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調査報告


野菜生産における食品リサイクル
~ユニーグループの取り組み~

調査情報部調査課 課長補佐 小峯 厚
         係  長 高城 啓


要約

 平成13年の食品リサイクル法の施行を契機として、食品小売業者は食品ゴミの再生利用など環境問題への対応が求められている。
 食品ゴミの再生利用に取り組む愛知県一宮市の「ユニーグループ」は、食品小売業者、農業者、たい肥製造業者の3者により構成され、各者がそれぞれの役割を確実に実行することにより、食品小売業から出た食品ゴミを「たい肥」に再生し、その「たい肥」を利用して生産した野菜を付加価値販売している。
 食品ゴミを資源として循環させる取り組みは、たい肥化などに係るコストが割高であるなどの課題はあるものの、企業として環境問題への取り組みに対する責務以外に、既存取引規模の拡大や付加価値を付けた野菜の有利販売など、新たな効果も期待できる取り組みである。

1. はじめに

 食品廃棄物の発生抑制、減量ならびに再生利用の促進を目的に、平成13年に「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(以下「食品リサイクル法」という。)が施行された。これにより「食品リサイクル」が積極的に進められ、食品関連事業者(食品製造業者、食品卸売業者、食品小売業者、外食産業者などをいう。)における再生利用の割合は増加している。
 しかし、再生利用の取り組み状況を業種ごとに見ると、食品小売業や外食産業においては増加しつつも、依然として低い水準にあったことなどから、食品関連事業者への指導監督の強化と再生利用の円滑化を図ることを目的に、平成19年に同法の改正(図1)が行われたところである。
 食品リサイクル法に基づき、環境問題への対応を求められている食品関連事業者が、肥料飼料などの製造業者や農林漁業者などと共同で「食品リサイクルグループ」を構築し、食品廃棄物を肥料飼料化することで再生利用する取り組み(以下「再生利用事業」という。)の計画(以下「再生利用事業計画」という。)の策定に取り組んでいる。
 平成22年9月1日現在、食品リサイクルグループにより、25の再生利用事業計画が策定され、国から認定を受けている。この再生利用事業計画は、食品廃棄物を肥飼料化し、野菜などの農畜水産物の生産に再利用するものである。本調査では、小売業と野菜の生産現場が連携し、環境問題への対応に加え、野菜の全量買い取りや付加価値販売を実現した愛知県一宮市のユニーグループの取り組み事例を調査したので、その内容を報告する。

2 ユニーグループ構築の経緯   ~仲間探し~
(1)環境問題への対応

 愛知県稲沢市に本社があるユニー株式会社(代表取締役社長前村哲路:以下「ユニー」という。)は、中京エリアを中心に衣料品や食料品などを取り扱う総合小売業のチェーンストアである。1府19県下に234店舗(平成22年6月現在)を有し、従業員数は3万人(平成22年2月現在)を超え、「ピアゴ」や「アピタ」などの名称で、北陸、関東、東海エリアにも進出している。
 ユニーは、平成13年の食品リサイクル法の施行を契機とし、積極的に環境問題への対応を開始した。企業理念にも「経営と環境・社会環境の両立」を掲げており、平成20年には、環境省のエコ・ファースト制度(注1)において、小売事業者で唯一「エコ・ファースト企業」に認定された。
 ユニーは、3つの再生利用事業計画(図2)の認定を受けている。今回調査したのは、店舗で発生した食品ゴミ(この場合は、肥料化に適した食品廃棄物をいう。以下同じ)を肥料化し、それを利用して野菜などの生産・販売に結び付けることを目的に、生産者組織(愛知県経済農業協同組合連合会(以下「JAあいち経済連」という。))および肥料製造業者(株式会社D.I.D(以下「D.I.D」という。))と連携して、食品リサイクルグループを構築した取り組みである。

(注1)エコ・ファースト制度とは、企業の環境保全に関する業界のトップランナーとしての取組を促進していくため、環境大臣に対して企業自らの環境保全に関する取組を約束する制度である。

