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調査報告(野菜情報 2013年9月号)


生産量日本一のにら産地と国産原料に
こだわりを持つ実需者の取り組み

~ JAとさかみと点天の事例紹介 ~

調査情報部 戸田 義久・伊澤 昌栄


【要約】

 高知県の香美市および香南市を管内とする土佐香美農業協同組合(以下、「JAとさかみ」という。)と大阪市にある株式会社点天(以下、「点天」という。)は、年間を通じて、にらの契約取引を行っている。点天は、ひとくちギョーザの製造と販売を行う実需者として、高品質な国産材料を使うことにこだわりを持ち、それを追い求めた結果、日本一のにら生産量を誇る産地と出会い、安定的で継続的なにらの取引が実現することとなった。
 JAとさかみでは、にらの品質と鮮度の向上に努めるとともに、高知県が開発した小袋包装のパーシャルシール包装により、長時間の鮮度保持に取り組んだ。その後、実需者ニーズにあった大袋包装のパーシャル包装の実用化により、土佐香美産にらのオールパーシャル化を実現し、さらなる鮮度保持に積極的に取り組んだ。
 点天は、原料に求める量、品質および価格を安定して供給してくれる産地の取り組みを積極的に応援することにより、消費者に対して安全、安心と品質の良さをアピールし、お互いの信頼関係を築いている。

はじめに

 JAとさかみは、実需者が求める品質と安定供給に応えるため、県および生産者で構成されるJAとさかみのにら部会と一丸となって高品質なにらの栽培技術を励行するとともに、新規就農の促進など生産振興を行うことで、生産量日本一の産地となった。このような取り組みが評価されて、JA全中、JA都道府県中央会およびNHKが主催する「平成21年(第38回)日本農業賞」の特別賞を受賞している。点天は、国産のにらを原料にギョーザを製造する実需者である。点天は、国産にらの品質と鮮度の良さを前面にアピールすることで、他の製品との差別化を図っている。
 本稿では、JAとさかみと点天の契約取引の経緯や取引形態を考察し、実需者が期待する安定した生産と品質、鮮度の確保に向けたJAとさかみの取り組みを紹介する。

1. JAとさかみと点天の契約取引

(1)経緯

 JAとさかみと点天がにらの契約取引を開始した時期は、平成11年5月。ギョーザの原料を国産にこだわる点天は当初、大阪市中央卸売市場の仲卸業者から、産地を指定せず、国産にらを購入していた。しかし、平成3年ごろのもつ鍋ブームを機に、国内でにらの需要が高まったことで、にらが品薄となり、市場でにらを安定的に購入できなくなった。必要量を手当てできず、このままでは、ギョーザの製造に支障が生じるまで深刻だったという。これを契機に、点天は、にらを安定的に確保するため、市場調達から産地調達に切り替えた。
 産地として最も有望だったのが、高知県で、特にJAとさかみだったという。点天の社長は「JAとさかみには、何代にも渡る生産者の高品質なにら生産に向けた努力の積み重ねがあった」という。

(2)産地のメリット

 JAとさかみと点天の契約は、9月から翌8月(園芸年度)の1年間で、8月に翌年度の取引価格と年間数量を決めることになっている。両者の取引形態は、市場を介するものである。生産者からJAとさかみに出荷されたにらは、県内の農作物を一括管理する高知県園芸農業協同組合連合会(以下、「園芸連」という。)を通じ、大阪市中央卸売市場に集荷され、仲卸業者に入荷される。点天は、仲卸業者から購入する。この取引形態は、生産者とJAとさかみにとって、大きなメリットがある。
 それは、代金の決済が円滑であることである。実需者との直接取り引きでは、速やかな代金決済が課題である。そこで、すべて県域系統を活用した市場出荷にすることにより、全農県本部などの県域系統による代金決済システムを通じて、円滑な代金決済ができ、生産者は安心して生産や出荷に専念できている。

