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調査・報告 (野菜情報 2020年8月号)


野菜価格安定制度と産地の取り組み(第4回)~全国一のキャベツ産地 群馬県嬬恋村の取り組み~

野菜業務部

1 はじめに

キャベツの原産地は、ヨーロッパの地中海・大西洋沿岸で、古代ギリシャ人やローマ人が食用として非結球タイプを栽培していたといわれている。日本に食用として渡来したのは、江戸時代末期で、最初は外国人居留地向けに栽培されていたが、明治末から大正時代にかけて「とんかつ」の流行につれて生食での利用が拡大した。今日では、キャベツは、生鮮野菜の中で最も購入量が多く、千切り、サラダ、鍋物、炒め物、浅漬けなど、どんな料理にも向く万能野菜である。

キャベツは、全国で栽培されており、生育適温は15~20度で比較的冷涼な気候を好み、出荷時期によって春キャベツ、夏秋キャベツ、冬キャベツに分類されるが、露地で栽培されるため天候による影響を受けやすい。かつては、巻の硬い冬系(寒玉)が流通の大半を占め、関西ではお好み焼き用等に人気があるが、近年は、サラダ、付け合わせなど生のままでも柔らかくおいしく食べられる春系の品種が好まれるようになり生産量も増加している。

4~6月の春キャベツは、千葉県銚子、神奈川県三浦、7~10月の夏秋キャベツは、群馬県嬬恋、長野県野辺山、北海道、岩手、11月~翌3月の冬キャベツは、愛知県三河、神奈川県三浦、千葉県銚子など、南から北へ、平地から高原への全国各地の産地がバトンをつないでリレー出荷し、一年を通じてキャベツを消費地に安定供給している。今回は、キャベツの需給動向、野菜指定産地の動向、全国一のキャベツの産地の群馬県嬬恋村の取り組みを紹介する。

2 キャベツの需給動向

(1)キャベツの作付面積・出荷量 ~作付面積減少の中で出荷量を維持~

平成2年産から18年産、30年産にかけてのキャベツの需給動向をみると、作付面積は、2年産4万400ヘクタール、18年産3万3000ヘクタール平成2年比8230年産3万4600ヘクタール(同86%)と、2年産から18年産にかけて18%減少したが、その後30年産にかけて4%増加しており、近年は3万3000〜3万5000ヘクタール程度で推移している。種別にみると、春キャベツ(4~6月出荷)は、2年産1万700ヘクタール、18年産8570ヘクタール同80%、30年産9040ヘクタール同84%、夏秋キャベツ(7~10月出荷)は、2年産1万3400ヘクタール、18年産1万200ヘクタール同76%、30年産1万200ヘクタール同76%、冬キャベツ(11~3月出荷)は、2年産1万6300ヘクタール、18年産1万4200ヘクタール同87%、30年産1万5400ヘクタール同94%となっており、2年産から18年産にかけてすべての種別で作付面積が減少したが、その後30年産にかけて春キャベツと冬キャベツは作付面積が増加している(表1)。

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出荷量をみると、キャベツ全体では、年産130万1000トン、18年産118万1000トン平成2年比91%)、30年産131万9000トン同101%で推移しており、作付面積が減少する中で130万トン程度を維持している。種別にみると、春キャベツは、2年産33万8000トン、18年産29万5400トン(同87%)、30年産34万600トン(同101%)、夏秋キャベツは、2年産44万6300トン、18年産37万8100トン(同85%)、30年産44万7900トン同100%、冬キャベツは、2年産51万6300トン、18年産50万8000トン(同98%)、30年産53万100トン(同103%)となっており、2年産から18年産にかけてすべての種別で減少した後、30年産にかけて回復している。30年産の種別の出荷割合は、冬キャベツ40%、夏秋キャベツ34%、春キャベツ26%となっている(表2)。

