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調査・報告(野菜情報 2015年11月号)


食品流通段階別価格形成調査・青果物経費調査の概要について

農林水産省大臣官房統計部 生産流通消費統計課
消費統計室 価格・消費動向班


【概要】

 農林水産省では、市場流通が大きな割合を占める青果物について、産地から市場を経由して消費地に至る各流通段階別の流通経費などの実態を把握するために「食品流通段階別価格形成調査・青果物経費調査(平成25年度)」を平成27年8月28日に公表したので、その概要を報告する。

1 調査概要

(1)調査目的

 本調査は、市場流通が大きな割合を占める青果物(野菜(14品目)と果実(2品目))について、産地から市場を経由して消費地に至る各流通段階別の流通経費などの実態を把握するとともに、その結果を用いて青果物の価格形成の過程を試算することにより、食料の安定供給の確保に向けた食品流通の効率化、高度化・卸売市場の機能強化などの施策を推進するための資料を整備することを目的として、毎年度実施しているものである。

(2)調査対象品目

 次の16品目を調査対象品目とした。

 野菜14品目(だいこん、にんじん、はくさい、キャベツ、ほうれんそう、ねぎ、なす、トマト、きゅうり、ピーマン、さといも、たまねぎ、レタス、ばれいしょ)、果実2品目(みかん、りんご)

(3)調査対象者、調査項目、調査対象期間

 本調査は、青果物が集出荷団体(JAなど)、卸売業者、仲卸業者、小売業者(八百屋、スーパーなど)の4つの流通段階を経由すると仮定し、最終的に青果物における各流通段階の価格形成の試算に必要なデータを得るため、「青果物集出荷段階経費調査」「青果物仲卸段階経費調査」「青果物小売段階経費調査」の3つの調査を実施し、「食品流通段階別価格形成調査・青果物経費調査」とした。

 食品流通段階別価格形成調査・青果物経費調査に関わるそれぞれの調査の調査対象者、調査項目および調査対象期間は表1の通りである。

(4)調査における流通経費の考え方

ア 集出荷段階

 集出荷段階の流通経費は、生産者が生産した青果物が農家の庭先に収納されてから集出荷団体、卸売業者を経由して仲卸業者などに販売するまでに要した生産者の選別・荷造労働費の見積額、集出荷団体での集出荷・販売に要した経費である。

 なお、卸売業者の要した経費は、集出荷団体が支払った卸売手数料として集出荷団体の経費として計上している。

イ 仲卸段階

 仲卸段階の流通経費は、仲卸業者が卸売業者から青果物を仕入れて小売業者などに販売するまでに要した仲卸業者の経費である。

 なお、仲卸段階の流通経費には、センターフィー(注)が含まれている場合がある。

注:卸売業者やメーカーなどの納入業者が、大手スーパーの物流センターや配送センターに商品を納入する際、そのセンターの使用料として支払う料金のことをいう。

ウ 小売段階

 小売段階の流通経費は、小売業者が仲卸業者などから青果物を仕入れて消費者に販売するまでに要した小売業者の経費である。

2 調査結果の概要

 以降については、野菜14品目の調査結果を中心に報告する。

(1)集出荷団体の流通経費など

ア 販売金額に占める流通経費(100キログラム当たり)

 集出荷団体における野菜100キログラム当たりの平均販売収入は、1万5130円で、そのうち生産者受取価格は1万174円、集出荷団体経費は3415円となっている(図1)。

 一方、集出荷・販売経費は5508円(販売収入に占める割合は36.4%)で、うち集出荷経費(包装・荷造材料費、選別・荷造労働費など)が2814円(同18.6%)、販売経費(出荷運送料、卸売手数料など)が2695円(同17.8%)となっている。

イ 集出荷経費・販売経費全体に占める各経費の割合(品目別・1集出荷団体当たり)

 集出荷経費・販売経費全体に占める各経費の構成割合を品目別に見ると、集出荷経費の割合は、ほうれんそうが79.3%で最も高くなっており、次いでねぎ、はくさい、レタス、きゅうりの順となっている(図2)。そのうち選別・荷造労働費の割合もほうれんそうは、60.4%と高く、次いでねぎが41.6%、きゅうりが28.1%となっている。また、包装・荷造材料費の割合は、はくさいが24.9%と高く、次いでキャベツ24.8%、だいこん23.2%となっている。

 販売経費の割合は、ピーマンが62.1%で最も高く、次いでばれいしょ、たまねぎ、さといも、トマトの順となっている。ピーマン、さといも、トマトなどは卸売手数料の割合が高く、また、ばれいしょ、たまねぎ、だいこん、キャベツなどは、出荷運送料が高くなっている。

(2)仲卸段階の流通経費

 仲卸業者の販売収入に占める仕入金額の割合は86.7%、仲卸売経費は12.1%となっている(図3)。

 また、仲卸経費の主な内訳を見ると、給料手当が40.8%、支払運賃が20.3%、包装材料費4.1%、賃借料3.0%となっており、給料の次に支払運賃の割合が高くなっている。

(3)小売段階の流通経費

 小売業者の販売収入に占める仕入金額の割合は75.5%、小売経費は25.1%となっている。

 小売経費の主な内訳を見ると、給料手当が53.0%、賃借料が10.1%、包装材料費3.3%、車両燃料費2.4%となっており、給料の次に賃借料の割合が高くなっており、仲卸段階の経費と比べると、賃借料の割合が高くなっている。