(2)廃棄物発生量の把握と減量化への取り組み

 平成13年の食品リサイクル法の施行に際して、ユニーが最初に取り組んだことは、各店舗から排出される廃棄物の発生量の把握であった。複数の店舗の平均的な売上の週(6月の第2週)における廃棄物の発生量から全体の発生量を試算したところ、年間約8万5千トンになった。このうち、食品ゴミは約4分の1を占めていた。
 この結果を基に、ユニーは食品ゴミの処理施設を店舗に導入して、自らたい肥化などに取り組み、近隣農家のほ場に提供していたが、施設整備に多額の費用を要した上、たい肥の販売先の確保が困難であったことから、肥飼料製造業者との連携による食品リサイクルを模索し始めた。しかし、社内での真空乾燥(注2)による減量をするにとどまっていた。

(注2) 真空乾燥とは、熱に敏感で高温度による処理が困難な材料について、沸点を下げるために真空(減圧)にして低温下で乾燥すること。

(3)食品リサイクルの仕組みの原型

 その後、平成14年に刺身のツマを仕入れていた取引先が、たい肥工場を運営していることが分った。交渉の末、真空乾燥後の食品ゴミ(以下「乾燥食品ゴミ」という。)をたい肥化して、刺身のツマ用のだいこんを生産する他県の契約農家が利用する「循環型の食品リサイクル」の仕組みが出来上がった。
 この仕組みを可能としたのは、ユニーが、年間を通じて刺身のツマを仕入れていたことと食品リサイクルで生産されたツマの全量を買い取ったことである。
 こうして、乾燥食品ゴミを再利用したたい肥は、年間を通じて滞留すること無く利用され、「循環型の食品リサイクル」が初めて実現された。
 この経験からユニーは、肥飼料製造業者が製造する肥飼料の品質が良ければ、その肥飼料は生産者からの信頼を得るので、そのような肥飼料を実需者のニーズに合った農産物の生産が可能な生産者が利用することで、食品ゴミが循環することを学んだ。

(4)JAあいち経済連との連携

 JAあいち経済連は、名古屋市で毎年開催される環境問題に関する異業種交流会(以下「異業種交流会」という。)の「たい肥グループ」に所属していたのをきっかけに、平成14年からユニーが目指す食品リサイクルへの協力を開始した。
 当時、ユニーは、
 ① たい肥製造業者の選定
 ② 製造したたい肥の使途
という課題に直面していた。
 ユニーとJAあいち経済連は、平成19年に再生利用事業計画の認定を受けた愛知県刈谷市での事例の成功を受けて、平成20年には今回の調査先である愛知県一宮市での食品リサイクルグループをD.I.Dとともに構築した。

(5)ユニーグループの構築

平成20年、ユニーが一宮市の店舗を中心に3市2町(一宮市、江南市、稲沢市、豊山町、大口町)の13店舗から発生した食品ゴミを分別および冷凍保存し、一宮市のたい肥製造業者であるD.I.Dがユニーからリサイクル処理の委託を受けて食品ゴミから製造したたい肥を、JAあいち経済連の指導の下、地元2JA(JAあいち海部、JA愛知西)の生産者に販売して、その生産者が野菜生産にたい肥を利用するという愛知県一宮市の食品リサイクルグループが構築された。このグループには、ユニーのグループ企業であるサークルKサンクス(大手コンビニエンスストアチェーン)も参加しており、同年にこの再生利用事業計画は国の認定を受けている。生産された野菜は、小売業であるユニーが通常の野菜より高い価格で全量を買い取り、食品リサイクル野菜として高付加価値を付けられて販売されている。

3 ユニーの役割  ~確実に売り切る~
(1)食品ゴミの分別と冷蔵保存

 現在、食品リサイクルに取り組むユニーの店舗では、食品ゴミの真空乾燥などの1次的な処理は行われず、分別マニュアルを作成し、従業員に対する教育を徹底することで、食品ゴミを「食品循環資源」として取り扱っている。
 魚のアラや野菜の調理クズ、売れ残りなどから、たい肥の製造を阻害する異物を除去し、分別・計量した上で、劣化を防ぐために清潔な専用保存容器に入れ、D.I.Dが引き取るまでの間、冷蔵保存している。保存は、冷蔵施設で行うため、新たな設備投資は基本的に無い。これらの食品ゴミは専用保管容器に入ったまま、D.I.Dに運搬される。

