[本文へジャンプ]

文字サイズ
  • 標準
  • 大きく
お問い合わせ

調査・報告(野菜情報 2017年1月号)


第27回加工・業務用野菜産地と実需者との交流会の概要

野菜業務部直接契約課

要約

 当機構は平成28年11月15日、野菜流通カット協議会との共催により、第27回となる加工・業務用野菜産地と実需者との交流会を、東京都大田区の東京流通センターにおいて開催した。全国各地から多彩な100の事業者・団体が出展、また、生産者と実需者との特別商談会では、28件の商談会が行われた。

 はじめに

野菜の加工・業務用需要の割合は、昭和50年ごろは全需要量の割程度であったが、食の外部化の進展などにより、平成22年には割近くまでに増加している。

一方、国産野菜は、過半が家計消費用に仕向けられており、今後とも増加が見込まれる加工・業務用需要に対する国産野菜の安定的な供給体制を確立することが重要となっている。

このため、当機構では、18年度から野菜流通カット協議会との共催により、加工・業務用野菜産地と実需者との交流会(通称:国産野菜の契約取引マッチング・フェア)を開催している。去る28年11月15日、第27回目の交流会を東京流通センター(東京都大田区)において開催したので、その概要を紹介する(写真)。

065a

066a

 100の事業者・団体が出展出展ブース

今回は、100の事業者・団体(生産者団体、生産者40、流通業者19、加工業者、種苗会社11、植物工場、その他)が出展し、北海道から鹿児島まで全国から多彩な参加者が顔をそろえた。多数の来場者(708名)を迎える中で、各ブースや商談スペースでは、商談が盛んに行われた(写真)。

066b

以下、いくつかの出展者の概要を紹介する。

(1)生産者団体

全国農業協同組合連合会 群馬県本部(群馬県)は、近年、青果物の一次加工処理のニーズが増していることから、前橋市内に青果物一次加工センターを整備して、平成28年月に稼働を開始した。顧客のさまざまな要望に応じてキャベツの分の分のカットや、芯取りなどの処理を行えることから、さまざまな加工形態の青果物を展示していた。なお、センターで加工処理した際に出る青果物の残渣は、飼料化された後に、エコフィードとして管内の養豚場に供給されるなど、資源を有効利用する取り組みが行われているという(写真)。

066c

なん駿すん農業協同組合プチヴェール部会(静岡県)は、沼津市(戸田地区・井田地区を除く)、裾野市、清水町、長泉町を管内とするJA内にある部会で、静岡県生まれの新野菜であるプチヴェールを展示していた。プチヴェールとは、青汁の元「ケール」と「芽キャベツ」を掛け合わせて作られた世界初の結球しない芽キャベツであり、ビタミン、カロテン、鉄分、カルシウムの含有量が多く、栄養価の高さから「畑のミルク」と言われている。糖度が11から13度と甘味があるため、食べやすい野菜といった特徴があり、地元の学校給食にも取り入れられるなど、注目度が増しているという(写真)。

067a

(2)生産者

株式会社すずなり(静岡県)は、レタスやえだまめなどを生産する法人で、自社農場で採れたレタスをリヤカーに満載し展示が、会場内で一際目を引いていた。新鮮なレタスを温めた和風のだし汁に通したレタスしゃぶしゃぶを来場者に提供することで、新たな食べ方を提案していた。同社は、農業を目指す若者を積極的に受け入れて農業研修を実施する他、新規就農者の雇用・育成に取り組んでいる。また、静岡県を中心に、耕作放棄地を開墾し、じょうを分散しながら作付面積を拡大するとともに、モスバーガーなどを販売するモスフードサービスとの共同出資会社「モスファームすずなり」を設立してレタスの契約栽培を進めるなど、さらなる安定供給に力を入れているという(写真)。

067b

(3)流通業者

ニーズ株式会社(北海道)は、肥沃な大地で採れた北海道産野菜を「Hokkaido Snow Jewels」というブランド名で流通させており、伊達市で採れる伊達野菜を展示していた。伊達市は北海道の南西部に位置するため、道内では温暖な気候であり、冬でも野菜生産が可能であるという。また、珍しい野菜や、通常、他の地域では生産できない時期に、気候の違いを利用して生産される野菜も多数あり、取扱数は約100種類200品目に及んでいる。これらの北海道産の伊達野菜を自社の流通ネットワークで、全国各地の百貨店や量販店への販路拡大を目指している(写真)。

