野菜需給部需給推進課
【要約】
生産者、流通業者、消費者など、野菜に関わる関係者が一堂に会して「平成27年度第3回野菜需給協議会」が開催され(3月17日(木)10:00~12:00、(独)農畜産業振興機構内会議室)、春野菜の需給・価格の見通しの検討・とりまとめを行うとともに、および出席者から野菜の消費拡大の取り組みなどについて報告があった。
野菜は、天候などによる豊凶変動が大きいため、生産者、流通業者、消費者など関係者で構成する「野菜需給協議会」(以下「当協議会」という)を開催し、需給状況の周知を図るとともに、関係者が連携して消費拡大対策などを実施している。
平成27年度第3回野菜需給協議会が3月17日に開催された(写真1)ので、その概要を報告する。
「野菜需給・価格情報委員会(3月8日開催)」(以下「当委員会」という)や、「野菜需給・価格情報委員会消費分科会(3月1日開催)」における意見を踏まえて、とりまとめられた春野菜の需給・価格の見通しについて、事務局から説明し、当協議会において検討・とりまとめを行った。その内容は以下の通りである。
・ 価格については、5月は降雨などで入荷が少なく高騰した前年を下回り、4月および6月は干ばつなどの影響で平年に比べて高かった前年並みの見込みである。
・ 加工・業務用は、愛知産の残量が少なくなることが予想されるため、4月以降用に価格が安かった秋冬キャベツを貯蔵している業者もある。また、昨年9月の茨城県における大雨の影響で国産が減少すると予想し、早めに中国産を手配した業者が、国産の価格安もあり多くの在庫をかかえたことから、現在、中国産を手当てする動きは鈍い。
・ 価格は、主産地において、おおむね潤沢な出荷が見込まれることから、4月および5月は降雨などの影響で高かった前年を下回る見込み。6月は、長崎産が前年の半分程度となるものの、北海道産が順調な出荷が見込まれることから、前年並みの見込みである。
・ 加工・業務用は、昨年、千葉産の生産量が少なかったこともあり、契約数量を増加させる業者や、契約産地に早めの定植をお願いして数量を確保する業者が見られる。
・ 価格は、期間を通して、佐賀産の不作による入荷量の減少から高かった前年を下回る見込みである。
・ 加工・業務用は、中国の一部地域で寒波があり貯蔵物が少ない中、中国産への韓国からの引き合いも強く、輸入価格が高くなることが考えられる。
・ 国内相場が高くなると、中国産に対する需要が高くなることが考えられるが、自らむきたまに加工できる業者の中には、単価の安いニュージーランド産に切り替える動きが見られる。しかし、加工できない業者は、従来通り中国産で対応するものと考えられる。
・ 価格については、4月は前年を上回る見込み。5月および6月は、順調な入荷が見込まれ、天候不順から小振りとなり高かった前年を下回る見込み。7月は前年並みの見込みである。
・ 加工・業務用は、中国産が曇天・長雨などの影響により生育が悪いことに加え、国内向けや東南アジアからの引き合いが強いことから、輸入価格が高値となっている。
・ 現在、国産の価格が安いことから、加工・業務用も国産で対応しているが、今後は価格が上がる見込みのため、中国産に切り替える業者も出てくる。
・ 価格は、茨城産の作付面積の増加に加えて、長野産の出荷の前進などにより、主産地の入荷が順調であると見込まれることから、期間を通して高かった前年を下回る見込みである。
・ 加工・業務用については、秋冬作は品質劣化が著しく、貯蔵できる数量が少ないことから、契約産地に早めの定植をお願いして数量を確保する業者や市場から購入する業者など、さまざまな対応がとられている。4月中旬までは市場価格が上がる可能性もある。
・ 価格については、4月は一時的に高騰した前年を下回り、5月は前年並みと見込まれる。期間を通じて、平年を上回る見込みである。
・ 株価が高騰したときには、野菜の消費が活発になっていたので、今後の株価の動向によっては、野菜の消費量の減退も考えられる。
・ 暖冬による前進出荷の影響で、今年の端境期は前年よりも大きくなると考えている。このため、今後の気象変動などを注視する必要がある。
・ 地場野菜、近郊野菜および直売所で販売されている野菜など、生産者の顔が見える農産物が好評なので、販売を増やしていく考えである。
