鹿児島事務所(現野菜業務部) 岸本 真三市
生産者の高齢化などにより多くの野菜の作付面積が減少傾向にある中、鹿児島県の大隅半島では、4つの農業協同組合とJA鹿児島県経済連が一体となって生産から出荷まで一貫した広域のごぼう産地を形成し、作付面積を増やしている。
「ごぼうの旬は?」と聞かれれば、代表的な料理として豚汁やきんぴらを思い浮かべ、秋から冬をイメージする方が多いのではないだろうか。しかし、鹿児島県大隅半島での答えは「周年」であり、これは安定した周年出荷を目指していることに由来する。
この答えの背景には、中国産ごぼうの輸入増や、調理の簡素化を求める消費者ニーズの変化などの影響がある。店頭に置かれているごぼうに目を向けると、かつては泥付きの長いごぼうが主流であったが、現在では洗われた少し短めのごぼうが増えている。
泥付きの長いごぼうから、若掘りの少し短いごぼうを洗って出荷する方式に転換することで、周年出荷が可能となり、結果、鹿児島県ではごぼうの作付面積が増加傾向にある(図1)。
本稿では、鹿児島県大隅半島にある4つの農業協同組合(JAそお鹿児島、JA鹿児島きもつき、JA肝付吾平町、JAあおぞら(以下「4農協」という))とJA鹿児島県経済連が、広域でごぼうの周年出荷に取り組み、作付面積を増やしている生産現場から、選果作業、販売の状況に至るまでを報告する。
鹿児島県大隅半島におけるごぼうの生産は、昭和61年、気象条件が近く隣接する宮崎県の先行事例を参考にスタートした。以降、作付面積を増やし、広域の産地形成のため、平成元年4月、4農協(当時は農協合併前で、11農協)を構成員として、「大隅ごぼう団地管理組合(以下「大隅ごぼう団地」という)」を設立した。
4農協という広域の産地形成を可能とした要因としては、大隅ごぼう団地の事務局を担うJA鹿児島県経済連大隅野菜事業所(以下「大隅野菜事業所」という)の存在が挙げられる(図2)。
野菜の出荷は、個人選別と共同選別(注1)に分かれるが、大隅野菜事業所は、大隅ごぼう団地より早く昭和62年に野菜の集出荷・選果場として設立されていたことから、ごぼうの共同選別を行う体制が整っていた。
大隅ごぼう団地は、大隅野菜事業所が事務局として、全体の出荷計画や販売計画の策定を行うほか、集出荷・選果場として、調製・選別・袋詰・出荷の役割を担い、4農協の生産者が、生産に特化するという明確な役割分担により広域での産地形成を実現している(図2)。
注1:個人選別は、生産者自身が収穫した野菜の調製・選別・袋詰めなどを行い、共同選別は、集出荷施設において、調製・選別・袋詰めなどを行う。
大隅ごぼう団地の作付面積は、平成4年に173.1ヘクタールのピークを迎えたが、安価な中国産の増加や消費者の生活スタイルの多様化に伴う短時間調理に適した食材のニーズの高まりから、減少に転じた(注2)。
そこで、大隅ごぼう団地は、播種から収穫まで約半年ほどかかる泥付きの長いごぼうから、播種から120~150日程度で、長さ30~45センチメートルほどで収穫する若掘りごぼうへ転換を図るとともに、大隅野菜事業所で、洗浄後に調製などを行う洗いごぼうへと出荷形態も変えていくこととなった。
まず、7年に収穫時期が12月~翌3月の若掘りごぼう(以下「新ごぼう」という)の試験栽培が開始され、その後、周年栽培に向けて、19年に収穫時期が9~11月の若掘りごぼう(以下「秋サラダ」という)、21年に収穫時期が6~8月の若掘りごぼう(以下「夏サラダ」という)、24年には収穫時期が4~5月の若掘りごぼう(以下「春サラダ」という)の試作を始めるとともに、泥付きごぼうの共同選別を終了した(図3)。こうして、大隅ごぼう団地は、泥付きごぼうから若掘りの洗いごぼうの一大産地として変貌を遂げた(図4)。
なお、新ごぼうは需要期に出荷するため、新鮮さを押しとするネーミングとし、春・夏・秋サラダについては、非需要期の消費拡大を図るため、定番の豚汁やきんぴらごぼう以外にも簡単な調理でさっぱりとサラダでも手軽に食してもらえることを印象付ける名前とした。