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30年産キャベツの都道府県別作付面積・出荷量を見ると、キャベツ全体の作付面積上位5県は、愛知県5340ヘクタール全国シェア15%、群馬県3860ヘクタール同11%、千葉県2860ヘクタール同8%、茨城県2420ヘクタール7%、鹿児島県1990ヘクタール%となっている。出荷量上位5県は、群馬県25万800トン同19%、愛知県23万2400トン(同18%)、千葉県11万5300トン同9%、茨城県10万2800トン(同8%)、鹿児島県万8300トン%となっており、群馬県と愛知県が2強で、千葉県、茨城県、鹿児島県などが続いている。夏秋キャベツは群馬県24万2000トン(同54%)に、冬キャベツは愛知県16万8200トン(同32%)に生産が集中している。各産地が経営規模拡大や効率化を進め、季節、種別等ですみ分けしながら消費地に周年で安定供給していることがうかがえる(表34)。東京都中央卸売市場のキャベツの月別入荷実績をみると、4~6月の春キャベツは、千葉県銚子、神奈川県三浦、7~10月の夏秋キャベツは、群馬県嬬恋、長野県野辺山、北海道、岩手県、11月~翌3月の冬キャベツは、愛知県三河、神奈川県三浦、千葉県銚子など、南から北へ、平地から高原へ全国各地の産地がバトンをつないでリレー出荷し、一年を通じてキャベツを消費地に安定供給している(図1)。

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(2)キャベツの輸入動向 ~中国等から加工・業務用向けの輸入が増加~

キャベツの輸入の大半は生鮮品であり、平成20年5863トンから29年3万8189トンへ6.5倍に増加した後、30年9万2358トンに急増している。30年に輸入が急増したのは、国産が29年秋の台風および天候不順の影響により出荷量が大幅に減少し国産の価格が高騰したためとみられる。30年の輸入品の平均単価はキログラム当たり46円、国産品東京都中央卸売市場平均価格:キログラム当たり106円の約割の水準であり、主に加工・業務用に仕向けられている。国別輸入量の割合は、中国産が約80%を占め、次いで台湾産7%、韓国産6%となっており、中国が圧倒的なシェアを占めている(図2)。

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キャベツ(生鮮)の月別輸入量をみると、寒玉系キャベツが出回ってから春系に切り替わる11月~翌月にかけての輸入量が多い。寒玉系キャベツは、巻が固くカット後もボリュームが保たれ、加熱による形崩れにも強いため加工・業務用向けの需要が強く、国産品の不足・不作を補う形で輸入がなされていると考えられる(図3)。

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(3)キャベツの消費動向~キャベツは年間購入量が最も多い万能野菜~

キャベツは野菜の中で最も購入量が多く、1人当たりの年間購入量は、平成2年5328グラム、18年5115グラム(平成2年比96%)、30年5711グラム(同107%)と、生鮮野菜全体の購入量が微減の中で増加しており、5000~6000グラム程度で推移している(表)。1人当たり年間支出額も、2年954円、18年762円(平成2年比80%)、30年1074円(同113%)と増加傾向で推移している6)

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キャベツには、骨の健康維持や止血に働くビタミンKのほか、風邪予防や疲労回復に効果的なビタミンC、腸内環境を改善する食物繊維が豊富に含まれている。加えて、キャベツに由来して命名されたキャベジン(ビタミンU)を含んでおり、胃腸の粘膜を正常に保つ効果があることから、胃腸障害に有効な成分と考えられている。ビタミンCは、捨ててしまいがちな外葉と芯の周りに多く含まれており、大きめの葉であれば2~3枚で1日の必要量を取ることができる。外側の緑色の濃い部分には、β-カロテンが含まれ、抗酸化効果や感染症の予防効果が期待できる。キャベツは、とんかつの付け合わせの千切り、サラダ、ロールキャベツをはじめ、鍋物、炒め物、浅漬けなどどんな料理にも向く万能野菜であり、野菜の中で最も購入量が多く、健康な食生活に欠かせない重要な野菜である(注)

