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調査報告 (野菜情報 2014年4月号)


野菜の学校「北海道の伝統野菜・地方野菜」を語る

NPO法人野菜と文化のフォーラム 理事
「野菜の学校」事務局 脇 ひでみ
(食生活ジャーナリスト・子どもの食育教室運営)


【要約】

 NPO法人野菜と文化のフォーラムは、活動の一環として、2010年より「伝統野菜・地方野菜」をテーマに、月1回「野菜の学校」講座を開いている。2014年3月1日(土)は、今期最終講座となるもので、「北海道の伝統野菜・地方野菜」をテーマに、「札幌黄」の復活に尽力している、札幌黄ブランド化推進協議会生産部会長の三部英二氏(本号「話題」参照)に講演していただいた。今や“まぼろしのたまねぎ”といわれている札幌黄を中心に、当節の北海道の伝統野菜・地方野菜について学び、それらを使った数々の試食料理を味わいながら、北の大地に育まれた食文化を垣間見ることができた。野菜の学校では、この4年間、全国各地の伝統野菜・地方野菜に出合い、回を重ねるほどに、「野菜の底力」といったものに目を開かれており、そんな活動についても報告したい。

1.はじめに

 2014年3月1日(土)、会場となる東京秋葉原駅前の青果物商業協同組合ビルにおいて、「北海道伝統野菜・地方野菜」(写真1、2)の講座が開かれた。今回の中心は、“まぼろしのたまねぎ”といわれている札幌黄と、F1品種で同じ北海道産の「トヨヒラ」「北もみじ2000」を食べくらべる趣向だ。札幌黄は、在来種で、大きさや形が不ぞろいなところがあり、それを補い、貯蔵性に優れているのが、F1品種である。
 続いて、巨大なキャベツ「札幌大球」。1個でも両手で抱えてはいられないほどの重さで、11月頃に収穫されたものを、三部氏が保管を依頼していたものである。その保管方法は、摂氏0度、湿度95パーセントをおおむね維持できる、「アイスシェルター」という画期的なシステムによる。寒冷地ならではの技術に驚かされた。しかし、札幌大球を会場に運ぶ際、重すぎて低温の宅配便を使えないというアクシデントがあり、せっかくの札幌大球が蒸れて傷みが出てしまったのは残念だった。
 その他、「八列とうもろこし」は、展示用に乾燥させたものと加工した粉末で、北海道を代表する在来種の「らわんぶき」は、時期はずれのために水煮で、さらに「函館赤かぶ」も用意されていた。これら在来種に加えて、北海道ならではのじゃがいもとして、「北あかり」「インカのめざめ」、試作品である寒冷地のさつまいも、「恵庭ゴールド」「千歳宝当」「恵庭紫」、さらに三部氏が育種に関わられたいちご「サトホロ」のソースなどである。

2.スローフード運動“味の箱舟”に搭載

 講演は、北海道全土の農業の概略をふまえた上で、こうした伝統野菜のスローフード運動への取り組み、そして、各品目の紹介がなされた。三部氏(写真3)は職務上、札幌市内の農政が主だが、長年、スローフード運動に関わっている。スローフードとは、グローバリズム(ファーストフード)に対抗してイタリアの小さな村から発祥した運動のことである。地域固有の食材とそれらが作られる環境、食文化を守ろうとする活動であり、世界150カ国以上に広がっている。運動の主要な取り組みの一つに、味の箱舟(アルカ)がある。各地の伝統的・固有の食材を、世界共通の基準で認定し、地域の食の多様性を守り育てようというものである。
 三部氏は、現在、スローフード・フレンズ北海道のアルカ担当でもあり、今回の講演も、北海道の在来種を絶滅から救い、広く紹介する機会として、引き受けていただいたところである。北海道では、既に札幌黄、まさかりかぼちゃ、八列とうもろこしが、味の箱舟に認定されており、札幌大球は登録申請中、らわんぶき、函館赤かぶは登録申請予定となっている。講演で印象的だったのは、昨年、気象異変で干ばつや虫害がひどかったそうだが、たまねぎは、F1品種より札幌黄のほうが収穫に際して成績がよかったという話だ。在来種ならではの多様性が生き、その価値を再確認するエピソードだった。
 札幌黄に関しては、「札幌黄ふぁんくらぶ」ができ、熱烈なファンがそれぞれに工夫をこらして応援している。これまで、各地のさまざまな伝統野菜に出会っているが、そこに到達することがいかに大変かを思い、三部氏をはじめ関係者の方々の苦労がしのばれた。

