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調査報告(野菜情報 2012年10月号)


企業の農業参入、どうすれば軌道に乗るか?

~福井県の坂井北部丘陵地への参入企業の事例から探る~

農業ジャーナリスト 青山 浩子


【要約】

 2009年の改正農地法によって企業の農業参入が増加している。しかし、改正前に参入した企業を含め、当初の計画どおりに収益をあげるのは容易ではない。
 理由として1)行政が耕作放棄地を含めた農地の有効利用と参入誘致をセットですすめるため、企業側が農地の復元などに時間や労力を取られ立ち上がりに時間が係ってしまう、2)技術力が未熟である、3)経験やノウハウの蓄積がない初年度から大規模で生産を始めるなどが背景にある。
 一方で実需者の間では、産地など所在の明らかな国産野菜の需要は高まっている。また参入企業も生産から携わっていることが営業面で有利に働く。これらから実需者が求める数量、価格に対応できる生産体制を早期に組むことが参入企業にとっての至急的課題といえる。
 福井県の場合、行政など関係機関が連携し、参入企業へのさまざまな支援をワンストップサービスで行っている。また、参入企業同士の連携も始まっている。企業が収益を上げられれば農地の有効利用、国産野菜の振興にもつながるという観点から、行政に期待される役割は今後ますます大きくなっていくと思われる。

■国営造成農地の有効活用を狙って企業誘致

 農水省によると、2009年の農地法改正以降、2年間で新たに838法人が参入したという。改正前は6年半かけて436法人というので、明らかに参入のスピードが早まっている。
 福井県でも同様の傾向が出ている。県内では23法人が参入しており(2012年6月現在)、このうちの14法人は農地法改正後の参入だという。
 同県の場合、際立った特徴がある。23法人のうち8法人は、県北部にある坂井北部丘陵地(あわら市、坂井市三国地区)に集中している点だ。同丘陵地には17年余りかけて国営で造成した畑地がある。企業参入を通じて丘陵地の有効活用を図ろうという県の狙いがある。
 造成された畑地は約1,000ヘクタールで、県内最大の園芸産地。春夏はすいか、かぼちゃ、かんしょ、メロン、秋冬はだいこん、にんじん、なし、かきなどの作物の生産を振興してきた。1枚あたり40アールで、ほ場ごとに給水栓があり、条件としては大変恵まれている。
 ところが高齢化などにより、重量野菜を中心に作付けが減り、管理休耕地2割を含む3割の農地が耕作されていない。1990年には同丘陵地全体で65億円あった園芸産出額も2005年には約27億円まで減少した。
 同県は丘陵地周辺で農業を営む個人、法人に規模拡大を働きかけてきたが限界があった。そこで県内の大規模法人、さらに県内外で農業参入を考える企業を視野に入れ、丘陵地での農業生産を推進することとなった。05年からは同丘陵地で農業生産をする企業を対象とした支援事業もスタートさせた。
 その成果があって2005年から12年にかけて、県内農業者による法人化を含め、12法人を育成。主に企業が手がけるブロッコリーやにんじんは作付面積が増加傾向にあるという。
 12法人の売上高を合せるとおよそ7億円。丘陵地の園芸産出高についても企業の売上が上乗せされる形で、34億円まで回復した。耕作放棄地も52ヘクタール(11年)が解消された。

■収益があがらない3つの原因

 ただ、企業側から見た場合、課題は多く残されている。12法人の売上合計7億円を1法人当たりでみれば約6,000万円。なかには赤字経営という企業もある。
 参入企業の誘致および支援を行っている福井県農林水産部園芸畜産課からのヒアリングをまとめると、収益が思うようにあがらない原因は主に3つ。
1) 耕作放棄地の復元から始めるため、立ち上がりに時間と労力が係る
2) 技術力がない状態から始めるため、タイムリーな栽培管理ができず、計画通りの収量を生産・出荷できない
3) 参入当初から比較的大規模な農場を確保し、大きな青写真を描いてしまう
 1)に関していうと、企業の誘致を通じて丘陵地の耕作放棄解消・畑地の有効活用を図りたいという行政側の思惑と、一定経営規模を確保したいという企業側の思惑にミスマッチがあることが浮かび上がる。
 一方、2)と3)については「技術力が未熟である参入当初は小規模から始め、経験を積んでから徐々に規模拡大していく」という手法がとれれば問題は解決できるはずだが、なぜその通りいかないか。
 県の担当者に聞くと「農家の保守性、排他性もあって10年前まではどの農地も企業に貸すことをためらっていた。だが高齢化や後継者不足などによって、一軒が『貸してもいい』と突破口を開くと次々と貸し手が現れた。企業側もまとまった農地を確保できるチャンスと思い『借ります』と言ってしまう。そういった双方の事情があるようです」と語る。

