同県が、園芸振興に乗り出した背景には、言うまでもなく主食米の需要減少がある。米価低迷の影響を受け、同県の農業産出額は減少傾向にある(図1)。それだけに、園芸振興を図り、農業産出額を伸ばしてきた近県の取り組みは、大きな発奮材料になっている。同県に先立って園芸に力を入れてきた青森県、秋田県、山形県、長野県は、農業産出額が近年、増加傾向にある。とりわけ、園芸メガ団地づくりを推進する秋田県では、えだまめの生産拡大に力をいれてきた。その結果、京浜地区の中央卸売市場のえだまめの出荷量(2019年)で、秋田県は全国トップに躍り出た。同じようにえだまめを特産品とする新潟県にとっては大いに刺激になっている。
同県がこれまで園芸をまったく振興してこなかったわけではない。同県によると、以前から、何らかの園芸振興策をとってきたという。しかし、近県と肩を並べるほどの成果を挙げるには至らず、農業産出額の品目構成をみると、稲作は59%を占める一方、園芸(野菜、果実、花きの合計)の比率は20%にとどまる(図2)。基本戦略策定の過程で、これまで講じてきた園芸振興策の成果を同県自ら検証したところ、主に次のように整理されている。
1) 園芸導入の動きがみられたものの、個々の農家の取り組みが大半であり、産地化まで至っていない。
2) すいか、ユリ(切り花)、おけさ柿など大産地が形成されている地域がある一方で、機械・施設の整備が遅れ、まとまった需要に対応できない中小産地が多い。
3) えだまめや西洋なし(ル レクチエ)は首都圏で販売が拡大しているが、後続のブランドがない。
こうした点を踏まえながら、花角英世新潟県知事や関係団体の長などで園芸振興を本格化させるための協議を重ね、2019年7月31日に公表したものが基本戦略である。最終年の2024年までに「販売額1億円以上の産地の数を倍増させる」「栽培面積1000ヘクタール増を目指す」「新たに園芸に取り組む農業者の拡大を図る」といった目標を掲げている。
新潟県農林水産部農産園芸課園芸拡大推進室の横山登室長は「具体的な数値目標を掲げた上で、園芸を振興するのは今回が初めて」と語る。