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調査・報告(野菜情報 2015年5月号)


第24回 加工・業務用野菜産地と実需者との交流会の概要

野菜業務部直接契約課


【要約】

 当機構は、平成27年3月10日野菜ビジネス協議会との共催により、24回目となる加工・業務用産地と実需者との交流会を東京国際フォーラムで開催した。全国各地から多彩な128の事業者、団体が出展、また、生産者と実需者の個別、予約制の特別商談会では、68件の商談が行われた。

1 はじめに

 野菜の加工・業務用需要の割合は、昭和50年頃は需要全体の4割程度であったが、食の外部化の進展などにより、平成22年には6割を占めるまでに増加している。

 一方、国産野菜の供給は、過半が家計消費用に仕向けられており、今後とも増加が見込まれる加工・業務用需要に対する国産野菜の安定的な供給体制を確立することが重要となっている。

 このため、当機構は、産地と実需者とのマッチングの場を提供するため、18年度から野菜ビジネス協議会との共催により、加工・業務用野菜産地と実需者との交流会(通称:国産野菜の契約取引マッチング・フェア)を開催している。

 27年3月10日、24回目の交流会を、昨年に引き続き、東京国際フォーラムにおいて開催した(写真1)ので、その概要を報告する。

2 128の事業者・団体が出展

~出展ブース~

 今回は、全国各地から128の事業者、団体が出展した。出展者のうち、生産者、生産者団体が58、流通、加工業者が40であった。このうち初出展者が41であった(生産者、生産者団体18、流通、加工業者の14を含む)。昨年同様、JAグループ主催の「国産農畜産物商談会」と同日に開催した効果もあり、多数の来場者(1150名)を迎える中で、積極的な商談が行われた。

 また、午後には、あべ農林水産副大臣が来場し、セミナー・パネルディスカッションを聴講するとともに、各ブースを視察し、生産者や実需者と意見交換を行った(写真2、3)。
出展者や各コーナーの概要は、以下の通りである。

(1)JA

 愛知県経済農業協同組合連合会は、キャベツ、たまねぎ、大葉、ハーブ類を出展した。キャベツ、たまねぎなどの重量野菜については、「鉄コンテナなどの大型容器を使用し、生産者の出荷調製作業の手間を軽減することで、産地を拡大して契約取引の割合を増やしていきたい」とのことであった(写真4)

(2)生産者

 イシハラフーズ株式会社(宮崎県)は、「生産から消費までストーリーの見える国産の冷凍野菜を提供する」という理念のもと、原料生産から冷凍食品加工まで行う農業生産法人である。自社農場は200ヘクタールで、全ての農産物が特別栽培農産物基準より厳しい栽培管理で行われているとともに、自社の残留農薬検査センターにて、全てのほ場、作物ごとに残留農薬検査を実施している。また、トレーサビリティ体制も整備しており、商品のロットナンバーから自社ホームページで生産情報などを検索、閲覧することができる。「主な取引先である生協に、原料や商品の良さを訴求してもらえるので感謝している。」とのことであった(写真5)。

 株式会社いばらき農流研(茨城県)は、主力品目の一つである、茨城県の代表的品目であるハウス栽培のみずなを出展した。サラダなどの生食需要の拡大に伴い増産が図られ、現在は約200トンの通年生産体制を整えている。「機能性が高い『赤みずな』の販売を始めた。今後ニーズが増えてくるようであれば、さらなる増産を検討したい」とのことであった(写真6)。

 農業生産法人の有限会社新福青果(宮崎県)は、ミニ野菜を袋詰めした商材を出展した。電子レンジですぐ加熱調理できるという手軽さが特徴である。小売業者や、オフィス向けの野菜宅配サービス業者などから7~8件のサンプル提供の依頼があり、「今後の商談に手ごたえを感じている」とのことであった(写真7)。

出展者の強い増産意欲

 ~加工・業務用野菜の生産拡大に取り組む生産者~

 本交流会は、加工・業務用野菜のマッチングを主目的としているが、出展者からは今回、「加工・業務用野菜を増産していく」という声が多く聞かれた。

 有限会社エーアンドエス(岡山県)は、現在、キャベツ、かぼちゃ、たまねぎを、加工業者と取引する農業生産法人である。「加工・業務用の場合、契約単価は安くなるが、大口取引であれば、結果としてもろもろのコストを抑えられるので問題ない」とのことであった。同社は、輸入割合が特に高い品目の生産に取り組んでいるが、毎年作付面積を倍増させ、生産品目を拡大させるとともに、加工・業務用野菜の販路確保に積極的に取り組んでいる(写真8)。

