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〔特集〕加工・業務用野菜の生産拡大に向けた取り組み


加工・業務用野菜生産に取り組む農業経営の課題
~JA秋田やまもとの加工用キャベツ生産の事例から~

国立大学法人東北大学大学院農学研究科 教授 盛田 清秀


【要約】

 秋田県北部に位置するJA秋田やまもとは20年来、加工用キャベツを重点品目に取り組んでいる。契約取りまとめは全国農業協同組合連合会秋田県本部(以下、「全農県本部」という。)が担当し、外食チェーンやカット加工向けのキャベツについてユーザーと生産団体の調整を行っている。加工用キャベツの収益性は必ずしも悪いわけではないものの、作付面積はピーク時の半分程度で推移している。JAでは地域営農ビジョンにおいても重点品目と位置付け、生産拡大を図っている。しかし、生産者からの聞き取りでは、生産拡大に向けた課題としてほ場条件の整備や収穫作業の機械化の遅れなどが浮き彫りとなった。

1 はじめに

 2012年の国内農業総産出額は8兆5251億円となり、2004年の8兆7136億円に次ぐ水準に回復した。とはいえ、これは主として米生産額の変動によるものである。成長部門とされている野菜の生産額については、1998年に初めて米の生産額2兆5148億円を上回る2兆5953億円を記録したものの、その後はむしろ生産額を低下させ、2012年は2兆1896億円にとどまっている。これは生産者の高齢化や野菜消費の低迷などさまざまな理由がある。そうした理由の一つに、食の外部化による加工、調理食品、外食向け家計支出の伸びが見られる下で、生産者側において食品加工業、外食、中食業の加工・業務用野菜原料需要への対応が弱かったことがある。それら原料野菜需要に対応したのは輸入野菜であった。

 それについて若干のデータを確認しておこう。野菜の国内生産を見ると、1992年に作付面積が63万1300ヘクタール、出荷量は1426万トンであったものが、2012年には作付面積48万8400ヘクタール、出荷量1156万トンへとそれぞれ23%、19%も減少している。このように生産量は減っている中で、実際には国内で生産される野菜の56%は加工・業務用と推計されており、すでに生食用を上回っている(2010年、農林水産政策研究所推計)。生産者は相対的に単価が高い生食用野菜生産に重点を置いてきたのであるが、実際の仕向け先をみるとすでに実需者向け供給が過半となっている。しかしそれでも国内生産が加工・業務用需要に十分対応したわけではない。同じ推計によれば、2010年の加工・業務用野菜需要の国産の割合は70%とされており、1990年の88%からかなりの低下を示している。輸入食材の安全問題がしばしば発生したことから必ずしも一本調子で増加してきたわけではないが、生食用を含めた野菜の輸入量が1990年の95万トンから、2011年に227万トンへと拡大してきたのは、国内生産が加工需要を取り込んでこなかったことに一つの原因がある。

 以上のことから、野菜生産の振興を図るためには、生食用だけではなく、加工・業務用野菜の生産に取り組むことが求められている。また、それは後で見るように、農業経営の安定や営農合理性の実現にも結び付いている。

 この報告では、秋田県の加工用キャベツ生産の事例をもとに、生産の現状と課題、農業経営における加工・業務用野菜生産の意義と定着支援策を探ることとする。

2 JA秋田やまもとの加工用キャベツ生産の取り組み

 JA秋田やまもとは、秋田県北部の三種町と八峰町を管内としている組合員数7732人(うち正組合員4560人)、職員128人の中堅JAである。1999年に八森、峰浜、八竜、山本、琴丘の5JAが合併してできたJAである。販売高(2013年度)は60億9449万円で、内訳は米が45億9357万円(75%)と圧倒的で、続いて野菜5億6093万円(9%)、菌茸類4億9750万円(8%)、畜産2億9241万円(5%)となっている。このほかに日本一の産地とされる特産のじゅんさい8654万円(1%)がある。