067c

株式会社トレード(京都府)は、平成24年に立ち上げた京野菜ブランド洛市で取り扱っている京都府内で生産された京野菜を展示していた。生産者と量販店を結ぶ画期的な野菜流通システムを構築し、不要な流通コストを削減することで、同社の京野菜ブランド洛市は、高品質・安定価格での販売を実現した。これにより、従来、百貨店での取り扱いが多かった京野菜が、北海道から沖縄まで全国各地の量販店でも陳列されるようになり、多くの消費者にとって、京野菜が身近なものとなって、野菜を選ぶ際の選択肢の一つとなる機会が増えたという(写真)。

068a

(4)種苗会社

ナント種苗株式会社(奈良県)は、すいか、かぼちゃ、メロン、だいこん、ほうれんそうなどを中心に品種開発を行う種苗メーカーであり、多くの種子や苗を取り扱う中で、ブースが華やかに映える工夫を凝らした珍しい野菜を展示しており、彩り鮮やかな野菜が並ぶその印象の強さから、多くの来場者が足を止めていた。特に来場者の関心が高かったものは、そのまま生食もできるバターナッツかぼちゃの種、外皮のみならず内部までしっかり深紅色をしたミニだいこんや、抗酸化物質の一種であるアントシアニンを多く含有する紫色がとても鮮やかなはくさいなどである(写真)。

068b

(5)植物工場

JFEライフ株式会社(東京都)は、兵庫県三田市と茨城県土浦市にあるハウスで生産したリーフレタスを展示した。ハウスは全面ガラス張りで太陽の光をふんだんに取り込める上、農薬を使わず清浄な水で育てる水耕栽培であることから、水と太陽の恵みで育った「あんしん野菜・エコ作」というネーミングで販売している。こだわりの水耕栽培を続けて30年にもなるという同社の野菜は、最先端の制御技術でハウス内の栽培環境を最適化しており、天候に影響されにくい栽培を実現することで、一年中、旬の野菜を安定した価格で全国の消費者へ供給している(写真10)。

069a

(6)その他

埼玉県・オーダーメイド型産地戦略協議会(埼玉県)では、埼玉県内で生産される多彩な農産物を展示していた。埼玉県の平成27年の農産物別出荷量は、こまつなが全国1位、ほうれんそう、ねぎ、さといも、かぶがそれぞれ全国2位、ブロッコリーが全国3位となっており、全国有数の野菜産地である。近年、加工・業務用野菜の需要が高まる中で、埼玉県と同協議会では、食品・医薬品・化粧品などの製造メーカーのニーズにあった農産物を生産する、「マーケット・イン」の発想に立った「オーダーメイド型産地づくり」に取り組んでいる。ブースでは、県内の産地と契約取引を希望する実需者との商談が盛んに行われていた(写真11)。

069b

 特別商談会の開催 28件の個別の商談を実施

具体的な商談と成約を後押しするため、予約制の「特別商談会」を実施した。この商談会は、あらかじめ実需者および出展者の双方から商談を希望する相手先を募り、これを基に商談の場をセット(マッチング)するもので、今回、実需者者と出展者14者が参加し、28件の商談が行われた。

 事業説明、セミナー・意見交換会も盛況セミナー会場

当機構では、平成14年度以降、野菜の契約取引における生産者リスクを軽減するため、契約野菜安定供給事業などを実施している。

本交流会では、会場内に設けられたセミナー会場において、農林水産省および機構担当者から、次産業化法の認定を受けたリレー出荷に取り組む生産者に対する特例措置などを含む契約野菜関連事業について説明を行った(写真12、13)

070a

070b

また、同会場では、野菜流通カット協議会主催の「野菜産地と実需者によるセミナー」が開催され、約150名もの参加があった。

始めに「加工・業務用野菜など青果物の需要形態の変化に対応した長期貯蔵の役割」として千葉大学大学院 園芸学研究科 教授 椎名 武夫 氏が基調講演を行った。その後、「スーパーフレッシュ冷蔵庫を利用した青果物の長期保存技術について」として、株式会社前川製作所 加工食品グループ 課長 比留間 直也 氏が、また、「低温高湿度発生機(コスモファン)を利用した青果物の長期保存技術について」として、北九州青果株式会社 顧問 林 啓祐 氏が話題提供を行った。さらに「レタス産地におけるレタス類の夏場の長期貯蔵について」として、野菜流通カット協議会会長で中間事業者の株式会社彩喜 取締役社長木村 幸雄 氏が、青果物の長期貯蔵について話題提供を行った。

質疑応答では、レタス類以外の品目で長期貯蔵した場合の事例、長期貯蔵の可否について今後取り組む必要がある野菜の品目、長期貯蔵のランニングコスト、長期貯蔵技術の今後の展望など活発な質問が出され、参加者はやりとりを熱心に聞いていた(写真14、15)。

