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〔特集〕加工・業務用野菜の生産拡大に向けた取り組み


パッケージサラダの歴史とサラダクラブの取り組み

株式会社サラダクラブ
専務取締役 田中 龍二


1 はじめに

 株式会社サラダクラブ(以下、サラダクラブという。)は、キユーピー株式会社(以下、「キユーピー」という。)と三菱商事株式会社(以下、「三菱商事」という。)の共同出資の会社である。私の前任の金井順氏が三菱商事米国駐在時代に、カット野菜(以下、「パッケージサラダ(注1)」という。)の欧米市場における普及ぶりを見て、日本の市場においてもパッケージサラダの拡大が見込めるのではないかと考え、サラダと相性の良いマヨネーズとドレッシングの国内トップメーカーであるキユーピーに話を持ちかけたことが会社設立のきっかけである。その後、約3年間の検討を重ね、1999年2月24日に、野菜原料や包材資材などの原資材の調達は三菱商事、生産・品質管理と営業販売はキユーピーが担うという役割分担で、サラダクラブを設立することとなった。

<株式会社サラダクラブ企業概要>

設  立:1999年2月24日
資本金:3億円(キユーピー株式会社51%/三菱商事株式会社49%出資)
従業員数:878名(2013年12月現在)
売上高:206億円(2013年度)(図1)

注1:サラダクラブでは、パッケージサラダとは、「野菜などを食べやすくカットし、鮮度を保持するようにパックされている、洗わずにそのまま食べられるサラダ」と定義づけている。

2 欧米におけるパッケージサラダ市場

 欧米諸国でのパッケージサラダ市場について、特に米国では、量販店の野菜販売金額に占めるパッケージサラダの売上構成比は10%(英国5%、フランス7%)で日本の3.4%に比べると格段に大きい市場を確保していることが伺える(図2)。

 米国では、1970年後半に、生食用のカット野菜が発売され、1994年以降に急激な伸びを見せている。急増の要因としては、1991年に官民一体の取り組みとして「5 A DAY」(注2)と言われる健康増進運動が始まったことをきっかけに、野菜や果物の摂取量が伸びてきたことで、簡単にたくさんの種類の野菜を取ることができるパッケージサラダに注目が集まったことや、既に、「コールドチェーン」と呼ばれる原料野菜の品質を可能な限り保って消費者にお届けするための、「収穫から工場の受け入れ、生産、出荷、そして販売店である売り場まで、鮮度を持続させるための低温管理のシステム」が確立されており、このことも、広い国土を持つ米国で市場を広げる要因となったのではないかと考えられる。

 このような背景からパッケージサラダは、発祥地である米国で急成長を遂げ、その後間もなくフランスや英国などのヨーロッパで市場を拡大して行くこととなった。図2からも、欧米諸国と比べ日本の市場は小さく、比較的伸びしろのある状況と考えられる。

注2:野菜や果物の摂取は、生活習慣病発症のリスクを抑える可能性が高いという科学的根拠をもとに、「1日5~9サービング以上の野菜と果物を食べましょう」をスローガンとした官民一体の運動。

3 日本におけるパッケージサラダの始まりと市場の広がり

 国内でもサラダクラブ設立当時から、パッケージサラダの分野は存在していたが、それぞれの地域で、野菜の仲卸業者が販売店(小売店)からの依頼に対応して製造していた程度で、今のように商品認知はされていなかった。商品の地位も低く、商品イメージも「余った野菜を切って袋に詰めたもの」というものだったと考えられる。また、販売店での販売意向も低く、売り場を積極的に広げようという販売店も非常に少ない状況であった。

 サラダクラブにとっても状況は同じで、設立当初は社名も知られておらず、また今のようにパッケージサラダの売り場も確立されてなかったため、1999年4月より同社中河原工場(東京都)にて、量販店向けにパッケージサラダ5品(カットレタス(写真1)、キャベツ千切り、レタスミックス、キャベツミックス、大根サラダ)の製造を開始したものの、商品を店頭に置いてもほとんどが廃棄ロスになるような状況が続いていた。