注2:本稿で使用する大隅ごぼう団地の資料における「年」は、5月~翌4月である。
大隅ごぼう団地の生産者は133名(平成30年)おり(表1)、直近5カ年の作付面積の推移を見ると、夏から秋にかけての大型台風の影響を受けた30年を除き、増加傾向にあり、31年は202ヘクタールを目標としている。
ただし、作型によりバラツキがあり、春サラダおよび秋サラダの生産体制の構築が、安定した周年供給を行う上での課題の一つであることがうかがえる(図5)。
大隅ごぼう団地の今後の課題は、安定した計画的な周年出荷に向けた生産体制の整備である。
ア 栽培マニュアルの周知徹底
大隅ごぼう団地では、安定した周年栽培や品質向上を目指して、鹿児島県の研究機関などとともに、栽培マニュアルを整備し、農協の部会などを通じ、周知徹底を図っている。
マニュアルには、栽培暦(図3)のほか、圃場準備から播種作業、管理作業、収穫に至るまでの指針を細かく定めている。
春サラダについては、播種から収穫までに冬を越すため、不織布を被覆することにより、地温低下を抑制し、越冬可能な作型を可能とした一方、今後、生産量の増加が望まれる秋サラダについては、鹿児島県農業開発総合センター(注3)において、安定的な出荷に向けて作型を2つに分け、4月中旬~5月上旬までの播種と7月~8月上旬までの播種としている。前者は、梅雨までにある程度の生育を進めること、後者は、近年の温暖化により一層地温が高温となることから、播種と同時期に暑熱低減被覆資材で畝を覆うことで温度上昇を抑制するなどの栽培方法の開発が進められている(注4)。
注3:県農業の総合的な拠点として農業技術の開発と担い手の育成を効率的かつ総合的に推進するために農業関係試験場や農業大学校を再編統合した機関(参照引用 鹿児島県のホームページ)。
注4:参考文献 1. 2. にある「農業かごしま」平成30年5・6月号(第70巻 VOL752)に秋サラダの作型に関する栽培方法が記載されているので、参考にされたい。
イ 「かごしまの農林水産物認証制度」の取得
鹿児島県は、生産者の安全・安心な農林水産物を生産する取り組みを消費者に正確に伝え、県産農林水産物に対する消費者の安心と信頼を確保するため、農林水産省が策定した「農業生産工程管理(GAP)の共通基盤に関するガイドライン」(平成22年4月)に準拠した安全と安心に関する一定の基準に基づき、審査・認証機関が認証する「かごしまの農林水産物認証制度(以下「K-GAP」という)」を有している。
大隅ごぼう団地は、若掘りごぼうの生産技術の標準化による品質の安定や消費者に向けた安全・安心なブランドを印象付けることなどを目的に、市場などの販売先から要請を受け、平成24年に新ごぼうおよび秋サラダでK-GAPを取得し、続いて、25年に春サラダおよび夏サラダでも取得し、以降これを更新して継続している。県内の小売店には、K-GAPの認証マークが付されたごぼうが並ぶ(写真1)。こうして、K-GAPをすべての作型で取得することで、周年の安定した生産体制の整備および供給先の信頼を得るための取り組みを進めている。
ウ 品種および出荷規格の統一
ごぼうの品種は、どの作型でも若掘りごぼうに適した良質の早太り品種の「山田早生」に統一するとともに、栽培マニュアルに基づき、3つの目標を掲げ、長さは30~45センチメールが一般的であったものを特に市場からのニーズの高い規格L以上の45センチメートル以上の長ごぼうの品質の向上を目指すとともに、出荷できないものを圃場と選果場で除くよう徹底している(表2、写真2)。
<目標>
•根径1.5~3.1センチメートル(L~3L)で、長さ45センチメートル以上のごぼうを作る。
•岐根の少ないごぼうを作る。
•欠株を無くし、そろいの良いごぼうを作る。
エ 大隅ごぼう団地の生産者部会の設立
広域である大隅ごぼう団地では、生産者全体の統一した生産技術の向上や浸透が必要不可欠であり、これまで各農協や農協の支店などにあった生産者部会などに加えて、新たに平成27年8月に「大隅ごぼう団地部会」を設立した。当部会を通じ、生産者に各作型の適切な生産技術の普及や販売状況の情報共有を行っている。
