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調査報告


野菜の契約取引の実態に関する調査結果について
~第2報 実需者編~

野菜業務部直接契約課


要約

 野菜の生産者及び実需者を対象に、野菜の契約取引に関する全国規模のアンケート調査を行ったので、その結果を報告する。
 本調査により、これまでスポット的に明らかにされてきた野菜の契約取引に関する内容を、具体的な数値をもって実証することができた。具体的には、生産者及び実需者の概ね7割が契約取引を実施しており、需給事情の変化等に対応し契約内容が途中で見直されることが多いことが明らかになった。

1. はじめに

 野菜の加工・業務用需要が拡大するなか、当機構は、契約取引によるリスクを軽減するために『契約野菜安定供給事業』を実施している。
 この度、契約野菜安定供給事業をより多くの皆さまに知っていただくとともに、野菜の生産者や実需者の契約取引の実態をより一層把握し、制度の改善に資する観点から、アンケート調査による契約取引の実態把握を行った。
 既に9月号にて「野菜の契約取引の実態に関する調査結果の概要について」と題し、調査結果の一部を掲載しているが、未公表の調査結果を含め詳細分析を行ったので、具体的事例と共に紹介する。
 前月号では生産者(アンケート回答者171者)の契約取引の実態について報告したが、今月号では実需者(アンケート回答者123者)について報告する。

2. 具体的事例の紹介について

 アンケート調査を補完するため、具体的事例として次の4者にヒアリングを行ったので、その概要を紹介する。なお、(3)及び(4)の者については、本アンケート調査の対象業種ではないが、生産者と実需者を繋ぐ役割を果たしているため、具体的事例として紹介する。

(1)Aカット事業者

 北海道から九州に複数の営業所及び工場を展開し、スーパーマーケットの店頭で販売されるカット野菜を中心に製造している。商材は全て、1社の中間事業者のみから仕入れている。

(2)B小売業者

 関東及び関西を中心としたスーパーマーケットチェーン。

(3)C中間事業者

 外食事業者・中食事業者に対してホール野菜及びカット野菜を販売する中間事業者。野菜のカット事業も行っている。

(4)D卸売業者

 関東ブロックの中央卸売市場に所属している卸売会社。

3. アンケート調査結果及び具体的事例について (1)仕入先と取引形態について

 野菜の仕入先については、回答を得た実需者全体では中間事業者(仲卸、卸、納入業者等)が最も多くなっているが、業種別にみると、小売業者や外食業者等では中間事業者が多い一方、漬物業者等では生産者からの直接買入れが多くなっている(表1)。
 契約取引の有無については、実需者の67%が契約取引を行っていると答えており、契約により野菜の安定的確保を図っているものとみられる。また、業種別の契約取引割合をみると、2つに大別され、小売業者や外食業者等は64~65%、漬物業者やカット業者等の加工業者は75~78%となっている。これは、小売業者は、消費者の季節に応じた消費行動に対応する必要があり、外食業者等は、消費者に近く最終消費の代替的存在であるため、季節的な変動を加味しつつ製造等を行う必要があることから、ある程度需給状況や消費行動に応じた仕入れを行うため、市場からの仕入れの割合が高くなっていると考えられる。一方、漬物業者やカット業者等の加工業者は、漬物・冷凍食品・レトルト食品等、年間を通じ、定量・定価格で供給されることが求められることから、契約取引の割合が高くなっているものと考えられる(表2)。

(表1)業種ごと/国産野菜の仕入れ先について

(表2)業種ごと/国産野菜の契約取引の状況について

具体的事例の紹介① ~仕入先と契約取引~

(実態)

 Aカット事業者は、1社の中間事業者から、全ての商材を仕入れており、完全な契約取引を行っている。
 中間事業者はAカット事業者への供給のために、産地と契約取引を行っている。その契約相手は農協が80%、生産者が20%で、キャベツ、レタス、だいこん等の大産地がある品目は農協が、例えばラディッシュ等の生産量の少ない品目や大産地のない品目は生産者が中心となっている。

 B小売業者の仕入先の内訳は、市場(卸・仲卸)が70%、中間事業者が25%、生産者(農協を含む)が5%である。
 市場・中間事業者からの仕入れについては、取引を行うことを定めた基本契約を締結しているが、例えば数量・価格・規格等の具体的な取引内容は定めていない。取引に当たり大まかな取引見込数量を決めるが、そのとおりに取引を行うわけでなく、必要に応じ必要量をその都度発注する方法を採っている。
 生産者(農協を含む)からの仕入については、そのほとんどが農協であり、一部の店舗でのみ店舗周辺の生産者から地場野菜を仕入れている。
 契約取引は、仕入量の15%(中間事業者が10%、生産者(農協含む)が5%)程度である。なお、契約取引を始めたのは昨年度からであり、今後増やす方向で考えている。契約取引には、決まった規格で決まった数量を確保できるという保険的なメリットがあるが、市場価格イコール契約取引価格ではないため、場合によっては仕入れに当たり“損”をすることもあるという。B小売業者は、「一時の損得を考えないのが“契約取引”であり、売る側・買う側が共にその点を理解しなければ、取引が長続きしない。」という。