分別・冷蔵保管に使われる専用保管容器
容器には店名と分別分類が表示
(写真:D.I.Dにて)

(2)食品リサイクル野菜の買い取り価格

 ユニーが生産者から全量買い取る食品リサイクル野菜(ユニーの店舗から出た食品ゴミを原料として製造したたい肥で生産した野菜をいう。以下同じ。)は、トマト、ねぎ、ほうれんそうなど78種類で、その買い取り価格は、JAあいち経済連が市場価格の動向を注視しながら、毎週決定し、市場価格より高めに設定されている。

(3)食品リサイクル野菜の付加価値販売

 この取り組みの中では、生産物を売り切ることで循環は維持されるので、食品リサイクル野菜の「売れ残り」を発生させないこととしている。ユニーは、生産計画と販売計画を照合して、専用売り場を設けて付加価値を付けた販売を行っている。野菜には生産者の氏名と顔写真が表示され、「顔の見える野菜」として販売している。こうした方法は、生産者の意識にも変化をもたらし、生産者はユニーには自信作を出荷したがるといい、結果的に高品質な野菜が店頭に並ぶという効果を生み出した。
 また、時間を置かずに直接店頭に地場産野菜を陳列することから、‘最もおいしい状態’で提供することが可能となり、店頭の冷却設備は必要としないという効果も上げている。
 消費者によっては、特定の生産者の野菜を購入するなど、一種の‘指名買い’という購入行動も生まれている。数量が限られるため店頭には納品カレンダーが掲示され、これが消費者の購買意欲を誘い、入荷後直ぐに売り切れる場合もある。

食品リサイクル野菜の専用売り場
売り切れると売り場は空のまま
(写真:アピタ稲沢店にて)

食品リサイクル野菜の納品予定表
毎日納品されることは無い
(写真:アピタ稲沢店にて)

 通常、小売店にとって商品の品切れは、販売機会や顧客の喪失につながることから、避けたいところであるが、ユニーは、数量限定の商品として付加価値販売を実現している。このような販売手法をユニーは、「売り場を空にしておく勇気」と表現している。
 さらに、ユニーは生産者と消費者の交流会を定期的に開催し、消費者に収穫体験など実施してもらうことにより、食品リサイクルに対する理解を消費者に深めてもらい、さらなる付加価値の醸成を図っている。
(4)地元行政への積極的な働きかけ
 たい肥製造業を行うD.I.Dは、元々はユニーで発生する一般廃棄物の収集運搬業者の1つであった。食品ゴミの再生利用事業は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく許可に加え、食品リサイクル法に基づく再生利用事業者の登録を行う必要がある。
 このため、ユニーは、グループを代表して地元行政に積極的な働きかけを行うなどD.I.Dの許可取得を支援した。こうした努力の甲斐もあり、再生利用実施率の低い小売業において、食品リサイクル実績を確実に増加させている(図5)。今後も同様の取り組みを多くの地域に広げていくこととしている。

4 JAあいち経済連の役割 ~生産者のために~
(1)食品ゴミのたい肥化の実験

 食品ゴミから製造したたい肥のほ場への投入に際して、JAあいち経済連では食品ゴミが優良なたい肥になるかどうか、県の研究機関である愛知県農業総合試験場で実験を行うとともに独自の研究所で野菜の栽培実験を行った。生産者にたい肥を安心して使ってもらうには、「生産に絶対に悪影響が出ない」との裏付けが重要と考えたからである。この実験には3年を要し、安全性と有効性が確認され、この時の実験データが後に生産者に対して説明する際の重要な資料となっている。

(2)食品リサイクルのコーディネーター

 たい肥の安全性などを確認した後、JAあいち経済連は食品リサイクルグループの一員として、次の3つの活動を進めていくこととなる。ユニーに対しては、食品ゴミをたい肥化するための分別の指導、D.I.Dに対しては、野菜生産に適したたい肥の製造の指導と販売先の紹介、地元JAに対しては、栽培指導および農産物販売のコーディネイトである。

