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調査・報告(野菜情報 2018年11月号)


加工用野菜大規模経営の現状と課題~青森県の農事組合法人舮作興農組合へなしこうのうくみあいを事例に~

岩手大学 農学部 食料生産環境学科 教授 佐藤 和憲

【要約】

 昭和51年に青森県深浦町舮作へなし地区5戸で設立された農事組合法人舮作興農組合は、200ヘクタール余りの広大な畑地で、熟練した従業員が高能率な大型機械化体系と合理的な作付体系によってだいこん、にんじん、ばれいしょなどの露地野菜を生産している。生産された野菜を、食品メーカーと契約取引し、だいこんは漬物用、にんじんはジュース用など主加工用野菜の大規模生産・販売を継続し、売上高を安定させ、40年以上にわたって、大規模経営を営んでいる。

1 はじめに

 加工・業務用野菜には、レストランやファーストフードで用いられるカット野菜などの業務用野菜と食品メーカーが調理済食品、ジュース、漬物などの原料として用いる加工用野菜に分けられる。後者の加工用野菜は、業務用野菜以上に低コストと安定供給が求められるが、北海道の畑作で生産されるたまねぎやばれいしょを除いた国産野菜は、狭小なじょうで手作業を主体にした生産体制にあることから高コストで供給が不安定になりやすい。このため、平成期に入ると円高を背景として加工用野菜の輸入が増加してきた。しかし、近年、消費者の安全・安心志向の強まりや最大の供給国である中国における国内需要の増加による価格上昇により、国内の食品メーカーは日本国内からの調達を強化しつつある。

 そこで、本稿では、過去40年以上にわたって加工用野菜の大規模生産・販売を継続してきた青森県深浦町の舮作興農組合を事例とし、その形成・展開過程を検討することにより、加工用野菜の低コスト化と安定生産に向けた現状と課題を明らかにしたい。

2 農地開発と大規模野菜経営

 地域概況

 青森県深浦町は、青森県の西南部、秋田県境に位置し、東に白神山地を擁し、西は日本海に面している(図1)。海岸近くまで山岳が迫っているため、森林、原野が約90%を占め耕地は少ない。日本海側気候で、冬季の風雪は厳しいが、積雪量はそれほどなく、夏季は奥羽山脈にヤマセがさえぎられるため低温害は受けにくい。このためか年平均気温は10~11度と青森県内では比較的温暖である。

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 高齢化と過疎化が進んでおり、人口は平成7年(1万2546人)から27年(8429人)の間に32.8%減少し、27年の高齢化率は44.8%全国平均26.6%であった。産業は、かつては漁業と農業の半農半漁が主体であったが、現在では建設業や観光関連業が主要な産業となっている。

 農地は日本海岸沿いに零細な水田が、台地上に広大な畑地が広がっている。農業産出額の部門別構成を見ると、平成28年には野菜65%、米19%、いも類13%が上位3位を占めており、金額ベースでは、野菜が主幹部門になっている。

(2) 農地開発と舮作興農組合の設立経緯

 かつて深浦町の農業は、自給的な水稲生産を主体とした零細な小規模経営が大半を占めていた。昭和40年代前半には、町内の舮作・月屋地区の東部に広がる標高200メートル前後の広大な原野の一部がパイロット事業により40ヘクタール余りの畑地として開拓された。しかし、地元への増反(注)でありながら地元住民には畑作の経験がなかったこともあり低利用になり、原野に戻りかけていた。

 昭和50年になると、先に開発された畑地の再開発と周辺原野の開発が課題となった。町内有力者の中には地区外から農業参入を受け入れざるを得ないという声もあったが、地元舮作・月屋地区で漁業を主とした農漁家であった坂本正人氏現・舮作興農組合代表理事 は、地区の振興を図るには地元民による再開発が望ましいと考え、地区の有志を集い大規模畑作農業への新規参入を決意した。パイロット事業で開拓された畑地は元々地元増反であったこともあり、地元民の坂本氏らが引き継ぐこととなり、外部からの参入経営は新たに原野を開拓して入植することとなった。こうして51年に坂本氏ら舮作・月屋地区の戸による農事組合法人農業生産法人舮作興農組合以下「舮作興農組合」というが設立された(写真1)。

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 しかし、それまで坂本氏らはどちらかというと漁業を中心に生計を立ててきたこともあり、畑作それも大規模営農の経験はなく資金も乏しかったため創業は容易ではなかったとみられる。幸い既に周辺地域に広がりを見せていた漬物用だいこん契約栽培の引き合いが関東の漬物業者S社からあり、これに応じて営農を開始することになった。これまで価格の安定していた水稲だけを栽培してきた坂本氏らにとって、畑作特に野菜は価格変動が大きいことが心配であったが、漬物用だいこんは契約栽培で価格が安定していることから取り組みを決意したのである。しかし、栽培技術はほとんどなかったため、周辺のだいこん農家から見聞きしたり、農業雑誌の記事を参考にして、手探りで栽培を始めた。

