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調査報告 (野菜情報 2014年3月号)


国産冷凍野菜ニーズ拡大に対応した野菜産地の対応

~ジェイエイフーズみやざきと都城くみあい食品による取り組み~

調査情報部 戸田 義久


【要約】

 輸入食品への安全性などが重要視されている今、食の安全・安心や家庭における食の簡便化等の観点から、国産冷凍食品の需要は、今後も伸びると予想される。また、家庭用などのほかに、学校給食等への需要は、自給率の向上や食育の観点から高く、今後は福祉関係からの引き合いも高まっていくものと思われる。しかし、冷凍加工向けの野菜については、一定量を必要とすることなどから、大産地である北海道や九州以外では、産地の拡大は進んでいない。古くから野菜加工施設を稼働させている九州の中で、国産冷凍野菜向けの産地でもある宮崎県において、九州最大規模の野菜冷凍施設を持つ株式会社ジェイエイフーズみやざきと、単位農協で野菜冷凍施設を持つ株式会社都城くみあい食品による取り組みは、加工・業務用野菜の産地育成として、県の代表的な施設園芸と畜産のバランスのとれた組み合わせにより、県内の農業振興の大きな力となる。

1. はじめに

 平成25年11月12日に開催された、平成25年度第2回野菜需給協議会(事務局:独立行政法人農畜産業振興機構)において、「海外産の冷凍野菜については、消費者から安全性について懸念する声もある」「冷凍野菜は、輸入品が多い中で、品質および安全性の高い冷凍野菜を製造する国内の冷凍野菜産業を育成することが重要である」との意見があった。これは、平成14年に発生した、中国産冷凍ほうれんそうにおける残留農薬問題や、平成18年に改正された食品衛生法で導入された「ポジティブリスト制度」により、輸入野菜で基準値を超える農薬成分が検出されたこと、さらに、平成19年12月から20年1月にかけて発生した、中国の対日輸出冷凍食品工場における冷凍ギョーザの農薬混入事件など、頻発する「輸入食品への安全性の懐疑」が、消費者心理に強く影響しているものと思われる。
 本稿では、国産冷凍野菜原料の主産地である九州において、平成22年10月に冷凍加工施設を増設した、JA都城の子会社である株式会社都城くみあい食品(以下、「都城くみあい食品」という。)と、JA宮崎経済連(以下、「経済連」という。)の子会社で、平成23年7月に落成し、九州最大の規模を誇る、株式会社ジェイエイフーズみやざき(以下、「ジェイエイフーズみやざき」という。)の農産物加工処理施設(冷凍野菜工場)と冷凍野菜原料供給に関する取り組みを紹介する。

2. 国内における冷凍食品の需要と国産冷凍野菜製造の推移

(1)伸びる冷凍食品需要

一般社団法人日本冷凍食品協会の「平成24年(1~12月)冷凍食品の生産・消費について」によると、国内の冷凍食品生産は、ポジティブリスト制度が施行された翌年の平成19年以降、食の安全性に関係するニュース報道の増加、19年12月から20年1月に発生した中国製冷凍ギョーザ農薬混入事件により、大幅な減少となったもの、平成22年以降は増加に転じ、24年は数量が146万8345トン(5万438トン増、前年比103.6%)、工場出荷額が6392億3400万円(91億9300万円増、同101.5%)となった(図1)。冷凍食品の生産が増加に転じたのは、冷凍食品の簡便性や保存性とともに、家庭で食事をする機会が増加したこと、食味が向上した等の要因も考えられ、1人当たりの消費量は右肩上がりである(図2)。
 一方、国産冷凍野菜の生産については、前述の通り、ポジティブリスト制度の施行など一連の事件により、輸入量の減少にともない国内の生産量は増加したが、中国における検査体制が整ったことなどから、輸入量が増加し、国産の生産量は減少している(図3)。