注:農畜産業振興機構「野菜ブック」https://www.alic.go.jp/y-suishin/yajukyu01_000313.html

3 キャベツの指定産地の動向

)指定産地は全国作付面積の5割出荷量の6割を占めるキャベツの中核供給基地

キャベツの指定産地の数は、平成2年産120地区、18年産93地区(平成2年度比78%)、29年産88地区(同73%)と減少している。他方、キャベツの指定産地の作付面積は、2年産万7823ヘクタール、18年産万7136ヘクタール(同96%)、30年産万7718ヘクタール同99%と横ばいで推移し、出荷量は、2年産75万4494トン、18年産76万4827トン(同101)、29年産78万7902トン(同104%)と若干増加している。この間、指定産地の収穫農家戸当たりの作付面積は、2年産0.44ヘクタール、18年産0.73ヘクタール(同166%)、29年産0.97ヘクタール(同220%)と2.2倍に拡大し、指定産地外(29年産0.23ヘクタール)の4.2倍となっており、各指定産地が経営規模の拡大や反収増等により効率的な経営を展開し、全国の作付面積が減少する中で出荷量増を実現していることがうかがえる(表)。

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キャベツの指定産地の種別の作付面積上位5県の推移をみると、春キャベツは、2年産は、千葉県998ヘクタール(全国シェア29%)、神奈川県969ヘクタール(同29%)、兵庫県449ヘクタール(同13%)、和歌山県208ヘクタール(同6%)、福岡県167ヘクタール(同5%)、29年産は、千葉県1033ヘクタール(同30%)、神奈川県897ヘクタール(同26%)、愛知県619ヘクタール(同18%)、兵庫県263ヘクタール(同8%)、福岡県113ヘクタール(同3%)となっており、冬系の大産地の愛知県が春系の作付面積を大きく伸ばしている。夏秋キャベツは、2年産は、群馬県2804ヘクタール同44%、長野県1644ヘクタール同26%、北海道509ヘクタール同8%、熊本県370ヘクタール同6%、大分県220ヘクタール同3%、29年産は、群馬県3468ヘクタール同51%、長野県1305ヘクタール同19%、岩手県635ヘクタール同9%、北海道578ヘクタール同9%、熊本県388ヘクタール同6%となっており、嬬恋村を擁する群馬県が全国の5割まで作付面積を伸ばしている。冬キャベツは、2年産は、愛知県3749ヘクタール同46%、千葉県1160ヘクタール同14%、神奈川県570ヘクタール同7%、兵庫県495ヘクタール同6%、福岡県375ヘクタール同5%、29年度は、愛知県3965ヘクタール同53%、千葉県1035ヘクタール同14%、神奈川県454ヘクタール同6%、兵庫県333ヘクタール同4%、熊本県280ヘクタール同4%となっており、愛知県、千葉県が2強の地位を維持している。

キャベツの指定産地の作付面積上位5県の合計は、春キャベツは、2年産2791ヘクタール、18年産2737ヘクタール平成2年比98%、29年産2925ヘクタール同105%、夏秋キャベツは、2年産5547ヘクタール、18年産5894ヘクタール同106%、29年産6374ヘクタール同115%、冬キャベツは、2年産6349ヘクタール、18年産6295ヘクタール同99%、29年産6067ヘクタール同96%となっている。キャベツの全国作付面積が2年産から29年産に14%減少する中で、指定産地上位5県では5%増加しており、大規模な指定産地が効率的な経営を展開し全国シェアを増加させている。また、上位2県および上位5県の全国作付面積シェアはそれぞれ春キャベツ56%、85%、夏秋キャベツ70%、95%、冬キャベツ67%、81%となっており、群馬県、愛知県、千葉県などの主産地に生産が集中している(表)。

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キャベツの指定産地の全国シェアは、作付面積では、2年度44%、18年度52%、29年度51%、出荷量では、2年産58%、18年産65%、29年産62%で推移しており、指定産地は、作付面積の約5割、出荷量の約6割を占めるキャベツの中核供給基地となっている(表)。

