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【特 集】加工・業務用野菜生産拡大の取り組み 野菜情報 2021年3月号

全国農業協同組合連合会栃木県本部に おける冷凍野菜への取り組み ~冷凍いちごの生産を中心に~

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調査情報部 吉田 由美、菅原 由貴

【要約】

 2020年は日本における冷凍食品の生産が始まってから100年目の節目の年であった。冷凍食品は、年々、売上を拡大し続けていたが、新型コロナウイルス感染症の影響で外食産業が低迷するなか、巣ごもり需要、自宅での調理時間の拡大を追い風に需要が急増している。加えて、販売チャネルの多様化により、売れる品目にも変化が表れている。また、安全・安心を求める消費者の購買行動から、国産原料を使用した冷凍野菜が増えているのも最近の傾向である。このようななか、全国農業協同組合連合会栃木県本部では、独自の冷凍加工工場を整備し、冷凍野菜の生産に取り組んでいる。その運用実態と背景について現地調査の結果を基に報告する。

1 日本初の冷凍野菜は、いちごだった ~日本における冷凍食品の100年の歴史~

 生活様式の変化により今も発展を続ける冷凍食品だが、2020年は初めて冷凍食品が製造されてからちょうど100年を迎える年だった。
 日本で最初の冷凍食品は、1920年に北海道森町に日産10トンの水産物を凍結する能力をもつ本格的な冷蔵庫が建設されたことに始まる。それから10年後、日本初の市販冷凍野菜として大阪梅田の阪急百貨店で販売されたのが、戸畑冷蔵(現日本水産)の「イチゴシャーベー(冷凍いちご)」であった(注1)。1954年に学校給食法が制定され学校給食が始まると、給食に適した冷凍魚のフィレや冷凍コロッケ、スティック類などが採用され、その後、学校給食は急速に拡大した。これが業務用冷凍食品の発展の基礎となる。
 さらに1964年の東京オリンピックで、選手村で供給する食料が膨大で、一気に購入すると一般家庭にも影響を及ぼすという理由から冷凍食品への注目は加速する。解凍、調理法が研究され、外食産業分野での利用が始まった。
注1:参考資料1

2 冷凍野菜の輸入概況について

 冷凍野菜の輸入量は、2008年の中国産冷凍餃子の農薬混入事件などにより一時的に減少したものの、近年はおおむね増加傾向で推移し、2017年に100万トンを超えた(表1)。2020年の冷凍野菜の輸入量は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により中国からの輸入が一時的に減少したことから、前年よりも数量が減少している。昨今、輸入量の増加が著しいのはベルギー、オランダ、エクアドル、ベトナムといった国々である。品目としては、ばれいしょ、ブロッコリー、混合冷凍野菜の伸びが大きい(表2)。冷凍いちごに関しても、輸入数量が伸びており、主要輸入先である中国、米国が減っている一方で、エジプトやチリの存在感が増している(図1)。

表1

表2

図1

3 冷凍野菜の消費動向

 冷凍野菜の輸入が伸びている一方で、消費者の意識を反映し機能性表示の導入や国内産地の連携、有機冷凍野菜への企業参入など国産志向が高まっている傾向が見受けられる(表3)。COVID-19の影響で在宅時間が増えた2020年においては、内食の伸びに加えて、夏場の野菜価格の高騰もスーパーなどにおける冷凍野菜販売に拍車をかけた。買い物回数を減らす目的から、ストック需要としての冷凍野菜の特徴が見直され、いままで利用していなかった消費者にも利用が広まり、継続的な購入につながった(注2)

表3

 また、2020年4月に公表された一般社団法人日本冷凍食品協会のまとめによると、ここ数年の傾向として冷凍野菜の購入場所としてドラッグストアやコンビニエンスストアの伸びが目立ち、年代が若いほどその傾向が強くなっているとの報告がある。また、男性よりも女性のほうが冷凍野菜や冷凍果実など素材系の人気が高い傾向がみられる(注3)
注2:参考資料3
注3:参考資料4