 初年度は公的資金の借入も間に合わなかったため、トラクタ-を借用して耕起・整地作業を行い、手押ししゅで播種して、人力で収穫することとなった。翌年には、法人として旧農林漁業金融公庫(現 株式会社日本政策金融公庫)から5500万円、不足分は個人で借り入れて、農地取得、トラクタ-(2、加工場などの整備に充てた。

 創業に際して関係機関からの特段の後押しがあったわけではないが、その後、農業改良普及所からは栽培技術面での指導を受けてきた。また事業開始後は農協とも一部野菜の販売や資材購入について取引を行っている。

注:開拓地への入植方法のことで、開拓地の外部から入ってきて新たに営農を開始する入植に対して、元々、開拓地周辺で営農している農家などへの開拓地を配分することを増反と呼ぶ。

3 経営概況

 舮作興農組合は深浦町舮作地区に本社を置く農事組合法人農地所有適格法人で、設立当初は組合員5名であったが、高齢化などによって離脱し、現在は実質的に代表理事・坂本正人氏の1戸1法人である。

 農地は、表1のように、法人名義の所有農地63.9ヘクタールの他に、約50戸からの借地が142ヘクタールあり、経営耕地は205.9ヘクタールとなっている。これらの農地は、原野や遊休状態となった農地を借地したものである。本社のある深浦町だけでなく、隣接する鯵ヶ沢町、弘前市にもあり、全体で約50カ所に分散している。支払い地代は10アール当たり平均2200円と低く、一部無償で借りている農地もあるが、借地面積が広いため年間支払総額は220万円にも及んでいる。

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 労働力は代表理事の坂本氏を除いて、従業員15名男子名、女子で、給与は年間250~300万円、社会保険と厚生年金に加入している。この他に月から翌年月までの期間パートを約30名雇用している。従業員とパートはすべて深浦町の居住者である(写真2)。

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 機械装備は表2の通りで、圃場が大面積かつ分散しており、気象条件から作業適期が短期間に限定されることから、高性能な大型機械を装備している。耕起・整地を効率的にこなすために大出力のトラクタ-を多数台装備しているほかに、播種・植付についてはだいこんとにんじんのテープシーダーアタッチメント、ばれいしょの植付機ポテトプランター、収穫についてはだいこんの全自動収穫機、にんじん・ばれいしょの掘取機ポテトディガー、防除については自走式およびトラクタ-アタッチメントのブームスプレアを装備している(写真3)。中耕にはロータリーカルチアタッチメントを使用している。

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 加工場は1棟であるが増築を重ねており約1400平方メートルの広さがある。内部にはだいこんの一押用(荒漬)の塩蔵槽300トンが設置されている他、一部は農機具庫を兼ねている。この他、外部に100トンの塩蔵槽を装備した加工場も有している。

 なお、農機や施設の導入・更新に際しては、創業時を除くと補助事業を利用していなかったが、最近トラクタ-とハーベスタの更新については補助事業を利用している。

4 生産・販売実績

 舮作興農組合は漬物用だいこんの生産から事業を開始したが、現在、主な生産品目はだいこん、にんじん、ばれいしょの露地野菜となっている(写真4)。近年最も作付面積が多いのは、だいこんで約80ヘクタール(約5600トン)、次いでにんじんが約40ヘクタール約2400トン、一時50ヘクタール作付けしていたばれいしょは、現在は3ヘクタールに減少している(表3)。これらの他に、近年、やまのいもとながいもの交配種であるネバリスターを試験的に栽培しており、今後、生産の拡大を検討している。

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 だいこんの用途は漬物用で関東S社と県内Y社に販売しているが、95%は自社で塩蔵してから出荷しており、青果での出荷は5%に過ぎない。だいこん価格は年次、季節による変動が大きく、収穫期に青果で販売してしまうと、売上高はその時々の市場相場に大きく左右されてしまう。このため、漬物用だいこんを生産する大規模農家や産地集荷業者は、自社で塩蔵した後、相場を見ながら塩蔵だいこんを1年前後にわたって販売することにより価格変動リスクを軽減している。こうした産地での塩蔵加工は、実需者である漬物業者にとっても塩蔵施設への投資と操業コストの削減、塩蔵ロスなどに伴うリスクの軽減にもなる。

 にんじんは大手加工食品メーカーのジュース原料向けが60%を占めているが、残り40%は県内の卸売市場に青果として出荷している。なお積雪期の12月から3月の間に収穫したにんじんは、ジューシーで高糖度の「ふかうら雪人参」としてブランド化されている(写真5)