 じゅんさいという特産物はあるものの、米に多くを依存する地域である。JA系統外出荷のウェイトは低いようではあるが、生産農業所得統計でJA秋田やまもと管内の三種町と八峰町の農業産出額合計を見ておくと、2006年は85億5000万円で、内訳として米が48億5000万円(57%)、野菜18億6000万円(22%)、養豚を主体とする畜産が1億300万円(12%)などとなっている(同統計の市町村別集計は2006年で打ち切り)。2012年の秋田県の農業産出額は米が64%、野菜は13%なので、部門別構成において秋田県の平均的な姿を示す農業地域であると言える。米の需要減退が続いている状況下で、JA秋田やまもとでは他の作物、作目の振興が課題となっており、その一つの方向が加工・業務用野菜生産であった(写真1)。

 JA秋田やまもとには作物、作目別に全部で22の生産者部会が置かれている。そのうち、野菜ではみょうが、メロン、ねぎ、ミニトマト、ごぼうなど11部会が組織され、その一つに加工用キャベツ部会(構成員14人、このほか構成員12人のキャベツ部会もある)がある。
加工用キャベツの取り組みは、JA合併前の1994年にさかのぼる。旧山本町の3人の生産者が水田転作として、30アールずつ栽培し、全農県本部経由で2500ケース(15キログラム/1ケース)ほどを出荷した。キャベツ導入の背景として、収穫期が10月末から12月上旬であり、稲作やじゅんさい(8月で収穫終了)と作業が競合しないなど営農面の理由もあった。しかし、キャベツ栽培の機械化が遅れていたこともあり、生産者には稲作に比べての負担感があったようで3年ほどは作付面積が伸び悩んだという。

 1997年になってJA秋田やまもとの役員が農家を訪問するなど、JA秋田やまもととしての積極的な取り組みが開始され、県の補助事業(最高500万円の苗移植機、ブームスプレイヤー、コンテナなど購入補助)や町の単独補助事業もあり、1998年には作付面積が45ヘクタールへと一挙に拡大し、販売額も1億円を超えるに至る。

 しかし、その後は転作奨励金の単価変更や高齢化による重量野菜であるキャベツ生産の負担などが重なり、生産組合の発足をみた大豆など他作物への転換が進み、表1が示すように、加工用キャベツ栽培はやや停滞的に推移している。その結果、2013年には作付面積が17.2ヘクタール、販売額は4590万円と、ピークの1998年に比べて半分以下となっている。また、2010年からは湿害や干ばつの影響で単収が低迷している。

 このような問題を抱えているとはいえ、2013年の秋田県全体の加工用キャベツは39.1ヘクタールであり、JA秋田やまもとが約2分の1のシェアを占めている。また、他産地の単収は3.5トン(230ケース)程度であるのに対し、管内の単収は約4.5トンと相対的に高い水準にある。これは20年にわたる加工用キャベツ生産の取り組みが生産者の技術を高めてきたからと地元では理解されている。

 加工用キャベツの契約は全農県本部が加工・流通業者(2013年度実績9社)と一括して行っている。契約は面積ではなく供給重量ベースで、価格は競合産地の契約単価の動向を基準に生産コストを勘案して設定しており、近年は据え置きが基調である。農家は市場価格の方が高い場合でも契約出荷を優先し、機会主義的に行動することはないという。一方で、契約量を確保できない場合でもペナルティは課されない。契約当事者間の信頼関係に基づくものであろう。

 出荷量の取りまとめは全農県本部が行っている。秋田県全体で1650トンの生産が見込まれるので、契約先と各JAにその枠を割り振ることになる。具体的には、全農県本部は、毎年9月末までに日別の納品希望数量を取引先から提出してもらい、加工用キャベツを生産している各JAにそれを提示し、JAごとの出荷数量を調整する。実際の日別出荷量については1週間単位で計画を策定し、直近の情報をもとに毎日の出荷量を調整している。ただし、キャベツは冷蔵すれば5日間程度は貯蔵が可能(10~11月の場合)なので、各JAでは2、3日分の出荷ストックを保持して対応している。

