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調査・報告(野菜情報 2016年8月号)


惣菜の小売販売動向調査の概要

野菜需給部

要約

 惣菜は近年、カット野菜や冷凍野菜をはじめとする加工・業務用野菜の用途として注目を集めている。食品スーパーなどにおける野菜を使用した惣菜の千人当たりの販売数量、販売金額などを調査した結果、増加傾向にあるものの、アイテム数は平成27年に、販売金額は26年から頭打ちになっている。また、平均販売価格は、原材料価格の上昇などにより上昇傾向となっている。しかしながら、21年以降の傾向を見ると、27年の野菜名が付された惣菜では、21年に比べ44%の増加となっている。野菜を使用した惣菜の消費は、今後の高齢化や個食化の進展、単身世帯の増加、健康志向の強まりなどを背景に増加するものと推察される。

 調査概要

(1)調査目的

当機構は、野菜を使用した惣菜について、平成21年から27年までのPOS(Point of Sales、販売時点情報管理)データを収集し、小売店における野菜を使用した惣菜の販売数量、販売金額などを調査することで、惣菜における野菜の直近の需要動向を把握し、今後の野菜の需給安定の取組みに当たっての基礎資料とすることを目的に実施した。

なお、調査対象とした「野菜を使用した惣菜」の範囲は以下の通りである。

 ①和惣菜  (煮物、煮浸しなど)

 ②洋惣菜  (コロッケ、ハンバーグなど)

 ③中華惣菜 (回鍋肉、餃子、焼売、肉まんなど)

 ④韓国惣菜 (ナムル、ビビンバなど)

 ⑤豆類   (きんとん、栗きんとんなど)

 ⑥弁当   (幕の内など)

 ⑦その他惣菜(オードブルなど)

 ⑧惣菜サラダ(味付け、調理されたサラダ)

(2)調査方法

ア 調査対象期間

平成21年月から27年12月

イ 調査対象店舗

株式会社KSP-SPおよび一般財団法人流通システム開発センター(以下「流通システム開発センター」という)が収集対象としている全国のスーパーマーケット(平成27年12月末現在150チェーン988店舗)。

ウ 収集POSデータから野菜を使用した惣菜データを抽出する方法

JICFS分類(注の「惣菜類」の中に属するPOSデータ(アイテム群)から、野菜名が付された惣菜および野菜を使用した惣菜を抽出した。

注:JICFSとは、JAN Item Code File Serviceの略称で、流通システム開発センターが管理運営を行う「JANコード商品情報データベース」システムを指す。JICFS分類は、本データベースに収録されたJANコード商品情報を効率よく利用できるように設定されたJICFS用の商品分類コード。

エ POSデータの分類方法

流通システム開発センターの分類(惣菜類「和惣菜」「洋惣菜」「中華惣菜」「煮豆」「その他惣菜」「サラダ」)を基本とし、ビビンバなどの韓国惣菜に分類されるアイテムは「韓国惣菜」と分類し、和、洋、中華における豆類の惣菜および「煮豆」を「豆類」として分類した。また、「その他惣菜」の中で、海鮮など野菜の使用が少ないアイテム、寿司、お握り、麺類を除いたものを「弁当」として分類し、野菜を使用したものを「その他惣菜」として分類した。さらに、野菜を使用した「サラダ」を「惣菜サラダ」とした。

オ POSデータの出力項目および集計方法

出力項目および集計方法は、表の通りである。

なお、集計に用いたPOSデータには、大型総合スーパーマーケットのデータや、店舗内で調理している惣菜のデータが含まれていないことに留意しておく必要がある。



 調査結果の概要

(1)年別推移

ア アイテム数の推移

アイテム数は、PB(プライベートブランド)の増加により緩やかな増加傾向にあったが、平成27年には和惣菜、中華惣菜、豆類の減少により全体も減少に転じた(図)。



27年の分類別内訳を見ると、和惣菜が最も多く50を占め、次いで中華惣菜14、豆類13、惣菜サラダ8%、弁当7%、洋惣菜6%となっている。

イ 千人当たりの販売金額と販売個数の推移

野菜を使用した惣菜全体の千人当たりの販売金額は、25年まで増加傾向で推移していたが、26年は、和惣菜、弁当、惣菜サラダが減少に転じたことから全体も減少し、さらに、27年も販売金額の割を占める中華惣菜や豆類も減少に転じたことにより全体でも年連続で減少した(図)。