オ 広域での出荷調整
大隅ごぼう団地が広域であるメリットは、天候などにより計画通りにいかない生育状況に応じ、例えば生育の遅い地域と早い地域の出荷計画を入れ替えることで、全体の計画を維持できる点である。特に天候の影響を強く受ける露地野菜において、一つの地域内で弾力的な調整が図れることは、小売店の売り場を安定的に確保する視点からも有効である。
このため、4農協の担当者は、毎月1回、担当者会議を開催し、それぞれの地域の詳細な生育状況などを情報共有している(図6)。
鹿屋市の北部にあるJAそお鹿児島輝北支店(以下「輝北支店」という)管内は、大隅ごぼう団地の中で、最大規模の生産地である(表3)。輝北支店は大隅ごぼう団地の管内においても北部に位置し、海抜200~560メートルの準高原地帯にあることから、年間の平均気温が15.5度と低く、夏は冷涼で冬は厳しい寒さとなっている。
管内は、畜産が盛んなエリアであり、畜産と露地野菜の複合経営や、近年では畜産と茶や花きの組み合わせも増えている。
ア 生産者ごとの生産計画の策定・管理
4農協の重要な役割の一つは、定時・定量の出荷を維持することである。このため、輝北支店では、大隅ごぼう団地(事務局である大隅野菜事業所)が策定した全体の生産計画に基づき、管内の播種から収穫までの生産計画を生産者ごとに日単位で策定している(表4)。策定にあたっては、作付けが可能な圃場面積や作型の把握、収穫作業の補助員が分散するような収穫期間の設定など、さまざまな視点や経験が求められる。
こうして4農協で策定された緻密な生産計画を担当者会議で、さらに直近の生育状況を反映させることで、大隅ごぼう団地の安定した計画出荷を支えている。
イ 耕畜連携による土づくり
ごぼうは、排水良好で肥沃な土壌での栽培が適している他、連作を嫌う作物であり、収穫後は少なくとも3年以上休作することが望ましい。
そこで、輝北支店では、畜産が盛んな地域という地の利を生かして、耕畜連携による土づくりに力を入れている(写真3)。ごぼうの圃場を畜産農家の飼料作物(牧草など)の圃場と交換するなどし、限られた圃場を有効活用するとともに、連作障害の回避、良質な自給飼料の増加につなげる取り組みを進めている。
温暖化やこれまで経験したことがないような大型台風、病害の発生など、変化する生産環境にあって、さらなる生産技術の向上は大きな課題である。輝北支店の指導員 園田茂氏は、この課題解決に向けて、九州エリアで洗いごぼうの産地として、先行する宮崎県南那珂地区(注5)や熊本県菊池地域(注6)との産地交流を最初は個人的に始め、現在では、九州のごぼう産地の「ごぼう産地三県合同会議」を開催するまでに至った(注7)。会議では、品質向上に向けた病害対策の取り組みや試験圃場の視察など、活発な情報交換が行われている。
こうして、九州の洗いごぼうの産地は、競合する一面を持ちながらも、お互いに研さんを積み、九州の洗いごぼう3大産地として、たゆまない努力を続けている。
注5:産地紹介:宮崎県南那珂地区のごぼう栽培
https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/santi/1212/santi1.html
注6:産地紹介:熊本県菊池地域(ごぼう)
https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/santi/0901/santi1.html
注7:宮崎県と熊本県の洗いごぼうは、個人選別である。
鹿屋市輝北町でごぼうの生産に取り組む新城 等氏(51歳)は、香織さんと夫婦で、ごぼうをメインに野菜を生産している(写真4)。新城氏は、両親が農家であったことから、自然と手伝うようになり、やがて引き継ぐことになった。
現在の新城氏の圃場面積は、8.65ヘクタールであり、ごぼうの他、かんしょ、だいこん、さといもを生産している(表5)。ごぼうについては、作付面積、収穫量とも、大隅ごぼう団地で最も早く作型が開発された新ごぼうが最も大きな割合を占めており、ごぼうとほぼ同面積に他の作物を輪作しながら、作付けをしている。
