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調査・報告(野菜情報 2016年2月号)


平成27年度第2回野菜需給協議会の概要

野菜需給部需給推進課


【概要】

 生産者、流通業者、消費者など、野菜にかかわる関係者が一堂に会して「平成27年度第2回野菜需給協議会」が開催され(11月13日(金)13:30~15:30、(独)農畜産業振興機構内会議室)、秋冬野菜の需給・価格の見通しの検討や取りまとめ、および会員から野菜の消費拡大の取り組みなどについて報告があった。

はじめに

 野菜は、天候などによる豊凶変動が大きいため、生産者、流通業者、消費者など関係者で構成する「野菜需給協議会」(以下「当協議会」という)を開催し、需給状況の周知を図るとともに、関係者が連携して消費拡大対策などを実施している。平成27年度の第2回野菜需給協議会が11月13日に開催された(写真1)ので、その概要を報告する。また、価格の見通しなどについても、その時点の当協議会の取りまとめ内容をそのまま掲載することとする。

1 平成27年産秋冬野菜の需給・価格の見通しについて

 「野菜需給・価格情報委員会(11月5日開催)」(以下「当委員会」という)や、「野菜需給・価格情報委員会消費分科会(10月27日開催)」における意見を踏まえて、取りまとめられた秋冬野菜の需給・価格の見通しについて、当委員会藤島座長から説明があり、当協議会において検討、取りまとめを行った。その内容は以下の通りである。

(1)品目別の需給・価格の見通し

ア 冬キャベツ

・ 価格は、12月までは、安値であった前年を上回る見込みである。1月は主産地において順調な出荷が見込まれるため、前年並みの見込みである。2月は、主産地における出荷が順調であることと、一部地域で台風のためにまき直したほ場からの出荷が重なることから前年を下回り、3月は安値であった前年並みの見込みである。

・ 加工・業務用は、茨城県産が長雨の影響もあって不作のため、年内用に中国産を手配している業者がある。ただし、中国産の手配を行っていない業者は国産を手当する必要があり、契約産地で対応できない場合には市場から購入するため、相場に影響すると考えられる。

イ 秋冬だいこん

・ 価格は、期間を通して、主産地において好天に恵まれて順調な出荷が見込まれることから、11月から12月は安値であった前年を上回るものの、1月から2月は前年を下回り、3月は安値であった前年並みの見込みである。

・ 加工・業務用は、毎年おでん需要が見込まれる時期ではあるが、今年は暖冬の予想もあり、消費が低迷して安値になることも考えられる。

ウ たまねぎ

・ 価格は、主産地において、天候に恵まれて豊作基調となり、潤沢な出荷が見込まれることから、11月を除き前年を下回る見込みである。

・ 加工・業務用は、中国産の作柄が良くないとの情報もあるが、国内のむき玉業者は限られることから、中国産のニーズは堅調であると考えられる。

・ 現在、国産のむき玉の価格は、中国産と比較すると1キログラム当たり50~60円程度高く取り引きされている。

・ 量販店では、価格が安定すると予想されることから、大量パックやばれいしょ、にんじんなどと組み合わせたセット売りを実施し、消費拡大を図ることを考えている。

エ 冬にんじん

・ 価格は、一部のほ場で降雨の影響による発芽不良がみられたが、全体的には順調な生育により前年並みの出荷が見込まれ、期間を通して安値であった前年を上回るものの、平年並みの見込みである。

・ 加工・業務用は、外食向けを中心に国産志向が強く、需要は堅調に推移すると考えられる。しかし、中国産は品質がよく歩留まりも良いため、一定の需要がある。

オ 秋冬はくさい

・ 価格は、主産地における台風18号の長雨の影響による生育遅れや作付面積の減少などから、3月を除き安値であった前年を上回る見込みである。

・ 加工・業務用は、茨城県産の冠水の影響で原料が少なくなるため、業者は年内の売り込みを控えた。また、前年の春はくさいの不作の影響から、秋冬はくさいを多めに貯蔵する業者が増えることが考えられる。

