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調査・報告 野菜情報 2021年4月号

JAあいち経済連の取り組みからみる 野菜物流の実態と効率化の課題

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名古屋大学大学院 生命農学研究科 教授 徳田 博美

【要約】

 トラック運転手の長時間労働の解消などの物流システムの効率化は、野菜産地にとって喫緊の課題となっている。JAあいち経済連では、青果物販売事業での重要課題として青果物物流最適化に取り組み始めた。取り組みの背景には、トラック運転手の長時間労働とともに積載率の低さなどもあった。取り組みは、まず多品目の野菜が生産され、集荷場数が多いJAあいち知多から着手した。JAあいち知多の実態からは、問題点として、産地での集出荷体制の非効率、不十分な事前の出荷数量把握、輸送業者など関係者間の連携不足などが摘出された。その改善に取り組み始めたが、生産者、農協、輸送業者など関係者間の合意に基づく連携と協力が重要となっている。

1 はじめに

 野菜の安定供給を支えてきた物流システムが、揺らぎ始めている。野菜輸送の大宗を占めているトラック輸送では、トラック運転手の高齢化、減少とその背景にある過重労働を是正するための労働時間規制の強化により、現在のような輸送体制を維持することは難しくなってきている。このような中で野菜産地では、共同輸送やモーダルシフトなど、輸送の効率化、トラック輸送からの転換を模索する動きが現れている。これらの動きは、輸送距離が長く、輸送手段の確保がより切実な遠隔産地を中心として取り組まれてきた。しかし、物流とは輸送のみを指すのではなく、収穫後の出荷調製、貯蔵、荷役、輸送などの総体を指している。物流の効率化は、直接的な輸送部門のみの取り組みでは限界があり、出荷調製や荷役なども含めた総合的な物流システムの見直しが必要となる。物流問題を、物流システム総体の問題としてとらえれば、遠隔産地のみでなく、近郊・中間産地も同様に解決が迫られている。
 近郊・中間産地である愛知県経済農業協同組合(以下「JAあいち経済連」という)では、野菜をはじめとする青果物の物流は深刻な状況にあるという認識から、最適な物流体制の構築に向けて、課題の抽出と解決策の検討、実行に取り組み始めた。本報告では、JAあいち経済連の取り組みを紹介し、野菜の物流システムの課題と対応方向について検討したい。

2 JAあいち経済連の取り組みの概要

(1)愛知県の野菜生産の特徴と物流上の問題点
 愛知県の野菜産出額は1125億円(2018年生産農業所得統計)で、全国第5位の野菜生産県である。愛知県の主要な生産品目は、キャベツ(246億円)、トマト(155憶円)、しそ(137億円)などが挙げられ、数多くの野菜品目が生産されている(図1)。

図1

 愛知県の野菜生産には二つの側面がある。一つは、全国の生産量の3割を占める冬キャベツに代表される全国的な広域出荷を行う大産地である。もう一つは、名古屋市を中心とした中京圏への野菜供給を担う近郊産地である。この二つの性格を持った野菜産地が混在している。
 JAあいち経済連が青果物物流問題に取り組むようになった直接的な要因は、トラック運転手確保問題である。特に労働時間に関する規制の厳格化への対応である。働き方改革を背景として厚生労働省の示す改善基準告示で、運転手の拘束時間は原則13時間/1日(最大16時間/1日(15時間超は週2日まで))とされた。運転手の拘束時間とは、運転時間のみでなく、荷の積み降ろしや荷待ち時間も含めて、実際に運転手が拘束される時間すべてが含まれる。トラック運転手の労働時間問題を運転時間のみでみれば、近郊・中間産地の愛知県はそれほど切実な問題とは意識されなかったが、荷の積み降ろしや荷待ち時間なども含めた拘束時間全体としてとらえられると、愛知県も真剣に取り組むべき課題となった。
 JAあいち経済連の青果物物流最適化の取り組みでは、まず青果物物流の実態を調べ、その問題点を摘出した。そこで提出された問題点は、第一にトラック運転手の拘束時間の長さである。労働基準法の一部改正によりトラック運転手の時間外労働の上限規制が2024年に導入されることを見据えても、その改善は急務であることが明らかになった。拘束時間の長い事例では、積み込み、荷降ろし箇所が多く、荷役作業が拘束時間を延ばしている要因の一つであった。また積み降ろし箇所数の多さとともに、複数品目の混載も荷役時間を長くする要因となっている。混載の場合、品目ごとの荷姿が異なるため、積み込みが複雑になり、手間が掛かる。さらに、品目による集荷時間に違いがあれば、荷待ち時間にも影響がある。
 第二の問題点は、積載率の低さである。実態調査では、出荷量の多い京浜向け出荷のトラックの中でも、積載率が50%に満たない事例がみられた。低積載率の事例でも、積み込み箇所は多く、複数の集荷場を回っても、荷が確保できていない実態が示されている。低積載率の要因は、元々小規模産地が多い上に、近年、生産者の高齢化、減少などによって生産量が減少していることもある。また出荷数量が事前に把握できていない場合が多く、当日にならないと出荷数量が判らないことも積載率を高められない要因となっている。低い積載率は、必要とするトラック台数を増やし、トラック運転手確保を難しくするだけでなく、輸送コストの上昇にもつながっている。