3.在来種を今のニーズで食べるための模索

 まさかりかぼちゃは、明治11年に札幌農学校が試作した品種「ハッバード」が改良されたものだそうで、文字通り、まさかりで割るほどに皮が固かった(通常の約3倍)ことから名づけられた。その皮ゆえにねずみの食害からも回避できたので、冬場の北海道の貴重なビタミン源だったという。高糖度の強粉質であることから、加工向きとされ、現在は人気のプリンなどが登場している。また、まさかりかぼちゃの遺伝子を使って、新しい品種「ほっとけ栗たん」が開発されている。
 八列とうもろこし(写真4)は、味の箱舟に最初に認定された食材である。しかし、当初、いざ登録しようにも既に栽培農家が一軒も見つけられなかった。とあるドライブインで三部氏が目にした焼きとうもろこしがまさに八列とうもろこしで、そこから農家と連携して認定までこぎつけたのである。八列とうもろこしは、未熟なものを収穫して焼いて食べていたもので、大通公園にある啄木の歌碑にも詠まれている。三部氏は、この風物詩をなくしたくなく、また、八列とうもろこしのような硬粒種を使ったイタリアのポレンタ、メキシコのトルティーヤ、北米のコーンブレッドなどを参考に、今にあった食べ方の提案も進めている。

 札幌大球(写真5)は、直径40~50センチメートル、重さ20キログラムにも及び、10アールの畑で600~700個しか収穫できないという大きさである。以前、初めて見た時から、なぜこんなに大きいキャベツが作られたのか疑問だったが、今回の三部氏のお話で解消された。札幌大球は、もともとはこんなに大きくはなかったはずで、明治30年前後に主流だったアーリーサマーから育成されたという説や、レートフラットダッチにアーリーサマーやバンダーゴーを交えて選抜して作られたという説などがある。そして、冬のきびしい環境を乗り切る越冬野菜として、もっぱら貯蔵用の漬け物、特に鰊漬けに欠かせない存在になった。葉数はふつうのキャベツと同じ70枚前後というから、葉の厚み・大きさが察せられる。1個1個が巨大なので、内部が凍結から守られ、いわゆる歩留まりがよくなるわけだ。冬場のビタミン源として貴重な役割を果たしてきたという。三部氏は、札幌大球の今後として、料理人と手を組んで、鰊漬けをチーズと焼くなどの新しい食べ方を考えたり、ザワークラウトにしたりする方向も模索中だそうだ。

 函館赤かぶ(写真6)は、西日本から北前船で種が函館に運ばれて根付いた、和種系の「大野紅カブ」の改良系統で、平べったい形、根も表皮も葉柄も濃紅色。会場に届いたかぶは、直径10センチメートル以上の大きなものから、4~5センチメートルのものと、大きさはまちまちだった。他地区でこのかぶを栽培しても赤くならず、函館地区の赤土土壌が影響しているようである。肉質は軟らかく、千枚漬けに加工されている。

 らわんぶきは、日本一大きな町である足寄町で栽培されている日本一大きなふきである。高さ2~3メートル、茎の直径10センチメートル、1本の重さは1.5キログラムにもなる。もともとは秋田ふきの系統だが、阿寒山系の火山性土と螺湾川の豊富な水がこれほど大きなふきを育てた。過去には100ヘクタールもの自生地があったが、災害や乱獲で減少したため、昭和63年から保存活動の一環として畑での栽培技術に取り組まれている。収穫は種まきから4年目になるなど、栽培の難しさがあるが、現在22戸の農家が自分たちで守りながら栽培し、さらに自分たちで売ろうというところまで来ているという。らわんぶきは、他のふきに比べて繊維質は3倍、カルシウムは4倍、マグネシウムは32倍などミネラルが豊富であり、これらをPRして、おいしい食べ方の開発に取り組んでいる。