■新規事業として生鮮野菜の生産・加工に参入

 こうした厳しい条件を抱えながらも、同県に参入した企業はたくましく農業生産をおこなっている。以下、丘陵地に参入した2社の取り組みを紹介する。
 神栄アグリフーズ株式会社は2010年から、丘陵地にて野菜生産を行っている。同社の親会社は、兵庫県神戸市に本拠地を置く神栄株式会社、「食品」「繊維」「物資」「電子」の4部門を主軸に事業展開をしている。
 「食品」のメインは冷凍野菜、冷凍加工食品の輸入で、加工工場は主に中国をはじめ海外にある。業務用主体だが冷凍野菜の取り扱い量では国内3番目に位置する。
 2007年末、中国産の冷凍ギョーザによる食中毒事件が発生したことをきっかけに、消費者の間に食の安全性に対する意識が非常に高まった。同社もこの動きを敏感にとらえ、日本国内での生鮮野菜事業を検討するようになったという。
 神栄アグリフーズの歌津博之社長は「これまでの冷凍食品事業を根幹としながらも、新たな事業に乗り出そうという経営判断が下り、国内での野菜生産およびカット工場運営のための別会社を設立した」と話す。
 カット工場がある福井県坂井市の水田地帯に事務所を置いているが、農場は坂井北部丘陵地にある。同県に参入したのは、繊維事業の関連で福井県に支店や工場があり、ゆかりがあったこと、また福井県が企業の農業参入を積極的に支援していることなどが決め手になった。
 神栄に入社し、大学で農学部を卒業した社員1名が、会社設立の1年前から福井県に派遣され、同県の「里親制度」を利用して先進農家のもとで研修を積んだ。それが現在、農場の責任者である久世継義さん(31)だ。里親制度とは、新規就農希望者を支援するために福井県が認定する制度。里親農家は研修生として受け入れ、栽培指導の指導から就農に向けた支援、就農後にも相談役となるなど長期にわたって支援する。

歌津社長(右)、久世さん

■苦戦強いられた1、2年目

 久世さんを農場の責任者に据え、同社は12ヘクタールの農地を借り、初年度はそのうちの約5ヘクタールで、にんじん、かぼちゃ、かんしょの栽培を始めた。ところが結果的にはほとんど収穫ができなかったという。
 歌津社長によると「借受けた農地の一部が耕作放棄地であり、畑の地力が十分でなかったことに加え、技術力も不足していた」と話す。久世さんとともに、JAのOB3名の協力を得て農作業にあたったが、先を見越して段取りを組み、作業をすすめるというオペレーションを組むことができなかった。
 一方、会社設立とともにカット工場も稼働をしていた。自社農場で作った野菜を加工する算段だったが、農場から調達ができない。それでも工場を遊ばせておくわけにはいかないので、卸売市場から仕入れた野菜でカット野菜を生産した。
 販売先は、親会社の食品部門のルートを通じて開拓し、惣菜屋や弁当業者など20軒を抱える問屋との取引が始まった。注文は来るものの、実需者が求めるカット方法が異なる、いわゆる“多品種小ロット”生産だったため、労務費ばかりがかさんだ。
 2年目に入り、少しずつ自社農場でできた野菜を出荷できるようになった。また、地元のJAを通じて丘陵地の野菜を仕入れるルートも生まれ、カット工場に回せるようになった。この頃になると、工場で使う野菜の24~25%を地元から調達できるようになったという。
 また、自社農場で生産した野菜の一部は、カットせずにホールのままで地元の量販店などに出荷できるようになり、増収につながった。それでも、カット工場における“多品種小ロット”の生産体制は変わらず続いた。