 C中間事業者の仕入先の内訳は、市場からの購入(卸、仲卸)が約3割、物流が市場を介さない取引(農業生産法人や農協等)が約7割である。農業生産法人や農協等からの仕入はすべて契約取引であり、実需者への納品数量の約7割を契約取引によりまかなっており、その他は市場より調達している。取引を行う期間や数量は、直接、農業生産法人や農協等の担当者と交渉を行っている。

 D卸売業者の取引方法の内訳は、卸売業者と買い手や生産者が個別に協議して価格を決める「相対取引」が99%、大勢の買い手を前にして公開で価格を決める「せり」取引が1%である。なお、相対取引の買い手の多くは仲卸であり、契約取引は増えてきてはいるものの、相対取引のうち1割に満たない程度である。契約取引には、取引数量及び価格を固定することで、確実な収益を期待できるというメリットがあるが、取引に係る契約内容を取り決めるまでが大変であり、災害等による不作の際には数量の確保に苦労することもあるという。

(分析)

 以上から、

① 実需者の業種により仕入先の内訳や仕入量に占める契約取引の割合は大きく異なるが、それは、実需者が仕入れた商材を、誰にどの様に提供するかという事情に起因していること

② 契約取引には生産者側からは収益(実需者側からは費用)を固定させるというイメージがあるが、市況によっては逆にデメリットになることが認識されていること

③ 小売業者も、市場以外からの仕入がかなりある(B小売業者は30%)とみられること

がうかがえる。

(2)契約取引の内容について

 前述のように、契約取引で仕入れているとする者は67%(表2)であるが、その内容については「数量・価格を事前に定めている」が60%と最も多く、「価格のみ定めている」が24%でこれに次いでいる。「数量のみ定めている」は6%であった。以上から、価格を取り決めているものは84%、数量を取り決めているものは66%となり、価格の取決めが重要であることがうかがえる(表3)。

(表3)業種ごと/契約取引を行うにあたり、数量、価格等についてはどの様に定めているか。最も多い取引内容は

具体的事例の紹介② ~契約取引の内容~

(実態)

 Aカット事業者は、シーズン開始前に中間事業者と売買基本契約を締結するが、売買基本契約では、大まかな規格や決済方法等を定めるに留まり、価格及び数量については別途取り決める旨定めている。
 契約価格については、中間事業者とシーズン開始直前に取り決め、中間事業者が調達を行う産地(契約先)毎に異なる価格でシーズン1本決めしている。
 数量については、品目毎に新年度の予算をベースに大まかな数字を決め、その後、実際の販売動向を睨みながら原則四半期毎に微調整を行っており、実際の発注は、1週間毎に行っている。産地は、最終的にAカット事業者に納品されるものと認識し生産しており、中間事業者との契約を履行するため、契約数量の3~5割増しの収量を見込んだ作付けをしている。

 B小売業者は、取引先(中間事業者又は生産者)と契約数量を作付け前に決定している。ばれいしょ・たまねぎについては、数量と同時にシーズン1本の価格を取り決めることが多く、例えば10か月間などワンシーズンの期間が長い場合は、3区分程度に分けて取り決める場合もある。また、きゅうり・キャベツ等については、週または月決めで価格を取り決めている。
 C中間事業者は、生産者とは播種準備前に、価格、数量、契約期間、規格等を取り決めている。
 実需者とは、数量・価格以外の項目を定めた売買基本契約書を取り交わし、取引を行っている。価格は定期的に取り決めており、天候不順や台風や大雨による被害を受け、農作物が高騰した場合は、その状況を踏まえて取り決める。数量は、実需者からの毎日の発注により決まる。なお、実需者からの発注量は日々変動するため、生産者からの仕入れは実需者からの受注数量を予測して行っている。
 C中間事業者はカット野菜の製造も行っており、受注数量を予測してカット野菜を製造している。

 D卸売業者は、契約内容の決定は様々であり、慎重を期すために時間をかけて行う場合がある。例えば、取引開始を1月とすると、前年の9月頃生産者から品目、数量、価格等のおおまかな提案を受け、販売先の実需者を探す。その後実需者の意向を産地に返し、10月頃から数量、価格を決めていき、12月初頭にはすべて内容が決まっている。