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(2)キャベツの全国出荷量の約4割が野菜価格安定制度を活用

キャベツの野菜価格安定制度の交付予約数量(制度加入数量)は、平成2年度47万1189トン、18年度43万9779トン平成2年比93%、30年度50万5955トン同107%と着実に増加している。種別には、春キャベツが2年度9万4505トン、18年度9万6042トン同102%、30年度10万1180トン同107%、夏秋キャベツが2年度15万1083トン、18年度16万5912トン同110%、30年度22万4286トン同148%、冬キャベツが2年度22万5601トン、18年度17万7825トン同79%、30年度18万489トン同80%となっており、作付面積・出荷量の増減に応じて夏秋キャベツの交付予約数量が大幅に増加する一方で、冬キャベツは大きく減少している。

キャベツ全体の全国出荷量に対する交付予約数量の割合制度加入率は、2年度36%、18年度37%、30年度38%と4割程度で推移している。種別には、春キャベツが2年度28%、18年度33%、30年度30%、夏秋キャベツが2年度34%、18年度44%、30年度50%、冬キャベツが2年度44%、18年度35%、30年度34%となっており、群馬県嬬恋村などの大規模産地を擁する夏秋キャベツの制度加入率が5割と高くなっている。キャベツの全国出荷量の約4割が野菜価格安定制度を活用しており、全国で88地区の指定産地が露地で栽培されるキャベツの天候等による価格変動リスクに対応しながら安定生産・安定出荷に取り組んでいることがうかがえる。(表10)

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(3)キャベツの入荷量・価格の変動は縮小・安定化

キャベツの価格動向を、東京都中央卸売市場月別販売単価を使って、昭和41年度~43年度の「制度創設期」、昭和62年度~平成元年度の「中間期」、平成28年度~30年度の「最近年」で比較する。春キャベツ(4~6月出荷)の平均価格(キログラム当たり)は、制度創設期23円(100%)、中間期64円(278%)、最近年92円(400%)、夏秋キャベツ(7~10月出荷)は、制度創設期21円(100%)、中間期86円(410%)、最近年88円(419%)、冬キャベツ(11~翌3月出荷)は、制度創設期26円(100%)、中間期82円(315%)、最近年126円(485%)となっており、いずれの種別も制度創設期から最近年にかけて4倍以上上昇しており、特に冬キャベツの価格昇率が高く販売単価も高くなっている(表11)。

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次にキャベツの3つの期間の入荷量の変化を東京都中央卸売市場月別入荷量の変動みる。「変動係数」とは、「標準偏差÷平均」で求められ、バラツキや振れの大きさを示し、値が小さいほどバラツキが小さい。春キャベツの月別入荷量の変動係数は、制度創設期0.19、中間期0.09、最近年0.10、夏秋キャベツは、制度創設期0.10、中間期0.03、最近年0.05、冬キャベツは、制度創設期0.17、中間期0.07、最近年0.15となっている。制度創設期は0.10~0.19の入荷量の変動がみられたが、中間期にかけて0.03~0.09に低下し、最近年では0.05~0.15となっている。

キャベツの3つの期間の価格変化を東京都中央卸売市場月別販売価格の変動係数でみると、春キャベツの月別価格の変動係数は、制度創設期0.57、中間期0.24、最近年0.19、夏秋キャベツは、制度創設期0.32、中間期0.37、最近年0.32、冬キャベツは、制度創設期0.45、中間期0.29、最近年0.41となっている。制度創設期の0.32~0.57から中間期0.24~0.37、最近年0.19~0.41にかけて着実に低下している。キャベツは、露地で栽培されるため天候の影響を受けやすいという特性があるが、この間、指定産地は全国作付面積の約5割、出荷量の約6割を占めるようになり、野菜価格安定制度の加入率も全国出荷量の約4割に達しており、しっかりした指定産地が育成され安定生産・安定出荷が行われるようになったことが入荷量と価格の安定に寄与しているものと考えられる(表12)。

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(4)野菜価格安定制度の効果(制度加入農家と非加入農家の比較)