■品目の絞込みとプロ農家からの技術指導

 3年目である2012年から、これまでの体制を全面的に見直すことにした。その内容とは、1)生産する品目を絞り込み、その作物にあった販売先を探すことで、農場とカット工場のリンクを最優先にする、2)農場部門で現役のプロ農家を技術顧問に迎え、現場指導をしてもらう、さらに丘陵地の農家との契約栽培を拡大するということだ。
 メインの野菜はキャベツにした。「品種をリレーさせていくと収穫期間が8ヶ月と長い。丘陵地はもともとキャベツの産地で、周囲に経験を持つ農家も多い点などを考慮した」(歌津社長)。
 技術顧問として迎えた農家は、丘陵地で農業経営を行う60代半ばのベテラン農家。キャベツ栽培の経験も持つ。初年度と2年目の教訓から「実践力のあるプロ農家から指導を受けられないか」と丘陵地農業支援センター(以下、支援センターという。)に要請し、支援センターを介して紹介してもらったという。
 「この方は、里親制度の里親としてもすでに何人もの若者を就農させている非常に前向きな人。当社もキャベツ作りを通じ、丘陵地の農業を元気にしたいと申したところ、顧問を引き受けてもらえることになった。仮に一企業の利益のことだけ考えていたら、受けてもらえなかったと思う」(歌津社長)
 顧問には週に2~3日は同社の農場を訪れてもらい、適宜アドバイスを受ける。12年については、技術力を固めるため、12ヘクタールすべてで作付せず、4~5ヘクタールに絞って生産することにした。
 工場もキャベツ主体の加工に切り替え、販売先も見直すことにした。“多品種小ロット”ではなく、まとまった量を使う顧客を開拓し、工場を効率的に稼働できるように切り替えていった。その結果、お好み焼き・たこ焼きを製造する食品加工メーカー、地元の外食チェーン、全国展開の総菜加工メーカーといった企業との取引が主体となった。現在、1日にキャベツだけで2トン(製品ベース)を加工している。「工場で使う野菜の70~80%がキャベツに切り替わった。芯取りも機械で行うので自動化でき、効率もよくなった」と歌津社長はいう。

キャベツの芯取り行程

キャベツのカット行程

■地場での安定供給体制構築が不可欠

 黒字化までにはまだ時間が必要とのことだが、野菜生産と加工をセットにした生産野菜事業に手応えを感じているようだ。「例えば、いままでカット事業を内製化していた食品加工メーカーがアウトソーシングするケースが出てきた。衛生管理などハードルは高いですが、相手先が求める条件をクリアできれば受注を増やせると思う」(歌津社長)
 また、カット野菜の営業において、「生産から手掛けている」というとかなり有利だという。取引先のひとつ、北陸を地盤とするある外食業者は、原料の地産地消を方針にあげており、飲食店の店頭でも“福井県産キャベツ使用”とピーアールする。「生産部門があるから取引につながった。単にカット野菜の業者ということだけでは成立しなかったと思う」(歌津社長)
 反面、カット野菜は価格がほぼ年間固定で、利幅も大きくない。その上で利益を確保するには、地元の生産基盤を整え、仕入れることなく安定供給できる体制を構築するしかないと同社は考えている。
 そのために2012年から、地元のJA花咲ふくいと連携し、JA内に加工野菜部会を立ち上げた。参画農家はまだ10数軒だが、カット工場でメインで使うキャベツ、にんじん、だいこんの作付けをしてもらうことになっている。後述する株式会社耕(たがやし)も、神栄アグリフーズの契約農家として、同社に納めるキャベツ、にんじんを12年から生産している。
 ただ、丘陵地全体でみると農家の高齢化は急速に進んでおり、同社と契約栽培する農家が安定的に増えていく可能性は高くないとの懸念もある。そこで、同社は新たな構想を打ち出した。独立希望の新規就農者を同社が受け入れ、技術顧問であるプロ農家の指導のもと、数年間農場で経験を積み、独立後は同社の契約農家として、野菜を生産してもらうというものだ。その第1号の若者が、12年8月に入社し、技術顧問の指導を受け始めている。「覚悟を持って農業をやるという意欲的な若者を受け入れたい。そうした人材のあっせんでは、福井県や支援センターの協力が欠かせない」と歌津社長は言う。