 JA秋田やまもとの場合、事前に定めた取引先は5社であるが、調整の結果として10社になることもあるという。また、納品希望を満たせそうにない場合は契約先に要請して納品数量自体を減らしてもらうこともある。契約業者は問屋が最も多く、用途としては外食(ラーメンチェーン)向けとカット野菜加工向けが多いようであり、所在地は宮城県、福島県が中心で、その他東北、関東、中京も一部ある。物流はエンドユーザーまでJAが輸送するが、商流については問屋経由が2分の1、卸売市場経由が5分の1、残りは直接取引となっている。量販店向けは10キログラム箱、加工・業務用向けは15キログラム箱となる。

3 加工用キャベツ生産の現状

 2014年の加工用キャベツ生産者は13人であり、機械装備については、個人で計3台の乗用移植機(1日に70~80アールの苗移植が可能)、5台のブームスプレイヤーが導入されている。このほかにJA秋田やまもとが所有し貸し付けている機械として、半自動移植機15台(1日20~30アール)、乗用畝立機2台、ブームスプレイヤー2台がある。また、2人の生産者がは種機を導入し、一部は他の生産者にキャベツ苗を供給している。

 加工用キャベツの目標単収は6トン(400ケース)であるが、生産者ごとの差がかなりある。それは技術だけでなく、ほ場条件、病害の発生程度、収穫労働力の確保によって差が出るからである。連作障害対策としては、堆肥の投入や緑肥(エンバク)すき込みなどで対応している。

 2014年の加工用キャベツ栽培面積は18.93ヘクタールである。生産者1人当たりの栽培面積は、4ヘクタール以上が2人、1ヘクタール以上が4人、1ヘクタール未満が7人と、栽培面積には大きな差がある。このうち4.56ヘクタールと最大の面積を作付けている生産者は、稲作も24ヘクタール行なっている大規模経営である。年齢構成は70歳以上が2人、60歳代が6人とかなり高齢化が進んでいる。40代以上の11人のうち、農業後継者がいるのは1人だけであり、農業経営の持続性については不安が残る状況である。

 栽培品種では11月から12月初めに収穫される晩生の「あさしお」が多い。この品種は固くしまって大きくならないが重量があり、かつ作りやすいという。このほか「冬おもい」「彩音」という品種が栽培されている。さらに、生産者各自が、国もしくは全農の推奨する1品種を試験栽培している(2014年は13人で9品種栽培)。そうした栽培試験をもとに、品種は5ないし6年程度で更新しているという。

4 加工用キャベツ生産者の経営と実態

 加工用キャベツの生産者2名に聞き取りを行ったので、農業経営と加工用キャベツ生産の実態を紹介する。

(1)A氏のケース

 A氏は加工用キャベツ生産者部会の部会長で、63歳である。5人家族だが高齢の父母は現役を引退しており、A氏、妻(62歳)、息子(36歳)の3人が農業に専従する専業農家である。息子はラジコンヘリのオペレータとして1年のうち30日間は別の農業法人の仕事に従事している。経営面積は水田862アール(自作地418アール、借地444アール)で、作付けは稲618アール(あきたこまち6割、ゆめおばこ4割)、加工用キャベツ187アール、じゅんさい57アール(いずれも水田転作)である。稲作機械はトラクタ2台、田植機1台、自脱コンバイン1台、乾燥機2台を個人で装備し、キャベツ用の移植機などはJA所有機械をリースで利用している。

 加工用キャベツはJAの勧めで、1997年に40ないし50アールを転作で導入した。作付けを増やしてきたのは小面積でも大面積でも手間があまり変わらないからであるが、雇用は基本的に使わないので(定植時に1人5日間のみ)、現在の面積が限界である。

 キャベツの単収は5トン/10アールで、排水条件の良い水田を選んで作付けしているので連作になる。キャベツの栽培前にエンバクをすき込んでいる。また、2013年に堆肥を投入したところ、生育がよくなるなど効果が出ているという。