(分析)

 以上から、

① 契約価格はシーズン1本決めするケースが多く見られること

② カット事業者や中間事業者の必要数量は、最終的な実需者の販売状況に影響を受けること

がうかがえる。これは、契約取引に当たり事前に取り決める事項は数量よりも価格が多いというアンケート結果と符合するものであった。

(3)契約の変更について

 需給事情の変化に伴い「契約内容の変更を求めたことがある」とするものが76%となっており、実需者の業種別には小売業者で85%と高い(表4)。
 変更を求めた内容について見ると、「数量」が74%、「価格」が52%で、業種別には小売業者で「数量」83%、「価格」74%と高くなっており、実需者が、数量の増減や、契約価格を下げるよう生産者に求める状況がかなり多く発生していることがうかがえる(表5)。これは、少しの供給変動でも大きな価格変動を招きやすい野菜の特質によって、契約内容の変更を余儀なくされるケースが多いことによるものと考えられる。

(表4)業種ごと/需給事情の変化に伴い、契約内容の変更を求めたことがあるか

(表5)業種ごと/野菜の需給事情の変化に対応して、どの様な契約内容の変更が行われたか

具体的事例の紹介③ ~契約内容の途中見直し~

(実態)

 Aカット事業者は、契約内容の見直しとして、取引数量の増を求めることはあるが、取引数量の減及び価格の見直しを求めることはないという。
 Aカット事業者と取引をしている中間事業者は複数の実需者と取引を行っているため取り扱い数量が多く、十分に数量を調整する機能を有している。また、Aカット事業者からの数量の発注は1週間毎であることから、120~130%程度の数量の増には対応できるという。
 Aカット事業者は、売値が決まっていることが生産者が安心して生産を行うための要素であり、継続的で安定的な取引につながると考えている。このため、Aカット事業者は「中間事業者へ価格の見直しを求めると、中間事業者から生産者へも価格の見直しが行われると考え、市況が低迷しても契約価格を市場価格に合わせるよう求めることはない。」といっている。

 B小売業者は、基本的には、価格は見直しを行わず数量の増減で対応しているが、契約内容の見直しを求めることもあるし、求められることもあるという。
 取引の1週間前に、数量の最終確認をするが、その際、若干の数量調整は頻繁に発生する。長年取引を行っている品目では見直しはそれほど発生しないが、新規で取引を行った品目ほど数量の見直しが多く発生している。
 豊作で市場価格が安い場合、B小売業者からは、価格は変えず、契約数量を下げるよう求めることがある。
 一方で、農協からは、豊作の場合に、例えば、翌週出荷量が多くなりそうだと見込まれると、前週の契約価格を引き下げ、翌週の引取り数量を引き上げるよう要望されることがある。これは、市場価格を安定させたいという狙いから、農協は市場への出荷数量を限定しており、生産量が多くなると、契約取引で数量調整を行うことを望むからではないか。
 また、不作で市場価格が高騰しているときは、農協から契約価格アップや不作による納品数量の減の要望がある。
 これらの打診に対しては、継続した取引を行うことを前提に、普段から、B小売業者の販売状況と生産者側の生産状況を互いにオープンにしながら取引を行っており、可能な限り要望には応えるよう努めているし、相手も要望には応えてくれている。

 C中間事業者は、契約内容の見直しを求めることもあるし、求められることもあるという。産地からの仕入については、産地から見直しの打診があった場合、契約価格の見直しは基本的に行わないが、市場価格が契約価格を大幅に上回る場合、状況によっては、契約価格の見直しに対応する場合もある。
 豊作時には、産地から、契約期間を延長してほしいとの要望が出る。また、天候により生産が遅れる場合もあり、期間を見直してほしいとの要望も出る。この場合、後に控える産地との関係で、要望に沿える場合、沿えない場合があるが、可能な限り対応したいと考えている。
 実需者からの発注状況により、C中間事業者の取引数量は日々や月単位で変動するが、シーズンでの取引数量は守っている。契約取引は全体の約7割であるため、生産者との契約数量を守れる状況にはあるが、実需者への納品が予想を大幅に下回り、7割を大幅に下回った場合には、契約数量の減をお願いする場合もある。
 D卸売業者は、契約内容の見直しを求めることはしないが、求められることはあるという。具体的には、災害等の不作により、生産者が契約数量の納入ができない場合、D卸売業者に出荷された他産地の品物を不足した契約取引分に振り替えて対応している。

