野菜業務部・野菜振興部
土づくりにこだわったシャキシャキの「惚レタス」と「野菜名人レタス」
~首都圏などへの生鮮野菜の供給基地・茨城県JA岩井の春レタス~
1 茨城県は全国一の春レタス大産地
レタスは出荷時期によって春レタス(4~5月)、夏秋レタス(6~10月)、冬レタス(11月~翌3月)に区分される。冷涼な気候を好み、夏場は長野県や群馬県など高冷地、冬場は兵庫県や香川県など温暖な地域、春先と秋は茨城県など、四季と共に産地も移行する。茨城県は、レタス全体の出荷量では長野県に次ぐ全国2位だが、春レタスは国内の35%を占める全国一の大産地である(図1)。大消費地に近い立地条件を生かし首都圏などへの新鮮なレタスの主要供給基地になっている。岩井農業協同組合(以下「JA岩井」という)は、県南西部の坂東市(旧岩井市)にあり、南側は利根川を挟んで千葉県と隣接し、東京からは50キロ圏内で、出荷翌日には新鮮なレタスを店頭に並べることができる(図2)。1年を通して穏やかな気候風土に恵まれ、野菜作りに適する。管内の青果物販売実績は、ねぎが全体の約6割、レタスが約3割である(令和2年度)。
2 土づくりにこだわったシャキシャキの「惚レタス」と「野菜名人レタス」
惚レタスは、平成6年にJAグループ茨城の統一ブランドとして誕生した。「消費者に惚れ込んでもらえるようなレタスを作りたい」という生産者の思いが込められている。JAオリジナルの有機質肥料70%の肥料「惚レタスプレミアム」を使用するほか、堆肥施用や緑肥のすき込み、土壌診断に基づく施肥設計など、土づくりに重きを置いたレタスづくりを追求している。
JA岩井の惚レタス生産は、春作(出荷時期:2~5月)と秋作(同10~12月)の年2回である。春レタスは、寒さを防ぐためビニールトンネル内で栽培され、シャキシャキのレタスに育てるため、日中の温度が20度を超えないようビニールトンネルの裾を毎日、朝夕開閉し換気する。こうして生産された惚レタスは、首都圏を中心に北海道から関西までの市場に出荷され、翌日には店頭に並ぶ。
JA岩井の独自ブランドも存在する。野菜名人レタスだ。惚レタス誕生の同じ年に、消費者の安全・安心のニーズに応えるため、減化学肥料・減農薬栽培を目標に講習を受けた生産者が研究グループを組織し、翌年から出荷を開始した。現在20人の出荷登録者は、オリジナルの有機質80%以上の肥料や土づくり資材を使用し、農薬の使用は必要最小限にしてレタスを栽培する。温度や土壌水分などに左右されやすい有機質肥料分を使いこなすには個々の研究と努力が必要となる。この賜物として、野菜名人レタスは味もおいしくしっかり仕上がり、ブランドレタスとして首都圏の百貨店などで販売される。
また、JA岩井では、15年から園芸部会の生産者に対して出荷する農産物全ての栽培履歴の記帳を義務化した。生産者は施肥や防除の実施状況をGAP(Good Agricultural Practice:農業生産工程管理)チェックリストと共に記録する。取引先からの栽培履歴の開示の求めにすぐに応じられる体制を整えて、消費者の食の安全・安心の確保に努めている。
3 新設野菜予冷センターを核にみずみずしいレタスを食卓に!
