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調査報告(野菜情報 2013年10月号)


野菜シンポジウム
~食べて知る野菜の底力~

野菜需給部需給推進課


 「野菜の日」(8月31日)にちなんで、8月30日にイイノカンファレンスセンター(東京都千代田区内幸町)において、野菜需給協議会(野菜に関係する生産者団体や流通団体、消費者団体等で構成)および農畜産業振興機構の主催で、「野菜シンポジウム~食べて知る野菜の底力~」が開催された。
 当日は厳しい暑さの中、150名近くの皆様に参加していただき、食の簡便化に対応した野菜の簡単な調理方法や、健康的な生活を送るための野菜の摂取向上に向けた取組みについて、それぞれ講演が行われた。
 また、全国農業協同組合連合会、京都府農林水産部およびコラムジャパン株式会社のご協力により、参加者の皆様に、講演で実演したレシピ等を自宅ですぐに試すことができるよう、スチームケース、生鮮野菜等をお持ち帰りいただいた。
 以下、講演の概要を紹介する(敬称は省略する)。

1.講演1「野菜の簡単便利な使い方」 ~シニア野菜ソムリエの10分で作れる簡単野菜レシピ~
講師:西村 秋保
(料理研究家、シニア野菜ソムリエ)

【講師のプロフィール】
西村 秋保(にしむら あきほ)
■京都の筍農家出身
■京都初のシニア野菜ソムリエとして、全国のイベントやメディアに多数出演
■息子二人の母であり、調理師、ホームヘルパーおよび着物コンサルタントの資格を持つほか、料理写真家として活躍
■京野菜や野菜中心のレシピを得意とし、今話題のルクエスチームケースを使用したレシピ本を執筆

【時短調理のきっかけ】

 私は京都の筍農家で育ちました。両親が筍や他の野菜を作って、朝早くから収穫している姿を見て、農家は大変だなと感じていました。母も忙しかったため、調理を手伝うことも多く、農家の方が大変な思いをして作った野菜を毎日おいしく食べることについて日常的に考えていました。
 現在、高校1年生と中学3年生の2人の男の子を育てていますが、学校から帰ってくるとお腹を空かせているため、すぐに食事の用意をする必要がありました。
 このような経験が、野菜をおいしく食べられる時短調理を考えるきっかけとなりました。
 現在では共働きの方々も多く、お仕事や子育てをしながら家事をこなしている忙しい方々も増えています。このような方々に野菜を簡単に摂取していただくために、少しでも役に立ちたいと思い、本日は6品のレシピを紹介し、その中の3品について電子レンジを利用して調理実演を行います。

 野菜の重さをイメージできる人は少ないと思いますが、キャベツであれば1/2にカットされたものが、およそ500グラムとなりますので目安にしてください。1日の野菜摂取目標が350グラムとされているので、キャベツの1/4を食べれば250グラムを摂取できることになりますが、栄養バランス等もあるので、いろいろな種類の野菜を食べていただきたいと思います。
 また、キャベツの緑色の部分は、栄養価が高いので、調理の際にうまく活用していただきたいと思います(例えば、ミートソースやギョーザに混ぜるなど)。
 良いキャベツの選び方は、春キャベツはふわっと葉が巻いているもの、冬キャベツの場合は葉が強く巻いて重いものを選んでいただきたいと思います。
 なお、レタスは葉が強く巻いていると苦みが強い場合が多いので注意してください。

 なすはインドが原産で、中国から8世紀頃に日本に伝わってきたと言われています。このためか、なすにまつわることわざも多く、親しまれている野菜の一つです。
 なすは水分が多く、空気にふれると茶色く変色しやすいため、切ったあと水につけることで変色を防ぐことができます。
 生鮮野菜は、一般的に生育していた環境と同じ温度帯で保存すると長持ちしますので、家庭で保存する際の温度帯が分からな時は、スーパーの野菜売り場で野菜ごとに常温、冷蔵に分けられているため、それを参考にすると間違いないと思います。

 このレシピの材料は、ピーマンの他に京野菜の「万願寺とうがらし」で作っても良いと思います。
 万願寺とうがらしは、舞鶴市万願寺地区で伏見系トウガラシとカリフォルニア・ワンダー系のトウガラシを交配して誕生したものと言われています。
 ピーマンのにおいが苦手の人は、縦切りにするとにおいが出にくくなるので試してください。逆に横切りにするとにおいが出やすくなり、食感もやわらかくなります。
 包丁が切れにくいような時は、ピーマンの身(皮の裏側)の方から切ると、包丁の刃が入りやすいため、綺麗に切ることができます。熟したトマトを切る際にも応用できます。

 私がレシピを作成する際は、「簡単な材料、簡単な調理方法で野菜を食べたいと思う」ということを大切にしています。

 実演で調理した3品について、数名の来場者に試食をしていただき、簡単な調理方法でおいしいとの評価をいただいた。

2.講演2「家族ぐるみで野菜摂取向上を目指して取り組もう」 講師:林 芙美
(千葉県立保健医療大学講師、博士(医学))