野菜価格安定制度による価格低落時の経済効果について、天候の影響を受けやすい露地で栽培される夏秋キャベツの出荷量全国一の群馬県の指定産地である吾妻西部地区・昭和地区の大規模農家を想定し、制度に加入していた場合と加入していない場合の収益を試算し比較する。

まず、このキャベツ農家の平年の収益(粗収入-農業経営費)は、吾妻西部地区・昭和地区の夏秋キャベツの収穫農家の平均作付面積7ヘクタール、出荷量476トン、関東市場向け夏秋キャベツの平均販売価格キログラム当たり77.9などから試算すると「824万円の黒字」となる。シーズンが終わって売上げから諸経費を差し引いた824万円が農家の手元に残ることになる。

次に、関東市場向けの群馬県産夏秋キャベツの平均販売価格が暖冬の影響等で3割下落しキログラム当たり54.5円(77.9円×0.7)となった場合の農家収益を試算する。野菜価格安定制度では、価格が下落した場合、平均販売価格と保証基準額(70.0円=平均販売価格77.9円の9割)の差額の9割が生産者補給金として交付される。

野菜価格安定制度に加入していなかった場合の農家収益は、平年比3割安の影響で「290万円の赤字」となる。これに対し、制度に加入していた場合は、生産者補給金664万円が交付されるため農家収益は「374万円の黒字」となる(表13)。

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群馬県指定産地の夏秋キャベツの生産は、作で経営規模が大きく、2月下旬から数回に分けて種をまいて苗を定植し、7~10月に集中的に収穫・出荷する。キャベツのような露地野菜は特に天候により作柄が大きく左右され、実際に令和2年は暖冬の影響で年明けキャベツの卸売価格が平年に比べ4割程度下落した。単純な試算であるが、平均販売価格が平年に比べ3割低下すると夏秋キャベツの大規模農家の収益は290万円の赤字に転落し、経営への打撃のみならず次期作の確保にも影響を及ぼすことになる。これに対し、制度に加入していた場合は、平年と比べれば半分程度となるが、374万円の資金が手元に残り、農家経営の安定と次期作の確保が可能となる。

4 全国一のキャベツ産地の群馬県嬬恋村の取り組み

(1)群馬県嬬恋村の農業概況全国一のキャベツ産地~

嬬恋村(人口9780人(平成27年))は、群馬県の西北端に位置し、標高7001400メートルに広がる高原地帯で冷涼な気候を活かして夏秋キャベツが生産されている。村の耕地面積約4200ヘクタールのうち農協系統出荷約3000ヘクタールで約340戸の農家が年間18~19万トンの夏秋キャベツ生産、関東、京阪神をはじめ全国に出荷ている(系統出荷率約84%)。

嬬恋村では、昭和38年に村内4農協が合併し嬬恋村農業協同組合が発足し、野菜価格安定制度が創設された41年に夏秋キャベツの指定産地の指定を受けた。45年から平成13年度に2期に渡る国営農地開発事業で約980ヘクタールの農地を造成し、予冷庫・集出荷場の整備、栽培技術の向上、生産効率化、品種改良等を積極的に進め、全国の夏秋キャベツの出荷量の約5割を担う全国一のキャベツの産地を作り上げた。

キャベツの生育適温は15~20度程度であり、高原地帯の冷涼な気候を活かして2月下旬から6月中旬まで十数回種まきを行って苗を定植し、6月中旬から10月にかけて全国に収穫・出荷される。午前3時頃から収穫されたキャベツは、圃場で6個、8個、10個の玉数規格に箱詰めされた後、トラクターの荷台で村内約160カ所の集荷場に運ばれ、そこから運送会社が村内7カ所の農協の予冷庫に運び込み、短時間で予冷される。この間に農家の出荷量と注文をすりあわせ、当日直ぐに出荷するものと翌日まで冷やして出荷するものに振り分けられて出荷される。