ウ 平均価格の推移

一個当たりの平均販売価格は、その他惣菜を除き安定して推移しているものの、近年は原材料価格の上昇などにより上昇傾向となっている(表2)



(2)使用されている野菜の品目別に見た惣菜の動向

ア 全体の動向

野菜名が付された惣菜の千人当たりの販売金額は、21年の2945円から27年は4233円と43.74増加している(図)。商品名に野菜名が付されたアイテムをその野菜名ごとにグルーピングし、この増加率を品目別の寄与度(21年に対する27年度の増加率43.74の品目別内訳)で見ると、ばれいしょ、たけのこ、ごぼう、かぼちゃ、かんしょ、だいこん、れんこん、さといも、そらまめなどの名称が付された惣菜の増加の寄与度が大きい。一方、えんどう(えんどう豆、さやえんどう)、ねぎ、アスパラガスなどの名称が付された惣菜は減少となっている(表)。





イ 増加した主な野菜名が付された惣菜

①ばれいしょ

商品名に「ばれいしょ」が付された惣菜の千人当たりの販売金額は、25年までは増加傾向であったが、26年以降は緩やかな増加傾向で推移している(表4、)。

分類別内訳を見ると、惣菜サラダが最も金額が多く、そのほとんどがポテトサラダであるが、26年以降大幅に減少している。一方、和惣菜、洋惣菜が増加し、さらに27年は、中華惣菜も増加している。なお、アイテム数は、PBの増加により緩やかな増加傾向となっている(図)。



②ごぼう

商品名に「ごぼう」が付された惣菜の千人当たりの販売金額は、25年までは増加傾向で推移していたが、26年以降は横ばいで推移している(表5、)。分類別内訳を見ると、惣菜サラダが、25年までは増加傾向にあったが26年以降緩やかな減少傾向で推移し、代わって、和惣菜が増加傾向で推移している。

和惣菜の推移を見ると、きんぴらごぼうが26年以降で緩やかな減少傾向で推移しているものの、たたきごぼうや鶏ごぼうなどの煮物の増加により、全体では増加傾向で推移している。なお、アイテム数は、26年まで増加傾向であったが、27年は不作による国産原料不足によるアイテムの集約化により減少した(図)。



③かぼちゃ

商品名に「かぼちゃ」が付された惣菜の千人当たりの販売金額は、25年までは増加傾向であったが、26年以降ではほぼ横ばいで推移している(表6、)。

分類別内訳を見ると、惣菜サラダが27年に減少したものの、かぼちゃ煮などの和惣菜が増加傾向で推移している。

なお、アイテム数は、25年までは増加傾向で推移し26年はやや減少したものの27年は増加に転じている(図)。



④かんしょ

商品名に「かんしょ」が付された惣菜の千人当たりの販売金額は、25年までは増加傾向であったが26年は減少に転じ、27年はほぼ横ばいで推移している(表7、図10)。

分類別内訳を見ると、和惣菜が99とほとんどを占め、そのうちの割が栗きんとん、さつまいも煮が占め、これに焼きいもを加えると割を占めている。

和惣菜の推移を見ると、栗きんとんが25年以降減少に転じ、さつまいも煮も27年に減少している。焼きいもは、25年に減少したものの26年以降増加している。

なお、アイテム数は、26年までは増加傾向で推移していたが、27年は減少した(図11)。



⑤だいこん

商品名に「だいこん」が付された惣菜の千人当たりの販売金額は、26年には減少に転じたものの、27年には再び大幅に増加している(表8、図12)。

分類別内訳を見ると、和惣菜が割とほとんどを占め、そのうち大根煮物が割を占め、これに切干大根を加えると割を占める。和惣菜の推移を見ると、大根煮物は24年に増加傾向から減少に転じ、その後横ばいで推移したものの27年には再び増加し、切干大根はほぼ増加傾向で推移し、その他和惣菜は増加傾向で推移していることから、全体では増加傾向で推移している。一方、惣菜サラダは、22年以降、減少傾向で推移し、24年、25年に増加に転じたものの、26年以降に再び減少傾向に転じている。

