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調査・報告 野菜情報 2021年6月号

新型コロナウイルス禍における 野菜消費の変化

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野菜振興部

【ポイント】

●コロナ禍で食料消費は、外食などが大幅に減少する一方で、家庭内調理が大幅に増加。
●POS(Point of Sales、販売時点情報管理)データで野菜の購入額をみると、令和
2年2月頃から家庭内調理で使う原体のほか、カット野菜、冷凍野菜、サラダ、総菜、食材キットなどの購入額が大きく増加。
●品目別には、原体では貯蔵しやすいたまねぎ、ばれいしょ、にんじん、カット野菜ではキャベツ、たまねぎ、冷凍野菜ではブロッコリー、ほうれんそうの購入額が大きく増加。
●コロナ禍で家庭内調理需要の増加で生鮮野菜の原体購入が増加する一方で、原体購入からカット野菜・冷凍野菜購入へのシフトが更に進展。

1 近年の野菜消費の動向

(1)生鮮野菜の消費
 総務省家計調査により二人以上の世帯における一人当たり生鮮野菜(もやし、きのこを除く)の購入数量と支出金額の動向を見ると、平成22年は天候不順による購入価格の上昇により購入数量は減少、支出金額は増加となったが、24~26年は、購入価格が緩やかに上昇する中、購入数量および支出金額は緩やかに増加している。27~29年は天候不順で購入価格が高騰する中、購入数量は50キログラム前後で推移し、30年は購入価格のさらなる高騰により約50キログラムに減少した。31年(令和元年)は、購入価格が前年から下落したものの、堅調に推移したこともあり前年並みとなっている(図1)。

図1

(2)生鮮野菜の年齢階層別購入数量
 また、世帯主の年齢階層別で見ると、購入数量は加齢に従って増加しているものの、70歳以上を除き減少傾向となっている。
 加齢による経年変化を前期(平成16~20年平均)と10年後の後期(26~30年平均)で見ると、前期60歳代の購入数量は10年後の後期70歳以上になると、10年前の前期70歳代の世代と同水準の購入量まで増加している。一方、他の世代においては、加齢により増加しているものの、10年前の同じ世代の購入量を下回っている。
 直近10年間の野菜消費は、健康志向が強まる70歳代以上の階層では減少が見られないが、70歳代以外の階層では加齢により増加するものの、10年前の世代の水準を下回り、野菜全体の消費量は減少傾向となっている(図2)。

図2

(3)野菜の消費形態
 野菜の消費形態も大きく変化している。
 POSデータの1000人当たり販売金額によりカット野菜、冷凍野菜、野菜総菜の販売(購入)動向を見ると、カット野菜は平成22年の天候不順による生鮮野菜購入価格の高騰を背景に、緩やかな増加傾向から顕著な増加傾向に転じており、冷凍野菜は貯蔵性や簡便性から緩やかな増加傾向が続いており、野菜を主体とした総菜(以下野菜総菜という)は緩やかな増加傾向から30~31年(令和元年)にはほぼ横ばいに転じている(図3)。

図3

2 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による食料消費の変化

(1)食料消費
 しかしながら、令和2年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、食料の消費形態を大きく変化させ、また野菜の消費形態も変化したと推測される。
 令和2年の消費形態の変化を家計調査の二人以上の世帯における食料の一人当たり支出金額で見ると、2月最終週に政府による大規模イベントなどの自粛要請がなされ、4月に7都府県に対して発令された緊急事態宣言が全国に拡大されたが、その間においては外食が大幅に減少する一方、食料から外食を除いた純食料からさらに調理食品を除いた家庭内調理のための支出金額は大幅に増加している。単身世帯(四半期データ)においても同様に、家庭内調理のための支出金額が大幅に増加している(図4)。

図4

3 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による野菜消費の変化

(1)野菜の消費
 令和2年の生鮮野菜(もやし、きのこを除く)の消費動向を月別で見ると、二人以上の世帯では、購入数量はCOVID-19の影響が大きかった4~5月に過年度を上回り(図5)、支出金額は4月以降でほぼ過年度を上回って推移している(図6)。

図5-6

 単身世帯では、支出金額と購入頻度が第2四半期以降、過年度を上回って推移し、特に単身勤労世帯において増加している。
 コロナ禍の野菜消費は、二人以上の世帯と単身世帯の両世帯において増加しているが、特に単身勤労世帯において増加したと推察される(図7)。

図7

(2)野菜の消費形態
 POSデータの1000人当たり販売金額により、家計におけるコロナ禍におけるカット野菜、冷凍野菜、野菜総菜の販売(購入)の動向を月別に、令和2年1000人当たり販売金額から平成29~令和元年の3カ年平均の1000人当たり販売金額を差し引いた増減額で見ると、2月または3月以降は増加して推移し、特に家庭内調理で使用するカット野菜や冷凍野菜の購入が大幅に増加している(図8)。

図8
 
 また、サラダや総菜サラダのサラダ需要も同様に増加し、家庭で簡便に調理できる食材セットのキットも4月以降に炒め物用などを主体に増加している。
 家庭内調理で使用する原体、カット、冷凍だけでなく、簡便に調理ができるサラダやキット、調理済食品である総菜サラダの購入も増加している。

(3)品目別消費動向
 生鮮野菜の購入が大幅に増加した3~6月を家計調査(二人以上の世帯一人当たり)により、令和2年3~6月と平成29~31年(令和元年)3~6月の3カ年平均値の増減額で見ると、たまねぎ、キャベツ、ねぎ、ばれいしょ、にんじん、きゅうり、なす、だいこん、かぼちゃなどの購入が増加している(図9)。

