野菜業務部直接契約課
野菜の加工・業務用需要の割合は、食の外部化の進展等により、昭和50年頃の4割から平成22年には、6割を占めるまでに増加している。
一方、国産野菜の供給は、過半が家計消費用に仕向けられており、今後とも増加が見込まれる加工・業務用需要に対する国産野菜の供給体制を確立することが重要となっている。
このため、当機構では、産地と実需者とのマッチングの場を提供するため、平成18年度から野菜ビジネス協議会との共催により、交流会(通称:国産野菜の契約取引マッチング・フェア)を開催している。
10月31日、冬春野菜を中心に主力産地である九州地方で、初めてとなる21回目の交流会を、福岡国際会議場で開催した。
今回は、地元九州を中心に、過去最多の117の事業者・団体(うち、生産者・生産者団体60、流通・加工業者33)が出展した。県別内訳を見ると、開催地である福岡県の24を筆頭に、熊本14、宮崎12、鹿児島11等、地元九州からの出展者が過半を占めた。
また、初出展者も64(うち、生産者・生産者団体37、流通・加工業者22)と新しい顔ぶれがそろい、これまでの地方開催のなかでも過去最高となる580名の来場者が訪れる中で、積極的な商談が行われた。
以下、出展者の取り組みを紹介する。
JAにじ(JAグループ福岡)は、トマトやほうれんそうの粉末スープをPRしていた。スープ用の専用規格を栽培し、ホテルなど外食業界への売り込みを図っていた。「今後は国内にとどまらず、海外を目指していきたい」とのことである。
同じく福岡県のJAみいは、彩り鮮やかなラディッシュの酢漬けを出展。加工分野にも力を注いでいる。
(株)ニシケン(福岡県)は、佐賀県で水耕栽培したフリルリーフを、外食向けに出荷。「定量・定価で通年供給できる強みを活かした契約取引を拡大したい」との思いから交流会に出展したとのことである。
トマトを百貨店向けに出荷している、わそう農園(宮崎県)は、外食などへ高単価品の売り先を拡大中で、JR九州の豪華寝台列車「ななつ星」にも商品を提供。濃厚なドライトマト等の加工品製造にも精力的に取り組んでいる。同社の売り先の中心は、卸・流通業者であるが、「今回はこれらの業態の来場者が多く、出展の成果が期待できる」とのことである。
青ねぎを出展していた(株)春口農園(福岡県)は、「現在の取引先の3~4割が、これまでの交流会で知り合った売り先である」とのこと。カット工場を新設し、取引先の希望単価・ロットに合わせて、大小さまざまなサイズの青ねぎ・小ねぎを出荷している。
(有)たかのフーズ(福岡県)は、野菜等を原材料にしてコロッケを製造する加工業者。地元のこまつな入りのコロッケを外食大手や学校給食向けに出荷するなど、スポットの大口取引が多いのが特徴である。「産地と出荷期間が決まっているので、それを綿密に計画してマッチングすれば安定供給できる。中間事業者として、産地の強みを引き出したい」と語っていた。
(株)
今回、出展者の方々から話を伺う中で、「取引の“チャンス”をつかめなくて困っている」「販売の“きっかけ”がほしい」という声が多く聞かれた。また、「地元の農業を盛り上げたい(加工業者・熊本県)」「地域のレベルを向上させる栽培技術を習得したい(生産者・福岡県)」など、“地元・地域を支える”という熱意が伝わってきた。
今回の出展者の中には、自社加工によって付加価値を高めるなどして、農業経営を多角化しようとする生産者等が多くみられた。
(有)歩産業(熊本県)は、自社で、きくらげを栽培し、関東・関西地方のホテルや自然食品業者に出荷しているが、「今後は、独自の技術を用いた菌の培養から、加工品の販売まで幅広く取り組みたい」とのこと。本交流会には、「販売分野、特に全国チェーンの取引先を獲得したい」との狙いから出展を決意した。
また、(株)阿蘇ハーブファクトリー(熊本県)は、特別栽培の国産野菜を使用するなど、原料にこだわった野菜粉末のお茶を開発している。小ロット(50キログラム~)の製造が可能であることを強みに、本交流会では新たな販売ルートの開拓を目指していた。
ITを活用し、独創的な「多角化」に取り組む生産者としては、(株)テレファーム(愛媛県)が注目されていた。Webブラウザを使った農作物育成シミュレーションと、実際の畑で行う有機栽培農業とをリンクさせ、消費者がインターネット上から実際のほ場の生育状況を確認でき、農業をソーシャルゲーム感覚で楽しむことができる、というもの。「月額500円のコンテンツ料により、農家の経営安定に寄与している」とのことである。
マッチングの成果をさらに後押しするため、 「特別商談会」(野菜ビジネス協議会および青果物カット事業協議会の会員企業等と出展者との個別・予約制商談会)を実施したところ、実需者11社に対し、50の生産者等が参加し、延べ134件の商談が行われた。なかには、出展品目を持ち込んで商品の魅力をPRする生産者等もおり、精力的に商談が行われた。
出展者が持ち寄った「自慢の野菜」をサラダバー形式で、来場者が自由に試食できるのが、「試食コーナー」。出展者の商品のPRを強化するために設置したこのコーナーには、38の出展者が70種以上の野菜等を持ち寄り、多彩な種類のサラダを求める来場者で盛況であった。
野菜を提供した出展者からは、「出展物のPRができた」「試食した来場者が出展ブースを訪れて話ができた」との声が聞かれ、商談の足掛かりとして好評であった。