なお、アイテム数は、和惣菜は増加傾向で推移しているものの、惣菜サラダが減少傾向で推移していることから、27年はわずかに減少した(図13)。



⑥れんこん

商品名に「れんこん」が付された惣菜の千人当たりの販売金額は、24年まで増加傾向で推移し、25年以降はほぼ横ばいであったが、27年は再び増加した(表9、図14)。

分類別内訳を見ると、和惣菜が87を占め、そのうち、きんぴらと水煮が割を占めている。和惣菜の推移を見ると、きんぴら、水煮が24年まで増加傾向で推移し、25年にはどちらも減少したが、水煮は26年以降増加し、きんぴらも27年は増加した。このため、和惣菜全体では、24年まで増加傾向で推移し、25年は減少したものの、27年は増加に転じた。

れんこんは、ポリフェノールなどによる抗アレルギー作用が注目されていることから、惣菜サラダは25年に大幅に増加し、26年以降はほぼ横ばいで推移している。

なお、アイテム数は、25年まで増加傾向で推移していたが、26年以降は、原料の主要輸入先国である中国の不作による原料不足から、アイテムが集約化され減少した(図15)。



⑦さといも

商品名に「さといも」が付された惣菜の千人当たりの販売金額は、全て、煮物、うま煮、海鮮煮物といった和惣菜となっている。その推移を見ると、23年までは、うま煮、海鮮煮物が増加したことにより増加傾向で推移し、24年以降はほぼ横ばいとなっている(表10図16)。

26年以降は、原料の主要輸入先国である中国における天候不順、円安による輸入価格の上昇による販売価格上昇(25年168円、27年183円)から千人当たり販売個数が減少(千人当たりの販売個数26年1.1個、27年0.9個)し、全体も減少傾向となっている。

なお、アイテム数は、25年まで増加傾向で推移していたが、26年以降は横ばいとなっている(図17)。



ウ 減少した主な野菜名が付された惣菜

①ねぎ

商品名に「ねぎ」が付された惣菜の千人当たりの販売金額は、22年をピークとして、25年に販売価格の上昇により増加したものの、減少傾向で推移している(表11図18)。分類別内訳を見ると、主体である和惣菜が大きく減少している。また、アイテム数も減少傾向で推移している(図19)。



②アスパラガス

商品名に「アスパラガス」が付された惣菜の千人当たりの販売金額は、主体である和惣菜の増減にあわせて推移しており、22年をピークに、減少傾向で推移している(表12図20)。

アイテム数も、22年をピークに減少傾向となっている(図21)。



エ その他増減した野菜名が付された惣菜

千人当たりの販売金額が最も多いのは、商品名に「たけのこ」が付された惣菜である。ほぼ全てが和惣菜であり、26年までは増加傾向で推移していたが、27年は減少に転じている(図22)。

「いんげん」が付された惣菜は、煮豆が多く、24年までは減少傾向で推移していたが、25年以降は増加傾向で推移している(図23)。

「ふき」が付された惣菜は、全て和惣菜で、23年まで減少傾向で推移し、24年に増加に転じたものの、25年以降再び減少傾向で推移している(図24)。



 野菜を使用した惣菜の市場規模推計

日本惣菜協会の推計によれば、25年における惣菜の市場規模は兆8962億円とされている。一方、本調査のPOSデータにおける25年の惣菜の販売額は244億円、このうち、野菜を使用した惣菜販売額は141億円と57.1を占めることから、野菜を使用した惣菜の市場規模は、兆797億円と推計される。

また、当機構が27年度に実施した「平成27年度惣菜用野菜の需要構造実態調査」によれば、惣菜事業者の惣菜販売額に占める野菜仕入額の割合は14.0であることから、惣菜原料野菜の市場規模は7112億円と推計される。同調査が推計した国産野菜の使用割合(約70)を用いると、国産の惣菜原料野菜の市場規模は4978億円と推計される。

25年の野菜の農業産出額は兆5159億円(生産農業所得統計 野菜豆類いも類)であることから、国内野菜産出額の約20が惣菜仕向けと推計される。

 今後の野菜を使用した惣菜の消費

総務省「家計調査」により調理食品の世帯主の年齢階層別一人当たり支出金額の変化率を見ると、二人以上世帯、単身世帯ともに、全年齢階層で増加しており、二人以上世帯では60歳代、単身世帯では、34歳以下の階層で変化率が特に高い(図25)

厚生労働省「国民生活基礎調査」によれば、「単独世帯」「高齢者世帯」「夫婦のみの世帯」「ひとり親と未婚の子のみの世帯」は増加傾向にある。家計における惣菜の消費は今後も、高齢化や個食化の進展、単身世帯の増加などを背景に増加すると推察される。




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