・ ゆでてドレッシングをかけるだけで、手軽に食べられるプチベールは好評を得た。
・ 生食用でもドレッシング用でも使える食材としての大葉に注目している。
・ スーパーなどのバイキング販売が好評で、ミニトマトが足りなくなってきている。
・ 居酒屋や外食では、ハーブ系ミントや赤みずななどの注文が増えてきている。
・ パクチーは、専門店があるなどコンスタントな販売商品として考えられる。
・ 年末のテレビで放映されて好評であった、ブロッコリースーパースプラウトに注目している。
・ ストックポイントとしての物流センターを建設して産地から直接納入する割合を高め、物流費の削減やトラックドライバー不足への対応を行っていく考えである。
・ ドライバー不足の問題として、首都圏に運ばれてきた品物を各家庭に届けるためのドライバーも不足している。この他にも、ピッキングセンターの労働者も不足している。この対応として、高齢者や、女性の活用も考えている。また、将来のことを考え若手の育成も考えている。
・ ドライバー不足は依然あるものの、原油価格の値下がりもあり、表立った運賃の値上げ要請は行われていないようである。
・ 東北の農産物も販売しているが、消費者の中には購入を控える者もみられる。このため西日本の農産物も販売しているが、特にアピールは行わず消費者の選択に任せている。
・ 学校や保育園にも届けているが、福島県産を敬遠する声は聞かれなくなった。
・ 福島県産のアスパラガスはおいしいと評判で、今後は販売の拡大を考えている。
・ キャベツなどの貯蔵技術の実証試験を進めている。一定の条件の下では夏場では30日、冬場では40日は保存が可能で、レタスであれば夏場では20日、冬場では30日は可能であるとの試験結果を得ることができ、貯蔵臭もほとんどなかった。
・ 当協議会会員である、主婦連合会、全国農業協同組合連合会、および農林水産省から、野菜の消費拡大の取り組みが紹介された。
・ 当協議会の取り組みとして、野菜のことをもっと知ってもらうために、「やさいの日」(8月31日)に向けて「野菜シンポジウム」を開催することが了承された。
・ 平成28年2月12日(金)に神奈川県三浦市で開催された、「平成27年度現地協議会」の開催概要についての報告があった。
当協議会の会員からの発言については、以下の通りである。
・ 野菜の需給は、天候の影響を受けることは分かるが、特に、昨年の秋以降、好天に恵まれ、秋冬野菜のほとんど品目で安値傾向が続いた。その中で、たまねぎは年に1作であり、大産地である北海道の農家は大きなダメージを受けたのではないか。このようなことがないよう、計画的な生産体制を構築する必要がある。
・ 生産者によるだいこんの自主的な出荷調整が行われたとの報告があった。国の政策として野菜をほ場に廃棄し、農家に対して交付金を支払うということに対しては、現在、フードロスの問題などもあり消費者には抵抗があると思う。例えば、福祉施設などで有効活用してもらえれば良いと思う。産地からの輸送コスト問題もあって簡単ではないと思うが、今後の問題として考えてほしい。
・ 平成22年に夏はくさいの緊急需給調整が実施され、ほ場での夏はくさいの産地廃棄が行われたことがあった。その際、生産者団体と協力して、夏はくさいを東京都内の学校給食において、食材をはくさいに切り替えていただき、かつ、生徒にもはくさいを持って帰ってもらった。その中にはくさいのメニュー提案などを添えた。栄養士の協力と、理解を得て行うことができたものであるが、保護者からは、夏場の食べ方を知らなかったという声が聞かれた。野菜の食べ方やメニュー提案が必要ではないか。
・ 野菜の消費量が伸び悩んでおり、消費拡大の方策についても見直すことが必要ではないか。例えば、事業所給食などの業者の取り組みについても調査することが必要ではないか。
・ 高齢者も食べきりサイズの加工品に対するニーズが高まっており、加えて、味についても要求水準が高くなっている。この点については、分析しても良いのではないか。
なお、配布資料などは当機構のホームページ (http://www.alic.go.jp/y-suishin/yajukyu01_000058.html)に掲載していますので、ご参照いただきたい。