レタスは鮮度が落ちやすく、産地でのおいしさそのままに消費者へ届けるには、生産現場や流通過程での努力が欠かせない。JA岩井は、令和2年に野菜予冷センターを新設し、高い鮮度を維持したままみずみずしいレタスを消費者のもとへ届けている。
圃場では、出荷前日に収穫作業が行われる。生産者は外葉を除く際に、鮮度を保つため出荷規格より2~3枚多く残し、翌日、その葉を取り除き切り口をカットした上で、ラップ包装し箱詰め・出荷する。
生産者が野菜予冷センターに搬入したレタスは、検査後、等階級ごとにパレットに仕分けられ、真空冷却装置で5度まで急冷したあと、その日のうちに市場に出荷される。出荷ピーク時の3~4月には1日2万ケース以上を出荷し、予冷センターのスタッフは鮮度を損なうことがないよう迅速に作業を行う(写真1、2)。
レタス生産者で岩井農協園芸部検査委員長の石塚秀美さんは「新予冷センターでの一元集荷一元販売に伴い、さらなる検査の強化と品質の統一を図り、みずみずしい新鮮な惚レタスを消費者の皆さんに届けたい」と話す(写真3)。今後は、新予冷センターを核にJA岩井ブランドの販売力に磨きをかけていく方針だ。
4 JA岩井の惚レタスはピンクのハートが目印!
惚レタスは、JAグループ茨城惚レタス流通部会(JA北つくば、JA常総ひかり、JA茨城むつみ、JA岩井)で統一した専用ラップで包装されるが、JA岩井の春惚レタスはピンクのハートが目印である(写真4)。「春は、もも惚れ」を合言葉に、「もも惚れクイーン’S」をイメージキャラクターにして販促活動を展開している(図3)。市場からも好評で、今秋からは通年でこのラップを使用する。
5 ビタミンとミネラルの種類が豊富な惚レタスを食べて健康と免疫力向上を!
レタスには、骨の健康維持や止血効果があるビタミンKやナトリウムを体外に排出する作用があるカリウムのほか、風邪予防や疲労回復に効果的なビタミンB1やビタミンCなど多くの種類の栄養素が含まれている。
JA岩井の惚レタスは、土にこだわった栽培方法により、葉肉は柔らかくシャキシャキの食感が身上であるが、季節によってもそのおいしさは異なる。春レタスはビニールトンネル内で低温に耐えじっくり生育することで、葉が厚くシャキシャキが際立ち、定番のサラダに適する。一方、秋レタスは秋雨による湿潤状況下で生育し、みずみずしく、しゃぶしゃぶなど加熱調理でより旨味が引き立つ。
JAグループ茨城では、調味料メーカーと協力し、「惚レタスしゃぶしゃぶ」「丸ごとレタスのタルタルサラダ」「レタスのサンラータン風スープサラダ」などさまざまなレシピを開発し、量販店等で配布するほか、ホームページ(http://www.ib.zennoh.or.jp/amore/)で公開している。ピンクのハートを目印にJA岩井の惚レタスを手に取ったら、さまざまなレシピでレタスのおいしさを実感してほしい(写真5)。
甘くてシャキシャキした「ねり丸キャベツ」と「東京スイーツキャベツ」
~都内一の生産量を誇る練馬キャベツ~
1 都内ナンバーワンのキャベツ産地・練馬~石神井公園近くに「キャベツの碑」~
練馬区は、東京23区で世田谷区に次ぐ約72万人の人口を擁する大都市であるが、多くの農地が残され、23区内の農地の約4割が練馬区にある。練馬区では、23区にありながら市民生活と融合した農業が営まれており、令和元年には都市農業の魅力と可能性を世界に発信するため、ニューヨーク、ロンドン、ジャカルタ、ソウル、トロントの世界5都市の農業者や研究者などが参加した「世界都市農業サミット」を開催した。
練馬の農産物といえば、練馬だいこんが有名だが、昭和30年頃から度重なる干ばつや病害などで生産が衰退し、代わって生産量を増やしたのが練馬キャベツである。練馬区では住宅街にキャベツ畑が点在し、収穫期には大きく成長したキャベツ畑をみることができる。練馬キャベツは、都内全体の収穫量の約2割を占め、都内一のシェアを誇り、練馬を代表する野菜となっている(表1)。初夏と秋冬の年2回収穫期があり、甘くてシャキシャキした食感が特徴である。キャベツが練馬を代表する特産物となったことを記念して、平成10年に石神井公園近くの東京あおば農業協同組合(以下「JA東京あおば」という)石神井支店敷地内に「