 作業としては、は種が7月初めの1週間で、7月末から8月10日頃にかけて順次定植する(写真2)。以降、追肥を2回、防除を10日程度の間隔で5~6回行う。収穫は10月中ごろから12月上旬にかけてである。ただし、2012年のように長雨で稲の収穫が遅れてキャベツの出荷期に重なってしまうと、キャベツの収穫が遅れて表面に割れが発生するなどのこともある。出荷、調製は自家で行っている。また部会の活動としては、目揃え会(ほ場の巡視)、栽培講習会、加工業者との懇談会、産地視察などがある。

(2)B氏のケース

 次に加工用キャベツ部会の副部会長B氏について紹介する。B氏は67歳、妻67歳、息子41歳との3人家族である。農業専従はB氏と妻の2人で、息子は農外就業で稲の育苗・刈り取り、キャベツ収穫の手伝いをしている。経営面積は水田800アール(自作地400アール、借地400アール)で、作付けは稲700アール(あきたこまち530アール、ゆめおばこ170アール)、加工用キャベツ99アールで、このほかに妻の実家がある別集落の大豆転作1800アールのは種、防除、中耕培土、収穫作業を受託している。稲作用機械はやはり自前でそろえており、トラクタ3台、田植機1台、自脱コンバイン1台、乾燥機1台である。キャベツの移植機は、A氏同様、JA所有機械を借りている。

 加工用キャベツは1994年に60アールで始めた。当時は母親が健在で農業にも従事していた。それ以前にも夏キャベツを少し栽培したが虫害がひどくてやめたことがあった。家族2人で栽培するのは現在の面積が限界である。収穫時期が遅れると寒くなって作業が大変である。雇用を入れて栽培面積を拡大するということはありうる。拡大しないのは、利益が薄いからというよりも、他の作業(大豆収穫受託など)との競合があるからである。
キャベツの単収は5トン程度で、連作障害、病害発生を防ぐために排水が良好な水田を選んで3年くらいでほ場を変えている。また、酪農家に散布を依頼して、A氏同様に堆肥を投入している。エンバクすき込みを以前は行っていたが今はやめている。すき込みの効果はあると思うが、5月頃に除草剤散布などとの作業競合があるからである。

 加工用キャベツの収益性はそれほど悪くない。ただし、面積拡大には後継者の農業従事などが必要となる。また、とくに収穫期の省力化が課題となる。収穫作業の機械化が望ましいが、加工用キャベツは切り取り後に外葉を除去する必要があり、機械収穫後に外葉を取る作業があるので効率が上がらない。また昨年、乗用刈り取り機のテストをやってみたが、加工用キャベツは生食用より大きくて重く、ほ場にあっては地上部が傾いているので収穫時に斜めに切ってしまう。使うには課題があるというのが印象だ。

5 加工用キャベツ生産の課題と拡大、定着条件

 JA秋田やまもとでは、地域営農ビジョンでキャベツを複合経営における重点品目と位置付け、2018年には管内で23ヘクタールのキャベツ栽培を目指すとしている。これに合わせて、農林水産省の平成26年度新規事業「加工・業務用野菜生産基盤強化事業」(土壌・土層改良、被覆資材の使用などに対して1年目7万円、2年目5万円、3年目3万円を補助。いずれも10アール当たり)を活用する意向である。

 本報告を締めくくるに当たり、加工用キャベツの産地の一つであるJA秋田やまもとでの調査を踏まえて、加工用キャベツ生産の拡大における課題を整理すると以下のようになるだろう。

 第1に、基盤の整備が重要である。調査地域ではキャベツは転作作物として栽培されていた。同じく転作の一環で今後、加工・業務用野菜の拡大を考えている地域も多いであろう。今回の調査では排水条件改善の重要性が確認された。水田転作であれば当然であろう。排水条件が不良であれば、湿害による単収低下に加え、降雨とその後のぬかるみにより適期作業が妨げられ、病害発生や品質低下に結びつく。作業効率も低下するであろう。また、排水良好な水田に作付けが集中し、結果として連作障害の発生が懸念されていた。もちろん、排水だけでなく、畑地で加工・業務用野菜を作付けする場合は、かんがい用水の確保が必要である。さらに加工・業務用野菜の場合、品質のそろった野菜を大規模かつ省力的に栽培し、合わせて高単収を追求して低コストを実現する必要がある。生食用に比べて契約価格は低い場合が多く、高単収を実現して量で価格をカバーする必要があるからである。そうした場合、ほ場条件の均一化に加え、作業の効率化、適期作業の実施を可能とするような、稲・麦・大豆作などの土地利用型農業で要請される農地の面的集積も課題となってくるであろう。要するに、かんがい排水条件の整備を含めた土地、土壌改良などのハード対策、さらに農地の面的集積などのソフト対策が必要である。調査事例では、生産者が個別に良好な条件のほ場を選んで加工用キャベツを栽培していた。地域として生産性の上がるほ場の面的集積を支援できないものであろうか。

