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調査・報告(野菜情報 2014年12月号)


高知県における台風被害の状況と復旧への取り組み

高知県農業振興部産地・流通支援課
チーフ(産地づくり担当) 青木 敏純


1 台風被害の状況

 今年の8月は、西日本を中心に記録的な多雨、日照不足となった。7月末から8月上旬にかけては、台風12号および11号の北上により、西日本を中心に被害を受けたが、特に高知県の被害は大きかった。

 高知県では、台風12号(8月1~6日)による記録的大雨により、日高村や高知市のトマト、土佐市、いの町、佐川町のしょうがのほ場や日高村の出荷場、園芸用ハウスが冠水するなど、県中央部を中心に冠水、浸水による被害が発生した(写真1)。

 また、県東部の安芸市に上陸した台風11号(8月7~10日)では、近年まれに見る強風と大雨に見舞われ、県下全域で園芸用ハウスの本体や被覆資材の破損が多数発生するとともに、収穫時期に入っていた早期稲の倒伏や穂発芽、しょうがの茎折れや冠水による倒伏、なしやゆずなどの果樹での落果や擦れによる品質低下など、減収減益につながる甚大な被害が発生した(写真2、3)。

 被害金額は、施設で約14億円、農作物で約9億円、合計で約23億5000万円となり、9月5日には国から激甚災害に指定された。県内全ての市町村で被害を受け、13市町村では2つの台風被害を受けた(図1)。中でも園芸用ハウスについては、386棟が被災し、本体の倒壊や一部破損が37ヘクタール、被覆資材の破損は、県全体の12%、178ヘクタールに上った(表1)。

 また、台風通過後は曇雨天が続き、8月で降水量を観測しなかった日は、高知市では8月31日の1日のみと、県下全域で天候不順であったことから、施設野菜や花きの定植遅れ、露地品目の生育不良などの影響も発生した。

2 復旧への対応

 早期の復旧を図るため、関係機関が緊密に連携して課題整理を行いながら取り組んでいる。

(1)個々の農家のニーズの把握

 被災直後から、JAや市町村、県農業振興センター職員が連携して、被災農家と個別に面談し、被害状況の調査と並行して復旧意向を確認するとともに、利用可能な各種制度や、利用する場合の手続きなどについて説明した。

(2)既存事業による支援

 園芸用ハウスの復旧については、既存の県事業(レンタルハウス整備事業、園芸用ハウス活用促進事業)の災害復旧区分を活用して直ちに支援した。レンタルハウス整備事業については、市町村を通じた需要調査の結果、9月2日時点で9市町村から3ヘクタールの要望があったため、7400万円余りを9月補正予算で増額して実施した。(表2)。

(3)国の支援制度の活用

 国の支援制度についても、積極的に活用した。

 農業生産施設の復旧および修繕については、被災農業者向け経営体育成支援事業を活用することとし、県内5カ所での説明会や新聞などを通じて事業の周知を図った。

 冠水したトマト出荷場の選果ラインについても、攻めの農業実践緊急対策事業を活用して、8月下旬には事業を採択し、工事に着手した。

 また、近代化資金などの制度資金を利用する場合には、借受利息が無利子となる公益財団法人農林水産長期金融協会による被災農業者特別利子助成事業を活用するよう農家に促した。

(4)産地の再生に対する対応

ア 園芸用ハウス

 被覆資材や骨材が破損したハウスは、近隣の農業者やJA職員などが手伝って解体、撤去作業が行われ、早期に復旧した。倒壊したハウスの復旧については、県の補助事業が活用されている(写真4)。

イ しょうが

 畝まで冠水したほ場や、河川が氾濫して土砂が流入したほ場は、根茎腐敗病の発生が懸念されることから、10月下旬からの収穫期を待たずに、台風の通り過ぎた8月中旬から収穫を始めた。なお、収穫の前倒しに伴い、収量は減少するとみられる。

3 今後の課題

 本県は、農業産出額の約75%を野菜、果樹、花きの園芸が占め、中でも施設園芸がその基幹となっており、施設園芸農家にとっては、自然災害などによって園芸用ハウスが被災した場合、施設を復旧し、生産を再開して収穫が始まるまでの間、収入が全くなくなることもある。このため、突発的な災害などに対する自己防衛策として、農業共済(施設園芸共済)への加入を積極的に推進し、その加入率は約90%となっている。

 しかしながら、被災後に支払われる共済金は、復旧に要する経費に比べて充分でなく、災害時に活用できる国や県の補助事業についても、関係機関との調整や事務手続きに一定の時間を要することが課題である。本県で実施しているレンタルハウス整備事業の災害区分を活用して復旧した園芸農家からは、一定の評価を得ているが、促成栽培の場合は、定植が1週間遅れると、収穫は1カ月遅れるとも言われており、被災後いかにスムーズに復旧できるかが大きな課題となっている。

 近年、台風や竜巻、集中豪雨などの被害が毎年のように発生しており、園芸農家に安心して営農を継続していただくために、市町村やJAと連携して、早期の復旧を支援できるよう取り組んでいきたい。


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