(3)点天のメリット

 点天は、JAとさかみや生産者の取り組みを宣伝している。この宣伝には、点天がギョーザの原料にこだわっていることが背景にある。
 点天のギョーザは、創業当時から国産原料にこだわることで、他社のものと差別化を図ってきた。外国産を原料に使えば、価格優位性がでるものの、国産原料にこだわる理念を経営方針としていた。国産原料の素材の良さを大切にするため、点天は、商品を冷凍にせず「生」のままで、「当日製造、当日販売」に徹している。生だからこそ、JAとさかみのにらそのものの素材が生かされるという。つまり、消費者の目線で素材の風味などを大切にしている。国産と素材の良さを前面にアピールすることは、自社で製造するギョーザのイメージを高めている。消費者の安全志向が高まる中、国産の中でも特に評価の高いJAとさかみからのにらの調達であれば、点天のギョーザは消費者からの信頼も得られる。JAとさかみのにらは、点天にとって理想的であった。

2. 安定かつ持続的な生産へ

 点天との事例を見ると、実需者は産地に安定した生産と一定水準以上の品質を求める。これには、生産規模の拡大や新規就農の促進、安定した品質確保と鮮度維持が必要である。ここでは、産地としてこの課題に対し、どのように取り組んだのかを紹介する。

(1)県の取り組み

 高知県は、JAを実施主体として、生産者を対象に園芸用ハウスのリース事業を実施している。リース期間は15年間で、リース終了時に生産者が簿価相当額を支払うことで、ハウスが自己所有となる。この事業は、生産者の初期投資の軽減などを目的としており、生産規模拡大や新規就農を促すことが期待できる。
 このため、JAとさかみ管内のにらの生産戸数は、高齢化の進展により減少傾向で推移するものの、リース事業の効果もあり、後継者のいる生産者は生産規模拡大が進んでいる。にらは、なすやピーマンなどの加温品目と違い、無加温で経費が掛からず、単価が安定していることもあり、品目転換が進み、新規就農者の増加と相まって、にらの栽培面積は徐々に増加している。
 平成24園芸年度(9月~翌8月)のJAとさかみにおける野菜と果実を合わせた販売額は約101億円で、うち野菜が82%を占める。そのうち、にらの販売額は約33億7000万円(販売シェア32.7%)と、最も大きな割合を占めている(図)。

(2)にらの出荷体制

 高知県では、JAごとの選別基準によるバラツキをなくすために、園芸連が出荷の規格を統一している。生産者は、刈り取ったにらを一束100グラムごとに結束(写真1)し、出荷場に搬入する。JAとさかみでは、管内7カ所の出荷場に搬入されたにらは、強制通風式の予冷庫で一晩予冷される。翌朝、大袋包装(レギュラーにら)※1は野市出荷場、小袋包装※2は土佐山田出荷場の専属の業者により運搬(横持ち)される。それぞれの出荷場で、毎日、JAとさかみのにら専属の検査員が生産者ごとに規格品質の適合性を検査している。にらは、AM品、○AM品、BM品の等階級に検査され、不適合のものは、この時点で生産者に返品される。契約上、点天には、AM品で最も品質の良いにらが出荷されている。
 土佐山田出荷場での検査後は、さらに、主に量販店向けに1束ごと小袋包装(100グラム)したものと、点天などの業務向けの大袋包装(5キログラム)に分けられる。小袋包装したものは量販店向けとしてトラック輸送時間まで予冷処理される。小袋包装は関西および中京地域の各市場に出荷され、翌日に店頭に並ぶ。市場出荷直前に検査、包装することで、品質のバラツキの防止に努めている。点天向けの大袋包装は、土佐山田出荷場から園芸連に出荷され、園芸連の検査員による2度目の検査後、出荷される。
 JAとさかみでは、安定した品質確保の取り組みを通じ、にらの周年供給体制を確立し、各市場の需要に応えてきた。さらに、実需者の信頼に応えるため、にらを結束するテープに生産地や生産者名が記載され、トレーサビリティにも取り組む。まさに、生産者の顔が見える取り組みである。結束テープなど資材費は生産者負担だが、生産者は責任を持って栽培している自負もあり、コストは納得した上で負担している。また、小袋包装には、5桁の商品管理番号が印字されており、出荷日と出荷時間が把握できるようになっている。商品管理番号により、川下から川上へさかのぼることができ、JAとしても責任の所在を明確にさせることで、にらの信頼性の確保に努めている。