 第2に、実需者などユーザーとの連携強化である。実需者側の定時、定量、定価供給の要望に応えることはもちろんであるが、品質面の要望にも対応できる産地形成が求められよう。今後、高齢化などによって農地流動化が進むことが多くの地域で予想されている。加工・業務用野菜を経営の重要な柱として位置付け、産地形成を図ろうとするならば、信頼される産地づくりが課題である。幸いにして、調査地域では、生産者側の機会主義的行動はあまり見られないようで、実需者側の信頼も得ているようである。ニーズに見合った加工・業務用野菜供給はむろんのこと、長期的取引を視野に入れつつ、産地評価を高める取り組みが重要である。そうした取り組みは、衰退する既存産地に代わりうる信頼のおける産地としての評価を確固たるものとし、新たな取引先の開拓にもつながっていくのではないだろうか。この面では生産者をしっかり組織し、販売活動を担うJAの役割が重要である。

 第3に、生産支援の充実である。支援が必要な場面は、まず省力化、機械化などによる家族経営の労働負担の軽減、そして資金面のサポートであろう。加工・業務用野菜はやはり一定の生産規模が要請され、省力技術や機械の導入が課題である。これは家族労働力の範囲内での労働生産性の向上と規模拡大を達成する方策であるが、雇用労働力の安定的調達に向けた情報提供などの対応、あるいはJAなどによる作業の受託やあっせんなどの取り組みも、場合によっては重要となる。また、新たに取り組む生産者への施設、機械投資への助成や融資も大切となろう。調査地域では、3年間で収益体制を確立することを条件に、JAが独自に野菜導入のための設備投資資金への補助(300万円)を行い、2012年度までに8000万円の資金を投入している。加工用キャベツ関連では2011年に乗用移植機2台、ブームスプレイヤー1台が導入され、3件(3人)で3.8ヘクタールの作付け拡大につなげている。

 以上の3つは地域レベルで取り組むべき課題である。

 第4に、栽培技術の習得と定着である。加工・業務用野菜の経営的成立条件で最も重要な点は、一定品質以上のキャベツをいかに多く生産するか、すなわち一定品質、高単収の実現である。ほ場条件を別にすれば、決め手は技術水準であることは言うまでもない。生産者の技術をいかに高位平準化するか、JAと関係者の技術指導が極めて重要となってくる。穀物栽培に比べると園芸品目は生産者、技術水準による品質と生産量の差がずっと大きくなる傾向がある。そうした品目の収益性は技術力の差で決まると言ってもよいほどである。

6 さいごに

 加工・業務用野菜生産の拡大、定着には上述の課題への対処が大切である。こうした対策によって加工・業務用野菜生産が軌道に乗れば、生産者にとって着実で安定した収益が確保され、経営の安定化と今後予想される農業環境の変動リスクへの対応力が高まるであろう。また、農業経営においては、農地の高度利用、合理的な作付体系の確立、労働力(家族労働力および雇用労働力ともに)の効率的利用が可能となり、収益的で経済的、経営的効率の高い営農体制が構築されるというメリットもある。さらに、実需者ニーズへの対応は、市場の動向に対する情報窓口としても機能するであろうし、農業経営者をして収量、品質向上のための創意工夫に絶えず取り組むことを要請し、経営の発展と経営者の成長を刺激するように作用すると考えられるのである。


参考文献
米森萬壽美「農家としての経験をJAの運営に生かす」月刊JA、2014年10月号、pp. 8-11

 


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