(2)国産冷凍野菜生産の現状

 冷凍食品企業への聞き取りによると、国産冷凍野菜については、家庭用途だけでなく、学校給食からの需要が大きい。折しも、平成25年12月26日に内閣府は、学校給食での国産食材の使用割合を、27年度に80%以上にする目標を、新たに追加した。これは、国産農産物自給率向上や食育等の面を重視する教育現場ならではのニーズを反映したものである。今後マーケットが拡大するであろう、介護食や老人食等の福祉に関連した食についても、国産冷凍野菜の引き合いが強いとのことである。家庭消費および産業給食における冷凍野菜の利用は、生鮮野菜と比較して、貯蔵性が高いことおよび可食部のみの商品内容となっていることから、家庭消費等においてロス率が低く、ゴミの発生が抑えられること、さらに家庭等における調理の簡便性の面からも、高い支持を受けているとのことである。
 これらのことから、今後の伸びが期待される国産冷凍野菜生産において、冷凍食品企業では、産地に対して供給体制の充実を要望する声が多い。しかし、冷凍野菜向けについては、規格が厳しく、生産者からの買取価格が市場出荷より安価になること、冷凍野菜工場の稼働率の関係上、大量ロットの原料野菜を供給できる北海道や九州地方の産地が多く、本州では、工場が求めるまとまったロットの原料野菜を供給することが難しいことから、国産野菜だけを原料として使用することに限界があり、このため輸入野菜も使用せざるを得ないのが現状である。

3. 宮崎県における冷凍野菜製造について

(1)県JA系統における野菜農業

 宮崎県は施設園芸を中心とした一大供給産地であり、大阪市場をはじめ、東京市場等へ、冬場の果菜類を中心とした市場出荷を行っている。農林水産省の生産農業所得統計によると、平成23年における県全体の野菜生産額は688億円で、全国有数の園芸県であり、きゅうり、さといも、ピーマンが全国1、2位の生産額である。JA系統における実績を見ると、経済連の平成24年度園芸販売実績は476億2000万円と、県全体の野菜生産の半数を占めており、JA事業に占める割合で見ると、畜産事業を除いた同年園芸農産事業実績(農産物販売のほか、資材供給等も含む)1186億2600万円の約4割となっている。

(2)宮崎県と野菜加工業

 国産冷凍用野菜における主産地である宮崎県は、旧来より野菜加工業が盛んな地域であった。古くは切干大根に始まり、戦後は漬物加工が盛んであった。昭和40年代には、野菜加工業の高度化を目指して、事業者により缶詰加工場が設立されたことで、缶詰の生産を中心に、県内の野菜加工業は成長していった。その後、昭和50年代には、低下する缶詰ニーズに対して、新たな食材として冷凍食品のニーズが高まってきたことから、この加工場は、缶詰部門から冷凍野菜部門に生産をシフトし、現在に至っている。
 このような流れの中、県JA系統では、平成22年10月にJA都城の子会社で、主に食肉加工やかんしょの加工流通を手掛けている都城くみあい食品に、冷凍野菜工場が増設された。県内JA資本による冷凍野菜工場設置により、県内完結で生産から加工まで一貫した取り組みができるようになった。単協での取り組みが行われる中、経済連は、県域全体の冷凍野菜生産を伸ばすため、ジェイエイフーズみやざきを設立、翌23年8月より冷凍野菜工場を稼働させた。
 各事業者が冷凍野菜等の野菜加工事業を行う中、宮崎県では、「産地と食品産業の連携強化」として、実需者ニーズに対応した生産・供給体制の整備や多様な経営体の育成を図るため、畑作農業地域を中心に、加工・業務用の露地野菜等の生産拡大を図ってきた。その中で、宮崎県産冷凍野菜の安全・安心ブランド確立の推進のため、加工・業務用野菜産地育成および冷凍野菜生産拡大の取り組みを強化しており、平成22年9月1日には、県内冷凍加工事業者8社(平成25年11月1日現在7社)により、県内食品加工メーカーの発展と情報交換を目的に、「宮崎県冷凍野菜加工事業者連携推進協議会」(以下、「協議会」という。)を設立し、冷凍野菜生産の拡大とともに、加工用農産物および加工品の残留農薬の検査体制の強化およびHACCPによる食品衛生管理手法の導入等を推進している。

4. JA系統による冷凍野菜加工

 上記の通り、宮崎県では、生産者団体であるJA系統の冷凍野菜工場が、2工場稼働している。この2工場の事例紹介を行う。

(1)ジェイエイフーズみやざき(JA宮崎経済連)