取材当日は、輝北支店 園田指導員の策定した出荷計画に基づいて、新城氏が新ごぼうの収穫を行う日であった。収穫は、専用の収穫機により掘り起こしを行い、収穫補助員が仕分けを行った上で、鉄コンテナに丁寧に並べ入れていた(写真5)。
ア 生産技術の確立
ごぼうに限らず野菜生産を取り巻く環境は、生産者の高齢化、温暖化などの気象条件の変化やこれに伴う新たな病害虫の被害など、厳しさを増しており、多くの品目で作付面積の減少が続いている。このような状況下で、ごぼうの作付面積を増やすためには、安定生産を可能とする栽培技術の確立が課題となっている。
このため、新城氏はさまざまな取り組みを行っている。
(ア) 排水対策および干ばつ対策
新城氏の圃場も標高が高いところに位置していることから、夏場の地温の上昇は比較的軽減されているものの、多雨による病気の発生などを回避するため、排水対策が重要だと考えている。具体的には、圃場の周囲や枕地に溝(明渠)を作ることで、多雨の際でも圃場に水が滞留せずに流れるよう対策を講じている(写真6)。
一方、夏場の干ばつ対策として、新城氏は熊本県菊池地域を視察した際に見学したトレンチャーによる局所の深耕の導入を検討している。現在は、輝北管内で一般的な、圃場全面の深耕ロータリーを採用しているが、土壌の水分が圃場全面から抜けて、夏場に好天が続いた際に、かん水してもすぐに乾燥し生育が停滞する課題があった。トレンチャーに切り替えることで、夏場の生育の改善に期待が持てると考えている。
(イ) 土づくり
新城氏もごぼうの収穫を終えた一部の圃場を畜産農家に貸し出し、飼料作物の圃場として活用してもらうことで圃場の有効活用と連作障害が発生しないよう土づくりに取り組んでいる。
このほか、堆肥は粉状の完熟堆肥から品質の安定しているペレット状の肥料に切り替えた。購入費用は上昇したが、扱いやすくなったため、圃場全面への散布から、農薬とセットの局所散布を行うことで、施肥量の削減と効率的な作業に努めている。
(ウ) 春サラダの安定した栽培
新城氏の圃場は準高冷地帯にあることから、播種から収穫までに越冬する春サラダの安定した出荷を目指して、不織布で地温低下を抑制している。
イ 大隅ごぼう団地部会長としての活動
新城氏は、輝北地域を代表するごぼうの生産者として、自らのごぼうの生産の他、管内の取りまとめや若い生産者の育成や情報交流など多忙な日々を過ごしている。その勤勉な仕事ぶりから、大隅ごぼう団地部会の部会長を勤めることとなり、若掘りの洗いごぼうの一大産地の部会長としての役割も担っている。
広域の産地において、全体の生産技術の向上が必要であるため、まずは、自ら安定した生産技術を確立し、それを広げて行くことで、バラツキのある生産者個々の生産量を安定させていければと考えている。また、生産者が、広域である大隅ごぼう団地部会の部会員として一体感を持てるよう輝北支店や大隅野菜事業所と相談しながら、全体会合の計画も模索している。
大隅野菜事業所は、大隅ごぼう団地の事務局として、全体の出荷計画・販売計画・販売対策を策定する役割と、集出荷・選果場としての役割の2つの側面を持っている。
(1) 選果作業
大隅野菜事業所は、野菜の集出荷・共同選別を目的に設立されたため、当初はごぼう以外の他品目の扱いもあったが、大隅ごぼう団地の設立を受け、ごぼうのみの選果場として、日々広域から輸送されるごぼうの選果を行っている(写真7)。
洗いごぼうの選果作業は、おおむね原料受け入れから梱包までは3日、出荷までは1週間程度(繁忙期は、予冷庫保管により品質管理を行った上で、2~3週間程度)となっている。
(2) 販売状況
ごぼうの生産から販売までは、おおむね以下の通りの流れとなっている(図7)。
また、平成29年の地域別の販売実績は、表6の通りであり、京浜、京阪神を中心に販売している。