■まとまった農地求めて参入

 (株)耕もやはり坂井丘陵地に参入した企業である。同社の本拠地は群馬県高崎市。30ヘクタールの規模でほうれんそうを主体に生産している。高崎市のほ場は分散しており、まとまった農地を求めていたところ、福井県が企業参入を推進していることを知り、高崎市での生産を続けながら2011年から丘陵地で野菜生産を始めた。
 杉田栄一社長(42)は、脱サラ就農者。もともと青果市場に勤め、農家との相対取引に力を入れ、「朝採り野菜」など付加価値をつけた野菜を実需者に納品していた。
 農家との付き合いが深くなればなるほど、農家が置かれている現状にも詳しくなった。杉田社長は農業生産から販売までの一貫体制を作ろうと脱サラし、5年前に就農した。農業経営の経験のない新規就農者2人とともに、杉田社長の出身地である高崎市で農地を借りた。
 借りられた畑は、1枚10~15アールという小さな畑だが、場所を選ばずに引き受けていった結果、30ヘクタールまで広がり、スタッフも15人ほどになった。前職の経験を活かし、量販店やコンビニエンスストアのベンダーなど販路を開拓し、事業は順調に広がった。さらなる規模拡大の必要に迫られたが、高崎市のほ場はすでに200ヶ所以上に分散しており、ここで増やすには限界があった。県外でまとまった土地があるのならば…と福井県の丘陵地に拠点を構えることにした。

杉田社長

■参入企業同士の連携も

 同社が借りた農地は40年前に造成されたまま一度も使われていない農地。大木を倒す作業から始めざるを得なかったが、杉田社長はいとわずに借りた。「新たに始める人間、外から入ってくる人間には厳しい目が注がれるのは群馬でも経験済み。だが、そこで頑張れば、いい条件の農地も借りられるチャンスにもなる」と前向きに受け止めている。
 丘陵地では3人の社員を雇い、荒れた農地を復元するところから始めたが2011年は計画通りに作業が進まず、売上はわずかにとどまったという。「群馬県とは土の性質が違っていたこともあるし、11月から曇天続きで、生育が不良だったこと、農地の排水性がよくなく、一度雨が降ると、2~3日は畑に入れない。群馬県では、スタッフや困った時に助けあえる仲間がいたが、ここではそうもいかない。いろんな悪条件が重なった」と杉田社長は振り返る。
 12年からは、杉田社長自身が陣頭に立って、社長中心でオペレーションを組むようにした。また、群馬県でも取引のある大手量販店に対し、丘陵地で生産した野菜を出荷できるように営業を行った。また、神栄アグリフーズの農地も一部使用して、キャベツ、だいこん、にんじんを契約栽培し、神栄アグリフーズに納めるなど企業間連携にも積極的に取り組む。
 「農業はマニュアル化できない。毎日、毎日が真剣勝負。毎回違う相手と試合するようなもの。ひとつでも取りこぼすと、それが膨大なロスにつながる。自ら取りこぼさずとも天候、相場、競合産地の状況によっても変動する。だが、課題をひとつずつクリアしていけばチャンスに変わる」といたって前向きだ。

大木を倒し整地した農地

■一歩深まった行政による企業支援

 福井県は、今後もこうした企業を積極的に支援する計画だ。「高齢化が進んでいる農村で、耕のような若者のエネルギーは地域活性化の原動力となる。一方、神栄アグリフーズは加工という出口を持っている。丘陵地の農業はこれまで青果としての出荷がメインだったが、契約栽培などを広めて加工という新たな軸ができていけば産地の基盤もしっかりする」と担当者は期待する。
 苦労を経験しつつも前進を続ける企業の奮闘ぶりを見て、行政も従来とは異なる支援を始めた。
 ひとつは、農地のあっせんの方法だ。「耕作放棄地を優先しながらも、早く経営を軌道にのせるためには、すぐに生産が始められる農地のあっせんもしていかなければいけない」(県担当者)と軌道修正を図りつつある。
 もうひとつは、行政の関係機関と参入企業が顔をあわせて意見交換を行なう定例会の開催だ。2012年から毎月1回開くようになった。行政側からは福井県を始め、支援センターや普及の担当者などが参加する。各法人が作付けしているほ場を視察しながら栽培管理が順調に進んでいるかどうかをチェックし、相互に意見交換をするという。
 支援センターは、丘陵地で農業を営む個人、法人を各方面からサポートしており、農地の利用集積や遊休農地の解消、新規就農希望者の研修生としての受け入れや就農支援、食品関連企業など川下の情報を吸い上げて、参入企業の生産活動の参考にしてもらうといった橋渡しも行っている。また、援農組織「ねこの手クラブ」も運営する。これは繁忙期に作業の手伝いを求める農家や法人の依頼に応じ、あらかじめ募っておいた会員を派遣し、援農してもらうというもの。会員は平成24年8月時点でおよそ50名いる。
 前述の耕も「ねこの手」を利用したという。「支援センターには、耕作放棄地の復元に補助金が使えるなどの情報ももらったり、農地を借りる際の手続き方法、地元でのマナーについても教えてもらった。とても心強い組織」と杉田社長は言う。
 同センターの坪田清孝事務局長は「農地の貸し出しにためらいを持っていた10年前とは違い、『誰でもいいから使ってほしい』という農家が増えた。それだけ企業にすれば借りやすくなった。ただし、農地の管理やマナーについては求める水準が高い。センターとして参入する側と受け入れ側の橋渡し役として、相互の融和を進めていきたい」と話す。