カ 冬レタス

・ 価格は、11月は安値であった前年を上回るものの、12月以降は、主産地において、天候もよくおおむね順調な出荷が見込まれることから、前年を下回る見込みである。

・ 加工・業務用は、九州地域で契約産地が拡大しており、生産量全体の7~8割を契約している産地もでてきている。

・ 12月以降は、台湾産を使用する業者も増えている。また、台風が多かったので、時期ごとに出荷量にバラツキがでる恐れもある。

(2)その他、秋冬野菜全体の消費の動向など

ア 前掲の主要6品目以外の野菜で、販売戦略として特に注目している品目の動向

・ はくさいの一種である、山東菜に注目している。

・ トマトやブロッコリーなど、簡単に食べられるサラダ商材は今後も伸びる。現在、高糖度トマトのジェラートやジェルなど加工品に注目している。また、おでんの食材としてトマトを利用することも検討している。

・ 一部の店では環境配慮型のエコ長ねぎなどの販売額が年々増加している。それ以外にも、ズッキーニやブロッコリー、量は少ないがパクチーなどに注目している。

・ 居酒屋などを中心に外食・中食では、需要量は少ないがハーブ系のミントやイタリアンパセリ、ルッコラの使用量が増えてきている。

・ これまで、ねぎは地域によって青ねぎと白ねぎに区分されていたが、大手外食チェーンの取り組みもあり、青ねぎが関東で、関西でも白ねぎがよく食べられるようになり、食の交流が進んでいる。

イ 野菜の物流をめぐる情勢変化への対応

・ モーダルシフト(国内の貨物輸送をトラック輸送から、鉄道や船舶による輸送などに転換すること)の必要性について理解をいただくために、農林水産省の補助事業などにより、札幌市や熊本市においてセミナーや実証実験を実施している。成果を公開して皆様に理解を得ることが必要である。

・ モーダルシフトは、まずは現場の理解が必要である。フェリーの活用やコンテナの整備も必要であるが、確実に前進しているのではないか。

・ 一部の産地では、産地側が負担する流通コストの低減を図るため、店舗までの配送だったものを流通センターまでとした。これによって、農家手取りを少しでも多くできると考えている。

ウ 最近の原油価格や労務費の動向などによる野菜価格への影響

・ 原油価格は、26年に比べて下がっているが、直近の野菜価格に大きな変化を与えるものではない。

・ 労働力不足の問題については、大企業は外国人労働者の雇用や機械化、設備の高度化で効率化を図っているが、中小企業には影響が生じていると考えられる。

・ 地方の労働力を活用して産地で1次加工を行えば、農家の手取りも増えるのではないか。

エ 震災や原発事故による消費への影響

・ イベントなどにおいて福島県産などの農産物は安全であることを呼びかけ、風評被害が出ないような取り組みを行っている。

・ 学校や保育園に対しては、放射線量検査の実施状況などを説明しながら納品していることもあり、福島県産を敬遠する声も少なくなっている。

・ 全体として消費者などからの問い合わせは少なくなっている。

オ その他

・ 輸入食品の検査や保管の状況などについて、勉強会を横浜市で開催した。参加者からは、全量検査でないことなどに対して驚きの声が上がっており、輸入食品に関する検査状況を含む情報開示が必要との意見があった。

2 野菜の消費拡大活動などについて

・ 当協議会会員である、主婦連合会、全国地域婦人団体連絡協議会、全国農業協同組合連合会、および農林水産省から、野菜の消費拡大の取り組みが紹介された。

・ 当協議会の取り組みとして、野菜のことをもっと知ってもらうために「やさいの日(8月31日)にちなんで開催された「野菜シンポジウム」の概要について報告があった。

3 野菜カット協議会の取り組み

 当協議会会員である野菜流通カット協議会は、青果物流通システム高度化事業を活用し、輸入野菜から国産野菜へのシェア奪回に向けた取り組みを実施している。すなわち、加工・業務用野菜の新たな流通方式を普及・啓発するため、実証試験や関係者との意見交換など幅広い取り組みの成果を、全国の生産者や物流業者、および実需者に広げていくことにより、生産や流通の合理化・効率化を図り、国産野菜を安定供給することである。その概要については、以下の通りである。