4.じゃがいもに加えて寒冷地型さつまいもも

 北海道といえばじゃがいもだが、今回は、北あかり(写真7)とインカのめざめ(写真8)を用意いただいた。北あかりは、最近はよく口にする品種になり、今回は、育種に携わった梅村芳樹先生のご子息の農場から届いた。北あかりは芽が赤いのが特徴で、皮肌がざらついているのは完熟の証だそうだ。またビタミンCの含有量は、同じじゃがいもでも北あかりが男爵よりかなり多いとのことだ。

 

 インカのめざめは、アンデスの古いじゃがいもを改良したもので、細胞が栗のように小さく、緻密な肉質である。じゃがいもは調理の際、変色を防ぐために水にさらすが、インカのめざめでは不要となる。濃い黄色、でんぷん含有量も高く、小さなじゃがいもをそのまま食べることを勧められた。
 今回の品目で意外だったのは、寒冷地のさつまいも恵庭紫、恵庭ゴールド、千歳宝当の3種(写真9)。これは、梅村先生のご子息の農場だけで栽培されており、北海道でも一般的には普及していない。紫色、赤色、オレンジ色の3色で、見ても楽しめる品種だった。北海道のような寒冷地でも、6~10月で4トンの収穫量がある。いずれも粘質でホクホクさに欠けるが、焼きいも、天ぷら、和洋菓子の原料に使われている。

 最後に、三部氏がかつて初めて品種登録したいちご、サトホロ(写真10)が紹介された。生鮮ではなくソースとしてである。サトホロは札幌市が1993年に品種登録した、数少ない露地向きの品種。卵大の果実で、葉数が少なく栽培しやすいのだが、酸味が強いため、完熟させて糖度が高くなるまで待つと果皮が濃赤色となり、市場価値が下がるという欠点があった。果実を割ると、中は濃厚な赤色をしており、色、酸味の面から加工用にいいということで、「いちごクラスター研究会」(2001~2007年)によって見直され、現在はジェラートなどのスイーツをはじめ、各種菓子、料理に使われている。

5.ブランドの価値を上げるために

 三部氏は、「北海道の伝統野菜はこれから」と強調された。「伝統野菜を博物館入りさせるのではなく、地域の生活スタイルに溶け込むものにしていきたい」という。そして、高梨一族と茂木一族の八家を1つのブランドにしたキッコーマン醤油㈱(旧野田醤油㈱)の家訓「和をもって貴し」を例に、伝統野菜をブランド化していくに当たっても、いろいろな人の関わりを大事にしてこそ、ブランドの価値が増すとの考え方である。
 また、不易流行、古いものを大事にしながら新しいニーズに応えていくことも必要で、そのための調理・加工方法を工夫していきたいという。最近人気の一品に、札幌黄ファンのシェフが、カレー一皿に1個相当の札幌黄をペースト状にして使うだけでなく、さらに丸ごと1個を加熱水蒸気で蒸し焼きにしてのせたカレーがあるそうだ。こうした形で私たちの目にとまる機会も増えるに違いない。三部氏は、今後の支援を呼びかけて、講演を締めくくられた。

6.札幌黄とF1品種の食べくらべ

 そして、いよいよ札幌黄とF1品種のトヨヒラ、北もみじ2000の食べくらべである。生のまま、縦切りと横切りにスライスして2時間程度おいたもの(写真11)、そして、皮付きのまるごと1個をオーブンで焼き、4~5等分したもの(写真12)を食べくらべた。食べくらべでは、「おいしい、まずい」の表現はタブーで、受講生各自で、「見た目」「食感」「香り」「風味」+「各自が決める指標」の5つの指標それぞれに評価をし、五角形のグラフに記す。その後、7~8人のグループに分かれて意見交換し、その結果を発表する。今回は今期最終講座で修了式を控えていたため、グループ討議は省略、個人の意見発表となった。主な意見を紹介すると-

【Aさん】

・生たまねぎの食べくらべは、ピリピリして苦労したが、それぞれの特徴があった。
・札幌黄は、焼いた時の厚みと甘み、ヌルヌル感が強い。
・トヨヒラは、生で食べると甘みの後に辛みが来て、これはさらせば緩和されるので、生食によさそう。サラサラ効果にも納得。
・北もみじ2000は、生では苦みとエグみがあったが、加熱すると苦みが消えて食感もよくなり、いわゆるたまねぎらしい味わいだった。