■参入企業、行政に求められることは

 企業が農業参入しても利益の確保が難しいというのは福井県に限ったことではない。
 日本政策金融公庫が2012年1月に公表した「企業の農業参入に関する調査結果」(138社が回答)によると参入後、見込んだ期間内に黒字転換できた企業は建設業で10%、食品製造業で18%にとどまっている。黒字化を達成するまでの期間も当初の計画からずれている。建設業が平均3.8年としていたが実際には4.1年、食品製造業は4.2年が4.6年。企業が新規事業に着手し、黒字化までに3年を見込むのが一般的といわれるなか、農業は企業にとってハードルが高いビジネスであることは間違いない。
 その一方で、高齢化や離農とともに空き農地が急スピードで増えており、農業に参入しようという企業にはチャンス到来である。神栄アグリフーズの事例からもわかるように、所在の明らかな国産野菜の業務用需要は高まっており、川下の要望に対応できれば、参入企業は収益が確保でき、農地の有効利用にもつながるなどメリットは多い。
 最大の問題は技術力が未熟なため、計画どおり生産ができないという点だ。神栄アグリフーズは、地元のプロ農家を技術顧問に迎えることで、不足していた技術力の向上を図ろうとしている。こうして見ると、企業型農業を成功させるには、いかにして既存の農家からノウハウや協力を得るか、あるいは互いのメリットになるような連携を組むかにかかってくるように思う。
 そのために参入する企業側には、“地域の農業振興に貢献する”という大義名分を明確にする必要がある。行政や地域が何を望んでいるかという本音の部分だ。神栄アグリフーズの歌津社長もこう話す。「当社の利益のために力を貸してくれといっても農家からも行政機関からも支援は得にくい。丘陵地の農業を復活させるという目的のなかに当社がいるという意識は忘れていない」
 また、行政側も企業が農業に参入するにあたってのプラス面とともに、ネックになる部分やクリアすべき課題などマイナス面についても情報提供する必要がある。JAと地域の農家の関係、農家の企業に対する考えなど地元に根付いているからこそわかる部分がある。これらを客観的に分析し提供する。とりわけ、地域外から参入する企業の場合、知った上で参入するのとしないのでは運営上、大きな差が出てくるだろう。
 今後は個人、農業生産法人とともに企業も農業の一担い手として欠かせない存在になるだろう。また、営業力や販売先を持っている企業、若い人材を抱えている企業が入ってくることで産地の活性化につなげていけるという新たな可能性もある。それゆえ企業が極力早く生産を軌道に載せ、利益を確保できるよう、企業自身の努力はいうまでもなく、行政に求められる役割もますます大きくなる。また、企業参入の成功および失敗の両事例を全国レベルで共有化していくことも、これから参入する企業、受け入れる行政の双方にとって役立つはずだ。

※丘陵地農業支援センター:坂井北部丘陵地の園芸活性化を目的とし、地域内で農業をい営む個人、法人、企業に対し多角的な支援をおこなうための機関。あわら市と坂井市で組織する「坂井北部丘陵地営農推進協議会」の下部組織として、11年4月に設立された。2市で異なる農業施策の垣根をはずし、土地改良区やJAとも連携し、窓口を一本化したのが特徴。「農家のためのワンストップサービス」(支援センター)を行っている。


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