野菜業務部直接契約課
【要約】
当機構は、平成28年3月15日、東京都大田区の東京流通センターにおいて第26回となる加工・業務用野菜産地と実需者との交流会を、野菜流通カット協議会との共催により開催した。全国各地から多彩な127の事業者・団体が出展し、生産者と実需者との特別商談会では、77件の商談会が行われた。
野菜の加工・業務用需要の割合は、昭和50年頃は全需要量の4割程度であったが、食の外部化の進展などにより、平成22年には6割近くまでに増加している。
一方、国産野菜の供給については、その過半が家計消費用に仕向けられている中で、今後増加が見込まれる加工・業務用需要に対する安定的な供給体制を確立することが課題となっている。
このため、当機構では、18年度から野菜流通カット協議会との共催により、加工・業務用野菜産地と実需者との交流会(通称:国産野菜の契約取引マッチング・フェア)を開催している。今度、第26回目となる交流会を去る3月15日、東京流通センター(東京都大田区)において開催したので、その概要を紹介する(写真1)。
今回は、127の事業者・団体(生産者団体11、生産者50、流通業者25、加工業者18、種苗会社13、植物工場6、その他4)の出展となり、全国から多彩な参加者が顔をそろえた。初出展者は38の事業者・団体(生産者団体3、生産者20、流通業者7、加工業者8)と全体の約3割を占めた。一方、来場者も815名と多数迎え、各ブースや商談スペースでは、商談が盛んに行われた(写真2)。
また、齋藤 健 農林水産副大臣が来場され、オープニングセレモニーで来賓のあいさつをいただいた。その後、齋藤副大臣は、会場内を視察され、各ブースでは出展者と熱心な意見交換をされていた(写真3)。
以下、いくつかの出展者の概要を紹介する。
高知県園芸農業協同組合連合会(高知県)は、県内で生産された土佐甘とう(別名「ジャンボししとう」)、にら、青ねぎ、なばな、葉にんにく、みょうが、ズッキーニ、土佐文旦など、園芸主産県ならではの多様な品目を展示した。これらの品目は、形や大きさなどから市場流通になじまないものなども、トレー、袋、バラなどに小分けした販売と併せて加工・業務用としても販売するなど販路拡大を図っていた。また、県内産のしょうがやゆずを使った加工品について、さまざまな需要や用途、販売先に応じて、包装資材や加工形態を工夫するなど付加価値を付けた販売を行っていた(写真4)。
株式会社旦千花(千葉県)は、自社農場で自然酵素農法により栽培した江戸菜、紫こまつな、赤みずな、金美人参を展示した。江戸菜は、こまつなから生まれた新品種であるが、さらに自社で独自に改良し、栽培方法までこだわってオリジナルブランドとして販売している。この江戸菜は、茎がきれいな赤(紫)色をしている赤みずな、1本の重量が800グラムから1.5キログラムもある大江戸スカッシュ(ズッキーニ)とともに商標登録されている。これらの野菜は、レストランなどの外食産業に出荷されている他、自社直営店や直売のマルシェなどで販売され、好評を得ているという(写真5)。
株式会社ミスズライフ(長野県)は、カットぶなしめじとベビーリーフを展示した。カットぶなしめじは、石づきの部分をあらかじめ取り除いてあり、石づきを取り除く手間とごみの量を削減できるという利便性から、多くの利用者から支持を得て、毎年生産量が増加しているという。また、同社ではぶなしめじ生産後の培地と石づき部分を有効活用できないか試行錯誤を行い、これらを再処理して堆肥化する技術を確立した。この堆肥を利用してベビーリーフなどの野菜の生産を行うなど、循環型農業にも積極的に取り組んでいる(写真6)。
株式会社デュアルバランス(愛知県)は、次世代施設園芸加速化支援事業の愛知拠点として豊橋市に建設されている植物工場で栽培予定のミニトマト2品種を展示した。鮮やかな赤色のミニトマト(写真7の左側)はリコピン、オレンジ色のミニトマト(同写真の右側)はカロテンといった機能性成分を豊富に含んでおり、市場ニーズが見込めるとしてこの2品種を選定したという。この植物工場では、水処理場の放流水などを使用し、発電した熱エネルギーを温室暖房に利用することで暖房コストを削減するとともに、工場を3区画に分けて周年栽培することで、一年を通して安定的にミニトマトを出荷できるという(写真7)。
株式会社オキス(鹿児島県)は、自社農場をはじめ、地元契約農家との連携により生産しただいこん、にんじん、キャベツ、かんしょなどのさまざまな農産物に加え、約20キログラムもある鹿児島特産の桜島大根を展示し、多くの来場者の目を引いていた。また、同社では、にんじん、だいこん、ごぼう、れんこん、しょうがなどの乾燥野菜も製造しており、この商品も併せて展示した。味噌汁の具、きんぴらごぼう、炊き込みご飯などの料理に合わせて乾燥野菜をミックスして袋詰めにした商品が、袋から出してそのまま使える簡便性から消費者に好評だという。また、乾燥野菜の袋詰めは、常温で長期保存ができ、かつ、かさばらずに輸送しやすいため、国内をはじめ、シンガポールなどにも輸出されている(写真8)。