甘藍(キャベツ)の碑」が建てられている(写真1)。
2 甘くてシャキシャキしたねり丸キャベツ
JA東京あおばのキャベツ農家約50人で構成する「野菜流通協議会」は、都内一の産地で育ち、安全・安心で甘くてシャキシャキした練馬キャベツをブランドとして売り出すため、区の公式キャラクター「ねり丸」(図1)を活用して「ねり丸キャベツ」と命名した。出荷用ダンボール、のぼり、ポスターなどに「ねり丸キャベツ」と記載し、卸売市場や量販店などで販促活動を展開している(写真2)。ねり丸キャベツは、7月に
播種し、10月下旬から11月に出荷する秋冬どりと、11月に播種し越冬し、5月半ばから6月に出荷する初夏どりがある。最盛期には、夜明け前から日没までキャベツの収穫、選別、箱詰め作業が続く。ねり丸キャベツは、練馬区の量販店やJA直売所などで購入することができる。地元のキャベツ農家の井口良男さんは、「なるべく化学肥料や農薬を使わずに手をかけ心を込めて育てています。甘くてシャキシャキした練馬キャベツは食べれば違いがわかるので、是非味わってみてください」と話している(写真3)。
練馬区では、練馬キャベツを身近に感じてもらい、地元農業、自然、食文化などへの理解を深めるため、年2回、「練馬産キャベツの日」として、区内全ての小中学校の給食で、当日朝に収穫した採れたてのキャベツをポトフやキャベツ入りご飯、キャベツのピリ辛漬け、オリジナル焼き菓子でケーキを模した「キャベーキ」など工夫を凝らした献立で子供達に提供している。
3 糖度約9度以上の東京スイーツキャベツ
冬の練馬区は、23区内でも農地や緑地が多いことなどから気温が下がり、キャベツの糖度が増す。JA東京あおばの野菜流通協議会のキャベツ生産者は、この地域特性を生かして、甘くてシャキシャキした食感の練馬キャベツの甘みを更に高めた高糖度キャベツが作れないかと考え、平成24年から試験栽培などを積み重ねて栽培技術を確立し、27年に東京都から甘みの強い「東京スイーツキャベツ」の認証を獲得した(図2)。東京スイーツキャベツ(写真4)は、糖度が年内出荷は8.5度以上、年明け出荷は9度以上で、裂球などがない形状の優れたキャベツのみが選別され、12月~翌2月上旬の2カ月限定で出荷される。都内の量販店などで地元東京・練馬で収穫されたばかりの採りたて高糖度キャベツとして販売されている。
4 シャキシャキでジューシーなご当地グルメ「練馬野菜ぎょうざ」
JA東京あおばは、練馬キャベツを美味しく食べられる食品でまちづくりを推進するため、平成20年に「練馬野菜ぎょうざ」を開発した(写真5)。ぎょうざのあんに固い寒玉系キャベツをふんだんに使用し、シャキシャキでジューシー食感が楽しめるよう工夫している。キャベツ以外の原材料もすべて国産のこだわり商品である。練馬野菜ぎょうざは、JA東京あおばの6カ所の直売所などで購入できる
(注)。直売所に並ぶとすぐに売れてなくなってしまうご当地グルメの人気商品となっている。
注:JA東京あおば直売所等情報
(https://www.ja-tokyoaoba.or.jp/store/)
5 ビタミンCとキャベジンが豊富な練馬キャベツを食べて健康と免疫力向上を!
キャベツには、骨の健康維持や止血に働くビタミンKのほか、風邪予防や疲労回復に効果的なビタミンC、腸内環境を改善する食物繊維が豊富に含まれている。加えて、キャベツに由来して命名されたキャベジン(ビタミンU)は、胃腸の粘膜を正常に保ち、胃腸障害を改善する働きがある。キャベツは、とんかつの付け合わせの千切り、サラダ、ぎょうざ、ロールキャベツをはじめ、鍋物、炒め物、浅漬けなどどんな料理にも向き、健康な生活に欠かせない万能野菜である。甘くシャキシャキした練馬キャベツを美味しくいただいて健康と免疫力を維持したい。