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調査報告(野菜情報 2013年7月号)


カット野菜を巡る状況(2)

~ カット野菜の販売・消費の動向 ~

野菜需給部


【要約】

 カット野菜の販売量が年々拡大している。これまで、カット野菜は生鮮野菜が高いときの代替品として利用されるという一面も持っていたが、平成24年以降は、生鮮野菜の卸売価格が下落しても販売個数の減少幅が小さく、定着してきたことが伺える。消費者がカット野菜を購入する理由は、「家庭での時間を節約できるから」が最も多く、食の簡便化が進んだことで、手軽に使えるカット野菜に消費者が着目してきていると考えられる。

~はじめに~

 カット野菜には、千切り、角切り、たんざく切りや乱切り等の業務用商品(写真1)と、袋に入ったサラダや鍋物セット等の量販店等向け商品がある(写真2)。6月号では、カット野菜全体の流れをつかむために、カット野菜製造業者の動向について取り上げたが、今月号では、消費者にとって身近なカット野菜の販売や消費の動向について取り上げて行きたい。
 すなわち、需要の伸びが注目されているカット野菜について、平成21~24年度のカット野菜の販売時点情報管理データ(以下、「POSデータ」という。)を収集し、小売店における販売量、販売金額等の推移を分析した「スーパーマーケットにおけるカット野菜の小売動向調査」の結果を掲載する。また、消費者がカット野菜に対してどのような認識を持っているか把握するため、平成24年10月下旬にインターネットで購入利用実態を調査した「カット野菜の消費動向調査」の結果を報告する。さらに、今回の一連の調査の結果をもとに、カット野菜を巡る市場規模を試算したので、紹介する。

1. カット野菜の販売量、販売金額等の推移

(1)データ抽出方法

 POSデータは、量販店等で販売時にバーコードを読み込むことで蓄積されるデータである。このため、商品を図1のとおり大分類、中分類、小分類の3段階に分類し、抽出することとした。収集方法および分類方法は次のとおり。
① 収集したPOSデータは、日経POSデータであり、全国のスーパーマーケット156チェーン、683店舗を対象としている。
② JICFS分類(注)に応じて商品名にサラダというワードが含まれている場合は「サラダ」、それ以外は「調理用・その他」の2つに大分類した。
③ 「サラダ」に大分類されたアイテムのうち、商品名にキャベツやレタス等の品目名が含まれているものは「品目別」、それ以外は「ミックスサラダ」の2つに中分類した。
④ 「品目別」に中分類したものの中で、品目名が複数含まれている場合は、最初に記載されている品目名を優先して小分類した。また、「ミックスサラダ」に中分類したものは、「○品目」、「バランス」等の商品名に含まれる主なキーワードにより小分類した。
⑤ 「調理用・その他」に大分類されたアイテムのうち、商品名に野菜炒め用や鍋用等のように用途が含まれている場合は「用途別セット」、それ以外は「刻み野菜」の2つに中分類した。
⑥ 「用途別セット」に中分類したものの中で、品目名が含まれている場合は、それぞれの品目名別に小分類した。また、品目名が含まれない場合は、ミックスとして小分類した。
 なお、抽出したデータを品目名ごとに集計するに当たり、大分類で分けて抽出したもののうち、小分類で同じ品目があれば、これを合計して品目ごとの集計とした。

注:JICFSとは、JAN Item Code File Serviceの略称で、財団法人流通システム開発センターが管理運営を行う「JANコード商品情報データベース」システムを指し、JICFS分類は、データベースに収録されたJANコード商品情報を効率よく利用できるように設定されたJICFS用の商品分類コード。

(2)調査結果の概要

① メーカー数とアイテム数の年別推移

 カット野菜商品のアイテム数および出荷している業者の数を表すメーカー数をそれぞれ集計したところ、メーカー数は平成22年度に若干減少し、アイテム数は平成22年度および平成23年度に減少したものの、それぞれ平成24年度には増加している(図2)。また、カット野菜のアイテム数を月別に見ると、500前後で推移していたアイテム数は、東日本大震災の発生した翌月の平成23年4月に落ち込んだが、その後は増加傾向となり、平成25年3月には700アイテムまで増加している(図3)。

② 販売金額および販売個数の動向

 カット野菜の千人当たりの販売金額は増大しており、平成24年度には、対前年度比128パーセントとなっている。内訳を見ると、「サラダ」は同122パーセント、「調理用・その他」は同140パーセントとなっている(表1)。
 また、カット野菜の千人当たりの販売個数も毎年度伸びており、平成24年度には、対前年度比130パーセントとなっている。内訳を見ると、「サラダ」は同121パーセント、「調理用・その他」は同143パーセントとなっている(表2)。

③ 価格の動向

 品目別に販売金額を販売個数で除した主な品目の平均価格の年別推移を見ると、いずれの品目も200円未満で推移している。その中で、比較的高い単価で推移しているのは、みずな、ミックス野菜およびごぼうであり、レタス、たまねぎおよびキャベツは比較的低い単価で推移している。また、みずなおよびレタスの平均価格は上昇傾向となっており、ミックス野菜は、平成24年度は上昇したものの、平成21年度の価格を下回っている。一方、ごぼうおよびキャベツは下落傾向にあり、全体の価格は年々下落している(図4)。