1)概要

 ジェイエイフーズみやざきの工場は、近隣に冷凍加工施設の無い地域であること、葉たばこの廃作に伴う畑作振興に加え、折しも甚大な被害となった口蹄疫の復興対策としても、畑作と畜産のバランスのとれた産地形成の重要性が増したことから、西都市に建設された(写真1)。原料の調達と販売は、県内の各JAと経済連が管理しており、ジェイエイフーズみやざきは、冷凍野菜の製造および販売のみを行っている。契約している生産者ほ場および自社のほ場は、工場から半径30キロ圏内に集中している。契約農家は、経済連からJAを通じ、ジェイエイフーズみやざきの取り組みに賛同した農家である(図4)。後述の通り、その栽培面積から、1時間に1トンの原料を冷凍処理することのできるIQFフリーザー(トンネルフリーザー)を2基備えている九州最大級の工場(年間の原料ベースで、冷凍野菜を3,900トン製造)となった(表1)。従業員は86名(26年1月現在)おり、役員4名、社員20名、パート60名、経済連からの出向4名(うち役員2名)となっている。
 原料野菜は11品目あり、製品のアイテム数は、量目の違いも含め約30アイテムとなっている(写真2)。ほうれんそうの端境期には、さといも、ごぼうやおくらなどの製品を冷凍加工することにより、年間を通して生産している(表2)。通年での操業が可能となることで、工場の稼働率の向上によるコスト低減および雇用による地域の安定に貢献している。

 平成25年度のほうれんそうの契約農家は、66名、栽培面積は86.7ヘクタールとなっている。工場に納入しているほうれんそうは、生鮮用と同じ品種を使用しており、生鮮用との大きな違いは、生鮮用の20~25センチと比べ、40~60センチと大きく成長させて収穫することである。ほ場から工場への搬入には、ほ場から製品までの一貫体制の中で、効率化を図ることから、鉄コンテナを使用している(写真3、4)。工場では、ほうれんそうを年間3,600トン使用し、12月から翌3月(4月は在庫対応)まで、ほうれんそうの冷凍加工を行っている(写真5)。

 ほうれんそうをメインにしているのは、もともと県内では栽培ノウハウがあったこと、他の野菜と比較して安定出荷が可能であったことに加え、工場設立に当たり、事前に経済連が聞き取り調査した結果、需要が見込まれたことからである。ほうれんそうは、全量契約栽培となっており、経済連と生産者が契約を結んでいる。ほうれんそうについては、面積契約と重量契約がある。ともに単年度契約となっており、毎年契約を更新する。当初の23年から24年の契約方式は、収穫作業の体系に対応しており、機械収穫は、面積契約が主流となっており、大規模生産者はこの面積契約を選択している。手作業で収穫する場合は、重量契約を選択していた。平成25年は、収穫作業の効率化の観点から、機械収穫のみとし、すべての生産者は、重量契約を選択している(写真6)。

 ジェイエイフーズみやざきには、フィールドコーディネーター(契約ほ場指導管理者)(以下、「FC」という。)が4名おり、契約ほ場をすべて定期的に巡回し、生育状況の確認や生産者への営農指導などを行っている。この際、FCは、タブレット型端末を利用して、各ほ場におけるは種や農薬など栽培管理から収穫までのすべてのデータを蓄積・管理している。蓄積されたデータを、各部門がデータ共有しており、トレーサビリティの管理にも役立っている。
 さらに、収穫については、工場への搬入を均一にするため、FCの撮影したほうれんそうの画像を基に、生育状況を確認しながら、各ほ場ごとに収穫のスケジュールを決めている。
 販売先としては、スーパー、生協などの小売り向けが5~6割、業務用(学校給食、外食産業)が2割、メーカー工場向けが2~3割となっている。販売額の目標は、15億円を設定しており、初年度23年度の販売額は、8月からということもあり4千万円、24年は4億円、25年は約7億円(見込み)である。
 なお、ジェイエイフーズみやざきと宮崎県医師協同組合では、安全・安心な宮崎県産の冷凍野菜を県内の病院等へ提供することにより、食の部分で県民の健康に貢献するため、平成25年4月25日に事業連携協定を結んでおり、病院食における県産冷凍野菜の利用を促進している。