キャベツづくりは、作で収穫・出荷が始まると農家は朝3時頃から夕方6時頃まで作業に追われることから、地元では最盛期の3月間を「100日戦争」と呼んでいる。東京都中央卸売市場の7~10月の月別キャベツ入荷量の約6~7割を群馬県産が占め、そのほとんどが嬬恋村産であり、嬬恋村はまさに全国一のキャベツ産地となっている。(写真1、2)

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(2)指定産地「吾妻西部地区」の生産・出荷動向~出荷量22万トン、経営規模7.4ヘクタールの夏秋キャベツの大産地~

昭和41年に嬬恋村を中心とする「吾妻西部地区」が夏秋キャベツの指定産地に指定されている。吾妻西部地区は、嬬恋村のほか、長野原町、草津町、中之条町の一部地域が含まれるが、作付面積3371ヘクタールの91%(3070ヘクタール)が嬬恋村にあ

吾妻西部地区の夏秋キャベツの作付面積は、全国の作付面積が23%減少する中で、平成2年度2720ヘクタール、18年度2945ヘクタール(2年度比108%)、29年度3371ヘクタール(同124%)と24%増加している。出荷量も、全国では減少又は横ばいの中で、2年度17.1万トン、18年度18.5万トン(2年度比108%)、29年度21.9万トン(同128%)と28%増加している。この結果、吾妻西部地区は、全国の夏秋キャベツの出荷量の5割を占める全国一の産地となっている(表14)。

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吾妻西部地区の夏秋キャベツの収穫農家数は、2年度819戸、18年度411戸同50%)、29年度457戸(同56%)と、18年度にかけて半減した後若干増加している。収穫農家1戸当たりの作付面積は、2年度3.32ヘクタール、18年度7.17ヘクタール同216%)、29年度7.38ヘクタール(同222%)と2倍以上に拡大し、全国のキャベツ農家の平均作付面積の67倍程度となっている。吾妻西部地区が、農家数が減少する中で積極的に経営規模の拡大や集約化等を進め、出荷量を増加させてきたことがうかがえる(表15)。

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)JA嬬恋村のキャベツ戦略~市場ニーズに応える信頼と競争力のある産地づくり、出荷量の約8割が野菜価格安定制度を活用~

キャベツは、露地で栽培されるため天候の影響を受けやすく、天候次第で価格が大きく変動し、作の農家経営に大きな打撃を与えるため、農家にとって価格安定と経営安定が非常に重要である。このため、JA嬬恋村では、キャベツの出荷量の約8割で野菜価格安定制度を活用するとともに(全国平均は約4割)、市場ニーズに合わせた信頼と競争力のある産地づくりを推進している。

ア 嬬恋高原キャベツのブランド化と省資源化

JA嬬恋村では、年間1800~1900万ケース(平箱・15kg箱合計)、20~21万トンのキャベツを全国に出荷し、嬬恋村のキャベツは全国出荷量の約5割を占めるブランドとなっているが、平成20年に「嬬恋高原キャベツ」の商標登録を取得し取り組みを強化している。

家庭では、キャベツはサラダ、千切りなど生で食べられることが多く柔らかい食感が好まれることから、食味を重視した品種開発にも取組み市場ニーズに対応している。

毎年出荷が始まる6月下旬にJA嬬恋村と全農ぐんまが共催し大田市場で「JA嬬恋村キャベツ試食宣伝会」を開催しているほか、出荷シーズン中には、大都市圏のスーパーを中心に店舗売り場にて消費宣伝を行い、テレビCM等のマスメディアも活用し嬬恋高原キャベツのPR活動にも力を入れている(写真3)。

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低コスト流通・省資源化を推進するため、平成15年度に量販店等へのコンテナ容器による出荷を試験導入し、30年度までは「はるかぜ」「やわらかキャベツ」「高原キャベツ」「リターナブルコンテナー」「業務加工向け」の5種類の出荷容器で、令和元年度からは「やわらかきゃべつ」を集約し、「はるかぜ」「高原キャベツ」「リターナブルコンテナー」「業務加工向け」の4種類の出荷容器でキャベツを出荷している。29年から群馬県産農畜産物の統一ロゴマーク「GUNMA QUALITY」を出荷ダンボールに表示している(写真4)

