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調査・報告(野菜情報 2014年11月号)


第23回加工・業務用野菜産地と
実需者との交流会の概要

野菜業務部直接契約課


1 はじめに

 野菜の加工・業務用需要の割合は、昭和50年頃は需要全体の4割程度であったが、食の外部化の進展などにより、平成22年には6割を占めるまでに増加している。

 一方、国産野菜の供給は、過半が家計消費用に仕向けられており、今後とも増加が見込まれる加工・業務用需要に対する国産野菜の安定的な供給体制を確立することが重要となっている。

 このため、当機構では、産地と実需者とのマッチングの場を提供するため、18年度から野菜ビジネス協議会との共催により、交流会(通称:国産野菜の契約取引マッチング・フェア)を開催している。

 26年8月26日、北海道で初の開催となる23回目の交流会を、サッポロファクトリーホールにて開催した(写真1)。

2 67の事業者・団体が出展

~出展ブース~

 今回は、67の事業者・団体(うち、生産者・生産者団体29、流通・加工業者17)が出展した。出展者の内訳を見ると、初出展者は約半数の37で、北海道からの出展は、全体の約6割を占める39と多かったが、なかには九州から出展する生産者もおり、全国各地から多彩な事業者、団体が顔をそろえた。また、来場者数は、地方開催としては、昨年秋の福岡開催に次ぐ450名に達するなど、会場が終日にぎわいを見せるなかで、積極的な商談も行われた(写真2)。

 以下、出展者や各コーナーの概要を紹介する。

(1)JA

 大雪山のふもとに位置する上川中央農業協同組合(北海道愛別町)は、管内の愛別町産まいたけを出展。肉厚なまいたけは、炒めたときの食味の良さが特徴である。「夏場になると、鍋物などの生鮮需要が落ち込むので、この時期に加工業者との契約を結ぶことで、通年、安定的な販路を確保したい」とのことであった(写真3)。

(2)生産者

 株式会社陽虹舎(北海道積丹町)は、自然農法を用いた野菜生産に取り組んでいる。「自然農法に興味を持つ外食業者や自然食品を扱う流通業者だけではなく、加工原料野菜を求めているバイヤーからも引き合いがあった。20社以上の実需者と情報交換ができ、満足している」とのことであった(写真4)。

 株式会社よねざわ農園(北海道名寄市)が出展したミニトマトは、濃厚な味わいが特徴である。外食業者に販売したいとの想いで出展したところ、関西圏の実需者からも引き合いがあり、来場者の反応の良さに手ごたえを感じていた(写真5)。

 株式会社HAPPY PLACE(北海道寿都町)は、自社で栽培したトマトを20時間かけて手作業で干し、非常に濃厚な味わいを持つオリジナルブランド「潮風のセミドライトマト」を出展した。パスタや和食との相性の良さを武器に、外食業者との取引を目指している(写真6)。

 株式会社エア・ウォーター農園(北海道札幌市)は、環境制御型ガラスハウスで土耕栽培のトマトやベビーリーフを通年で生産している。単価はやや高いものの、「こだわりを理解していただけるところと取引したい」との方針のもと、大口の取引先を開拓中である。最近は、野菜の機能性に着目し、女性をターゲットとしたマグネシウム入り野菜ジュースの商品開発にも取り組んでいる(写真7)。

(3)流通・加工業者

 株式会社アグリサプライ北海道(北海道札幌市)は、野菜の粉末加工に取り組んでいる。本交流会では、14~15名の生産者と情報交換を行い、「原材料(規格外品)の供給先についての情報を手に入れることができた」と、成果に満足を得られた様子がうかがえた(写真8)。

 株式会社きりく屋(北海道札幌市)は、オリジナルブランドのトマトジュース「SAPPORO MUR」など、こだわりの食材やその加工品を販売している。現在は、通販大手など高級ブランド向け取引と個配での販売が中心だが、今後の事業展開については「値段が高いから買わない、という姿勢では、業界が立ち行かなくなる。値段が高くても、こだわりを持って良いものを生産する方々と、長くお付き合いしていきたい」と、熱く語っていただいた(写真9)。

【コラム】野菜の「美しさ」にこだわる

 本交流会の出展者を見渡してみると、野菜の生産にとどまらず、自社加工、販売まで事業を拡大し、6次産業化に取り組む生産者も多く見られたが、その一方で、野菜の「美しさ」をセールスポイントにして、外食、小売業者との取引を拡大しようとする出展者の熱心な様子が、来場者の目を引いていた。

 当麻町にある高橋農園(北海道当麻町)は、なすやセルリー、トマトのなかでも、見た目や形にも特徴のある品種を生産している。最近は、生産(ハウス、露地)だけでなく、自社で生産したトマトやスイートコーンのピューレ加工も開始した。「見た目の美しさという強みを生かし、小売業者との取引強化を図りたい」とのことであった(写真10)。

 いしぐろ農園(北海道士別市)は、直売を中心に、アスパラガスやズッキーニ、かぼちゃなどの多品目の野菜を有機農法で生産している。現在、取引のある小売業者に加えて、飲食店への販路拡大を目指して参加された。同社によると、農商工連携のプロジェクトとして、青果店とのコラボレーションで『やさいのアレンジメント』を制作しており、「野菜はアートになると考えている。だからこそ、見た目の美しい希少品種の栽培に力を入れている」とのことであった(写真11)。