2)現状と課題

 ジェイエイフーズみやざきは、「信頼」「意欲」「自立」を生産コンセプトとして掲げており、すべて生産者の支援につながっている。ジェイエイフーズみやざきが、消費者へ品質の高い冷凍野菜を安定して提供するには、生産者による質の高い原料野菜の栽培と、ジェイエイフーズみやざきと生産者による計画的な定量納入が必要となり、どちらが欠けても成り立たない。消費者を意識した、友好な相互関係が、生産者の経営安定につながっている。また、ジェイエイフーズみやざきは、製造コストが一定のため、地元産のいい品質の原料を使用することで、歩留まり率の向上に努めている。
 このため、ジェイエイフーズみやざきでは、農業生産法人格を取得しており、不作時等の対策として、自社で4ヘクタールのほ場を保有し、ほうれんそうを栽培している。原料は、各JAと経済連を通じて購入しているが、品目によっては、不作等により県内産の原料が不足するので、その場合は、九州産、本州産を購入している。県内産以外の野菜を使用する場合は、あらかじめ販売先の了解を得ている。
 現地では、特に中国産への対抗意識は無く、冷凍ほうれんそうの輸入品と国産の価格差を比較すると、およそ1.5~2倍となっており、この価格差なら対抗できるという。学校給食や福祉関連食への国産の冷凍野菜の需要は少なくなく、また、安全・安心な国産冷凍野菜であることが、輸入品との差別化につながっている。
 上述のとおり、原料は、契約栽培と自社農場によって地元産(宮崎県産)を確保しているが、現状では、安定供給が出来ていないという課題がある。ほ場の確保は重要であるが、安定供給を見越した面積での生産を行うと、豊作になった場合、必要以上の原料処理が問題となる可能性が生じる。

(2)都城くみあい食品(JA都城)

1)概要

 JA都城(以下、この頁内「JA」という。)管内は、南九州の中核都市である都城市と三股町の1市1町からなり、1万6000ヘクタールの耕作面積を有しており、管内の主産業は農業である。主な農畜産物は繁殖牛、肉用牛、生乳、肉豚、きゅうりなどで、畜産王国といわれる宮崎県のなかでも、特に畜産の盛んなところである。管内の野菜生産者は、個人生産者、集落営農法人およびJA出資型農業生産法人に構成されている。個人生産者は高齢化、後継者不足や青果物相場の低迷等から栽培面積は減少傾向にある。一方、集落営農法人およびJA出資型農業生産法人は、耕作地の集積や作業の機械化によって面積拡大を図っているが、従来の青果販売では販売価格の不安定さもあり大幅な栽培面積の増加には至っていない。都城くみあい食品は、昭和62年に食肉製造のため、JAの子会社として設立されたのだが、JAは、平成4年にJA組合員の収益向上を図るため、生鮮野菜の市場出荷のほかに、農産物加工(B品の付加価値化)についての検討を始めた。8年に市内の志和池丸谷町にあるかんしょでん粉工場跡地に、農産物処理加工施設(志和池第1工場)を設立し、にんじんピューレやかんしょ蒸しいもなどの委託製造を開始した。
 また、17年には、ほうれんそうなどの野菜生産から加工に至る一貫した管理体制の確立を図り、安全・安心な国産製品の生産拡大を図ることを目的に、冷凍加工野菜の構想が始まり、22年に同じ敷地内に第2工場を増設した(写真7、8)。さといも、ほうれんそう、ごぼう、にんじん、だいこん、ばれいしょの6品目を年間4,000トン搬入し、冷凍、冷蔵加工品を10品目のアイテムとして、年間2,000トン製造している(表3)(写真9、10)。現在では、CVS(コンビニエンスストア)用の委託生産(豚汁用の具材など)も行っている。JAは、組合員の所得向上のため、このような体制を構築するとともに、加工拠点として各農産物処理加工施設を整備し、現在に至る。

 都城くみあい食品全体の従業員は、期間労働者を含めて約100名となっている。冷凍野菜などの販売先は、主に日本生活協同組合連合会(日生連)と学校給食向けである。原料の調達はJAが中心となり、地域の農業生産法人などと連携を図っている。JAは原料野菜の出荷者であるJA組合員(148戸、88ヘクタール)と栽培契約を結んでいる(図5)。品目によっては、不作や端境期などによる原料の不足分を、JA管外、県内、九州、遠くは、青森県、北海道と日本全国から調達している。
 最近では、CVSの普及により、市場の流れが変わってきている。CVSが24時間営業のため、8時間置きの納品に対応できることが重要となり、都城くみあい食品では、今後、CVSでの需要が見込まれることから、取扱商品を長期保管のできる冷凍野菜等を主力にするなどの対応をしている。

