種子ばれいしょとして使用している。
 
オ 徹底した風乾貯蔵
 出荷する前に生産者は必ず1週間程度の風乾貯蔵(冷暗所での貯蔵)を行い、JA今金町に出荷された後にも5日間以上の風乾貯蔵を行うことで皮むけや傷を防止し、収穫後の品質保持に努めている。
 なお、出荷後も頻繁に市場やスーパーに足を運び今金男しゃくの品質を直接確認しているほか、出荷基準を満たした証明シールを箱に入れるなど産地証明にも力を入れている。
 
(6)ライマン価基準達成のための取り組み
ア 土壌作り
 今金町は前述の通り、もともと肥沃な土地であるが畜産や稲作なども盛んであることから、各生産者が耕畜連携により、より肥沃な土壌作りに取り組んでいる。ばれいしょの収穫前に土壌検査を実施しており、施肥する前の状況を把握し、その土に合った肥料構成を考え散布している。また、収穫後(10月頃)に、土壌の侵食・流亡の防止を兼ね緑肥を播いたり、堆肥をすき込むことによって土壌作りを行っている。
 また、生産者は必ず麦、大豆、てん菜などの4年輪作が義務付けられており、センチュウの増殖や侵入を防ぐなど、ばれいしょに適応した環境を維持している。
イ 収穫までの待機
 生産者はライマン価が13.5%以上になるまで収穫適期からプラス1週間程度収穫を待つ。農協関係者によると、生産者はばれいしょのみではなく、稲作、ばれいしょ以外の畑作、畜産など幅広く営農しており、各種農作物の出荷繁忙期にあって作業を効率的に進める必要がある中で、「待つ」という作業は、他の農作物の作業にも影響することから、大変に辛い作業とのことである。
 
(7)GI登録(令和元年9月)までの取り組み
ア 歴史
 今金男しゃくのこれまでの主な歴史は、以下の通りである。
 
・ 明治24年:今金町でばれいしょの作付けを開始
・ 昭和28年:「男爵」が北海道における優秀品種に選定された事を契機に作付けするばれいしょを「男爵」のみに統一
・ 30年:均一な品質のものが出荷可能となった事から「今金男しゃく」の名前で出荷を開始
・ 42年:種子用生産者と食用生産者を区別
・ 平成17年:特許庁の「商標(マーク)」に登録
・ 27年:国内大手ポテトチップス製造業者から「今金男しゃく ポテトチップス」を販売
・ 30年3月:特許庁の「地域団体商標」(注4)に登録
・ 同年5月:GI保護制度の申請書提出
・ 令和元年9月:農水省のGI保護制度に登録(登録番号第86号)
 
注4:どちらも産品の名称を保護するものであるが、地域団体商標制度とGI制度の違いについては、注1のHPを参照
 
イ 登録を目指した理由
 農協関係者によると、アの歴史の通り、今金男しゃくは先人の生産者が築き上げたこれまでの歴史の上に成り立ち、現在もその思いが若い生産者達に受け継がれている。こうした中、登録を目指した理由は、今金男しゃく生産者が出荷に当たって取り組んでいること(当たり前に行っていること)がいかに優れたことなのかをGI登録を通じて消費者に伝えたかったためとのことである。
 
ウ 登録までに苦労した点
 今金男しゃくの出荷基準などを裏付ける資料やそれに係る栽培の歴史資料などの収集とそれらの整理に時間を要した。前述のように、なぜライマン価の基準を「13.5%以上」としたのかを裏付けるため、20年前の生産者部会の資料までさかのぼって確認する必要などがあった。
 
エ GI登録の利点
 他の男爵品種と差別化されるなどの利点と併せて、組合としての最大の利点は生産者による今金男しゃくの保存や選別方法など、地元では当たり前の作業が国(農水省)から評価されたことにある。これにより、生産者に同品種の価値を再認識してもらい、生産意欲の向上につながった。
 
オ 今金町の対応
 今金町にはGI登録後、町の庁舎にGI登録ののぼり(写真4)を掲げてもらったりするなど、今金男しゃくの周知活動のほか、各地での販売促進活動において、多大な協力を受けている。
 また、「ジャガイモシストセンチュウ対策協議会」の設置なども行ってもらっている。