 昨今は、野菜の「機能性」「栄養価」に対する関心が高まっているが、野菜の「美しさ」に対する需要も、今後は高まってくるかもしれない。

3 27件の商談が盛り上がる

~特別商談会~

 マッチングの成果をさらに後押しするため実施している「特別商談会」(野菜ビジネス協議会および青果物カット事業協議会の会員企業などと出展者による、個別、予約制の商談会)には、実需者5社と16の生産者などが参加し、27件の商談が精力的に行われた。出展品目を持ち込んで商品の魅力をPRする生産者などもおり、参加した実需者からは「生産者と商品を同時に見ることができ、商談に参加した甲斐があった」との声も聞かれた(写真12)。

4 出展者、来場者双方から好評のサラダバー

~試食コーナー~

 この「試食コーナー」では、出展者の商品PRの一環として、29の出展者が持ち寄った70種類近くの「自慢の野菜」をサラダバー、ドリンクバー形式で順次陳列、提供した。来場者が自由に試食でき、多彩な種類のサラダや野菜ジュースを求める来場者で、終日盛況であった(写真13)。

 野菜を提供した出展者からは「出展物のPRができた」との声があり、また、来場者からは「直接試食して、生産者と話をすることができた」との声が聞かれるなど、商談の足掛かりとして出展者、来場者の双方から好評を博していた。

5 事業説明、セミナー・パネルディスカッションも盛況

~セミナー会場~

 当機構では、平成14年度以降、野菜の契約取引における生産者リスクを軽減するため、契約野菜安定供給事業などを実施している。

 本交流会では、会場併設のセミナー会場において、農林水産省の担当官と機構職員から、リレー出荷の特例措置などを含む契約野菜関連事業について、説明会を行った(写真14、15)。

 また、同会場では、野菜ビジネス協議会主催の「野菜産地と実需者によるセミナー・パネルディスカッション」が開催された。産地側および実需者側からの話題提供ののち、(一社)JC総研客員研究員の仲野隆三コーディネーターと、産地側2名(鹿追町農協 営農部農産課考査役 今田伸二氏、(有)植物育種研究所代表取締役 岡本大作氏)、実需者側2名((株)トップ・ラン取締役業務部部長 本多隆文氏、(株)彩喜取締役社長 木村幸雄氏)によるパネルディスカッションが行われた。会場では、加工・業務用向け品質基準についての産地側、実需側双方の合意の重要性や、異常気象対応としての複数産地の確保、物流構造の見直しなど、さまざまな論点について意見交換が行われ、100名近くの参加者が熱心に耳を傾けていた(写真16)。

6 おわりに

 機構では、野菜の契約取引における生産者のリスクを軽減する経営安定対策事業に加え、収入確保のためのセーフティーネット対策としてのモデル事業を実施し、さらに今年度からは、加工・業務用野菜の生産に取り組む産地の基盤強化を支援する事業にも取り組んでおり、加工・業務用野菜の取引の拡大に向けてさまざまな支援を行っている。

 今後も、こうした支援の一環として、全国各地で交流会を開催することにより、産地と実需者とのマッチングの場を提供していくこととしている。次回は、平成27年3月10日(火)に東京国際フォーラムでの開催(JA全農、JA全中、農林中金共催の「国産農畜産物商談会」と同時開催)を予定しており、多くの皆様の出展と来場を期待している。

 最後に、本交流会を開催するに当たり、北海道での初開催ということで、出展者や来場者の募集、周知などに多大なご協力を頂いた関係者の皆様方に、この場を借りて厚く御礼を申し上げます。


○ 出展者一覧(順不同、敬称略)

【生産者団体】

ホクレン農業協同組合連合会、北海道青果商業協同組合、上川中央農業協同組合、鹿追町農業協同組合、美瑛町農業協同組合

【生産者】

いしぐろ農園、株式会社岡本農園、音更なたね油生産組合、鎌田きのこ、有限会社渋田産業、株式会社スリービー、当麻町 高橋農園、坪井 裕一、農業生産法人株式会社ふるさとファーム、農業生産法人株式会社ファームホロ、農業生産法人株式会社コムズファーム、株式会社HAPPY PLACE、ファームビジョン尾崎農場、ファームちば、株式会社陽虹舎、有限会社余湖農園、株式会社よねざわ農園、農事組合法人水鳥、株式会社エア・ウォーター農園、株式会社ミスズライフ、有限会社見元園芸、株式会社春口農園、有限会社百商、矢野園芸

【流通業者】

カゴメ株式会社 農カンパニー、国分青果、株式会社丹波屋、neeth株式会社、株式会社パイオニアジャパン、株式会社北海道グリーンパートナー、ナラサキ産業株式会社、ハートファーム株式会社、株式会社ブレスト、株式会社クロスエイジ

【加工業者】

株式会社北海道アグリサプライ、株式会社きりく屋、株式会社北海大和、まりも製薬株式会社、レストランこだま、明陽食品工業株式会社、株式会社マルヤ

【種苗会社】

パイオニアエコサイエンス株式会社 札幌営業所、雪印種苗株式会社、渡辺農事株式会社、株式会社トーホク、カネコ種苗株式会社、トキタ種苗株式会社、みかど協和株式会社、株式会社ジャパンポテト、日本デルモンテアグリ株式会社、株式会社サカタのタネ、横浜植木株式会社、タキイ種苗株式会社、ナント種苗株式会社、株式会社大和農園

【植物工場】

PLANT FACTORY

【その他】

有限会社植物育種研究所、地方独立行政法人北海道立総合研究機構農業研究本部 花・野菜技術センター、株式会社つくば分析センター、Farm to Wellness倶楽部(デリカフーズ)、野菜ビジネス協議会、独立行政法人農畜産業振興機構

※出展者の詳細情報については、機構HP上の「交流会コーナー/野菜契約取引マッチング・ゲート」をご参照ください。

URL:http://www.alic.go.jp  で検索

 


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