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 ばれいしょは青果として農協系統を通じて首都圏と県内の卸売市場に出荷していたが、現在は全量を県内卸売市場に直接出荷している。

 舮作興農組合全体の年間売上高は年次により変動はあるが、近年は1億5000万円から2億円程度の範囲で安定した売上高で推移している。内訳はだいこんが7割、にんじん2割強、ばれいしょなどが1割弱とられる。

5 組織体制

 舮作興農組合全体の経営管理は、代表理事である坂本氏が統括するとともに、労務・作業管理、営業・販売、財務を担当している。なお、これら事務処理について、坂本氏夫人の繁子さんが担当されている。

 まず、労務・作業管理については、従業員・パートの勤怠管理の他に、従業員・パートへの作業指示を出している。以前は毎朝ミーティングを行っていたが、最近は1日の作業予定表を示すことによってこれに替えている。またパートに対してはパートのチーフを通じて指示を出している。従業員、パートの勤務については、1日8時間勤務で、勤怠はタイムレコーダーで管理している。従業員は農作業の状況に応じて休みを取るようにしているが、パートは日々の本人の都合で勤怠を決めている。

 営業・販売については、かつて月回程度は県内外の取引先に出向いていたが、最近は取引先がほぼ固定化していることから電話などでの商談に替えている。

 財務については、舮作興農組合は、事業規模が大きいだけに種苗や資材の購入にかかる運転資金も多額に上る。しかし、これまでは短期資金は借り入れていなかったが、近年は人件費の支払い、種芋、農薬などの購入代金の資金を銀行などから借り入れ資金繰りを改善している

 圃場と加工場の作業体制について見ると、従業員は誰でもどの作目のどの圃場作業もできるように訓練されているため、作業分担は固定化せず作目と時期によって柔軟に作業班を組み替えて当たっている。ただし、圃場作業うち機械作業や重作業は男性従業員が担当しており、女子パートが担当する圃場軽作業は、パートのチーフが指示を出している。加工場は約10名が専任的に担当しているが、圃場作業が忙しいときは応援に出ることもある。

6 生産体系

 舮作興農組合は露地野菜栽培を行っているが、その生産体系は都府県の一般的な露地野菜農家とは異なり、北海道の大規模畑作経営と類似点がある。

 まず、寒冷な気候条件から生育期間が春から秋に限定されるため年作であるが、大規模な面積をこなすために徹底した作業分散が図られている。播種期は図2のように、何れの作物とも月~月に集中しているものの、最大の労働ピークとなる収穫作業は、青首だいこん(6月下旬~11月中旬、ばれいしょ(8月中旬~月中旬、白首だいこん10月下旬~12月、にんじん12月中旬~月中旬とほぼ10カ月に分散させている。   

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 また、先に指摘したように露地野菜は収量と価格の変動が大きいため計画通りにはいかないが、特に北東北では、年1作のため一度失敗してしまうとその年には取り返しが付かない。このためいずれの作目とも耕起・整地から播種・定植、栽培管理、防除、収穫に至る作業は、トラクタ-とアタッチメントまたは専用農機によって能率的に処理できる体制が確立しているが、それだけではなく、限られた適期に一挙に作業を終えられるようにも配慮されている。舮作興農組合ではトラクタ-を始めとした主要農機やアタッチメントを複数装備することにより複数圃場での併行作業を可能としている。さらに男子従業員は、いずれの作目のいずれの作業についても、大型農機を使いこなして作業を行える能力を持っている。

 このように作業時期の分散化、高能率な機械化体系と習熟した従業員によって200ヘクタールを超える大規模な面積を能率的かつ効率的にこなすことが可能となっているといえよう。

 他方、野菜を含めた畑作経営では、地力の維持、連作障害土壌流亡の防止に配慮した作付体系を確立することが持続的な経営には不可欠である。舮作興農組合では施肥に有機肥料を使用しているだけでなく、だいこん、にんじん、ばれいしょなどの根菜類は、エン麦、ライ麦といった緑肥作物と輪作することによって、地力かんようと線虫対策を図るとともに、土壌流亡も防止している。具体的には、初夏から夏に収穫するだいこんは、収穫直後にエン麦を散播し、降雪前にプラウ耕反転でき込む。また秋から冬に収穫するだいこんやにんじんは、春にエン麦を栽培し、初夏から夏に鋤き込んでから播種している。また、年間、緑肥作物のみを作付ける圃場も全畑地の3~4割を占めている。その他、特に線虫害のひどい圃場は、だいこん、にんじんの生育期間中のうねにもエン麦を播種している。

 にんじんについては、先に述べたように12月以降の冬期まで圃場に置いて、より糖分が蓄積されフルーティな甘さをもった状態になってから収穫することにより、糖度度前後、高いものは12度を超えるものもある(写真)。