(2)JAあいち経済連の青果物物流最適化の取り組み
 このように問題点を摘出した上で、青果物物流最適化の目指す方向として、1)消費地への効率的な商品供給体制を構築し、農家所得向上を実現する、2)輸送条件(積載率、拘束時間)を改善し、農家運賃負担の上昇を抑制する、3)トータル輸送コストを低減させ、運賃負担の軽減を目指す―の3点にまとめた。その実現のために取り組むべき課題として、1)物流をまとめて積載率を高める、2)配車・運行ルートの適正化、積降し作業効率化によりドライバーの拘束時間を短縮する、3)最適な納品ルートを選択できる集出荷体制、物流網を整備する―の3点を掲げた。この課題達成のための具体的な取り組みを短期的課題、中長期的課題に分けて、表1のように整理した。

表1

 短期的課題は、個々の農協レベルで取り組む集出荷システムの効率化が中心である。前日出荷予約・配車による適正配車は、正確な出荷数量情報の事前把握が重要になる。現状では、事前に出荷数量情報が十分に把握できていないことが多く、積載容量にある程度の余裕を持たせた配車をせざるを得ない。
 集荷時間、場所の見直しと集出荷状態の改善、集荷場の集約化は、農協の集出荷体制の課題である。現状では、トラックが複数の集荷場を回って集荷することが多く、集荷場、品目によって集荷時間が異なることで、トラックの待機時間が長くなることもある。集出荷体制の変更は、トラック運転手の拘束時間の短縮につながるが、その一方で集荷場までの搬入距離の増加などで、生産者に新たな負担が生じる可能性もある。生産者も高齢化などにより厳しい状況にあることを踏まえれば、生産者の負担増にならないようにし、理解と協力を得ることが必須の要件となる。
 地域物流拠点の設置・活用は、集荷場の集約化とともに、出荷する荷をまとめる方策である。地域物流拠点は図2に示すように、各集荷場に集まった荷を持ち寄り、出荷先別に仕分けることで、トラックの積載率の向上を図るとともに、出荷トラックの1カ所積みが可能となる。生産者に新たな負担をかけないように出荷する荷をまとめるには、地域物流拠点の設置は有効な手段となる。

図2

 販売先の重点化は、市場、消費地段階まで広がった取り組みである。トラック運転手の拘束時間の削減には、出荷先での荷降ろし箇所数の削減も不可欠である。この課題では、物流コストの削減が目指されるが、その一方で販売価格にも影響する取り組みなので、販売価格への影響にも留意し、可能であれば有効なマーケティング戦略とも組み合わせて取り組むことが求められる。
 中長期的な課題には、個々の農協の範囲を超えて全県的に取り組むべき課題、市場、消費地と協力して取り組む必要のある課題が挙げられている。県域物流体制は、愛知県域全体として効率的な物流体制の構築を目指すものである。具体的には、1)広域物流拠点の設置(図3)、2)出荷情報のデータ化・集約と配車への活用、3)拠点機能活用による商品価値向上―の三つの取り組みが挙げられている。これらの取り組みは、物流のみでなく、商流においても全県的な対応が必要になると思われ、農協と経済連との緊密な連携・協力が不可欠な課題である。

図3

 消費地ストックポイントを活用した顧客納品体制は、市場、消費地まで対象を広げた取り組みである。そのため、流通関係者など広範な関係者との連携・協力が必要となる。特に消費地ストックポイントを設けるとすれば、愛知県単独よりも、他県、他産地と共同することで、年間を通じた利用率の向上も視野に入れることが望まれる。
 一貫パレチゼーションは、物流全体を通じた荷役の効率化には不可欠な課題である。しかし、一貫パレチゼーションを実現するには、ソフト、ハード、両面でそれに対応した物流システムが構築されている必要があり、その実現には整備すべき課題が多い。そのため、中長期的課題に位置付けられているが、短期的な課題に取り組む際には、中長期的には一貫パレチゼーションを実現できる物流基盤を整えていくということを視野に入れて取り組むことが求められる。

