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〔特集〕さらなる加工・業務用野菜の安定生産を目指して (野菜情報 2019年12月号)


JAサロマにおけるかぼちゃ加工の取り組み
~1年を通して「かぼちゃパウダー」などを安定的に供給~

 札幌事務所 小峯 厚

【要約】

 JAサロマでは、管内を含む道内各地のかぼちゃを使って「かぼちゃパウダー」などの加工品を製造している。前年度に製造した在庫2カ月分を加えた14カ月分の販売計画を作成し、原料が集まらない場合でも翌年の製造分の販売を前倒しするなどして、安定的な供給を実現している。

はじめに

近年、高齢化の進展や女性の社会進出が進み、大家族世帯が減少し、単独世帯や共働き世帯が増加している。また、ライフスタイルの変化に伴い、生鮮野菜の消費が減少する一方で、カット野菜、冷凍野菜、総菜などの加工調理食品の販売が増え、野菜の加工・業務用需要が拡大している。また、乾燥野菜も加工調理食品の原料やインスタントスープ、インスタントラーメンのかやくなど、従来の用途にとどまらず、品質が均一で保存可能な食材として、近年はさまざまな場面で利用されている。

本稿では、生産されたかぼちゃを全量加工用に仕向け、パウダー、フレーク、ペーストなどを製造し、安定的に販売している北海道常呂郡佐呂間町の佐呂間町農業協同組合(以下「JAサロマ」という)の事例を紹介する。

1 国内におけるかぼちゃの収穫量および流通

かぼちゃの収穫量は、全国ベースでは、平成元年には30万トン近くまであったものの、年々減少傾向にあり、30年には、約16万トンまで減少した。一方、北海道は、12年の約12万トンをピークに30年は6万5500トンと減少したものの、国内の約4割を占め、全国第1位の産地となっている(図1)。

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30年の東京都中央卸売市場の統計を見ると、北海道産のかぼちゃは、8月から11月にかけては、入荷量の大半を占めるものの、それ以外の月はほとんど流通していない(図2)。

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2 JAサロマの概況

(1) 佐呂間町の概況

JAサロマが管内とする北海道常呂郡佐呂間町は、北海道東部に位置し、北は日本三大湖の一つのサロマ湖に面している。東西は細く開けた丘陵地帯で、天北山系の豊かな山々に囲まれており、中央を流れる佐呂間別川流域一帯に、広大な農地が広がっている(図3)。

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また、全国でも有数の日照時間の長い地域で、夏季の平均気温は20度前後であるのに対し、冬季はマイナス9度と気温差が大きく、また、夏季は最高気温25度に対し最低気温は10度と昼夜の寒暖差が激しい内陸型気候となっている。(図4)

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(2) 農業の概況

JAサロマ管内は、佐呂間別川流域のよくな農地を生かした畑作と酪農経営が積極的に行われている。平成30年度の農産物販売取扱額は、93億6741万円となっており、畜産物が80億9431万円と全体の86%を占め、農産物が12億7310万円と全体の14%となっている。

30年度の農産物の作付面積をみると、小麦が841ヘクタールと最も多く、次いで、てん菜が448ヘクタール、豆・雑穀が226ヘクタール、かぼちゃが76ヘクタール、しそが24ヘクタール、その他が61ヘクタール合計1676ヘクタールとなっている(写真1~2)。

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(3) かぼちゃ栽培の概況

JAサロマにおけるかぼちゃの作付面積は、生産者の高齢化による離農や労働負担を軽減するために他作物への作付転換が進んだことで、平成25年度以降は、80ヘクタール前後で推移している。また、20年度に2231トンあった収穫量は、作付面積の減少に加え、天候不良が続いたため、30年度には756トンと大幅に減少している(図5)。

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品種は、えびすかぼちゃが大半を占め、その他TSX-820とくり将軍の3品種である。5月上旬からしゅが始まり、5月下旬から6月上旬にかけて定植され、8月下旬から9月下旬にかけて収穫される(表1、写真3~5)。一般的に市場に出荷される青果用のかぼちゃは、収穫後、ビニールハウスの中に丁寧に並べられて乾燥させ、収穫時に出来た切り口をコルク化させるキュアリングを行うことで糖度を高めるが、管内で栽培されているかぼちゃは、すべて加工用で、表面の色や形にこだわる必要がないため、生産者は、同JAが貸し出す鉄コンテナへ積み込み、ビニールハウスなどで乾燥させ、キュアリングを行うことで、労働負担の低減が図られている。