(3)鮮度向上の取り組み

 高知県は平成9年に、小袋包装で独自の鮮度保持技術を開発した。「パーシャルシール包装」である。この技術を平成12年に導入したことにより、長期間の鮮度の保持が実現した。いまでは、大袋包装でも、パーシャル包装が導入され、業務用向けも高い鮮度保持を実現することができた。このような取り組みが取引市場や量販店からも高く評価されており、全国的なJAとさかみのにらの流通を可能とし、販売にも有利となっている。
 JAとさかみは、点天との取引当初は、業務用の大袋包装で対応していたが、点天工場内での原料保管時の鮮度保持対策として、パーシャルシール包装による小袋包装に切り替えた。その後、大袋のパーシャル包装の実用化により、大袋包装でも鮮度保持が担保されたことから、点天向けは大袋包装へ変更した。にらが痛みやすい8月に、JAとさかみは、点天の工場で、工場入荷から4日経ったにらを見て、産地から出荷した時の鮮度が十分保たれていることを確認している。点天の社員からは、洗浄時のにらの手触り、傷みの少なさやシャキシャキ感が格段に向上したと評価を受けている(写真2~4)。
 大袋包装用のパーシャル包装の導入により、点天の廃棄コストが抑えられることになり、点天での鮮度保持の向上にも寄与している。保存期間が長くなったことから、鮮度低下によるにらの廃棄も大幅に減少し、鮮度低下によるロスを気にせず、必要量だけ入荷すればよいので、在庫を減らすことにもつながっている。

おわりに

 JAとさかみは、生産者と一体で、品質にこだわったにらを生産している。また、県の作付面積の拡大に向けた取り組みと鮮度保持技術の開発の結果、高知県のにらは、高品質で、高鮮度の産地の地位を築いた。点天は、ひとくちギョーザのブランドを維持するため、国産原料に強いこだわりを持っていたことから、ギョーザの製造に欠かせない、国産にらの安定供給を望んでいた。両者がビジネスマッチングできたことで、点天は、安定的な供給元の確保、JAとさかみは、安定的な需要先の確保をするとともに、園芸連を通じた市場出荷という取引形態により、代金決済を確実に担保することができている。
 点天がJAとさかみや生産者をメディアで紹介することで、JAとさかみの知名度が高まるとともに、点天は高品質で、鮮度の良い国産にらを原料として使用していることを消費者にアピールできている。先日、大阪で開催された「‘13食博覧会・大阪」に出展した点天は、そのブースの半分をJAとさかみの展示とし、JAとさかみの取り組みを多くの消費者に知ってもうことで、点天とJAとさかみのブランド向上を図った。延べ100名以上のJAとさかみの各部会の生産者らが参加協力をして、ブースを盛り上げたという。両者のこだわりから生まれた取り引きは、双方に大きなメリットをもたらしている。お互いにメリットと信頼関係があるからこそ、長きにわたる取り組みになっているといえる。
 最後に、調査にご協力いただいた高知県、園芸連、JAとさかみ、点天の皆様には、この場を借りて厚く御礼申し上げる。


※1 大袋包装(レギュラーにら)・・・パーシャル包装
   大袋をバッククロージャーと呼ぶクリップで留める包装。
   100グラム(1束)×10束(1袋)×5袋=1ケース分(5キロ)を大袋で包装する。

※2 小袋包装・・・パーシャルシール包装
   機械包装し溶着で止めていく部分をシールといい、1束ごと包装する。

注:パーシャルシール包装
 高知県独自の鮮度保持技術で、特許を取得している。青果物を機械でフィルム包装する際に溶着するシール部分に微細な空隙を残し、ガス透過性を調整する。品目によって袋のガス透過量を微量に調整することにより、袋内が低酸素で、高二酸化炭素状態となり、青果物の呼吸作用による劣化が抑制され、高い鮮度保持効果が得られる。


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