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調査・報告(野菜情報 2015年9月号)


平成27年度第1回野菜需給協議会の概要

野菜需給部需給推進課


生産者、流通業者、消費者等、野菜にかかわる関係者が一堂に会して「平成27年度第1回野菜需給協議会」が開催され(7月31日(金)13:30~15:30、(独)農畜産業振興機構会議室)、夏秋野菜の需給・価格の見通しの検討やとりまとめ、および会員から野菜の消費拡大の取り組みなどについて報告があった。

はじめに

 野菜は、天候等による豊凶変動が大きいため、生産者、流通業者、消費者など関係者で構成する「野菜需給協議会」(以下「協議会」という)を開催し、需給状況の周知を図るとともに、関係者が連携して消費拡大対策などを実施している。平成27年度の第1回野菜需給協議会が7月31日に開催された(写真1)ので、その概要を報告する。

1 平成27年産夏秋野菜の需給・価格の見通しについて

 夏秋野菜の需給・価格の見通しについて、「野菜需給・価格情報委員会(7月22日開催)」でとりまとめられた見通しについて、当委員会藤島座長から説明があり、当協議会において検討、とりまとめを行った。その内容は以下のとおりである。

(1)品目別の需給・価格の見通し

ア 夏秋キャベツ

・ 夏秋キャベツの価格は、一部地域の干ばつなどの影響による出荷の減少から、8月は前年を上回る見込みである。9月は不安定な天候や加工・業務用需要も堅調で高かった前年を下回り、10月は前年並みとなる見込みである。

・ 加工・業務用は、カット野菜の需要が強く、事業者にとって必要量を契約できない産地もある。新規の加工業者は契約しづらいことや、カット野菜の生鮮小売りへの供給確保の影響から、原材料の市場調達が進むことも考えられ、その場合には市場価格が上昇する可能性もある。

イ 夏だいこん

・ 夏だいこんの価格は、干ばつなどの影響が懸念されるものの、期間を通じ安定した出荷が見込まれ、8月から9月の期間で高かった前年並みの見込みである。

・ 加工・業務用は、外食などから切りだいこんの注文が年々増加している。また、加工用需要が多くなってきているものの、本年は、加工向け産地の作付面積の減少や干ばつなどにより生育が遅れているなどから、産地において契約が進んでいない業者も一部にみられる。

ウ たまねぎ

・ たまねぎの価格は、一部産地での小玉傾向の影響や産地の切り替え時期などによる出荷の減少から、8月は前年を上回ることが見込まれる。9月以降は本格的な出荷を迎え、9月は主産地が順調で前年並みとなり、10月は安値だった前年を上回る見込みである。

・ 加工・業務用は、中国産の残留農薬問題や作付面積の減少、国内価格の上昇もあり、北海道産の生育が順調であれば、国産への切り替えニーズがあるものの、自らむき玉に加工できる業者は限られていることから、中国産のニーズは、引き続き堅調と考えられる。

エ 秋にんじん

・ 秋にんじんの価格は、8月は、干ばつの影響による出荷の谷間となる可能性があり、安値だった前年を上回る見込み。9月以降は順調な出荷が見込まれることから、9月は前年並みとなり、10月は安値だった前年を上回る見込みである。

・ 加工・業務用は、中国産が東南アジアからの引き合いが強く、価格が上昇しているものの、現在の国内産は干ばつなどで細いサイズのものが多く、加工・業務用では使いづらい状況にあるが、北海道産の作柄次第では中国産にシフトする可能性がある。

オ 夏はくさい

・ 夏はくさいの価格は、期間を通じ生育も順調で安定した出荷が見込まれることから、不安定な天候で肥大不足などの影響から高かった前年を下回る見込みである。

・ 加工・業務用は、契約単価は上がっているものの契約量を増やしており、現在は、在庫量も十分確保されている状態である。また、秋以降の本格的な需要期を迎えるまでに契約率を上げていく業者が多くなっている。

カ 夏秋レタス

・ 8月は高温などによる病害などの発生があり、入荷量が少なく、高かった前年並みの見込み。9月は長雨の影響で高かった前年を下回り、10月は安値だった前年を上回る見込みである。

・ 加工・業務用は、外食チェーンを中心に、国産野菜を使用したサラダにシフトする動きがあることから、需要量が増加する可能性があるが、価格条件の面から米国産などを確保する業者もでる可能性がある。

(2)その他、夏秋野菜全体の消費の動向など

ア 夏以降の消費を左右する要因、注目している要因

・ 経済状況により、消費者の財布のひもが固くなったり、緩んだりするなどその時の状況に応じた販売戦略を考える必要がある。最近では、株高や企業賞与のアップとの新聞報道もあり、栄養や機能性成分を多く含むなどの付加価値の高い野菜へシフトする動きもみられる。