写4

(8)GI登録後の効果について
 農協関係者によると、GI登録後、10社以上の新聞やテレビに取り上げられたことにより認知度が増し、地元農協系のスーパーに注文が殺到したとのことである。

3 今後の展望

(1)販売戦略
ア 生食用販売
 生食用は9割が首都圏に出荷され、一部高級スーパーなどで販売されている。出荷数量に限りがあるため、関西圏には一部のスーパーなどに限定して販売されている。また、GI登録を契機に札幌の一部スーパーにも出荷を始めており、現在販売は好調とのことである。
 
イ 加工品販売
 平成27年にオンライン上で国内大手ポテトチップス製造業者から1000箱限定で「今金男しゃくポテトチップス」を販売したところ、SNS上で今金男しゃくの評判が広まったことなどから好調で、その後店舗販売も始まった。農協関係者によると、SNSの波及効果により、生食用への関心の拡大にもつながったとのことである。
 販売はJA今金町と前述の製造業者の販売促進活動により依然として好調である。令和2年度は、GI登録の効果や新型コロナウイルス感染拡大の影響による巣ごもり需要もあって、同町の農協系スーパーでは、1万箱(6万袋)を完売した。また、製造業者のオンライン販売でも既に完売となっている。農協関係者によると、令和3年度も依然として好調な販売が続く見込みであるとしている。
 
ウ 販売促進活動
 このような中で、JA今金町では以下の販売促進活動などを行っている。
・ 都内や札幌市内の大手百貨店への出展など
・ 国道沿いの大型看板掲示
・ 東京モノレール内のポスター展示
 同農協青年部は、平成30年11月にSNSを活用し、リレー方式でサッカーJ1・北海道コンサドーレ札幌の選手に今金男しゃくを宣伝するためのオリジナルジャージー「芋ジャー」を届けるなどの活動を行っている。また、56人からなる女性部会は、現在今金男しゃくを主食材にした初のレシピ(調理法)本を作成しており、令和3年7月に完成予定である。
 
エ 新商品の開発
 JA今金町では黒毛和牛の生産にも力を入れていることから、令和元年9月のGI登録と同時期に、「今金男しゃく黒毛和牛カレー」を販売した(写真5、6)。売れ行きは好調でこれまで1万8000食を製造した。令和2年10月からはオンライン上で良質米の生産地である同地で商品化したパックご飯「今金濃米(いまかねのうまい)」とのセット販売を開始した。現在は、有名シェフやポテトサラダ研究家などとも連携して、「今金男しゃくポテトサラダ」の開発も行っている。

写5,6

オ 輸出への取り組み
 令和3年に農水省が推進する農林水産物・食品輸出プロジェクト(GFP)に登録し、輸出に係る情報収集などに積極的に取り組んでいる。まずは、これまで数百キロの輸出実績があるシンガポールなど日本人居住者の多い国への輸出を伸ばしていきたいとしている。
 
(2)省力化への取り組み
 これまでのJA今金町の今金男しゃくのブランド化への取り組みや販売戦略については順調であるとみられるが、生産者からは今後の課題として、生産者の高齢化などにより労力がかかる今金男しゃくの作付けが困難になるとの声もある。
 この課題に対して、省力化に向けたスマート農業への取り組みを、令和2年4月から今金町の全額補助でRTK(Real Time Kinematic-GPS)(注5)基地局が設置され、運用が開始された。令和3年度からはRTK基地局を活用するための農作業機器の導入に対し、同町から5割程度を補助する事業も実施される予定である。
 
注5:GPS(全地球測位システム)の補正信号を基準局より送信することにより、受信側での誤差を数センチ程度とする測位方式、それにより、農業分野ではトラクターなど作業機を自動で運用することが可能となり、作業者の技量にとらわれることなく効率的に運用することができる。