3 JAあいち知多の取り組み

 JAあいち経済連の青果物物流最適化の取り組みは、2019年度にあいち知多農業協同組合(以下「JAあいち知多」という)で先行して取り組み始めた。JAあいち知多は、知多半島の5市5町を管内とする正組合員1万6000人の広域農協である。JAあいち知多の主な青果物は、ふき、たまねぎ、キャベツ、なす、イチジク、ミカンであり、多品目が生産されている。近年、農業者の高齢化などで青果物生産量は漸減しており、2019年の青果物出荷量は1万859トンで、2010年から35%も減少している。このことも青果物物流最適化が求められる背景となっている。
 JAあいち知多は知多半島の付け根から先端まで40キロメートル近い距離があり、さらに合併前は旧農協ごとに集荷場を整備していたため、現在でも16カ所もの集荷場を抱えている(図4)。JAあいち知多での青果物物流最適化の重要な課題の一つは、集荷場の集約化も含めた集出荷体制の見直しである。表2に2019年12月20日を事例に、集荷場ごとの青果物の集荷状況を示した。全体で17品目の集荷があり、そのうちの7品目は複数の集荷場で集荷され、キャベツは5カ所の集荷場で集荷されている。集荷場別にみると、内海や武豊のように1品目のみで、数量も少ない集荷場がある。

図4

表2

 図5は同じ日のトラックの運行実態を示したものである。この日には9台のトラックが集荷に回っている。トラックの多くは、複数の集荷場から複数の品目を集荷している。多いものでは、5カ所から8品目を集荷しているトラックもある。しかし、各トラックの積載量をみると、いずれも満載には達していないようにみえる。また複数の品目を集荷している集荷場での滞在時間が2時間に及んでいる事例も散見される。多数の集荷場を回っているトラックでは、集荷を終えるだけで5時間以上を費やしているものもある。

図5

 トラックの効率的な運行を実現していく上では、解決すべき課題も多い。まず図5にもあるように、青果物輸送は輸送業者3社で行われている。この3社は、JAあいち知多に統合前の旧単協ごとに契約していた業者がそのまま引き継がれている。そのため、現在でも業者ごとに担当する集荷場が旧単協の範囲に基づいて決まっており、その範囲を超えた荷物の連携・調整は行われていない。輸送業者間での調整ができれば、積載率の向上などの効果が期待できる。
 第二にJAあいち知多から出荷される青果物の中でも、JAあいち知多が独自に分荷するものと、JAあいち経済連が分荷するものがあり、物流面でも別個に輸送業者と交渉しており、必ずしも連携がとれていない。この点も統一的な対応・調整が実現できると、物流効率化につながると考えられる。
 第三には事前に的確な出荷数量の把握ができず、実際の出荷数量に適合した集荷トラックの運行計画を立てることが難しいことである。以前は、事前の出荷予定数量の把握が十分できていなかったが、現在は各集荷場から前日に出荷予定数量を報告させ、それに基づいて配車計画を作成している。しかし、現状では出荷予定数量と実際の出荷数量に乖離がある場合がみられる。適切な配車計画を立てる上では、事前の出荷予定数量把握の精度を高めることは必須の課題である。
 さらに個別の品目ごとにも、荷役、輸送上での問題点が挙げられている。そのいくつかを挙げると、ふきでは、生産者が集荷場に持ち込んだものを直接トラックに積み込むため、集荷時間が限定される。たまねぎでは、段ボール箱とネットのものが混載になると、積み込みの人員が余計に必要となる。きゅうりでは、等階級、アイテム、注文と仕分けが大変である。さらに出荷数量の多い品目では、事前に出荷数量をつかめないこと、出荷数量が少ない品目では、その品目だけのために集荷に回らなければならないことが指摘されている。
 

4 ふきの物流システム

 野菜物流を改善・効率化していく上では、対象となる品目の物流システムの全体像とその背景にある品目の生産、流通の特性を理解しておくことが不可欠である。ここでJAあいち知多の主要品目であるふきを取り上げ、その物流の実態を紹介する。
 2019年における全国のふき収穫量9300トンのうちの3630トン、39%が愛知県で収穫されている。JAあいち経済連のふき販売の8割以上がJAあいち知多のものであり、JAあいち知多は全国一のふき産地である。JAあいち知多の青果物の多くは、愛知県内を主体とした中京圏への出荷の比率が高いが、ふきは全国一の産地として、首都圏および近畿圏への出荷が多く、広域的に出荷されている。
 ふきの作型は、大きく抑制栽培と促成栽培の二つである。抑制栽培の出荷時期は10月から翌1月までで、促成栽培の出荷時期は2月から5月である(図6)。2019年度のふき生産者数は61戸で、2008年に比べると46%減少している。生産者数の減少にともなって栽培面積、出荷数量も減少している。2019年の栽培面積は38.7ヘクタールで2008年から46%減少しており、出荷数量は1734トンで、2008年から59%も減少している。ふきの生産は労働集約的で、生産者の規模拡大は難しく、生産者数の減少はそのまま生産の減少につながっている。特に収穫、出荷調製が労働のピークであり、出荷調製作業での生産者の労働負担の軽減は、ふき生産を維持していく上でも、大きな課題となっている。