2)現状と課題

 都城くみあい食品の工場は、設備能力にはまだ余力はあるのだが、働く人が集まらないため増産できないという。その理由として、最近は、近隣にCVS、ドラッグストアや量販店などの雇用先が増えたことによるものである。これを補う形で、パート従業員の約半分は、期間労働者を雇っている。人手不足のため、熟練工の減少に伴い作業効率に支障がでる恐れもある。
 上述のとおり、販売先は、日生連と学校給食向けとなっているが、県内の他の冷凍加工会社も、学校給食向けに卸しており、販売先の競合が起きていることから、販路の拡大は急務である。しかし、この人手不足は、かなり深刻な状況となりつつあり、販路の拡大に伴う事務員やドライバーなど必要な人員を確保できないなどの問題がある。生産を取り巻く問題としては、最近では中山間地域を中心に被害が広がっている鳥獣被害への対策や農家の高齢化に伴うほ場管理(耕作放棄地対策)などがあげられる。
 また、今後の課題としては、コスト削減の問題がある。自社ほ場は、280カ所にも点在しており、原料搬入費(燃料代)の高騰につながっている(遠いところは、工場から車で40分の距離)。JA都城は、原料の安定供給を考え、原料を納入している近隣のJAと、農業の生産性を高めながら、原料確保の安定化に向けた取り組みとして、輪作体系を取り入れている。しかし、現状では、安定した品質など量の確保にはつながっていないことから、生産者および土地の集約による規模拡大を図ることが望まれる。このため、JA都城は、集落営農組織を担い手とした産地育成を推進していくことにより、冷凍加工用野菜の安定供給を通じて、農業振興へつなげることを考えている。JA都城は、組合員の営農と暮らしを守り、地域農業の振興に努め、地域社会の発展に貢献することを目標としており、地域の農業を守るため、1集落1農場の農業体系作りを提案している。今後は、効率的な生産体制の構築のため、管内のほ場の換地など、県など行政の協力が不可欠である。

6. さいごに

 安全・安心にこだわり、国産の食材を使用した冷凍野菜は、学校給食や病院、介護施設などでの需要は少なくない。昨年12月に内閣府は、第2次食育推進基本計画の一部を改定し、学校給食での国産食材の使用割合を、27年度に80%以上にする目標を、新たに追加した。国産冷凍食品の生産量が増加していくなか、家庭用を含めて今後の冷凍野菜の需要については、安全・安心志向などから国産回帰につながり、現場においては、JA、経済連、県全体で取り組むことにより、ほ場の集約化等が進み、コスト削減等を通じて、輸入冷凍野菜のシェア奪還につながると思われる。
 宮崎県では、民間企業の冷凍加工施設において、冷凍のほうれんそうやさといもの生産が行われており、特に冷凍ほうれんそうの製造数量は、国内の生産量の6割を占めている。22年の都城くみあい食品による冷凍野菜施設の増設、23年のジェイエイフーズみやざきによる設立で、宮崎県における冷凍野菜の生産量はさらに高まった。
 宮崎県では、施設園芸と畜産業が県の代表的な産業であるが、高齢化が進む中、担い手や集落営農組織等に対して、冷凍原料野菜(ほうれんそう)の生産を推進していくことにより、加工・業務用の野菜産地育成と畜産とのバランスの取れた組み合わせが、安定した農業振興につながる。冷凍野菜工場が安定して地域労働者を受け入れることで、ひいては、地域振興へと結びついていくことを期待したい。

 最後に、調査にご協力いただいたジェイエイフーズみやざきと都城くみあい食品の皆様には、この場をお借りして厚くお礼申し上げる。


参考文献

一般社団法人日本冷凍食品協会:冷凍食品の生産・消費について(平成22~24年)
独立行政法人農畜産業振興機構:『野菜情報』2006年6月号「情報コーナー」最近の冷凍野菜の紹介、2007年10月号「調査報告」宮崎県における冷凍ほうれんそう生産の概要とJAグループ宮崎の取り組み


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