④ 品目別動向

 平成24年度の千人当たりの販売金額の品目別比率を見ると、ミックス野菜が最も高く、次いで、キャベツ、レタス、みずなが続いている。平成21年度と比較すると、全体の販売金額が伸びる中で、ミックス野菜およびごぼうの比率は低下し、キャベツ、レタスおよびみずなの比率が上昇している(図5)。

ア.  キャベツ

 千人当たりの販売個数、販売金額はともに年々増加傾向にあり、特に平成24年度に大きく増加している。平成24年度の販売金額は、対平成21年度比239パーセントの11,078円となっている(図6)。内訳で見ると、「サラダ」は同274パーセント、「その他(刻みキャベツ等)」は同257パーセントと大きく伸長している。

イ.  レタス

 千人当たりの販売個数と販売金額は年々増加しており、平成24年度の販売金額は、対平成21年度比で267パーセントの4,752円となっている(図7)。

ウ.  みずな

 千人当たりの販売個数と販売金額は、平成22年度は前年度に比べほぼ横ばいで推移したが、平成23年度以降は大幅に増加している(図8)。平成24年度の販売金額は、対平成21年度比218パーセントの3,978円となっている。内訳を見ると、すべて「サラダ」となっており、サラダ用食材として定着していることが分かる。

エ.  たまねぎ

 千人当たりの販売個数と販売金額は年々増加傾向にあるが、平成23年度以降大きく伸びており、平成24年度の販売金額は、対平成21年度比202パーセントの2,848円となっている(図9)。内訳を見ると、「サラダ」が大半を占め、「調理用・その他」の割合はわずかであるが、ともに年々増加傾向にある。

⑤ 販売金額の月別動向

 これまで、カット野菜は、生鮮野菜が高いときに代替品として利用されるという傾向にあった。カット野菜の千人当たりの販売個数と生鮮野菜の卸売価格の推移を比べてみると、平成24年以降は、生鮮野菜の卸売価格が下落しても販売個数の減少幅が小さい。簡便化志向の中で、使い切りのできるカット野菜が、代替品としてではなく、利便性のある商品として定着してきたことが伺える(図10)。

 カット野菜商品は、バックヤードで調理するための総菜用や刺身に添えるツマのようにPOSデータでは抽出できない商品もあるため、すべての商品の販売金額やアイテム数が把握できたわけではないが、売り上げの大半を占めると考えられる商品アイテムの動向は把握できたと思われる。カット野菜の販売金額とアイテム数ともに増加していることが明らかとなった。
 では、消費者は、カット野菜に対して、どのような認識を持っているのだろうか。

2. カット野菜の消費動向

(1)調査の対象としたカット野菜

 消費者がカット野菜を購入する場としては、量販店・生協等、百貨店、コンビニエンスストア、弁当・総菜店等が考えられる。そのような店舗で、消費者が直接購入するカット野菜には、どのようなものがあるだろうか。量販店やコンビニエンスストアをのぞくと、カット野菜コーナーには、カットして袋に入ったもの(以下、「簡便野菜」という。)や鍋用の野菜セット(以下、「鍋物セット」という。)がある。また、総菜売り場には、野菜カップサラダやポテトサラダが並んでいる。今回は、これら4商品群について、消費者がどのような認識を持っているかを把握することとした(写真3)。

(2)購入頻度

 カット野菜の商品群ごとに世帯別・年齢別に分けて購入頻度を聞いたところ、簡便野菜は、「独身者・単身者 男性」では、週1回以上購入すると回答した者の割合が比較的大きい。一方、「独身者・単身者 女性」、「共働き世帯 男性」および「専業主婦 女性」では、週1回以上購入すると回答した者の割合は比較的小さくなっている(図11)。
 鍋物セットは、いずれの世帯でも40%以上が「わからない・覚えていない」、または「購入したことがない」と回答しており、他の商品に比べると購入頻度が低くなっている(図12)。
 野菜カップサラダは、15%以上の人が「週に1回以上」購入しており、50%近くの人が「1カ月に1回以上」購入している。特に「独身者・単身者 男性」の購入頻度が高く、次いで「独身者・単身者 女性」の購入頻度が高くなっている(図13)。
 ポテトサラダは、15%近くの人が「週に1回以上」購入しており、50%以上の人が「
1カ月に1回以上」購入している。一方、15%近くの人が「購入したことがない」、または「わからない・覚えていない」と回答している。「独身者・単身者 男性」と「共働き世帯(男女)」の購入頻度が比較的高く、「独身者・単身者 女性」と「専業主婦」の購入頻度が比較的低くなっている(図14)。また、年齢別に見ると、「週に1~2回程度」以上と回答している人の割合は、年齢が上がるほど大きいという特徴がある(図15)。

(3)購入価格

 カット野菜の商品群ごとに購入する際の1品当たりの購入価格を聞いたところ、簡便野菜、野菜カップサラダおよびポテトサラダは、「100~200円未満」の割合が最も大きく、鍋物セットは、「200~300円未満」の割合が比較的大きい。特に簡便野菜は、「200円未満」と回答した人が75.3%を占め、低価格商品が売れ筋であることが分かる(図16)。