(3)流通・加工業者

 クラカグループ(岡山県)は、倉敷青果荷受組合を含む3つの企業からなる荷受業者で、カット・ホール野菜の加工、流通に取り組んでいる。「カット野菜事業は、年々売上も増加しており、現在では、中四国を中心に約200社、約4100店舗と加工・業務用野菜の取引を行っている」とのことであった(写真9)。

 高知県次世代施設園芸団地推進協議会の構成団体の一つである、株式会社ベストグロウ(高知県)は、温暖な気候で栽培したトマトとトマト加工品の製造、販売に取り組んでいる。「来年には、新たなハウスでの栽培も始まる。関西地方では、取引が少しずつ増えてきているが、関東地方で新たな取引先を探しているので、本交流会に初めて出展した。」とのことであった(写真10)。

(4)植物工場

 OAファーム株式会社(兵庫県)は、昨年2月に設立され、廃校になった小学校の体育館を改築した、完全人工光型植物工場である養父レタス工場でレタス栽培に取り組んでいる。「レタスは、40日程度で収穫でき、現在、取引先へは毎日定量納めている。今後は、関東圏でも植物工場の建設を考えている」とのことであった(写真11)。

3 68件の個別の商談を熱心に実施

~特別商談会~

 交流会では、マッチングを経た具体的な商談と成約を後押しするため、個別、予約制の「特別商談会」の場を設けている。この商談会では、実需者7社と生産者27名などが参加し、出展品目を持ち込んで商品の魅力をアピールする生産者なども見受けられるなど、68件の商談が熱心に行われた(写真12)。

4 盛況だった事業説明、セミナー・パネルディスカッション ~セミナー会場~

 当機構では、平成14年度以降、野菜の契約取引における生産者リスクを軽減するため、契約野菜安定供給事業などを実施している。

 本交流会では、会場内のセミナー会場において、農林水産省と連携して、複数の産地の生産者によるリレー出荷のための契約を締結し、六次産業化法の認定を受けた生産者に対する特例措置などを含む契約野菜関連事業について、説明を行った(写真13、14)。

 また、同会場では、野菜ビジネス協議会が「野菜産地と実需者によるセミナー・パネルディスカッション」を開催し、約160名の参加があった。一般社団法人JC総研客員研究員仲野隆三氏をコーディネーターとし、産地側からは「加工・業務用野菜生産拡大の取り組み」として、こと京都株式会社代表取締役社長山田敏之氏が、実需者側からは「KIFA川越センターを活用したコールドチェーン物流の取り組み」として、株式会社ケーアイ・フレッシュアクセス常務執行委員相原徹氏がそれぞれ話題提供した。

 その後、加工・業務用野菜や契約栽培に関する、産地側および実需者側双方からみた悩み、課題、要望について、倉敷青果荷受組合カット野菜部営業課長寺田幸司氏、株式会社Tedy代表取締役社長林俊秀氏をはじめ、パネラーから活発な意見交換が行われ、参加者は熱心に耳を傾けていた(写真15)。

5 おわりに

 当機構では、野菜の契約取引における生産者のリスクを軽減する経営安定対策事業に加え、収入確保のためのセーフティーネット対策としてのモデル事業を実施し、さらに平成25年度からは、加工・業務用野菜の生産に取り組む産地の基盤強化を支援する補助事業にも取り組んでおり、加工・業務用野菜の取引と生産の拡大に対してさまざまな支援を行っている。

 本交流会は、加工・業務用野菜に対する産地側、実需側双方のニーズの高まりを受けて毎年好評であり、今後も、こうした支援の一環として、全国各地で開催して、産地と実需者とのマッチングの場を提供していくこととしている。

 次回は、27年10月下旬を目途に、福岡県北九州市での開催に向けて現在準備を進めており、多くの出展と来場が期待される。

 最後に、本交流会を開催するに当たり、出展者や来場者の募集、周知などに多大なご協力を頂いた関係者の皆様方に、改めて厚く御礼を申し上げる。

○ 出展者一覧(順不同、敬称略)