図9

 他方、家計消費におけるカット野菜および冷凍野菜の購入動向をPOSにおける3~6月の1000人当たり販売金額で見ると、カット野菜ではキャベツ、ねぎ、冷凍野菜ではブロッコリー、ほうれんそうの購入が増加している(図10)。

図10

 家計におけるキャベツ、ねぎの購入増加は、原体の購入が増加するとともにカット野菜での購入も増加し、たまねぎ、ばれいしょ、にんじん、きゅうり、なす、だいこん、かぼちゃなどは原体の購入が増加したと推察される。
 冷凍の購入が増加したブロッコリー、ほうれんそうでは、従来から原体の購入から冷凍の購入にシフトしていたが(カット野菜・冷凍野菜・野菜惣菜に係る小売販売動向調査https://www.alic.go.jp/y-gy-mu/yajukyu02_000176.html#9を参照)、コロナ禍において当該品目の購入は、家計調査報告における購入数量の増減が少ないことから、原体による購入から冷凍による購入にさらにシフトしたと推察される。
 家計におけるコロナ禍の野菜購入は、従来からカットによる購入が増加していたキャベツ、ねぎはカットでの購入がさらに増加し、従来から冷凍での購入が増加していたブロッコリー、ほうれんそうも、冷凍による購入がさらに増加していると推察される。

4 中食の消費

 また、中食の消費動向を調理食品の主食的調理食品で見ると、二人以上の世帯ではほぼ前年の水準で推移し(図11)、単身世帯ではCOVID-19の影響が大きかった4~5月に減少している(図12)。単身世帯においては家庭内調理の増加により、弁当などの主食的調理食品の購入が減少し、家庭内調理が増加したと推察される。

図11-12

 また、総菜などの消費を調理食品のその他調理食品で見ると、冷凍調理食品は、二人以上の世帯では3月以降に増加傾向で推移し(図13)、単身世帯では第2四半期に急増した以降は緩やかな減少傾向で推移している(図14)。 

図13-14

 二人以上の世帯および単身世帯においては、第2四半期以降も冷凍調理食品の購入は増加傾向で推移したと推察される。
 他方、サラダは、二人以上の世帯では4~6月に前年を下回り、生鮮野菜、カット野菜、冷凍野菜の購入で家庭内調理が増加したと推察されるが、7月以降は前年並みの金額まで増加しており、サラダの需要は堅調と推察される(図15)。単身世帯では、ともに第1四半期~第3四半期は堅調に推移し第4四半期に再び増加傾向に転じている(図16)。

図15-16

 サラダ需要は、単身世帯においては堅調に推移し、二人以上の世帯では自粛要請による家庭内調理の増加で一時減少したものの再び増加傾向に転じており、二人以上の世帯および単身世帯ともに堅調と推察される。
 また、POSデータの1000人当たり販売金額により、ギョーザなどの野菜を使用した冷凍調理食品と総菜の販売動向をみると、自粛要請の影響が大きかった3~4月を中心に、総菜に比べギョーザ、春巻などの冷凍中華総菜の販売(購入)が増加している(図17)。自粛生活を背景に長期保存ができ、もう一品のおかず需要で冷凍調理食品の購入が増加したと推察される。

図17

5 今後の野菜消費

 野菜消費は、カット野菜が増加傾向、冷凍野菜がほぼ横ばいであった中、外出自粛要請のもと、原体の購入が増加するとともに調理用のカット野菜や冷凍野菜の購入が増加している。また、複数のカット野菜をパックしたサラダ、調理済食品である総菜サラダの購入も増加している。家計における野菜の消費は、家庭内調理用の購入が増加するとともに調理食品の購入も増加している。
 欧米の研究機関や青果物団体の調査によれば、都市封鎖や移動制限、レストランなどの休業により、拡大してきたフードサービス産業の需要が消失する一方、家計による生鮮野菜および冷凍野菜の購入が急増し、パンデミック収束後も家庭調理の定着により生鮮野菜の堅調な購入が継続すると予測されている。
 また、フードサービス産業による需要減少で、生鮮野菜の購入は、食品スーパーなど小売店を通じた購入が増加するとともに、インターネットによるE-businessの拡大で、ネットスーパー、デジタルコンビニ、生産者と消費者の直接取引などが拡大し、調理済食品においてはレストランによる店頭販売や宅配、客席を持たず調理・宅配に特化したゴーストキッチンなどが増加している。
 中国においても同様にE-businessが拡大する中、ネットを通じた消費者の共同購入サイト「拼多多(ピンドウドウ)」による生産者と消費者の直接取引が急拡大しており、生産、流通、消費において大きなインパクトを与えつつある。
 日本においてもほぼ同様であるが、高齢化の進展や単身世帯の増加を背景に、家計部門における野菜の消費は、カット野菜、冷凍野菜、野菜総菜による購入が今後も堅調に推移すると推察される一方、外食産業などフードサービス部門における需要は厳しい状況が継続すると推察され、COVID-19収束後の野菜の消費形態と販売経路は、新たなステージへと変化すると推測される。
 
参考資料
日本フードサービス協会 「外食産業市場動向調査」
農畜産業振興機構 「カット野菜・冷凍野菜・野菜惣菜に係る小売販売動向調査」
拼多多 「https://stories.pinduoduo-global.com/