統計資料においては、鹿児島県のごぼうの作付面積は、全国5位であるが、泥付ごぼうと洗いごぼうの内訳がないため、統計上のそれぞれの正確な数値は把握できない。しかし、洗いごぼうにおいては、上位のシェアにあり、現在の販売先に安定的に周年出荷を行うことで、野菜売り場のごぼうの販売コーナーに大隅ごぼう団地産が常時置かれるように取り組んでいきたいと福島 純一所長は語った(表7)。
(3) 今後の課題と展望
大隅ごぼう団地には、作付面積を増やしたいという生産意欲の高い生産者が多いが、共同選別であることから、選果・販売の体制も整える必要がある。
そこで、大隅野菜事業所では受入体制を強化するため、平成28年度に農林水産省の補助事業である産地パワーアップ事業(注8)を活用し、総販売額の10%以上の増加を成果目標に、自動包装ラインなどの整備を行った。
これに加えて、万全の周年出荷体制を整えるため、冷蔵施設を増設し、販売先の需要に応じて弾力的に供給できる体制の整備を進めている。
注8:産地パワーアップ事業とは、TPP等の国際環境の変化にも対応できる収益力の高い産地づくりを進めるため、産地が地域の営農戦略として「産地パワーアップ計画」を定めることにより、その計画に参加する意欲ある農業者などが行う高収益な作物・栽培体系への転換などを図るための施設の整備、機械・資材の導入などを総合的に支援する事業(参照引用 農林水産省のホームページ)。
大隅ごぼう団地を取材した日(平成31年2月20日)は、新城氏の新ごぼうの収穫日であり、圃場に着くと、あたり一面ごぼうの香りが漂っていた。
香り豊かな若掘りごぼうは、鹿児島県内の複数の飲食店で、「ごぼうのフライ」などで提供されており、その香りと味で県内外の来店者を魅了する一品となっている(写真8)。
今回の取材を通じて、大隅ごぼう団地の主たる強みは、
① 共同選別により生産者は生産、4農協は生産者ごとの出荷計画の策定・管理、大隅野菜事業所は全体の出荷・販売計画の策定、選果作業、それぞれの専門に特化して取り組みを進めることができる点
② 広域の産地形成により、弾力的な出荷調整を行うことで全体の計画を大幅に変えることなく安定した出荷を行える点
③ 耕畜連携を図ることで、連作に弱いごぼうの土づくりを強化できる仕組みがある点
などであるとの印象を抱いた。
これらの強みが、買い手から見た際に、安定的に高品質の若掘りの洗いごぼうを周年で調達できるとの安心感を生み、売り場を通年確保できる信頼できる産地としての認識を高めているのではないだろうか。
また、視点を変えれば、同一品目において、出荷形態を変えることで、多様化する消費者のニーズにあわせた市場が、新たに見いだせる可能性が他の品目においても起こり得るかもしれないという期待が持てる例であるとも感じた。
ごぼうを求める消費者の視点に立つと、調理時間を短縮したいときには洗いごぼう、保存性などに優れ、調理の手間を惜しまないときには泥付きごぼうと、選択の幅が広がり、ひいては国内産ごぼうを購入する機会が増えていると考えられる。
(謝辞)
最後になりますが、ご多忙の中、取材にご対応いただきました大隅ごぼう団地部会長 新城等様、香織様、JAそお鹿児島輝北支店指導員 園田茂様、JA鹿児島県経済連大隅野菜事業所長 福島純一様、また今回の取材のきっかけや大隅ごぼう団地の変遷について助言をいただきました公益社団法人鹿児島県青果物生産出荷安定基金協会事務局長 秋丸博文様にこの場を借りて改めてお礼を申し上げます。
参考文献
1.『農業かごしま』 平成28年1・2月号(第68巻 VOL738)
「‘鹿児島県産新ごぼう・サラダごぼう’産地拡大推進の取組み」農産園芸課 野菜係
「大隅ごぼう団地における新ごぼう・サラダごぼう産地拡大の取組み」大隅地域振興局 農政普及課
2.『農業かごしま』 平成30年5・6月号(第70巻 VOL752)
「市場から見た県産若掘りごぼうの有利性と期待」東京事務所 流通情報課
「現地における技術的課題への取組状況」農業開発総合センター 普及情報課
「能力が拡大した「若掘りごぼう」の選果選別体制」JA鹿児島経済連 野菜振興課
「「若掘りごぼう」周年栽培に向けた9~11月どり作型の開発」農業開発総合センター 大隅支場