【生産者団体】

愛知県経済農業協同組合連合会、鹿児島県経済農業協同組合連合会、高知県園芸農業協同組合連合会、こまち農業協同組合三関せり出荷組合、山武郡市農業協同組合、東近江市フードシステム協議会、中津川むらづくり協議会

【生産者】

株式会社Tedy、アイ・エス・フーズ株式会社、株式会社アグリ・エキスパンド・アソシエーション、朝倉物産株式会社、イシハラフーズ株式会社、株式会社いばらき農流研、株式会社エア・ウォーター農園、有限会社エーアンドエス、エコファーム星山、有限会社遠赤有機農園、岡本農園、有限会社オニヅカバイオシステム、鹿児島高槻電器工業株式会社、株式会社風の丘ファーム、鎌田きのこ、株式会社カラーリングファーム、株式会社喜界島薬草農園、農業生産法人株式会社基進、農業生産法人株式会社吉次園、行者菜生産グループ、株式会社小坂農園、株式会社五條市青ネギ生産組合、こと京都株式会社、坂上農園、株式会社さかうえ、有限会社佐野ファーム、農事組合法人サンエスファーム、農業生産法人有限会社新家青果、農業生産法人有限会社新福青果、株式会社スギヨファーム、富山スマートアグリ次世代施設園芸拠点整備協議会(株式会社スマートフォレスト)、農業生産法人株式会社旦千花、農業生産法人有限会社トップリバー、南総なばなネット、 株式会社農テラス、 有限会社橋場農園、 株式会社春口農園、非営利活動法人バイオマスもみがら研究会、有限会社百商、農業生産法人株式会社ファームかずと、ファーム千葉、農業生産法人株式会社ふるさとファーム、ファームフレアズ(株式会社フレアズ)、株式会社ふるや農園、松下ファーム、有限会社丸浅苑、株式会社ミスズライフ、株式会社瑞穂、みんなの農園生産組合、陽光ビオファーム、株式会社陽虹舎

【流通業者】

AOC合同会社、WISH青果、株式会社アムズ、株式会社あらき、飯山中央市場株式会社、株式会社井上商店、エコバイ株式会社、株式会社倉本商店、有限会社グランジャ、株式会社クロスエイジ、高知県特産品販売株式会社、株式会社ジャパンポテト、株式会社創風土、東京デリカフーズ株式会社、東京富永商事株式会社、株式会社トレード、ナラサキ産業株式会社、ニーズ株式会社、ハートファーム株式会社、百姓百品株式会社、株式会社ぶぜん街づくり会社、有限会社フルヤ物産、株式会社ブレスト、株式会社mamato・横浜丸中青果株式会社、株式会社ワキュウトレーディング

【加工業者】

SSKプロダクツ株式会社喜多方工場、 株式会社岡林農園、株式会社小田商店、きのこ総合センター株式会社、クラカグループ(倉敷青果荷受組合)、株式会社健食、高知県次世代施設園芸団地推進協議会(株式会社ベストグロウ)、サンポー食品株式会社、有限会社自然館、富士食品工業株式会社、株式会社マルヤ、株式会社マルハ物産、明陽食品工業有限会社、レストランこだま、株式会社山内本店

【種苗会社】

カネコ種苗株式会社、株式会社グリーンフィールドプロジェクト、株式会社サカタのタネ、タキイ種苗株式会社、株式会社トーホク、ナント種苗株式会社、日本デルモンテアグリ株式会社、パイオニアエコサイエンス株式会社、みかど協和株式会社、株式会社武蔵野種苗園、株式会社大和農園、横浜植木株式会社、渡辺農事株式会社、株式会社渡辺採種場

【植物工場】

OAファーム株式会社、株式会社アーサーアグリ、有限会社アグリサーチ(薬院バジルファクトリー)、株式会社キヨカワ、小林クリエイト株式会社、スマイルリーフスピカ株式会社、三菱化学株式会社植物工場事業推進室、 株式会社野菜工房

【その他】

一般財団法人いも類振興会、鹿児島市生産流通課、株式会社つくば分析センター、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所、農林水産省地域作物課、日本ブランド農業事業協同組合(JBAC)、野菜ビジネス協議会、独立行政法人農畜産業振興機構

※出展者の詳細情報については、機構HP上の「交流会コーナー/野菜契約取引マッチング・ゲート」をご参照ください。

URL:http://www.alic.go.jpで検索


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