4 栃木県におけるいちご生産

 2018年の都道府県別農業産出額をみると、栃木県は米の産出額が714億円と最も多く、次いで生乳350億円、いちご257億円となっている(図2)。いちごは1950年代後半から水田の裏作として急速に栽培が広まり、2017年には50年連続で生産量日本一を記録した。栃木県は翌年、これを記念して1月15日を「いちご王国・栃木の日」と定めている。特に、東京市場におけるシェアは他県に追随を許さず、さらなる生産拡大に力を入れている。いちごの生産を裏で支えているのが地道な品種改良である。いまや、いちごは全国各地でオリジナル品種が育種されており、“戦国時代”と称されるほど競争が激しいマーケットになっている。栃木県でも、戦略的な品種改良を進めており、夏採りが可能な四季成り、贈答用、果皮が白いタイプなどが開発されている(表4)。バラエティに富んだ日本オリジナルのいちごは、来日する観光客からも注目度が高く、アジア圏を中心に日本のいちごの認知も高まっている。

図2

表4

5 JA全農とちぎによる冷凍工場「とちぎゆめ工場」について

 栃木県を代表する農産物であるいちごであるが、さらなる生産者の収入確保、旬の時期以外でも栃木県産の農産物を楽しんでもらいたいという思いから、全国農業協同組合連合会栃木県本部(以下「JA全農とちぎ」という)では、2016年から冷凍野菜直販事業を開始し、2年後の2018年には自前のとちぎゆめ工場を操業した。冷凍野菜事業は、JA全農とちぎ営農販売企画部直販課が運営しているが、全農の県本部で冷凍工場を運営しているのは全国でもJA全農とちぎだけである。
 なお、JA全農とちぎが取り組む冷凍野菜については、冷凍食品衛生法、JA法上の冷凍食品には含まれず、生鮮食品の冷凍流通品として取り扱う。

(1)「とちぎゆめ工場」の概要
 JA全農とちぎでは、隣県の冷凍餃子工場からのオーダーに応えるため、2016年からにらの一次加工を食品加工工場に製造委託していたが、より多くの品目に対応するため、2018年3月に同工場の敷地内に品質管理機能を備えた自前の「とちぎゆめ工場」を設立することとなった(写真1)。

写真1

 野菜の加工工場で最も気を遣うのが異物混入のチェックであるが、とちぎゆめ工場には、LEDで検品する機能を試験的に運用を開始し異物混入リスク防止に備えるほか、品質管理機能として細菌検査、官能検査(形状、光沢、風味、肉質)も整備されている。機械設備としては、ブロッコリーを中心に、キャベツ、レタス、カリフラワーに対応可能な一次処理設備があり、現在は、主に冷凍前の一次処理(検品、洗浄、カットなど)を行っているが、まだ工場に余力があるため、さらに処理能力を高めていく予定である。
 工場は宇都宮駅から6キロメートル弱、東北自動車道宇都宮インターから約15分というアクセスの良いエリアにある。
 販売高は、2016年度が5300万円、2017年度は3億200万円、2018年度は6億1500万円と飛躍的に伸びている。金額が大きい品目はにら、キャベツ(チルド)、冷凍いちごであるが、近年、伸びているのが冷凍いちご果汁と冷凍アスパラガス、冷凍ねぎである(図3)。

図3

 需要に応じて品目を開発しており、ねぎやしょうがなども冷凍加工している。キャベツはチルド加工のほか、芯抜きやカットがある。2020年は、試験的にほうれんそう、ブロッコリーにも取り組み始めている。
 野菜の加工は人海戦術に頼る部分が大きいため、野菜の旬にあわせた労働力確保は大きな課題である。年間休まず機械を動かし、閑散期を作らないことが工場の経営上、最も重要なことである。しかし、工業製品と異なり野菜の加工工場の場合、その作業のピーク時期は品目や天候に大きく左右され、毎年同じとは限らない。おおよその作業のピーク時期は、ほうれんそう、ねぎは冬場、いちごは3月~5月、にらは6月~8月となっている。
 盲点になりがちなのが、匂いである。にらは非常に香りが強い野菜であるため、いちごと同じ時期の作業は避けるようにしている。年による作業時期、ピークの違いなどがあるがパート従業員数は年間平均で20~30人ほどである。