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3 かぼちゃ加工の取り組み

(1) 加工施設建設の経緯

JAサロマ管内では、かぼちゃは、小麦やてん菜とともに輪作作物の一つとして昭和40年代に栽培が開始されたが、道内のかぼちゃの作付面積増加に伴い、産地間競争が激しさを増す中で、市場から一定の品質を求められるようになった。これにより、生産されたかぼちゃの約3割が規格外品として販売され、生産者の意欲を失うような非常に低い価格で取引された。

57年に近隣町村の食品メーカーが製造していたコーンフレークやマッシュポテトを参考に、かぼちゃを乾燥粉末にすることで、付加価値を高めて生産者の収入の安定を図ることができると考え、58年から2年間かけて加工メーカーに委託し、試行錯誤の結果、日本で始めての「かぼちゃパウダー」が完成した。

かぼちゃパウダーは、生鮮かぼちゃと比べて、品質が安定していること、粉末化することで保存性が良くなるというメリットがあり、取引があった本州の菓子メーカーにサンプルを送ったところ、長期的な取引の希望があったことから、59年に、かぼちゃ加工施設(以下「かぼちゃ工場」という)を総工費約5億円かけて建設し、本格的にかぼちゃパウダーの製造を開始することとした(写真6)。

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(2) 原料の調達

かぼちゃ工場では、年間約1800トンのかぼちゃを使用して、かぼちゃパウダーを毎年120トン程度製造している。これに加え、「かぼちゃフレーク」「冷凍ペースト」「冷凍半製品」などの製品を製造している。近年は、管内の収穫量が1000トンを下回っていることや管内産の原料だけでは製造コスト高から赤字となることから、道内各地より規格外品などを集荷している。

規格外品については、近年の天候不順により道内の収穫量が減少、商社などが高値で購入するようになったことで競合が激しいが、管内産に比べて著しく高い単価を設定することは難しい。このため、同JAでは、集荷するトラックを手配するなど条件を付けて取引することで、道内各地から安心して出荷してもらえる環境づくりに取り組んでいる。

管内で収穫され、各生産者の元で乾燥させて糖度を高めたかぼちゃは、9~10月にかけて、かぼちゃ工場へ出荷される。比較的すぐに加工されるえびすかぼちゃは一般的な倉庫で保管し、貯蔵性が高いくり将軍は、温度管理ができる保管用倉庫で貯蔵される。

加工は、10~12月にかけて行われるが、シーズンはじめに集荷されたかぼちゃは、比較的でん粉質が高く糖分が少ないという特徴がある。また、収穫時期や完熟度合いによって色が異なるため、倉庫内にかぼちゃを並べて複数の生産者のかぼちゃをブレンドする。それでも色が薄い場合には、糖度が高く色の濃い前年産の冷凍品をブレンドする。最終的には、加工したサンプルを色度計で計測し、ブレンドの割合を調製することで品質を一定に保っている。

(3) かぼちゃパウダーの製造

野菜をパウダー状に加工するには、真空凍結などさまざまな方法があるが、JAサロマのかぼちゃ工場では、ランニングコストが安く、でん粉含有率の高いかぼちゃの加工に向いているドラムドライヤー方式を採用している。製造する作業工程は図6の通りで、まず、①原料を荷受ホッパーに投入し、②一次洗浄施設でドラム式洗浄機を使って付着している泥などの汚れを洗い落とす。汚れを落としたかぼちゃは、③半自動皮むき機と、ピーラーを使って、表皮約5ミリメートルをむき取り、④縦割りに半分に裁断する。⑤種とわたを取り除き、⑥残った皮やコルクなどを包丁で取り除く。⑦皮などが取り除かれ黄色い果肉のみになったかぼちゃを二次洗浄施設のドラム洗浄機で洗浄し、⑧原料タンクで一時貯留する。⑨ここで、原料に金属類が混入していないか金属探知機で確認する。

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異物混入の有無を確認した後は、図7の通りで、⑩⑪ロータリースラーサーで果肉を10ミリメートル程度の馬蹄状にスライスし、⑫約95度に設定されたスチーマーで8分程度蒸し上げる。⑬かぼちゃは、表面温度が100110度に設定されたドラムドライヤー(円筒型の乾燥機)を使って乾燥させ、⑭薄いシート状にしたものをスクレッパーナイフでそぎ取り、⑮かぼちゃのシートを作る。