【講師のプロフィール】
林 芙美(はやし ふみ)
■米国デラウエア大学卒業後(栄養学)、コロンビア大学教育大学院修士課程(栄養教育学)を経て、東京医科歯科大学大学院を修了(医学博士)
■専門は栄養教育、公衆栄養学
■青果物摂取を啓発普及する「ベジフルセブン」運動を推進するNPO法人青果物健康推進協会食育部会シニアマネージャー

【野菜摂取の現状と必要性】

 日本人の野菜摂取の状況は、摂取目標350グラム以上とされていますが、およそ7割の方が目標を達成していません。現状は、二十歳以上の男性では285グラム/日、女性では271グラム/日となっています。気を付けて食べるといった心掛けも必要ですが、小さい頃からの習慣も重要となります。
 また、なぜ野菜を食べた方が良いのかについては、健康的な生活を送る上で、野菜の摂取が必要と考えられていることがあげられます。
 具体的には、これまでの研究から、野菜・果物の摂取や食物繊維を十分にとるなどの食習慣は、循環器病や体重増加・肥満に対して予防効果が期待されています。また、国立がん研究センターの疫学研究の総合評価において、野菜は食道がんのリスクや胃がんのリスクを抑制する可能性が評価されています。したがって、生活習慣病の予防に対しては、野菜や果物不足にならないよう、食事は偏らずにバランスよくとることが推奨されています。

【野菜を食べる子供の特徴】

 徳島県内の小中学生を対象としたアンケート調査では、家庭での共食(家族で一緒に食事すること)の頻度が高い子供の方が、わずかでありますが野菜料理を多く食べている結果が出ています。
 また、アメリカで中学生を対象とした調査でも、十五歳時の共食頻度が高い子供ほど、二十歳時の野菜摂取量が多いことが報告されています。このような結果から、共食の習慣は、将来において望ましい食習慣を形成する上で重要と考えられます。
 国が推進している「健康日本21」(第2次)においても、食事を1人で食べる子供の割合の減少を目標に掲げています。このように国が目標を示すことにより、普及等の取り組みがしやすくなると考えています。

【野菜摂取増加に関する要因】

 野菜摂取の重要性(健康に良いなどの知識)を知るだけでは、野菜摂取を継続できずにあきらめてしまうことがあるため、まずは実践しやすい環境を整備したり、小さな行動を起こして良い変化を実感することが重要だと考えています。
 特に子供の野菜摂取量を増やすには、両親のサポート、共食頻度、家庭内での入手可能性(すぐに食べることができること)等に対する働きかけが不可欠であると思います。
 また、子供は好きな人、大切な人(両親や先生等)からの影響を受けやすいため、野菜を食べた時に褒めたり、楽しくコミュニケーションをとりながら食卓を囲むことで、望ましい行動を増やすことができます。
 子供から成人まで言えることですが、新たな行動を起こすには、重要性と自信の高まりが必要です。海外の調査でも、野菜摂取の重要性のみ指導した群よりも、重要性と自信を高めるような指導を行った群や、具体的な行動計画(何を、いつ、どこで、どうやって行うか)を立てた群(野菜料理を用意する時間がないなど困難な場面での対策を事前に計画するなど)で、摂取量の改善が見られています。

【野菜の摂取目安(1日に350グラム)】

 普段、あまり野菜を摂取できていない人は、350グラムを多く感じるかもしれませんが、野菜は加熱調理することにより見た目のカサを減らしたり、摂取回数を分けるなどにより、無理なく摂取できるようになると思います。それぞれのライフスタイルに合わせたとり方を工夫してみましょう。

 食事バランスガイドは、主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物の5つの区分に分けられていて、野菜は副菜に含まれています。1日の目安として、野菜料理なら小鉢で5皿程度、その他いもや海藻、きのこ等を1皿加えて、副菜は1日5から6つ(SV:食事の提供量の単位の略)とることが推奨されています。
 食事バランスガイド等を参考に、バランスを意識した食生活をしていただきたいと思います。そして定期的に体重を量り、食事量と活動量のバランスがとれているかの目安にしてみましょう。

【ベジフルティーチャーによる野菜摂取拡大運動の取組み】

 野菜摂取の向上は、個人の努力だけでは難しく、実践しやすい食環境の整備も重要であることをこれまでお伝えしました。非営利活動法人青果物健康推進協会(会長:岸朝子)が認定した、専任講師であるベジフルティーチャーは、主に小学校での食育出前授業の実施や、企業の健保組合・健康管理部署と連携した知識の普及活動やスーパー等と連携した取組みを中心に、食環境整備の拡大等、全国で野菜摂取拡大を目指した食育活動を展開しています。


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