(4)カット野菜の味に対するイメージ

 カット野菜の味に対するイメージを聞いたところ、いずれの商品群でも「家庭と変わらない」の割合が最も大きい。簡便野菜は、「おいしい」と「おいしくない」が同程度の割合となっているが、鍋物セットは、「おいしくない」割合が大きい。野菜カップサラダとポテトサラダは、「おいしい」の割合が比較的大きくなっている(図17)。

(5)カット野菜を利用する理由

 カット野菜を利用する理由について聞いたところ、いずれの商品群でも「家庭での調理時間を節約できるから」が最も多い。次に、ポテトサラダを除いて「生鮮品を使用して調理すると1回で使い切れないから」が多く、ポテトサラダでは、「好きなものを選んで購入できるから」が2番目となっている。一方、いずれの商品群でも、「安全・安心だから」という理由は少ない(表3)。

3. カット野菜を巡る市場規模について

(1)市場規模の推計方法

 POSデータの結果でも分かるように、カット野菜の販売量は増加傾向にある。背景には、高齢化の進展、有職主婦の増加、単身世帯の増加等に伴い食の簡便化が進み、手軽に使えるカット野菜のメリットに消費者が気づいたことがあると考えられる。
 今回、各流通段階におけるカット野菜の市場規模を推計した。
 まず、経済産業省が公表している商業動態統計調査とスーパー・百貨店より聞き取りをしたカット野菜販売額の割合を使用して、カット野菜の販売額を推計した。
 次にカット野菜の販売額とカット野菜製造業者へのアンケート調査および聞き取り調査により得られた参考数値を使用してカット野菜製造業および原料の市場規模を推計した。
 また、経済産業省が公表している商業統計とPOSデータを使用して、スーパーおよび食料品スーパーにおけるカット野菜の販売の市場規模を推計した。具体的には次のとおり。

① スーパー・百貨店におけるカット野菜の売上比率から、カット野菜販売額を推計。

② カット野菜製造業者の製造・販売状況調査に基づき、カット野菜製造業のスーパー・百貨店向けとコンビニエンスストア向けの比率を算出。

③ ①および②から、カット野菜販売の市場規模を算出。

④ 小売業の値入率(商品の販売価格と仕入れ原価の差額の販売価格に対する比率)を30パーセントと設定し、カット野菜製造業の市場規模を算出。

⑤ カット野菜製造業者の製造・販売状況調査から、原料の原価率を45パーセントと設定し、原料の市場規模を算出。

⑥ 平成19年版商業統計の総合スーパーおよび食料品スーパーの年間販売額の合計と平成22年度のカット野菜商品以外も含めたPOSデータ販売額の合計を比べて、日経POSデータのカバー率を算出。

⑦ 平成24年度のカット野菜商品のPOSデータ販売額の合計をカバー率で割り、カット野菜商品の市場規模を算出。

 以上の結果、カット野菜原料の市場規模は約600億円、カット野菜製造業の市場規模は約1,330億円、カット野菜販売の市場規模は約1,900億円、スーパーおよび食料品スーパーにおけるカット野菜販売の市場規模は約605億円と推計した(図18)。

(2)カット野菜市場の今後について

 前月号で取り上げたとおり、多くのカット野菜製造業者は、カット野菜商品の製造を拡大したいと考えている。では、どのような部分でカット野菜の需要が伸びると考えているのだろうか。
 カット野菜製造業者への聞き取りによると、小売店等への販売も継続的に伸びると考えている他、特に宅配ビジネスが成長することによって、カット野菜の需要は伸びるという意見があった。また、小売店等の実需者への聞き取りによると、健康志向を背景に野菜摂取の習慣が消費者に定着してきたこともあり、カット野菜販売は、まだまだ伸びる余地があるという。

 以上が小売店におけるカット野菜の販売量および販売金額等の推移とカット野菜の消費動向についての調査の結果の概要である。今後、カット野菜の市場規模がどこまで伸びるのか、原料野菜の安定供給という面から当機構においても注視していきたい。今回、調査を実施するに当たり多大なご協力をいただいた、青果物カット事業協議会の会員・事務局の皆さま、東京農業大学藤島教授および農林水産省農林水産政策研究所小林上席主任研究官には、この場を借りて厚く御礼申し上げる。なお、次月号では、カット野菜の原料調達先の一つとして大きな役割を果たしている農業協同組合等の加工・業務用野菜の取引実態等の調査結果の概要を報告する。
 
 今回報告した、「スーパーマーケットにおけるカット野菜の小売動向調査」および「カット野菜の消費動向調査」の結果については、
 当機構HP(http://www.alic.go.jp/y-gyomu/yajukyu02_000176.html)に掲載してあるので、参照願いたい。

 今回報告した、「カット野菜製造業者の製造・販売状況調査」の結果については、
 当機構HP(http://www.alic.go.jp/content/000091984.pdf)に掲載してあるので、参照願いたい。


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