(2)加工向けの規格や品種について
 原料は、主に県内の産地から仕入れているが、いちご以外の品目については、閑散期には近隣のJAグループの協力の基、県外産地から仕入れることもある。にら、ねぎでは一部で加工向け専用の圃場(ほじょう)での栽培もあるが品種や規格は市場向けと同じである。いちごの場合は、加工向けの栽培はしておらず、やや過熟気味であったり、サイズが市場向けではない果実を加工用としてとちぎゆめ工場に出荷している。製品はそのままの形を残したBQF砂糖漬け、ダイスカット、スライスカット、果汁の製造が可能である(写真2)。最もおいしい時期のいちごを冷凍できるのは、産地ならではの強みであり、食品ロス削減にもつながっている。また、「とちおとめ」「スカイベリー」という品種を表示に使用できるため大手菓子メーカーからの引き合いが強いという(写真3)。

写真2


写真3

(3)産地から工場までの入荷方法
 とちぎゆめ工場の運営に欠かせないのが産地からの集荷を一手に引き受けているA社の存在である。業務用のタレやソース類の生産・販売を行っている創業1986年のA社は、JA全農とちぎにおけるメニュー開発などに参画するなどかねてより関係が深く、現在は業務委託契約を結び栃木県内全域の農協からとちぎゆめ工場までの原材料の運搬とパート労働力の確保を担っている。近年、トラックドライバー不足が深刻な問題になるなか、非常に大きな存在となっている(図4)。

図4

 販売先への営業、在庫と生産量の調整はJA全農とちぎ営農販売企画部直販課で行い、直接販売を事業の中心に末端顧客への営業活動を実施している。また、原料集荷に関して、価格については年間で決めているが、数量についての取り決めはない。出荷の1~2日前に各農協からJA全農とちぎに出荷予定数量の連絡が入り、基本的に全量を買い付ける。   野菜は鮮度が落ちるのが早いため、処理しきれない場合はそのまま冷凍保管して、原料の入荷量と製造ラインとの調整を行う。冷凍野菜の場合は製品の保管料などもかかるため、製造と販売のバランスを保ち、計画的に生産出荷を行うこと最大の課題である。

(4)課題と新型コロナウイルス感染症の影響
 野菜の生育は天候に左右されやすく原料の確保が不安定であること、労働力の確保が難しいこと、さらに栃木県内で夏場に収穫し、加工できる品目がないため、工場の稼働率が下がってしまうというといった課題を抱えている。また、COVID-19の拡大に伴い、外食や学校給食向けの需要が大きく減退したことから、業務用の在庫が捌けず、保管料の負担が大きくのしかかっている。しかし、栃木県は首都圏消費地に近く、近隣の野菜産地からの原料も確保できるという大きな強みがあり、国産原料を使用した冷凍野菜の市場はまだ伸びしろが大きいと考えられる。

5 まとめ

 冷凍食品の品質向上やライフスタイルの変化、そしてCOVID-19拡大による在宅時間の増加から冷凍食品の売り上げが伸びている。冷凍野菜に関しては、国産嗜好が高まっていることに加えて、ドラッグストアでの購入量が伸びているという傾向がある。とちぎゆめ工場における冷凍野菜の製造については、JA全農とちぎと農協の連携、さらに産地から工場までの原料調達を専門業者に委託することにより販売額は年々、右肩上がりに推移してきた。
 いちごは日本政府が進める農産物の輸出促進の対象品目になっており、アジア圏を中心に人気が高まっている。現在は地理的な優位性から生食用は九州産がその中心となっているのが現状だが、調理の必要がなく、自然解凍で楽しめる国産冷凍いちごはコンビニエンスストアやドラッグストアにおける購入なども視野にいれつつ、将来的には、「冷凍いちご」としての輸出も視野に入れていきたいという声も現場では聞かれた。
 COVID-19の影響で給食や外食など業務需要の回復が見込まれない一方、家庭需要向けの冷凍野菜に関してはニーズが高まっており、現状では、夏場の工場稼働率が低いという課題があるが、近隣県は野菜の産地が多く、他産地からの原料調達により生産量を伸ばしていくとのことであった。
本稿の作成にあたり、ご協力いただいたJA全農とちぎの皆様に深く感謝申し上げます。

参考資料
1:一般社団法人日本冷凍食品協会 冷食Online 「冷凍食品の歴史」
2: 食品産業新聞 2020年9月21日付 7面
3:一般社団法人日本冷凍食品協会 令和2年4月「全国の25歳以上の男女1250人に聞く“冷凍食品の利用状況”実態調査結果について」
4:一般社団法人施設園芸協会「施設と園芸」No.192 2021年冬号
5: 農畜産業振興機構「野菜情報」2020年10月号「チリにおけるいちごの生産・輸出動向」