3 試算結果の概要

 前述の青果物集出荷段階経費調査、青果物仲卸段階経費調査、青果物小売段階経費調査の3つの調査結果を基に、流通過程全体を通じた価格形成および小売価格に占める各流通経費などの割合の試算を行った。

 試算の考え方は以下の通りである。

(1)試算の考え方

ア 卸売価格は、青果物卸売市場で販売された100キログラム当たりの価格とした。

イ 卸売経費は、集出荷団体が支払った100キログラム当たりの卸売手数料とした。

ウ 集出荷団体経費は、1集出荷団体当たりの集出荷・販売経費のうち選別・荷造労働費(生産者)および卸売手数料以外の経費を積み上げ、100キログラム当たりで算出した。

エ 生産者受取価格は、卸売価格から卸売経費および集出荷団体経費を控除して試算した。

  また、生産者受取価格には生産者による選別・荷造労働費を含む。
 なお、荷主交付金・出荷奨励金などおよびその他の入金は含まない。

オ 仲卸価格は、仲卸業者の野菜の仕入金額に対する販売金額の割合を卸売価格に乗じて試算した。また、仲卸経費は、仲卸価格から卸売価格を控除して試算した。

カ 小売価格は、小売業者の野菜の仕入金額に対する販売金額の割合を仲卸価格に乗じて試算した。また、小売経費は、小売価格から仲卸価格を控除して試算した。

 

(2)価格形成の試算方法と試算結果

 野菜(調査対象14品目)100キログラム当たりを例とした試算結果は、次の通りである(図4)。卸売経費、仲卸経費および小売経費には、利潤などを含む。また、 文中の番号(①~⑩)は、図4に対応している。

ア 卸売価格、集出荷団体経費および卸売経費

(ア)野菜100キログラム当たりの卸売価格は、調査結果から1万4752円①となった。

(イ)野菜100キログラム当たりの卸売経費は、集出荷団体が支払った卸売手数料の調査結果から1163円②となった。

(ウ)野菜100キログラム当たりの集出荷団体経費は、調査結果の1集出荷団体当たりの集出荷・販売経費のうち選別・荷造労働費(生産者)および卸売手数料以外の経費を積み上げ、1集出荷団体当たりの出荷量で除して、100キログラム当たり3415円③となった。

イ 生産者受取価格

 生産者受取価格は、①の卸売価格、②の卸売経費および③の集出荷団体経費を用いて、1万174円④と試算した。
14,752円 -1,163円 -3,415円=10,174円

ウ 仲卸価格および仲卸経費

(ア)青果物仲卸段階経費調査で把握した仲卸業者の野菜の仕入金額に対する販売金額の割合は113.4%⑤となっている。

(イ)仲卸業者は、集出荷団体の出荷した野菜を卸売市場を経由して①の卸売価格で仕入れると仮定し、仲卸業者での野菜100キログラム当たりの仲卸価格は、⑤の仕入金額に対する販売金額の割合を用いて、1万6729円⑥と試算した。
14,752 ×113.4% = 16,729円

(ウ)仲卸業者の野菜100キログラム当たりの仲卸経費は、⑥の仲卸価格および①の卸売価格を用いて、1977円⑦と試算した。
16,729円 - 14,752円 =1977円

エ 小売価格および小売経費

(ア)青果物小売段階経費調査で把握した小売業者の野菜の仕入金額に対する販売金額の割合は調査結果から132.2%⑧であった。

(イ)小売業者は、仲卸業者から⑥の仲卸価格で仕入れると仮定し、小売業者での野菜100キログラム当たりの小売価格は、⑧の仕入金額に対する販売金額の割合を用いて、2万2116円⑨と試算した。
16,729円 ×132.2% = 22,116円

(ウ)小売業者の野菜100キログラム当たりの小売経費は、⑨の小売価格および⑥の仲卸価格を用いて、5387円⑩と試算した。
22,116円 - 16,729円 =5387円

 試算結果による平成25年度の野菜の小売価格は2万2116円、生産者受取価格は1万174円(小売価格に占める割合は46.0%)、流通経費などは1万1942円(同54.0%)となっている(表2)。

 また、小売価格に占める各流通経費などの割合を品目別に見ると、生産者受取価格の割合が一番高いのは、きゅうり(54.0%)で、ほうれんそう(53.4)、なす(52.0%)と続き、低いのはだいこん(35.0%)、はくさい(37.2%)となっている(表3)。

4 おわりに

 近年においては、農林水産業を取り巻く課題が深刻化しつつある中で、「農林水産業・地域の活力創造プラン」や「日本再興戦略」、新たな「食料・農業・農村基本計画」に基づく農政改革を着実に推進し、農林水産業の活性化を図っていくことが重要となっており、食品流通の効率化や高度化等を推進している。
本調査へ御協力いただいた各流通段階の関係者に感謝申し上げるとともに、本調査結果がそれらの施策の推進などの資料として活用されることはもとより、関係者の方々に広く活用されることを期待するものである。
なお、本調査の詳細については、農林水産省のホームページ(http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/syokuhin_kakaku/index.html)に掲載しているので、ご参照されたい。


〈参考〉

 調査に関する集計方法、流通過程全体を通じた価格形成および小売価格に占める各流通経費等の試算方法は、以下の通り。




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