(1)青果物流通システム高度化事業について

ア 生産段階

・ 最先端機械の導入による機械化一貫体系の実証
キャベツの収穫機は、開発に10年ほどかかったが、手作業に比べて約2倍のスピードで収穫することが可能となった。現在、全国の主要な産地で実演を行い、収穫機のリース化を含めリレー出荷に対応できるよう関係機関とも相談しながら進めている。なお、「生産・流通一貫体系マニュアル」ができ上がり次第広く配布したいと考えている。

イ 輸送段階

・ 新流通方式に係る関係者などに対するセミナーの実施
物流業者などにモーダルシフトについての理解を深めてもらうため、北海道、東京都、および九州管内のJR貨物のターミナルにおいて、JR貨物の利用方法などについてのセミナーを実施した。

・ モーダルシフトの輸送試験の実証
宮崎県経済農業協同組合連合会から提供された、キャベツ、トマト(ミニトマト含む)、およびきゅうりを一つのコンテナに入れて関西圏(2カ所)および関東圏(2カ所)に輸送する実証を行うこととしている。複数品目を一つのコンテナに混載して輸送するこの試験は、業界では初めての取り組みとなる。

ウ 供給段階

・ 最先端長期貯蔵技術などの実証
これまでの試験結果を踏まえて、今年度は本格的に産地(熊本県、長野県)と品目(キャベツ、レタス)を限定した貯蔵試験を実施した。高額な施設がなくても100%加湿できる装置があれば、かなりの鮮度保持が可能となり、キャベツでは30日、レタスでは2週間貯蔵しても品質が保てることが確認できた。なお、野菜の貯蔵マニュアルを、平成29年の完成に向け作成している。

(2)その他

・ 産地と実需者の交流会、および現地視察などの実施
(独)農畜産業振興機構と共催で産地側と実需者側の交流会を実施している。今年度は福岡県北九州市で開催し、生産者や流通業者など79者の出展があり、300名を超える方が来場した。当日は、展示と併せて、「加工・業務用野菜を行うため産地に何が必要か」をテーマにした野菜産地と実需者によるセミナー・意見交換会を開催した。
また、野菜流通カット協議会の独自事業として、カット野菜の製造実態などを把握するため、海外では、①ベトナムの加工・業務用野菜製造現場とベトナムイオンの視察、②タイ(バンコク)の野菜流通状況の視察や意見交換を実施したところであり、国内では、①群馬県内のカット野菜工場の視察、②行政機関と加工・業務用野菜の政策要望などを踏まえた意見交換などを実施することとしている。

4 その他

 当協議会における会員からの発言については、以下の通りである。

・ 野菜価格において、今夏のキャベツは平均的な出荷量であるにもかかわらず価格が上っている。これは、主産地における雹害や東北の産地における長雨の被害により加工・業務用の需給バランスが崩れ、加工・業務用業者などが数量を確保するために市場からの購入を行ったことが一つの要因と考えられる。
今後は、数量の安定的調達対策として、加工・業務用業者による産地の見直しの動きがでてくるのではないか。

・ モーダルシフトの問題については、コンテナや車両、荷の到着時刻などの問題のほか、業界内で鉄道貨物に対する理解が不足していることから、北海道や熊本県で勉強会を行っている。

・ 現在はスーパーなど買う側の事情にあわせて出荷しているが、消費地においてストックヤードなどを整備し、産地側の事情で出荷できるシステムの構築が重要である。

・ キャベツの貯蔵技術について、実証試験を進めている。湿度100%、室温2~5度の条件の中、夏場では30日、冬場では40日は保存が可能であり、水滴による雑菌の発生も、通気をある程度行えば発生しないと考えている。この技術が進めば、需給調整にも効果があると考えている。

・ 地方の労働力を活用して、産地で1次加工を行うことは、付加価値を高めるうえで有効である。地方の農家の中には、1次処理などの加工を行っているところも見られるものの、総体的には、本来の農業の作業があって加工まで手が回らないところが多い。また、品目によっては、1次加工の方法やレベルが異なる。このため、農家の経営や作物特性を踏まえて判断することが必要である。

 次回は、春野菜の需給・価格の見通しの検討・取りまとめを行うために、3月中旬に開催する予定である。

 なお、当協議会の配布資料などは当機構のホームページ(http://www.alic.go.jp/y-suishin/yajukyu01_000058.html)に掲載しているので、ご参照いただきたい。



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