図6

 ふきの収穫から出荷調製、集荷、出荷の流れは図7に示した。ふきの収穫は朝方10時頃までに行われる。その後、生産者の作業場に持ち帰り、出荷調製作業が行われる。出荷調製作業は手間のかかる作業であり、大きな生産者では雇用労働力を導入している。ふきの出荷調製は、まず茎部を切り揃え、等階級選別が行われる。その後に規格ごとにラップで包装していく(写真1)。このラップ包装作業で雇用労働力が導入されているが、熟練性が必要であり、その人員の確保が最近は難しくなりつつある。そのため、ラップ包装と比べて手間がかからず、熟練性も要しない新たな包装方式として袋詰め(ジェットパック)の導入を進めている(写真2)。

図7

写真1

写真2

 集荷場への搬入は、収穫翌日の午前中に生産者ごとに行われる。集荷時間は集荷場ごとに異なっている。出荷のトラックが複数の集荷場を回って集荷しており、集荷場ごとのトラックの集荷時間に合わせている。最もふき生産者の多い東海集荷場の集荷時間は10:50~11:15で、次にふき生産者の多い岡田集荷場の集荷時間は11:30~12:00である。
 集荷場に持ち込まれたふきは、まず農協の担当者によって数量確認と検査が行われる。検査後、待機しているトラックに積み込まれる。生産者は指定されたトラックにふきを積んだ自分のトラックを横付けし、直接積み替える(写真3)。このような積み込み作業の方式が、物流効率化の問題点の一つとなっている。まず生産者のトラックから直接積み込むため、設定された集荷時間中トラックは集荷場に待機して、生産者のトラックを待たなければならない。第二に出荷規格別ではなく、生産者ごとにふきが積み込まれるので、出荷規格ごとに整理して積載することが難しく、手間がかかり、積載効率も落ちてしまう(写真4)。第三には物流全体を通じた荷役の効率化には、パレチゼーションが課題になるが、集荷場段階でのパレチゼーションを難しくしている。生産者が搬入してきたふきを一度、集荷場に降ろし、出荷規格別に仕分けし、それをトラックに積み込むという方式に転換することが望ましいが、集荷場のレイアウトがパレチゼーションに対応できるものになっておらず、集荷場のハード面での再整備抜きでの実施は容易でない。

写真3

写真4

 東海集荷場でふきを集荷したトラックの一部は、岡田集荷場に回ってふきを集荷する。岡田集荷場に集まるふきの数量は多くはないが、図5にも示しているように、トラックが出荷地域別になっているため、複数のトラックが岡田集荷場で集荷している。集荷拠点を設け、少量の荷しかない集荷場からは1台のトラックで集荷し、集荷拠点で出荷地域別に積み替えるというような方式に改善していくことが課題となる。

5 JAあいち知多での青果物物流最適化の取り組み

 2019年にJAあいち知多で先行的に取り組まれた青果物物流最適化の取り組みは表3のように整理できる。集荷場、品目別に取り上げられた課題は29項目である。その内容は1)集出荷体制見直し、2)集荷時間の見直し、3)集荷場所の見直し、4)販売先の見直し・集約―の四つにまとめられる。販売先の見直し・集約を除いて生産者からの集荷に関わる課題である。具体的な内容は、すでに述べている事前の出荷予定数量の収集、トラック直接積み込みから集荷場のパレットへの降ろし、品目間の集荷時間の調整などである。野菜物流の効率化には、産地から消費地までの体系的な取り組みが必要である。JAあいち知多では、産地内の関係者と輸送業者を対象とした着手しやすい課題から始めている。取り組み事項別に取り組み数をみると、出荷体制の見直しが最も多く、12項目であり、次が販売先の見直し・集約で10課題である。一方、出荷場所の見直しは、ふきに関する2項目のみである。出荷体制の見直しの項目では、事前の出荷予定数量把握、出荷数量の少ない品目での出荷曜日の集約などがある。販売先の見直し・集約では、出荷市場の集約化とともに、出荷先に応じた運賃体系の設定などが挙げられている。