 その後、今日現在パッケージサラダ市場は順調に伸長してきているわけであるが、その理由としては下記要因が考えられる。

① 欧米諸国で浸透しているパッケージサラダの情報が、販売店を含め青果関係者に影響を与え、パッケージサラダに対する関心も高まってきたこと。

② 国の「健康日本21」計画で、野菜を一日350グラム以上食べることが推奨されたことなどによる健康意識の高まり。「野菜を簡単に無駄なく、たくさん取りたい」というニーズが高まってきたこと。

③ 共働き世帯で、料理に時間をかけることの出来ない家庭の増加や世帯人数の減少、また少子高齢化で、購入した野菜を丸ごと使いきれないなどといった社会環境の変化。

④ 国内におけるコールドチェーン(低温管理)への取り組みやカット技術の向上、カット後の野菜の品質劣化を抑えるノウハウの構築などによる商品品質の向上。

 サラダクラブの推計では、2000年には、約100億円とされたパッケージサラダの市場規模も、2002年には約200億円、2013年には約960億円と、約15年で10倍と大きく伸びてきた。なお、欧米諸国は米国3000億円、英国800億円と推計している(2000年)。

 近年、野菜全体の家庭での消費割合が減少しているのに比べ、加工・業務用野菜の消費割合が増加している(図3)。つまり、野菜原体を購入して調理する家庭が減り、加工野菜「パッケージサラダ」などを使用して野菜を取る家庭が増えてきていることが分かる。また、丸ごとの野菜を含めた生鮮野菜の購入額は右肩下がりに減ってきているが、逆にサラダでみると購入額は増えている。

4 パッケージサラダに関する独自調査

 サラダクラブでは2011年より、サラダの食文化の把握のため、野菜の日(8月31日)に合わせて、その年ごとのテーマトピックスの調査と、パッケージサラダの認知、利用経験、購入経験についての定点観測を行っており、サラダ白書としてまとめている。

 以下、2014年のサラダ白書の中から、現状のパッケージサラダに関する調査結果を抜粋して報告する。

(1)パッケージサラダを利用したい理由・したくない理由

 消費者は、パッケージサラダにどのようなイメージを持っているのか、パッケージサラダを利用したい(利用したくない)理由を聞いてみた。

 パッケージサラダを利用したい人の理由は、「便利だから」(93.8%)、「いろいろな種類の野菜が手軽にとれるから」(52.0%)、「分量がちょうどいいから」(41.8%)の順で、利用したくない人の理由は、「割高、不経済だから」(54.1%)、「なんとなく不安」(30.3%) 、「不衛生に感じるから」(27.2%)の順であり、「簡単にたくさんの野菜を取りたい」という需要が大きいことが分かる(図4)。また、パッケージサラダに関する不安・不満を持っている人が多く、この不安・不満をいかに解消していくかが今後の課題の一つと考えられる。

(2)パッケージサラダ利用経験

 パッケージサラダ利用経験率は、54.5%と半数を超えている(図5)。性年代別にみても、50代以下のすべての層で50%を超えている。最も利用経験率が高いのは30代女性(67.5%)、次いで40代女性(61.2%)、男性でも平均的に50%を超える利用経験となっている。利用経験率が低いのは60代女性(38.8%)、60代男性(44.2%)であり、調理に時間のかけられない人の利用経験が多いことが分かる。逆に60代の男女では、利用経験も少ないことから、この層の取り込みが今後の課題の一つだと考えられる。

5 サラダクラブの取り組み

 ここ数年のサラダクラブの売上アップは、日本におけるパッケージサラダ市場伸長の追い風を受けることが出来たこともあるが、以下のような取り組みを行ったことも要因と考えている。

(1)販売店に応じた商品や売り場の提案

 販売店に応じた商品や売り場の提案を行い、全国の販売店に固定のパッケージサラダ売場を確保して頂き(写真2)、販促物を使用して売り場を目立たせるように作成し、パッケージサラダの認知拡大に努めたことも売上伸長の大きな要因だと考えている。