当機構では、平成14年度以降、野菜の契約取引に係る生産者のリスクを軽減する契約野菜安定供給事業等を実施し、国産野菜の契約取引を推進している。
会場内に設けたセミナー会場で、農林水産省の担当官と連携しながら、リレー出荷の特例措置を含む契約野菜関連事業を周知するため、説明会を行った。
また、同会場では、野菜ビジネス協議会主催の「野菜産地と実需者によるセミナー・パネルディスカッション」が開催された。産地側および実需者側からの話題提供の後、(一社)JC総研客員研究員の仲野隆三コーディネーターと、産地側2名(農業生産法人(有)四位農園代表取締役社長 四位廣文氏、(農)ながさき南部生産組合会長理事 近藤一海氏)、実需者側2名(東京デリカフーズ(株)取締役九州事業所所長 澤田清春氏、MCプロデュース(株)代表取締役社長 深見隆氏)によりパネルディスカッションが行われ、異常気象時の対応策、契約取引栽培に関する問題点、産地側・実需者側双方への要望等が活発に意見交換され、多くの聴講者が熱心に耳を傾けていた。
昨年度、当機構で実施したアンケート調査によると、多くの農協が、今後、生産者の経営安定等を図るため加工・業務用野菜の取引を「拡大」する意向であることが明らかになった。
また、近年、企業が業務用カット野菜等の製造・販売分野の取り組みを強化する動きが活発化しており、実需者ニーズに対応した産地の体制強化がますます期待されている。今回の交流会でも、産地・生産者と実需者とのマッチングの取り組みの重要性が改めて認識された。
このため、当機構では、今後も継続的に交流会を開催することにより、産地と実需者とのマッチングの場を提供していくこととしている。次回は、来年3月12日(水)に東京国際フォーラムで開催することを予定しており(JA全農、JA全中、農林中金共催の「国産農畜産物商談会」と同時開催)、多くの皆様の出展と来場が期待される。
最後に、本交流会を福岡で開催するに当たり、多大なご協力を頂いた関係者の皆様方に、この場を借りて厚くお礼を申し上げます。
【生産者団体】全国農業協同組合連合会福岡県本部、JAグループ福岡、全国農業協同組合連合会長崎県本部、熊本県経済農業協同組合連合会・(株)エーコープ熊本、全国農業協同組合連合会大分県本部、宮崎県経済農業協同組合連合会、鹿児島県経済農業協同組合連合会、高知県園芸農業協同組合連合会、みい農業協同組合、東近江市フードシステム協議会
【生産者】(株)TKF、(株)ウエルビィ、リッチフィールド(株)、農業生産法人(株)ファームかずと、(有)吉田農園、農業生産法人こと京都(株)、(株)ニューふぁ~む21、神協産業(株)、西地食品(有)、(株)テレファーム、(有)遠赤有機農園、(株)坂田信夫商店、有機のがっこう「土佐自然塾」、(株)ニシケン、(株)ヨシウラファーム、(株)春口農園、(株)松尾農園グループ、(株)弥冨農園、(有)美しゅう、農業生産法人 卑弥呼の杜(株)、(農)秋香園、朝倉物産(株)、かすやグンジーズ~農と日々のコト~、九州旅客鉄道(株)、グリーンハンド(株)、(株)ミスズライフ、(農)サンエスファーム、(農)ながさき南部生産組合、(有)久間山水園、(有)コウヤマ「芋屋長兵衛」、(有)重元園芸、(有)歩産業、(一社)笑顔とどろき、農業生産法人(株)吉次園、山都町農産物出荷協議会、やさい倶楽部旭志、はしもと農園・(有)ベストクロップ、(有)新福青果、わそう農園、(一社)宮崎県農業法人経営者協会、(農)ECOマッシュ、矢野園芸、(株)丸章園芸、おたに家(株)、農業生産法人(有)四位農園、(株)喜界島薬草農園、(有)渡辺商店、(有)かごしま有機生産組合、西山ファミリー農園、せごどんファーム
【流通業者】MCプロデュース(株)、(株)創風土、ナラサキ産業(株)、横浜丸中青果(株)・横浜市場センター、井上商店&ハートファーム、(株)岡山マッシュルーム販売、(株)松村農園、(株)クロスエイジ、アクレード(株)、合資会社 土師物産、丸紅食料(株)福岡支店、(株)丹羽秀樹商店、(株)沖縄物産企業連合会
【加工業者】サンポー食品(株)、(株)清浄野菜普及研究所、(株)エムコ、イトク食品(株)、(株)ふくれん、熊川食料工業(株)、(有)たかのフーズ、デリカフーズグループ、大平食品(株)、丸宮青果食品(有)、(有)高見商店、(株)山内本店、(株)阿蘇ハーブファクトリー、(株)蒲公英、(有)ふるさと駅、(株)豊後大野クラスター、サンアグリフーズ(株)、(株)ジェイエイフーズみやざき、(有)岡村商店、(有)ふじさき漬物舗
【種苗会社】カネコ種苗(株)、トキタ種苗(株)、みかど協和(株)、雪印種苗(株)、(株)ジャパンポテト、日本デルモンテアグリ(株)、(株)日本農林社、(株)武蔵野種苗園、(株)サカタのタネ、横浜植木(株)、タキイ種苗(株)、(株)大和農園種苗販売部、ナント種苗(株)、パイオニアエコサイエンス(株)、アネット(有)
【植物工場】植物工場greenland(グリーンランド)、(株)日本農園、芳雄製氷冷蔵(株)、(株)ひむか野菜光房
【その他】(株)精工、加工用畑ワサビ超促成栽培研究会、鹿児島市(生産流通課)、野菜ビジネス協議会、(独)農畜産業振興機構
※出展者の詳細情報については、機構HP上の「交流会コーナー/野菜契約取引マッチング・ゲート」をご参照ください。 URL:http://www.alic.go.jp で検索