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⑯かぼちゃのシートを粉砕機で魚のうろこ状に砕いて粉々にすると「かぼちゃフレーク」(写真7が出来上がる。さらに二次粉砕機で細かく粉砕し、⑰ふるいで選別してマグネット除去で異物を除去するとかぼちゃパウダー(写真8)が出来上がる。⑱出来上がった商品は、サンプルを採取して品質検査を実施するとともに計量して袋詰めを行い、金属類が混入していないか金属探知機で確認を行い、約15度に設定された製品保管庫で保管される。

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 安定的に販売するために

製品は、全体の7割は代理店を通じて販売され、残り3割はJAが直接販売している。出荷先は、関東圏が全体の6割となっており、次いで関西圏が3割、残り1割が道内となっている。代理店は20社程度であるものの、最終的な納品先を含めた取引先は約400社となっており、製菓・製パンメーカーをはじめ、製粉メーカー、製餡メーカー、健康食品メーカー、飲料メーカー、搾汁メーカーなどと多岐にわたる。

製品の用途は、菓子やスイーツ、麺、粉製品、あんこ、離乳食、健康食品、スープ、コロッケなどの冷凍食品幅広く、平成30年度はかぼちゃパウダーが111.6トン、「かぼちゃフレーク」が12.2トン、「冷凍ペースト」が26.9トン、「冷凍半製品」が111.4トン販売された(表2)。

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なお、かぼちゃパウダーのうち、ブランド力の高いえびすかぼちゃのみを原料にしたものを「プレミアムパンプキンパウダー」として付加価値をつけて販売し、くり将軍やその他の品種のものを「北海道産かぼちゃ100%」として販売している。

かぼちゃパウダーは、近年、取引拡大の要望が多いものの、不作などによる原料不足から、毎月10トン程度に抑えて計画的に販売している。販売計画は、前年の在庫2カ月分20トンに加え、当該年度に製造した120トンの合計140トンを10月~翌年12月の14カ月で販売する。工場が稼働中の10月~12月は前年の在庫を販売し、翌年までに当該年分を販売するのが理想であるが、原料が集まらずに計画どおりに製造できなくても、翌年の製造分の販売を10月に前倒しすることで需給調整を行い、安定的な商品の供給を図っている。

また、生鮮かぼちゃの代替としてかぼちゃパウダーの需要が高まる中で、一時的に高値で購入する食品メーカーでなく、長期的な取引が期待できる既存の食品メーカーを優先することで安定的な販売につなげている。

なお、かぼちゃパウダーの賞味期限については、生鮮かぼちゃと異なり、長期保存が可能なため、同JAの貯蔵施設で品質を保証できる3年のうち、商習慣に従ってその3分の2の2年に設定している。

4 今後の課題

重量野菜であるかぼちゃは、労働負担が大きい上、高齢化の進展もあいまって、道内の作付面積が減少する中、商社などが進出し高値で取引されている。このため、JAサロマでは、近隣の大学生を臨時に雇用して管内生産者の収穫時の労働負担軽減を図るとともに、原料購入単価の引き上げを検討することが必要となっている。

また、かぼちゃ工場の従業員の賃金は、2年目以降同額となっており、従業員の定着を図るためには、賃金の引き上げについても検討が必要とされている。

これらの財源を確保するため、同JAは、取引先の理解を得ながら、販売価格を見直していきたいと考えている。

おわりに

JAサロマのかぼちゃ工場は、全国のかぼちゃの収穫量が増加する中で商品とならない規格外品の販売チャネルの一つとして整備されたが、時代が変わり、近年は、管内だけでなく、道内各地からかぼちゃを集めてかぼちゃパウダーなどの商品を製造することとなっている。

計画的に販売ることで、既存の取引先に不足することなく納品され、余剰品は、既存の取引先以外に販売する。このように、同JAでは、北海道産かぼちゃを使った加工品を安定的に販売できる環境が整い取引先との信頼関係が作られていると感じた。

最後になりますが、お忙しい中、本取材にご協力いただきましたJAサロマ農産部農産課の前原徹也係長に厚く御礼申し上げます。

〈参考文献〉

(1) JAサロマホームページ

(2) JAサロマのご案内 平成30年資料(JAサロマ作成資料)

(3) 南瓜加工処理施設研修資料(JAサロマ作成資料)



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