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7 加工体制

 先に述べたようにだいこんは、大半を加工用の塩蔵品として販売している。そのために、本社の加工場に300トン、外部の加工場に100トンの塩蔵槽をもっている。加工用だいこんは、9月末ころから収穫が始まる(写真)。だいこんはトラクタ-に取り付けられた掘取機で掘り上げられると、これを女性パートが土を落として圃場にそろえて並べていく。さらに包丁でヘタ部分をカットしてから、トラクタ-に取り付けられた運搬車に積み込む。これを加工場に運びこみ、塩蔵槽に並べてあら塩を振る。早いものは数日後、塩蔵しただいこんを洗浄し、さらに数種類に選別してポリエチレン製の樽に入れ重石を乗せてから、各取引先にトラックで発送する。塩蔵だいこんは、長期間の貯蔵も可能なので、長い場合は翌夏まで販売することになる。

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 この加工用だいこんの収穫・塩蔵作業は、降雪前までに終わらせる必要があるため、天候を問わず連日の作業となる。このため、圃場でだいこんを収穫する収穫班、加工場でだいこんを洗浄して選別する洗浄選別班、さらに加工場で塩蔵槽に漬け込む漬込班の3つの班に分かれて作業するといった流れ作業体制をとることにより無駄な移動時間を節約して能率を上げている(写真~10)。

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8 舮作興農組合の特徴と今後の課題

 舮作興農組合は野菜生産経営としては極めて大規模でかつ加工事業を統合しているユニークな存在であるが、その特徴と課題は下記のように整理できる。

 第一に、露地野菜経営としては全国で有数の大面積の農地を集積していることである。この大面積の農地が大規模露地野菜生産のベースとなっている。近年、北海道や南九州に大規模な露地野菜経営が形成されているが、これらと比較しても遜色のない面積規模である。舮作興農組合では、原野開発や遊休農地の借地の積み重ねによって大面積を集積してきた。

 第二に、このような大面積の畑地を野菜生産に能率的、効率的に使用できる生産体系を確立していることである。まず大面積の作業を短時間で能率的に処理できる機械体系が確立している。また、作目の特性と季節に応じて播種・定植と収穫を設定することにより、労働ピークを分散させた作付体系が確立されている。さらに多様な圃場作業に柔軟に対応できる習熟した従業員を養成している点も重要である。こうした機械化体系と作付体系およびこれを動かす熟練した従業員によって大面積を能率的にこなすことが可能となっている。

 第三に、加工原料用野菜の低い価格に応じた生産コスト削減対策を実施していることである。まず雇用型経営である舮作興農組合では労賃コストの削減が不可欠であり、機械化はそのための最重要手段であるが、舮作興農組合では先に述べたように大型農機による機械化体系を確立している。ただし、機械化により面積当たりの作業時間を短くしても、収量が低ければ生産物単位当たりの生産コストは高くなってしまう。このため単収の維持・向上も重要なポイントである。特にだいこんでは連作障害による収量低下が問題となりやすく、これによって衰退・消滅した経営や産地もある。舮作興農組合では、緑肥作物を作付体系に組み込むことにより、連作障害だけでなく地力低下や土壌流亡の防止を図り収量を維持・向上している。

 第四に、主幹作目として加工用野菜を選択し、かつその販売チャネルとして漬物業者との契約取引を選択することにより、売上高の安定化ひいては経営の安定化を図っていることである。舮作興農組合のような雇用型経営、それも正社員がいる農業経営では月々の給与を確実に支払うことが不可欠であり、そのためには売上高が安定していることが条件となる。しかし、露地野菜の一般的な販売チャネルである卸売市場では価格は日々変動するため売上高は安定しない。このようなことから、舮作興農組合では創業当初から主幹作目の販売チャネルとして、だいこんは首都圏の漬物業者S社などと漬物原料としての契約取引、にんじんは大手食品メーカーとのジュース原料としての契約取引を選択するとともに、ふかうら雪人参として商標登録してすることにより価格と売上高の安定化を図っている。

 今後の課題としては、次世代への事業継承が上げられる。舮作興農組合は、5戸協業の組織経営体として発足したが、現在は実質的に1戸1法人になっているため、何れ坂本氏の子弟が継承するか否かといった後継者問題が浮上するであろう。

9 おわりに

 以上のように舮作興農組合は、加工用野菜に特化した大規模経営を40年以上にわたって継続してきている。この間、事業規模の大幅な拡大はなかったが、大規模野菜経営としての事業基盤と持続性を固めつつ、時々の市場動向にも対応してきたことが長期にわたる事業継続につながったのであろう。

 今後の課題としては、先に述べたように次世代への事業継承が上げられるが、舮作興農組合の農業生産、加工については十分システム化されており、熟練した従業員が定着している。このため経営継承の如何を問わず、農業経営として存続していく可能性は十分あると言えよう。



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