【コラム】 今金男しゃく生産者芳賀氏

 今金男しゃくの生産者の1人である芳賀健太氏(38歳)に話を聞くことができたので紹介する(写真7)。

写7

 芳賀氏は、JA今金町管内で今金男しゃく3ヘクタール、水稲13ヘクタール、秋小麦3ヘクタール、白大豆3ヘクタールなどを作付けしている(表2)。


表2

 芳賀氏は曾祖父の代(昭和10年ごろ)から農業を営んでおり、本人で4代目となる。平成17年に後継者として就農し、28年4月に経営移譲された。就農時から水稲と畑作に力を入れ、移譲時15ヘクタールであった農地面積を25ヘクタールにまで拡大した。また、同年に今金男しゃくの全てを「秋ばれいしょ」から価格の高い「早出しばれいしょ」に切り替えた。芳賀氏は現在、前述の「早出馬鈴薯振興会」の会長である。農業従事者は本人、妻、本人の両親の他に、パート従業員5人となっている。
 なお、これら作付品目の年間売上高は約3500万円で、そのうち今金男しゃくの売り上げは3割以上を占めるとのことである。
 今金男しゃくのGI登録後は、マスコミの取材や地元農協系スーパーに注文が殺到したが、GI登録されたことにより、より品質の良い今金男しゃくを作らなければとの責務が一段と強まったとのことである。
 また、早出しばれいしょは収穫作業(拾う作業)でイモの皮がむけやすいため、手作業による重労働(その反面、イモのみずみずしさが保たれる)となることから、作業期間内の労働力軽減が毎年の課題とのことである。自分も含め、今金男しゃくの生産者は「イモ作り」に情熱を持っているので、今後は、同品種の品質を維持しつつ、作付面積を拡大していくことが目標であるとのことである。

4 おわりに

 農協関係者によると、「GI登録(ブランド化)に取り組めたのは、生産者の協力が不可欠であった。GI登録を契機に他の今金町産の農畜産物もより広く知ってもらう。ひいては、今のところ、今金町を知っている人はまだ少ないので、今金町も知ってもらう。なお、北海道には、GI登録することが可能なブランド農畜産物がまだ多数ある」とのことであった。
 JA今金町のこれまでの今金男しゃくのブランド化への取り組みについては、農水省の「知的財産戦略」を事実上、先駆けて率先して行ってきたと言えるのではないだろうか。現在築き上げられた同品種の地位は、当然の結果とも言える。もちろん、その地位確立のためには、同農協の取り組みに理解ある生産者の方々の協力が必要不可欠であった。今後の他多品目とのセット販売により他の農畜産物にもGI登録の効果が波及し、マスコミに取り上げられ同町の名前が広まることで、地域の一層の活性化につながることが望まれる。このような事例が増えれば、道内における農畜産物のGI登録への申請もさらに増えていくことだろう。そのためにも、一般消費者の方へのGIの認知度がさらに広がることが重要である。
 現在、日本政府が農林水産物の輸出拡大を積極的に進める中で、農水省および経済産業省は、令和3年4月からGI産品の輸出を促進するため、日本と経済連携協定(EPA)を締結しているタイやインドネシアなど14の国・地域への輸出手続を簡素化した。これは、今後今金男しゃくの輸出に力を入れるとしているJA今金町には追い風となるだろう。一方で、2年3月に米国から日本に対して生食用ばれいしょの輸入解禁が要請されている中で、同農協の付加価値を高めた販売戦略は、注目に値する。ばれいしょのトップ・ブランドである今金男しゃくの今後の販売戦略などの動向を引き続き注視していきたい。
 最後になりますが、大変お忙しいところ、本取材にご協力いただきましたJA今金町営農部菅原義高販売課長(現管理部管理課長兼監査室課長)、同岡野孝農業経営課係長(現金融部共済課係長)、今金男しゃく生産者芳賀健太様に厚くお礼申し上げます。
 
(参考・引用文献)
・ 生越 由美(東京理科大学 経営学研究科 教授)  「地理的表示制度(GI制度)の現状と将来のチャンス」  野菜情報 2018年12月号
・ 平石 康久「北海道における種ばれいしょの安定供給に向けた取り組み」  野菜情報 2017年2月号
・ 今金町農業協同組合HP  https://ja-imakane.or.jp/
・ 今金町HP
・ 農林水産省HP
・ 総務省HP



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