表3

2 019年度の取り組みでは、なす、きゅうりでの事前の出荷予定数量の報告の実施、キャベツの集荷曜日の集約化など、具体的な対応策が実行に移された項目もあるが、対応策の具体化に向けた検討途上にあるものも多い。産地の集出荷体制に関する項目であっても、生産者や輸送業者など調整すべき関係者が多いものがあり、短期間で全体の合意が得られるような解決策に到達するのは容易でないものもある。短期的課題として取り組んでいる農協レベルの集出荷体制に関わる課題であっても、現場の関係者と協力しながら、じっくりと取り組んでいく必要がある課題が多い。
 JAあいち経済連では、2019年度のJAあいち知多の取り組みについて、一定の成果は得られたが、取り組み地域、輸送業者は限定的であったとして、知多地域および西三河地域との連携を捉えた検討が必要と総括している。その上で2020年度の重点取り組み課題を1)エリア・品目の既存輸送会社別領域を緩和した輸送連携、2)情報集約による一元配車の実施―の2点を掲げた。年度内の到達目標としては、1)出荷情報が一元集約できる手法の確立、2)管内輸送会社3社の既存領域を緩和した連携体制の確立、3)連携輸送を可能とする仕組みづくりとルールの確立―の3点を設定している。

6 JAあいち経済連の取り組みからみた野菜物流効率化の課題

 トラック運転手の不足、過重労働問題を一つの契機とする野菜物流問題は、遠隔産地のみでなく、全国あらゆる産地で放置できない問題となってきた。近郊・中間産地である愛知県においても同様であり、JAあいち経済連では、物流問題を青果物販売事業において解決すべき重点課題として、青果物物流最適化の取り組みを始めた。
 最後にJAあいち経済連の取り組みからみえてくる野菜物流効率化の課題を考えてみたい。野菜の物流は、始点が生産者であり、終点は実需者あるいは消費者であり、始点から終点までの全体を通じた最適化が課題となる。物流過程の一部分で効率化を実現できたとしても、それが他の部分での負担を増やしてしまえば、物流全体としては効率化が進展していないこともあり得る。また物流全体として最適化が図られたとしても、その効果がすべての関係者に均等に配分されるとは限らず、便益と負担の配分にアンバランスが生じてしまうことが考えられる、それを放置したままでは、そのシステムが広く受け入れられることは難しい。物流全体としての最適化とともに、物流に関わる関係者間での便益と負担の調整を図り、適正化することも、青果物物流効率化では重要な課題である。
 JAあいち経済連が掲げる青果物物流最適化の課題は、事前出荷計画による適正配車や集荷場の集約化、地域物流拠点の設置・活用など多岐にわたる。野菜物流効率化の取り組みでは、一貫パレチゼーションや、共同輸送、モーダルシフトなどがまず思い浮かぶが、それ以外にもさまざまな課題があることが示されている。
 青果物物流では、その始点である生産者は数が多く、その多くが小規模であることが大きな特徴であり、効率化を難しくしている要因になっている。生産者からのモノと情報の流れを、それ以降の物流効率化につながるようにすることが、物流効率化の第一の課題と言える。そのためには、生産者の理解と協力が不可欠である。現在、生産者の高齢化、減少が進み、生産者も厳しい状況に立たされている。特に野菜生産では、収穫、出荷調製が大きな労働ピークを形成している品目が多い。野菜物流の効率化では、生産者の出荷調製の負担軽減を図ることが、その理解と協力を得る上では大切である。
 これまで野菜物流の効率化では、遠隔地の単品大規模産地を念頭に置いて、課題と対策を検討されることが多かったと思われる。既述のように遠隔産地のみでなく、中間・近郊産地でも物流効率化は避けて通れない課題となっているが、産地の実態によって直面している課題も、その対策も異なっている。愛知県内でも、東三河地域の全国的なキャベツやブロッコリーの産地と、本報告で取り上げたJAあいち知多では、産地の実情の違いは大きく、一律的な対策で物流効率化を実現することは難しい。
 野菜物流効率化と一言で言っても、その課題は産地ごとの実情によって違っている。産地ごとの実情に応じた対策が取られなければ、物流効率化で高い効果を実現することは難しいであろう。物流システム、特にハード面のシステムでは、一度構築してしまうと、その変更は容易でないことが多い。そのため、実態を的確に把握し、慎重にシステムを設計することが求められる。JAあいち経済連では、実態調査と課題摘出から始めたが、野菜物流効率化を進める上では、まず産地の実態を認識し、それに応じた戦略を自ら立てることが重要である。