(2)野菜原料の調達における取り組み

 サラダクラブでは、パプリカなどの国内産だけでは安定的に確保しにくい原料を除いて、国産野菜を中心に取り扱っている。

 原料野菜は三菱商事(MCプロデュース株式会社)が主導し、全国に広がる「農業に対して想いのある生産者」を中心に契約取引することによって、安定的な原料野菜の供給と共にトレーサビリティも確保することが出来ている。これもどんなに市況が動こうと(野菜が高くても安くても)、しっかり契約した数量と価格を厳守して、信頼関係を構築し、安定確保や品質維持などを行うために、定期的に生産者と直接、高いレベルのコミュニケーションをとることができているおかげと考えている。

 また、四季を通じて、途切れることのない産地リレーにより、常に旬の野菜が調達できるよう取り組んでいる。

 このような取り組みの結果、想いを共有した生産者からの原料供給体制を構築している(契約産地数:180(2013年12月現在))。

(3)品質面での取り組み

 産地から消費者の食卓までのコールドチェーンによる低温管理体制を構築するとともに、野菜の受け入れ、加工から、充填、包装まで、キユーピーの品質管理技術を参考にした独自の技術、ノウハウの構築と、一つ一つの商品を人の目で確認することによって、徹底した品質管理に努めている(写真3)。

(4)商品の製造における取り組み

 北海道から沖縄まで全国に同一の商品をお届けしたいとの想いで、協力工場も含め全国13工場(2014年8月末現在)においてパッケージサラダの製造を行っている。全国どこでもサラダクラブの商品が購入できる体制を構築しているが、注文も増え続けており、生産能力を拡大して行くことが大きな課題となっている。

 そのため、サラダクラブでは、年内に広島県三原市にサラダクラブの新工場を稼働するほか熊本県、群馬県のキユーピーのグループ会社の工場に生産ラインを新設することにより、約2割の生産能力の増強を予定している。

6 パッケージサラダの販売拡大に向けた取り組み

 設立当初から現在に至るまで、一番売れているアイテムは、「千切りキャベツ」(写真4)と、これににんじんやレタスで彩りを加えた「ミックスサラダ」である。欧米諸国ではリーフレタスを使用したサラダが主要となっている中で、千切りにしたキャベツが主体の商品が市場の大半を占めていることは、日本におけるパッケージサラダの一つの特徴である。

 当初5アイテムで製造をスタートしたが、現在は約40アイテムの商品を常時展開しており、他の商品の売上も伸長している。特に10種類の野菜を使用した「10品目のサラダシリーズ」(写真5)などは、「簡単にたくさんの種類を使用した彩りの良いサラダを食べたい」という声も多く頂き、高単価でありながら大きく伸びている商品となっている。また、「お家で作るごちそうサラダシリーズ」も好評を頂いており、肉やチーズ、魚介類などを加えることで簡単に手作り感のあるサラダが作れるため、販売店の売り場でのクロス販売に大いに活用して頂いている。

 また、これからの国内パッケージサラダ売場をけん引して行く一つのカテゴリーとして期待をしているのが、サラダ関連商材である。既に欧米諸国でも、パッケージサラダコーナーにおける関連商材の売場、売上が大きく伸びてきており、今後日本でも普及が進むと考えている。

 サラダクラブでもパッケージサラダと関連陳列することによって、消費者の買い物時間の短縮と販売店における買い上げ点数アップのため、サラダと和えるだけで簡単にごちそうサラダが出来る「野菜と和える具だくさんソース」シリーズを7月から全国発売を開始し、好評を頂いている(写真6)。

7 さいごに

 以上、前述の通り日本におけるパッケージサラダ市場は、この15年で大きな躍進を遂げてきた。サラダクラブでは、今後増産体制を構築して供給体制を確立して行くと共に、まだまだパッケージサラダを使用したことのない消費者も多くおられるので、認知度向上のための取り組みを行いながら、パッケージサラダへの不安、不満を解消し、いかにして商品を手に取って頂くかが、今後のパッケージサラダ市場拡大の一助になると考えている。

 サラダクラブは、引き続き販売店および生産者と一緒になって、パッケージサラダ売場を広げ、日本中に「サラダのある豊かな食卓」を提案し続けたいと考えている。時代のニーズに応える商品で野菜摂取量を増やすことを通して、日本人の健康と豊かな食卓の実現に貢献することを目指して行くこととしている。

 


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