(分析)

 以上から、

① 今後の継続的な取引を念頭に、生産者・実需者双方の状況をオープンにしながら取引を行うことにより信頼関係を築きつつ、双方からの打診にも柔軟に対応していること

② 中間事業者が数量の調整を行っていること

がうかがえる。
 なお、アンケート結果では、需給事情の変化等に柔軟に対応し、契約数量及び契約価格の見直しが行われるという結果であったが、個別に行ったヒアリングによれば、取引条件の見直しが必要となった場合、なるべく価格の見直しは行わず、数量の変更で対応する方法が採られていた。

(4)書面契約の締結について

 書面契約を行っている者と行っていない者の割合は概ね6:4である(表6)。
 また、書面契約に不安を感じる理由としては、「市場の価格動向を勘案した柔軟な価格決定ができない」が多く、特に小売業者で高くなっている(表7)。なお、(3)においても、「数量」「価格」について契約内容の変更を求めることが多く起こることから、契約取引は市場価格の影響を大いに受けることがうかがえる。
 書面契約を行わない場合の契約内容の担保の方法としては、「誠意をもってできるだけのことをしてもらえればよい」が71%と最も多い(表8)。
 契約数量を事前に定めていない場合の契約数量の決定に係る連絡方法と書面契約の関係は、書面契約を行っていない者も行っている者も5割以上が書面にて数量決定の連絡を行うとしており、書面契約の有無による違いは見られない(表9)。

(表6)業種ごと/契約取引を行う際、書面による契約を行っているか

(表7)業種ごと/書面による契約を行うことに不安を感じるのはどの様な理由からか

(表8)業種ごと/書面契約を行わない場合、契約の履行(納入など)について、どの様に担保しているか

(表9)書面契約の締結/事前に数量を取決めない際、取引数量が決定した際の生産者への連絡方法との関係について

具体的事例の紹介④ ~書面契約~

(実態)

 Aカット事業者は、中間事業者との売買基本契約書の中で大まかな規格や決済方法等を定めているが、数量及び価格についてはファックスやメールによる取決めを行っている。

 B小売業者は、農協との取引は全て書面契約を行っている。売買に当たっての基本内容を定めた売買基本契約書の他に、数量・価格については、担当者レベルで別の書類を作成している。価格の取決めについては、月決め(定価)の場合は書面にて、週決めの場合はメールにて行っている。

 C中間事業者は、産地との取引においては、正式な書面を交わしていない。天候不順等により数量が計画通りにできない場合があるため、確認書に留めている。
 一方、実需者との取引においては、数量・価格以外の項目を定めた売買基本契約書を交わしている。価格は定期的に見積書により交渉しており、数量は毎日発注を受けている。

 D卸売業者は、基本的には3者(産地、卸売会社、実需者)間で、期間、品目、価格、数量、天災時の対応等について確認書を取り交わすことにより契約取引を行っているが、場合によっては、2者(産地、卸売会社)のみの契約取引もある。

(分析)

 以上から、

① 契約取引では、数量・価格以外の取引の大枠を定めた売買基本契約を締結する場合が多いこと

② 特に、実需者が必要とする数量は日々変わる場合があり、シーズン初めに契約数量が定められず、例えば1日単位や1週間単位での発注という形が採られることがあるため、契約数量を書面に定めることができないこと

③ 見直しが生じざるをえない項目については、書面により明確に定めることを避けていること

がうかがえる。

(5)契約内容の変更と書面契約の締結との関係について

 契約内容の変更と書面契約の有無の関係について見ると、「変更を求めたことがある」とする者の割合は、書面契約を行っていない者で27/34=79%、書面契約を行っている者で35/48=73%と大きな差異は見られず、書面契約を行っている者においても、7割以上が契約変更を求めていることから、書面契約が契約変更を妨げる要因になっているとはいえない(表10)。
 数量と価格を事前に定めている者のうち書面契約を行っている者は63%、価格のみ事前に定めている者は55%であった(表11)。
 また、書面契約の有無と契約内容の変更については、書面契約の有無に関わらず、「納入価格の引下げを求めた」が5割以上、「納入数量の増加や削減を求めた」が7割以上で、書面契約の有無による違いがあるとはいえない(表12)。

(表10)契約内容の変更の有無/書面契約の締結との関係について

(表11)最も多い取引内容/書面契約の締結との関係について

(表12)書面による契約取引の有無/契約内容の変更との関係について

(6)複数生産者からの仕入

 複数生産者から仕入れたことがある者は73%(表13)で、その相手先は「農協が組織するグループ」、「民間事業者が組織するグループ」、「生産者が組織するグループ」がほぼ同数となっている(表14)。
 このことから、契約取引を安定的に行うために一生産者と契約するのではなく窓口は一つであっても複数の生産者から納品を受けられる体制を作り契約取引のリスク軽減を図っていることがわかる。また、一年を通して調達を行うため、市場等から仕入れる他に、複数の生産者グループから仕入れていると思われる。