【Bさん】

・生のほうが特徴が出て、焼いたら差が少なくなった印象。
・札幌黄、トヨヒラはたまねぎらしい香りがした。
・札幌黄は肉厚で、甘さが際立つ。
・トヨヒラは辛みが強い。
・北もみじ2000は、香りが少な目でやや青臭い香り。あっさり味で、シャキシャキしているのが特徴。

【Cさん】

・札幌黄は加熱したときの色がきれい。変色しにくい利点があるので、形を残せるような調理方法がいいのではと思った。

【Dさん】

・札幌黄は甘みがある。
・トヨヒラの生は青臭く、生臭く、ちょっときつかった。
・北もみじ2000はくせが少なく、料理に使いやすそう。
 これらの感想を受け、三部氏からは、「たまねぎの辛みは体にいい成分なので、水にさらすより、時間をおくことでやわらげてほしい」とのアドバイスがあった。また、当日の札幌黄とトヨヒラは同じ生産者、北もみじ2000は別だが、いずれも土作りから大変丹精込めている旨、補足された。

7.北海道野菜料理の試食に大満足

 続いて、今回の北海道野菜を使った料理「札幌黄の丸ごと加熱水蒸気蒸し」(写真13)、「札幌大球のお好み焼き」(写真14)、「八列とうもろこし(粉末)のコーンブレッド+寒冷地さつまいも3種のトッピング」(写真15)、「函館赤かぶのヨーグルトサラダ」(写真16)、「らわんぶきと油揚げの和風煮」(写真17)、「北あかりのじゃがバター」(写真18)、「インカのめざめのトマトスープ」(写真19)を試食した。

 

 これら試食料理は、毎回大変好評を博している。今回も「それぞれ、どれもおいしく、満足!」「試食料理に工夫があり、見た目もきれいで、感動しました」といった感想が相次いだ。
 実は当初、北海道という比較的新しい大地に、伝統野菜というテーマはふさわしくないのではと危惧していたのだが、三部氏のお話で払拭された。伝統野菜をスローフード運動と絡め、“味の箱舟”への搭載を試みるなど、新しいストーリーを加える方向で多くの人々が力を合わせ、結果として生活に根付いていく道筋は、他地域でも参考になりそうだ。今期最後の講座にふさわしいお話だった。

8.野菜の学校で得られた大きな財産

 野菜の学校では、毎回、こうした形で全国各地の伝統野菜・地方野菜を食べて学ぶ体験をしている。この4年間、毎月、以下のように、都道府県または地域単位で実施してきた。

【2010年】

4月:沖縄 5月:京都 6月:加賀
7月:江戸・東京 9月:長岡
10月:飛騨 11月:庄内
12月:大阪・なにわ 2月:青森

【2011年】

4月:熊本 5月:奈良 6月:愛知
7月:信州 9月:兵庫 10月:鹿児島
11月:宮城 12月:滋賀 2月:宮崎

【2012年】

4月:江戸・東京 5月:和歌山・さや豆
6月:秋田 7月:山口 9月:愛媛
10月:岡山 11月:埼玉 12月:博多
2月:茨城

【2013年】

7月:新京都 8月:新潟 9月:最上
10月:福井 11月:会津 12月:群馬
1月:能登 2月:長崎 3月:北海道

 継続しながらわかったことだが、日本の伝統野菜の収穫は、夏場と、秋から冬にかけてと偏っているため、いかに南北に長い日本列島でも、周年のカリキュラムを組むにはさまざまな工夫が必要だった。2013年度は7月開講にしたのも、収穫に無理のないようにと考えたからである。対象の都道府県(地域)にしてみれば、講座を開くとなると、その時期に収穫できない他の伝統野菜も出てくる。その意味では、これまでかなりの都道府県(地域)を網羅したものの、まだ出合っていない数多くの伝統野菜があることは重々承知している。
 でも、私たち、そしておそらくこれまでの受講生の方々も、品目数だけでは計れない、伝統野菜のもつ長所も短所も含めた魅力に開眼させられたといっていいだろう。野菜の学校の受講生は、市場・流通関係者、生産者、種苗・育種関係者、研究者、メディア関連、料理研究家、消費者など多岐に渡る。野菜ソムリエの資格をもつ方も多く、4年間受講してくださっている方もいる。
 今年初め、野菜の学校の伝統野菜・地方野菜の取り組みについて、これまでの受講生にアンケートをお願いした。「参加してよかったこと」として多く挙げられていたのは-