071a

071b

 おわりに

当機構では、野菜の契約取引における生産者のリスクを軽減する経営安定対策事業や、収入確保のためのセーフティーネット対策としてのモデル事業に加え、平成26年度からは、加工・業務用野菜の生産に取り組む産地の基盤強化を支援する補助事業にも取り組んでおり、加工・業務用野菜の取引と生産の拡大に対してさまざまな支援を行っている。

加工・業務用野菜に対する産地側、実需側双方のニーズの高まりを受けて、本交流会は毎回好評をいただいており、今後も、産地と実需者とのマッチングの場を提供していくこととしている。

最後に、本交流会を開催するに当たり、出展者や来場者の募集、交流会の周知などに多大なご協力を頂いた関係者の皆様方に、この場を借りて厚く御礼を申し上げる。



参考・引用文献

○ 出展者一覧(順不同、敬称略)

【生産者団体】

全国農業協同組合連合会 山形県本部、全国農業協同組合連合会 茨城県本部、全国農業協同組合連合会 群馬県本部、日本ブランド農業事業協同組合、なん駿すん農業協同組合プチヴェール部会、東近江市フードシステム協議会、大阪府野菜共販農協連絡協議会、阿波市農業生産法人協会、鹿児島県経済農業協同組合連合会

【生産者】

有限会社渋田産業、株式会社北海道サラダパプリカ、さわのはな倶楽部、マクタアメニティ株式会社、有限会社アクト農場、株式会社いばらき農流研、株式会社Tedy、株式会社野口農園、株式会社ハラキン、有限会社水戸菜園、農地所有適格法人キングラン農園茨城株式会社/キングラン南国農園熊本株式会社、株式会社野菜くらぶ/グリンリーフ株式会社株式会社旦千花

南総ナバナネット、株式会社オリザ、株式会社サラダボウル、農業生産法人 株式会社ファームかずと、株式会社ミスズライフ、有限会社橋場農園、有限会社佐野ファーム、株式会社鈴生、こと京都株式会社、アイ・エス・フーズ株式会社、有限会社エーアンドエス、有限会社有田園芸農場、有限会社丸浅苑、百姓百品株式会社、農事組合法人ドリームマッシュ、農事組合法人サンエスファーム、有限会社コウヤマ 芋屋長兵衛、坂上農園、株式会社農テラス、株式会社タカヒコアグロビジネス、農事組合法人ECOマッシュ、農業生産法人 株式会社新福青果、矢野園芸、ファーム(永山製茶)、株式会社オキス、農業生産法人 株式会社さかうえ、鹿児島高槻電器工業株式会社

【流通業者】

ニーズ株式会社、有限会社自然館、株式会社あらき、株式会社はにーびー、株式会社オーガニック・ヘルス・コミュニケーションズ、地養菜協会、株式会社創風土、ナラサキ産業株式会社、リッチフィールド株式会社、飯山中央市場株式会社、株式会社トレード、農業生産法人 有限会社新家青果、ハートファーム株式会社、株式会社ブレスト、愛媛うまいもの販売株式会社、株式会社クロスエイジ、有限会社マスターフード、株式会社ITファーム宮崎、南九州野菜流通協議会(株式会社ニチレイアグリ)

【加工業者】

明陽食品工業有限会社、株式会社健食、富士食品工業株式会社、サンポー食品株式会社、株式会社mamato、株式会社LIKE TO DO JAPAN製薬、クラカグループ、株式会社豊後大野クラスター

【種苗会社】

株式会社渡辺採種場、タキイ種苗株式会社、株式会社トーホク、カネコ種苗株式会社、みかど協和株式会社、雪印種苗株式会社、渡辺農事株式会社、パイオニアエコサイエンス株式会社、横浜植木株式会社、ナント種苗株式会社、株式会社大和農園

【植物工場】

株式会社誠和(トマトパーク事業部)、株式会社野菜工房、有限会社アーバンファーム、JFEライフ株式会社 野菜事業部、北陸機材株式会社 スマイルリーフ スピカ事業部、小林クリエイト株式会社、オリックス株式会社

【その他】

株式会社つくば分析センター、埼玉県・オーダーメイド型産地戦略協議会、鹿児島市生産流通課、独立行政法人農畜産業振興機構特産業務部、野菜流通カット協議会、独立行政法人農畜産業振興機構

※出展者の詳細情報については、機構HP上の「交流会コーナー/野菜契約取引マッチング・ゲート」をご参照ください。

URL:http://www.alic.go.jp alic交流会 で検索



元のページへ戻る


このページのトップへ