野菜業務部直接契約課
野菜の加工・業務用需要の割合は、食の外部化の進展等により、昭和50年頃は4割であったが、平成22年には6割を占めるまでに増加している。
一方、国産野菜の供給は、過半が家計消費用に仕向けられており、今後とも増加が見込まれる加工・業務用需要に対する国産野菜の安定的な供給体制を構築することが重要となっている。
このため、当機構では、産地と実需者とのマッチングの場を提供するため、平成18年度から野菜ビジネス協議会との共催により、交流会(通称:国産野菜の契約取引マッチング・フェア)を開催している。
3月12日、22回目の開催となる交流会を、昨年に引き続き、東京国際フォーラムにおいて開催した。
今回は、全国各地から112の事業者・団体(うち、生産者・生産者団体57、流通・加工業者32)が出展した。初出展者も32(うち、生産者・生産者団体16、流通・加工業者12)と多く、新しい顔ぶれが出そろった。
また、昨年に引き続き、JAグループ主催の「国産農畜産物商談会」と同日開催で実施した効果もあり、昨年を上回る来場者数(1,263名)を記録し、積極的な商談が行われた。
以下、出展者の取り組みを紹介する。
愛知県経済農業協同組合連合会の3月の出荷の中心は、渥美半島のキャベツと、知多半島のふき。隣接するJAグループの「国産農畜産物商談会」と両方に出展し、「マッチング・フェアでは、加工・業務用野菜に特化し、荷姿を含めて来場者にPRしている」とのことで、両商談会を生かしていた。
東近江市フードシステム協議会(滋賀県)は、同市の4JAが連携し、生産~流通~販売のサプライチェーンの構築を目指す取り組みを進めている。「当初予定の卸・加工業者との商談に加えて、秋田県の中間事業者からも引き合いがあるなど、多くの業者と情報交換を行えた」とのことであった。
(有)八百辰(神奈川県)は、三浦半島の朝採り野菜を、その日のうちに近県のレストラン約500店に出荷している。バーニャカウダ用のプチベール(芽キャベツ)や、糖度12度の「甘玉キャベツ」といった特徴ある品目は、試食コーナーでも多くの来場者の注目を集めていた。
(株)グリーンワーム21(奈良県)は、約200種類の有機JAS野菜を、レストラン等向けに出荷。少量多品目で「おいしさ」にこだわるのが同社の方針で、黒キャベツなど「1枚あると外食のお客様が喜ぶ」ものをつくり、「おいしさと珍しさで実需者を飽きさせない」ようにしている。
青ねぎを生産している卑弥呼の杜(株)(福岡県)は、昨年10月の福岡開催に続いて2回目の出展。来場者の反応について伺うと、「青ねぎ消費文化があまり浸透していない関東圏での出展に不安はあったが、新しい取り組みとして多くの実需者から評価を頂き、大きな手応えを感じている」と語っていた。
(有)橋場農園(岐阜県)は、トマトの加工品を、宅配で出荷。「ドライトマトは単体でも酒のさかなになるが、ラム酒に漬けるとドライフルーツに替わるケーキの具材としてもおいしい」と語るなど、自社加工品のメニュー開発にも積極的に取り組んでいた。
(株)パイオニアジャパン(北海道)は、カット野菜を道内の居酒屋等の外食向けに卸している加工業者。これまでは生鮮野菜が取り扱いの中心であったが、本州の市場開拓を図るべく、冷凍野菜の生産を開始。独自技術の「過熱水蒸気加工」により、加熱処理したじゃがいも等をカットし、冷凍・真空パック詰めした商材を展示していた。
(株)フードタッチ(埼玉県)は、名産の「島田屋総本家の川越いも」を取り扱う唯一の流通業者として、無添加のさつまいもペーストを外食業者や百貨店に卸している。生産者名をブランドに冠し、他社との差別化を図っていた。
マッチングの成果をさらに後押しするための「特別商談会」(野菜ビジネス協議会および青果物カット事業協議会の会員企業等と出展者による、個別・予約制の商談会)には、実需者9者と生産者等27者が参加し、延べ60件の商談が精力的に行われた。
出展者からは「今まで接点のなかった実需者と商談できた」、また、実需者からも「新しい産地と商談ができ、前向きに契約につなげていきたい」といった声が聞かれた。
出展者の「自慢の野菜」をサラダバー形式で来場者が自由に試食できるのが、この「試食コーナー」の特徴。今回は、これまでの来場者からの要望に応えて、野菜のドリンクバーを新設。35の出展者が60種以上の野菜等を持ち寄り、多彩な種類のサラダや野菜ジュースを求める来場者で、終日大盛況であった。
なかでも、山武郡市農業協同組合(千葉県)の「ホワイトセロリ」、(株)基進(群馬県)の「トマトベリー」、(有)八百辰(神奈川県)の「甘玉キャベツ」等が、来場者の注目を集めていた。また、野菜ドレッシングへの関心も高く、(株)ファームいせはら(神奈川県)の「自然薯とろろドレッシング」等、特徴を持った製品にも人気が集まっていた。
野菜を提供した出展者からも「出展物のPRを効果的に行うことができた」と、商談の足掛かりを得る場として好評であった。
当機構では、平成14年度以降、野菜の契約取引における生産者リスクを軽減するため、契約野菜安定供給事業等を実施している。
会場内に設けたセミナー会場では、農林水産省の担当官と連携して、リレー出荷の特例措置等を含む加工・業務用野菜関連対策について、説明会を行った。
また、セミナー会場では、野菜ビジネス協議会主催の「野菜産地と実需者によるセミナー・パネルディスカッション」が開催された。産地側および実需者側からの話題提供ののち、(一社)JC総研客員研究員の仲野隆三コーディネーターと、産地側2名((有)トップリバー代表取締役社長 嶋崎秀樹氏、神谷農園グループ 三方原アグリ(株)専務取締役 神谷光男氏)、実需者側2名(サンポー食品(株)常務取締役 野口修氏、横浜丸中青果(株)取締役 岡田貴浩氏)によるパネルディスカッションが行われた。会場では、契約出荷を実施するうえでの産地指導のポイントや、不作時における産地側・実需者側双方の対応等について活発な意見交換が行われ、立ち見が多数出るほどの盛況であった。
機構では、国の平成25年度の補正予算等により、新たに加工・業務用野菜の安定供給に取り組む産地や生産者を支援する補助事業の実施に取り組んでおり、これまで以上に産地と実需者を結び付けていくことが求められている。
今後も、今回の東京開催に加えて、各地で交流会を開催することとしている。次回は、8月下旬を目途に、札幌市内での開催を予定しており、初の北海道開催へ向けて、多くの皆様の出展と来場を期待して準備を進めている。
最後に、今回の交流会を開催するに当たり、多大な御協力を頂いた関係者の皆様方に、この場を借りて厚く御礼を申し上げます。