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イ 新品種の開発

安全・安心なキャベツの安定供給に向け、毎年秋に種苗会社を視察し産地に適した品種をJAの試験じょうで栽培し、有望なものは野菜研究会の生産者(約100名)が栽培し商品化の可能性を試験している。試験ほ場では約50種が栽培され、食味・形状・在圃性・耐病性等を確認しつつ品種開発が行われている。現在の主力品種である「青琳」「初恋」「涼峰」などはこのプロセスを経て採用されたものである。 

ウ 契約取引による販売形態の多様化

加工・業務用需要の増大などの市場環境の変化に対応するため、あくまでも市場出荷が中心だが、卸売市場を経由した量販店、外食等との契約取引(Gルート販売)による顧客の見える販売と販売形態の多様化を推進しており、JA嬬恋村の出荷量の約3割を占めるようになっている。

令和元年度の加工・業務用向けキャベツの出荷量(15キログラム専用ダンボール)は、約200万ケースとなっており、今後は、国内の需給バランス維持を目的にした海外輸出も視野に入れている(写真5、6)

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エ 環境保全型農業の推進

嬬恋村では、生産者・村・JAが一丸となり、「嬬恋村環境保全型農業推進協議会」を設立し、近年問題となっている農業用廃資材回収を積極的に進め、環境保全にも熱心に取り組んでいる。また、トレーサビリティーシステムの導入、農薬散布時のドリフト対策としてキャベツの収穫1週間前に圃場に黄色い旗を設置し、近接圃場へ注意喚起を行っている(写真7)。嬬恋村では、キャベツのシーズンになると圃場の至る所に黄色い旗が立てられ、シーズン到来を感じさせる風景となっている。シーズン中に残留農薬検査を92検体実施するなど、農産物の安全性の確保にも取り組んでいる。

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嬬恋村では、農業創世記に開拓された農地が今でも現役で活躍しており、それ故に山なりの傾斜の強い圃場も多い。近年の異常気象による集中豪雨、台風の襲来と農業にとって一番重要な畑の表土流亡が深刻化してきている。このため、グリーンベルトの設置(写真8)や収穫後のカバークロップ(緑肥)の作付けなど表土流亡防止対策にも力を入れており、群馬県、村、JA、そして生産者が知恵を出し合って将来にわたる信頼と競争力のある産地づくりに取り組んでいる。

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(4)まとめ

嬬恋村は、制度が創設された昭和41年に夏秋キャベツの指定産地に指定され、以来半世紀にわたり、野菜価格安定制度を活用しながら、高原地帯で冷涼な気候を活かし、国営農地開発事業で約980ヘクタールの農地を造成し、予冷・集出荷施設の整備、栽培技術の向上、生産効率化、品種改良等を積極的に進め、全国の夏秋キャベツの出荷量の約5割を担う全国一のキャベツの産地を作り上げた。他方で、露地で栽培される夏秋キャベツの生産は、作で天候の影響を受けやすく、平均経営規模ヘクタールと大きいことから、価格下落は農家経営に甚大な影響を与えるため、JA嬬恋村では、夏秋キャベツの出荷量の約8割で野菜価格安定制度を活用している。高齢化・人手不足、人件費・輸送費等のコスト増などの課題がある中で、群馬県、村、JA、生産者が一体となって、野菜価格安定制度でキャベツ生産の価格変動リスクに対応しながら、嬬恋高原キャベツのブランド化と省資源化、新品種の開発、契約取引による販売方法の多様化、環境保全型農業等に積極的に取り組み、将来にわたる市場ニーズに応える信頼と競争力のある産地づくりを推進している。

本稿の作成に当たり、情報提供をいただいたJA嬬恋村および全農群馬県本部の皆様に深く感謝申し上げる。



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