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調査・報告(野菜情報 2014年10月号)


栃木県における2月上中旬の大雪被害の状況と
施設復旧の取り組みについて

栃木県農政部農政課


1 大雪被害の状況

 栃木県内では、平成26年2月14日から15日の大雪により、いちご、トマト、ぶどうなどの農業用ハウスが多数倒壊するなど、本県農業に甚大な被害が発生した(写真1、2)。

 被害金額は、農作物で約28億円、農業施設で約115億円、合計で約143億円であった。被害市町は、栃木市ほか22市町で、被害作物は、いちご、トマト、ぶどうなど計58品目にのぼった。被害農業施設は、鉄骨ハウス、パイプハウス、畜舎など計4736棟に及んだ(表1)。

2 経営再建等への対応

(1)経営再建推進体制の整備

 平成26年2月24日、栃木県農政部に「大雪災害経営再建推進本部」を設置し、基本方針や全体の取りまとめ、関係機関との調整などを行うとともに、各農業振興事務所には「大雪災害経営再建支援チーム」を設置し、市町、農業団体などと連携しながら、農業者の経営再建を支援している。

(2)被災した農業用施設、農作物などの復旧対策

ア 県条例に基づく支援

 県では26年2月28日、栃木県農漁業災害対策特別措置条例を適用し、

①生産を維持増進する助成措置(被災農作物等取りかたづけ作業費、代替作付け用種苗購入費、病害虫防除用農薬購入費、樹草勢回復用肥料購入費)、

②資金の融通を円滑にする措置(災害経営資金、施設復旧資金への利子補給)を講ずるとともに、関連する資金(農業近代化資金(災害復旧支援資金)、がんばろう“とちぎの農業”緊急支援資金)を融通した(表2)。

 

イ 国の支援制度の活用

 国では、26年3月3日に被災農業者向け経営体育成支援事業が決定されたことから、倒壊した農業用ハウスなどの撤去や再建などについて、市町と協調し、被災農業者向け経営体育成事業への上乗せ補助を行い、撤去費用は基本的に自己負担なしで、再建費用は8割以上の助成となるよう支援を行っている。

(3)個々の農業者に対する経営相談の実施

 県内各農業振興事務所の大雪災害経営再建支援チームが中心となって、新規就農者や資金の未償還金があるなど、より深刻な状況にある農業者をリストアップし、経営再建に向けて重点指導を行った。

(4)産地の再生に対する対応

ア 水稲

 水稲育苗については、大規模農業者への委託や既存ハウスの利用など、地域内で必要な苗が確保され、苗不足は発生しなかった。

イ いちごおよびトマト

 いちごについては、定植期の9月に向けて、資材の早期発注や農業者による自力施工を積極的に促したり、農業団体へ資材の優先供給を働きかけるなど、施設再建を重点的に推進した結果、定植はほぼ間に合う見込みである(写真3)。トマトについては、鉄骨ハウスであることから、26年度内の再建完了を推進するとともに、作型調整など技術指導の徹底を図っているところである。

ウ ぶどう

 ぶどうについては、市町や農業団体と連携し、未収益期間が短縮できる品種(シャインマスカット)や平行整枝栽培の導入など、産地としての再生が効果的に進むよう支援を行った。

エ 人手不足への対応

 農業用施設の復旧に当たっては、すべての品目で作業員不足が深刻であることから、パイプハウスについては農業者による自主施工を推進することとし、普及指導員向けのパイプハウス建て方講習会をJA全農とちぎと連携して開催した。

3 今後の対応(未然防止)

(1)気象災害に備える未然防止対策の作成および配布

 近年、園芸施設の普及とともに、降雪や強風によりパイプハウスや鉄骨ハウスが倒壊する農業災害が多くなっている(表3)。

 増加傾向にある自然災害に対し、未然防止と被害軽減のため、農業者向けの災害防止マニュアル「気象災害に備える未然防止対策」(図1)を作成し、農業者、関係機関および団体に配布した。また、県ホームページへの掲載や、新たに開始した「とちぎ農業防災メール」などにより、農業者に被害の軽減対策に関する情報を発信している。


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