明陽食品工業有限会社(福島県)は、農産物の受託加工事業を中心としており、今回は自社製のジャムの他、受託加工により製造したドレッシング、ゼリー、トマトソース、ジャムなどの加工品を展示した。地域振興などを目的として、トマト、にんじん、たまねぎなどを原料とするドレッシングなどの委託加工の依頼が増加しているという。また、最近では瓶詰めのかんしょやかぼちゃの豆乳仕立てのポタージュなども消費者から好評だという。2年前の第23回交流会(札幌開催)では、北海道内の生産者との取引が生まれるなど、本交流会をきっかけに新たな取引が広がっているという(写真9)。
富士食品工業株式会社(群馬県)は、業務用・家庭用のもやしと、数多くのカット野菜を展示した。創業当初は主にもやしを取り扱っていたが、現在は、市場の需要が高まっているカット野菜も幅広く取りそろえている。焼きそばなど加熱調理用のものや、洗わずにドレッシングなどをかけてそのまま食べられるサラダ用のもの、袋詰めのものやプラスチック容器詰めのものなど、利用者や販売店舗のニーズに応じて、さまざまな形態のカット野菜を展開している(写真10)。
株式会社渡辺採種場(宮城県)は、種苗会社として数多くの種子や苗を取り扱う中で、加工・業務用野菜として人気のあるトマト、かぼちゃ、こまつなを展示した。ミニトマトと大玉トマトのうまさを持った糖度が高い中玉トマト「Mr 浅野のけっさく」、省力栽培ができて収量性が高く加工・業務用として適しているかぼちゃ「ほっとけ栗たん」、株張りが良く収量性が高く食感が優れていて、従来のこまつなより葉が縮んでいるちぢみこまつな、大株にしても茎が固くならず漬け物として加工できる加工用こまつな「河北」といった特徴的な品種が並べられ、これらの試食品も提供された(写真11)。
小林クリエイト株式会社(静岡県)は、昭和12年に国産初の計測機器向け記録紙事業を創業して以来、印刷技術を核として医療・ヘルスケア関連など事業領域を拡大してきた。平成25年に既存の富士工場を転用した植物工場でリーフレタスやベビーリーフの栽培を開始した。この植物工場は、完全閉鎖型で完全人工光と液体肥料による水耕栽培のため、全く農薬を使わずに栽培することができ、それぞれの野菜に合わせた最適な温度・湿度・養液・光条件などの栽培環境を自動制御することで、天候に左右されずに1年間を通して安定的に商品を供給することが可能という(写真12)。
具体的な商談と成約を後押しするため、予約制の「特別商談会」を実施した。この商談会は、あらかじめ実需者および出展者の双方から商談を希望する相手先を募り、これを基に商談の場をセット(マッチング)するもので、今回、実需者9者と出展者32者が参加し、77件の商談が行われた(写真13)。
当機構では、平成14年度以降、野菜の契約取引における生産者リスクを軽減するため、契約野菜安定供給事業などを実施している。
本交流会では、会場内に設けられたセミナー会場において、農林水産省および機構担当者から、6次産業化法の認定を受けたリレー出荷に取り組む生産者に対する契約野菜安定供給事業の特例措置などやセーフティネット対策としてのモデル事業など契約野菜関連事業についての説明を行った(写真14および15)。
また、同会場では、野菜流通カット協議会主催の「野菜産地と実需者によるセミナー・パネルディスカッション」が開催され、約200名もの参加があった。産地側からは、「JAやつしろの水田利用による加工・業務用野菜の取り組み」として、八代地域農業協同組合 中央営農センター係長 富永隆裕氏が、実需者側からは、「横浜丸中青果の加工・業務用野菜への取り組みと課題」として、横浜丸中青果株式会社 取締役主管 岡田貴浩氏が、流通側からは、「青果物の流通をめぐる状況」として、農林水産省政策研究所上席研究官 小林茂典氏がそれぞれ話題提供した。
その後のパネルディスカッションでは、加工・業務用野菜や契約栽培に関しての産地側および実需者側双方からみた悩み、課題、要望について、活発な意見交換が行われ、参加者は熱心に耳を傾けていた(写真16および17)。
・パネラー 八代地域農業協同組合 中央営農センター 係長 富永 隆裕 氏
横浜丸中青果株式会社 取締役主管 岡田 貴浩 氏
農林水産省 政策研究所 上席研究官 小林 茂典 氏
農林水産省 園芸流通加工対策室 課長補佐 宇井 伸一 氏
・コーディネーター 一般社団法人 JC総研 客員研究員 仲野 隆三 氏
加工・業務用野菜に対する産地側、実需側双方のニーズの高まりを受けて、本交流会は回を追うごとに活発になってきている。
加工・業務用野菜の取引と生産の拡大を図るため、当機構では、野菜の契約取引における生産者のリスクを軽減する契約野菜安定供給事業や、収入確保のためのセーフティーネット対策としてのモデル事業に加え、平成26度からは、加工・業務用野菜の生産に取り組む産地の基盤強化を支援する補助事業にも取り組んでいる。産地と実需者とのマッチングの場を提供するものとして、本交流会についても今後ともしっかり開催していきたいと考えている。
最後に、本交流会を開催するに当たり、出展者や来場者の募集、周知などに多大なご協力を頂いた関係者の皆様方に、この場を借りて厚く御礼を申し上げる。
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鹿児島市(生産流通課)、株式会社つくば分析センター、野菜流通カット協議会、独立行政法人農畜産業振興機構
※出展者の詳細情報については、機構HP上の「交流会コーナー/野菜契約取引マッチング・ゲート」をご参照ください。
URL:http://www.alic.go.jp で検索