イ 主要6品目以外の野菜で、販売戦略として特に注目している品目の動向

・ ズッキーニが伸びており、積極的な販売に取り組んでいきたい。輸入品の取り扱いもあるが、国内産地の面積拡大や新規産地の開拓など、国産の供給強化を検討している。

・ 環境配慮型の野菜の販売額が年々増加している。それ以外にも、れんこんやブロッコリーなども増加しており、一時的な供給不足も心配される。

・ 売れ筋商品としては、調理のしやすい野菜や、珍しい野菜と考えている。

ウ 野菜の物流を巡る情勢変化の影響とその対応

・ ドライバー不足の問題は常態化しており、モーダルシフトも運用面で課題が多く実態は進んでおらず、どのように解決すべきか対応に苦慮している。

・ 複数の産地の共同トラック物流に取り組み、経費増をかなり圧縮できている事例がある。ただし、複数産地を束ねるコーディネーターの不在などからなかなか進まない。

・ 北海道からの業務用野菜の物流は、札幌からは仙台や関東近郊までフェリー配送などのルートは確保されているが、現況は、道内産地から札幌までのトラック確保ができないケースもある。東北3県(青森、秋田、岩手)も同様の事態が懸念される。

エ 最近の原油価格や労務費の動向などによる野菜価格への影響

・ 最近、原油価格が再上昇しそうな兆しがあり、秋以降の施設栽培への影響が懸念される。

・ 大産地では外国人研修生の確保が必要であるが、最近、その確保が難しくなっていると聞いており、出荷数量が減少しないか心配である。

 

オ 震災や原発事故の影響による消費動向

 

・ 全体として消費者などからの問い合わせは少なくなっている。

・ 学校や保育園に対しては、放射線量検査の実施状況などを説明しながら納品していることもあり、福島県産はいらないという声はなくなってきている。

・ 原木しいたけなども、毎月放射能検査を行うなどの取り組みにより売り上げは増加している。

カ その他

・ 外食、中食、居酒屋業界では、国産野菜に切り替えたい企業が増えている。

・ 簡便化志向もあり、例えばごぼうなどのアク抜きが必要で調理時間がかかる野菜の販売量が減少する傾向にある。

2 野菜の消費拡大活動等について

(1)協議会会員である、主婦連合会、全国地域婦人団体連絡協議会、公益社団法人日本栄養士会、NPO法人野菜と文化のフォーラム、全国農業協同組合連合会および農林水産省から、野菜の消費拡大の取り組みが紹介された。

(2)協議会の取り組みとして、野菜のことをもっと知ってもらうために、「やさいの日」(8月31日)を記念して開催する、「野菜シンポジウム」の講演内容について紹介があり、会員に周知することとされた。

 

3 フードチェーン食育推進活動の実施概要について

 一般社団法人ファイブ・ア・デイ協会より、農林水産物の生産、加工、流通などの体験機会を通じて、食の恩恵や大切さを体感してもらうことを目的として、平成26年7月から27年2月まで、全国9カ所(25回)で、生産から食卓までの食の流れを理解するための体験学習会を開催し、フードチェーン食育推進活動および参加者への効果測定のためのアンケートなどを実施した。その概要については、以下の通りである。

 当該取り組みでは、食べ物がどのように生産されて、いかに多くの人の手を経て消費者の食卓に届いているか(フードチェーン)を理解してもらうために、全国各地において、農業体験、しょうゆや冷凍食品などの製造現場の見学およびインストラクターによる食や食生活に関する講義などを行った(図1、2)。

 体験などの終了後、参加した親子(367名)および数か月後の二次アンケート(115名)などから、食や食生活について、どのような変化が現れたかなど効果測定を実施、その調査結果は以下の通りであった。

 体験したプログラムを点数化(4点から0点)し評価した結果、講師による講義(3.66)、工場見学(3.55)および農場見学(3.53)よりも農場体験(3.71)や工場体験(3.69)のプログラムがより高い評価を得た。

 プログラム終了後に、どのようなことに対して理解が深まったかについて尋ねたところ、「産地から食卓までの食材の流れの全体像」は90%、「バランスよい食事の大切さ」は94.6%、「健康のための望ましい1日の野菜の量」は94.3%となり、高い理解度が示された。ちなみに、農業などにかかわる人の仕事や和食の優れた点、フードチェーンの意味などについては80%台となった。

 また、同じ質問を数カ月後に行い、第3者に説明できる程度に理解が深まったかについては、「バランスよい食事の大切さ」が5割を超える結果となり一番高かった。

 さらに、野菜の摂取向上を図るには、「価格が安くなること」や「レシピや食べ方の説明がある」との意見が半数以上あった。

4 その他

 当協議会において、会員から以下の通りの意見があった。

・ スーパーでは、ズッキーニやパプリカなどを若い消費者がよく購入しており、独身者などもコンビニやスーパーでカット野菜を購入する者が増えている。

・ 野菜の消費拡大は、1日に必要な量(350グラム)をパックにして陳列販売する方法も有効である。

・ ドライバー不足が野菜の流通や取引に与える影響については、生産者や中間事業者の輸送費増大、産地の出荷市場の絞り込みなどの形で現れつつある。

・ 若い人や多忙な人には、複数のカット食材をパック詰めした商品が好評である。

・ インターネットを通じた、生産者側からの美味しい調理法を伝える取り組みや商品への生産者のレシピの添付が有効である。

 次回は、秋冬野菜の需給・価格の見通しの検討を行うため、11月上旬に開催する予定である。

 なお、配布資料などは当機構のホームページ(http://www.alic.go.jp/y-suishin/yajukyu01_000058.html)に掲載しているので、ご参照いただきたい。


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