 ・野菜のおもしろさがわかった
 ・知らない野菜を見たり、食べたりできた
 ・役に立つ知識を得られた
 ・野菜関連の知り合いが増えた
 ・身近な野菜の見方、味わい方が変わった

 「野菜は本当におもしろい!」が実感だ。毎回届くちょっと風変わりな野菜たちに、形・大きさ・色など、まず見た目の思い込みが修正される。食べくらべ・試食で、いつの間にか、ふだん食べている野菜だけでは知らなかった味覚の広がりがあり、五感が鍛えられる。言うまでもなく、伝統野菜がかろうじて残っている程度なのは、それなりにリスクが大きいからである。栽培や流通の難しさ、それでも大半は細々と栽培されてきた状況を知ることは毎回であり、農業問題や後継者問題が浮き彫りにされることも多い。
 他方、伝統野菜を通じてその地の食文化を体験できるのは、一番の楽しみといっていいかもしれない。華やかではないが、各地の人々の知恵が詰まった郷土食に、日本人はこういうものを食べてきたのかと納得させられる。
 また、今回の三部氏もそうだが、毎回の講師との出会いも、私たちには素晴らしい財産になっている。4年間の経験では、伝統野菜の復活、再生には、人なり組織なり、核となるリーダーの存在が大きい。商業ベースに乗りにくいジャンルの野菜を、どう復活させるかという方向性を、皆さんが探っていた。

9.「和食が世界遺産に」は追い風か

 昨年、和食がユネスコ無形文化遺産に正式に登録された。登録以前から、ここ数年、日本食、和食再発見の機運があり、特に各地の食材や郷土料理が注目されている。地域特性を活かした付加価値の高い商品づくりに取り組む「地域ブランド戦略」も、各地で試みられるようになった。こうした場で散見されるのが伝統野菜の価値である。実際、野菜の学校が「伝統野菜・地方野菜」をテーマに掲げた5年ほど前には、調べても動きを見出せなかった地域で、自治体やJAが取り組んでいたり、有志の研究会や保存会といったものが立ち上がっていたりする。
 ずっと存続を危ぶまれていた各地の伝統野菜にとっては、追い風といえるだろう。ただ、これまでの経験から、手放しで喜べないのも正直なところだ。ほとんどの伝統野菜は、心ある生産者によって、ごく限られた時期に少量栽培されている。気象変動や土質、環境の影響を受けやすいし、見かけも一様ではなく、一般の流通には乗りにくい。得てして個性の強い味わいで、とびきりおいしいとは限らない。言ってみれば、手強い野菜なのだ。その個性を生かしてこその追い風ならよいのだが、一時の流行になったり、事を急く懸念がぬぐえない。
 三部氏のお話にもあったように、伝統野菜を博物館入りにするのではなく、守りながら生きた食材として活用していく道筋を、私たちも探りたいと考えている。
 野菜の学校では、本年7月から「日本の伝統野菜・地方野菜 第5期」を、下表のように企画している。来期は、毎月1県(地域)の伝統野菜の月もあれば、「なす自慢」のように、中心になる野菜の他地域産の伝統野菜を併せて紹介する企画も織り込んでいる。
 そして、それに先立つ6月に、特別講座「伝統野菜の可能性を探る」と題して、シンポジウムを開く予定である。いずれも受講生を広く募集中なので、ぜひご参加いただきたい。

●特別講座『伝統野菜の可能性を探る』
日時:6月7日(土)13:00~17:00
会場:女子栄養大学香川綾記念館センター講義室
参加費:3,000円

<プログラム(予定)>
1、行政「伝統野菜に関連する農林水産省の取り組みについて」
2、マスコミ「メディアの中の伝統野菜」
3、流通業「青果物宅配業者が取り組む伝統野菜」
4、中食産業「SOZAIの魅力をアップする伝統野菜」

●2014年度野菜の学校および特別講座のお申し込み・お問い合せ先
 TEL.03-5315-4977(10:00~18:00)
ワーズワークス内「野菜の学校」事務局

●野菜の学校についての詳細は、以下のアドレスをご参照ください。
http://www.yasaitobunka.or.jp/index.html


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