(表13)業種ごと/複数の生産者からなるグループから仕入れを行ったことがあるか

(表14)業種ごと/どの様なグループから仕入れを行ったことがあるか

具体的事例の紹介⑤ ~複数生産者からの仕入~

(実態)

 B小売業者は、1~2店舗レベルであるが、T県にある20~30名程度の生産者グループから仕入れている。

(7)取引相手を見つけた方法

 「相手からの打診」が67%と最も多く、「自ら出向いた」が60%とこれに次いでいる(表15)。

(表15)業種ごと/取引を開始する際、どの様にして取引相手を見つけたか

具体的事例の紹介⑥ ~契約取引の開始~

(実態)

 Aカット事業者は、事業立ち上げ当初、中間事業者と共に産地に出向き開拓を行い、継続して当該産地で生産された商材を仕入れている。なお、産地は、数量確保のリスク回避のために、例えば同一シーズンに同じ品目を長野県・群馬県の産地と九州の産地からというように分散させている。

 B小売業者が契約取引を開始したのは昨年度からで、大株主から紹介を受け取引を行うようになったという。また、産地を開拓するため農協関係の展示会や地方銀行主催の商談会も利用している。
 
 契約取引の拡大に当たって、C中間事業者はまず、実需者の開拓を行っている。新しい取引先が決まったら、不足分は市場から調達しつつ、同時期の異なる産地の取引量の拡大や、市場関係者(卸、仲卸等)や実需者からの情報を基に新しく産地を開拓し取引量の拡大を図っている。
 
 D卸売業者の契約取引は、価格及び数量に関する産地の要望を踏まえ、条件に合った買い手を探すところから始まるという。産地及び買い手の双方の要望を聞いてマッチングを行い契約へ進めていっている。

(分析)

 以上から、

① 実需者は産地の開拓を積極的に行うとともに、産地を分散させて欠品リスクを回避しようとしていること

② 実需者は様々なチャネルを用いて契約取引の開始につなげていること

③ 卸売会社を含む中間事業者が生産者と実需者を結ぶ重要な役割を担っていること

がうかがえる。

4. まとめ

 本調査により、これまで「一般的」とされてきた契約取引の実態を具体的な数値をもって明らかにすることができた。その主なことがらは次のとおりである。

 (1) 実需者の概ね7割が契約取引を行っている。  (2) 契約取引において事前に取り決める事項は、「価格」が最も多い。
 (3) 需給事業の変化等により、契約内容の途中見直しが行われることが多い。
 (4) 契約取引を行っている実需者の概ね6割が書面により取引を実施。

 契約取引は、事例の実需者も述べているように、決まった規格で決まった数量を確保できることなどのメリットがあり広範に行われていることがわかった。なお、契約取引には、市場価格が契約価格を下回る場合があるというデメリットもあるが、一時の損得にとらわれず長期的な視点をもって取引を行っているようだ。
 契約取引を行うにおいて、その取決め事項に「価格」を含める実需者は概ね8割と多く、「数量」を含める実需者は概ね7割でこれに次いでいる。産地と取引を行うに当たり、事例のB小売業者及びC中間事業者は、価格及び数量を共に定めている。一方、Aカット事業者は、価格は定めるが、数量は大まかな数字を定めたうえで実際の販売動向を考慮し微調整しているとのことであった。
 取引内容の見直しについては、実需者の7割以上が「契約数量の変更を求めたことがある」、5割以上が「契約価格の変更を求めたことがある」としている。これは、価格及び数量について取り決めて契約したとしても、作況などの需給事情の変化に柔軟に対応していることによるとみられる。事例の実需者によれば、基本的には価格の見直しは行わず、数量による調整を行うとのことが多く、継続的な取引を念頭に信頼関係を築きつつ打診には柔軟に対応しているようだ。
 実需者の概ね6割が書面による契約を行っていた。事例の実需者によれば、基本事項を定めた売買基本契約書は締結するが、数量及び価格については別途書類で定めたり、ファックス等により連絡を取り合うケースもみられるなど、「書面」といっても様々であった。
 いずれの事例でも取引には信頼関係が欠かせないものとしており、生産者があって実需者が事業展開をできるという認識の下、生産者との関係を大切にしつつ取引を行っているようだ。


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