(3)食品ゴミのたい肥の利用促進

 JAあいち経済連は、食品リサイクル法の施行当初は、「農地はゴミ捨て場では無い」という考えをもっていた。また、生産者からも「食品ゴミを畑に入れたくない」という声があり、食品リサイクルたい肥の投入に関して理解を得るまでに1年を要した。
 しかし、生産者の間でたい肥が優良であることが分かると、次々に利用が広がっていった。これは、1つにはJAあいち経済連が行ったたい肥の実験データの開示が利用の促進に貢献したことによる。
 また、畜産由来たい肥の価格が、トン当たり3千円程度であるのに対し、食品たい肥はトン当たり5千円程度と割高となったが、食品リサイクルたい肥は完熟であることから、生産者自らが完熟処理を行う手間が省け、即座にほ場に投入できるメリットがあったことも利用が広がった要因の1つである。

(4)生産者としてのメリット

 ユニーに対する食品リサイクル野菜の販売は、JAあいち経済連の野菜部門の売上高の1パーセントにも満たない。しかし、JAあいち経済連は、多店舗を有するユニーとの連携により、それ以外の野菜、あるいは米、畜産物など、取引が総合的に広がる可能性を重要視している。また、各店舗で高品質野菜を地場元に提供できる「地産地消」の広がりにも期待している。

生産者氏名・顔写真が表示
生産者の自信作の野菜が並ぶ
(写真:アピタ稲沢店にて)

5 D.I.Dの役割 ~ゼロからの試み~
(1)再生利用事業への広がり

 一般廃棄物の収集運搬業者として、ユニーから発生した一般廃棄物の収集運搬を行っていたD.I.Dは、一宮市に新たにたい肥製造工場を建設して、再生利用事業を開始した。これは、日ごろから「お得意様」として取引があったユニーのニーズに応えた形であった。また、この事業では、D.I.Dはユニーが所有するたい肥の販売を移譲され、その収益は全てD.I.Dに帰属する仕組みとなっている

D.I.Dが建設した一宮市のたい肥製造工場
刈谷市での先行事例を参考に建設

(2)90日完熟たい肥と循環工場

 D.I.DはJAあいち経済連の全面的な指導を受けて、食品ゴミから完熟たい肥を製造している。JAあいち経済連の実験によって優良な完熟たい肥の製造には通常のたい肥製造より長い90日の発酵期間を要することが分かった。たい肥製造工場では、発酵温度が低下した場合、水分補給を何度も行って発酵を促している。発酵温度が上がらない状態になると、ようやく完熟たい肥が完成するとのことである。
 発酵には、おがくずともみ殻が水分調整資材として導入されている。いずれもJAあいち経済連から提供されたもので、ユニーグループの協力関係が伺える。また、再発酵を促すための水と、食品ゴミの専用保管容器の洗浄で使う水は、工場内の汚水を再利用したもので、水資源についても循環するシステムを構築している。
 再生利用事業計画におけるJA向け販売のほか、D.I.Dでは家庭園芸用など一般消費者向けにも、ユニーのホームセンターでたい肥を販売している。ここでもユニーグループの協力関係が伺える。また、たい肥の出荷に当たっては、ビニールなどの異物が混入していないかどうかなど細心の注意が払われている。


完熟まで発酵を繰り返すたい肥
完熟するとサラサラとした土になる


曝気(エアレーション)されて
浄化処理される工場内の汚水


一般消費者向けのたい肥

(3)たい肥製造業者のメリット

 D.I.Dにとって、この再生利用事業はD.I.D全体の事業量の10パーセントに満たないにもかかわらず、D.I.Dが設備投資をして食品リサイクルに参加した理由は、本業であるユニーとの一般廃棄物の収集運搬の取引を、今後も継続あるいは拡大していくことにある。

6 おわりに

 ユニーグループにみる食品リサイクルグループ構築の前提条件は、各関係者が自らの責任を認識し、それを確実に履行していくことである。ユニーグループの場合、3者は以下に示すそれぞれの役割を分担できなくなった場合に、食品リサイクルの取り組みを終了する旨の覚書を交わしている。
① 食品関連事業者(ユニー):たい肥の原料として食品ゴミの品質を保持するため冷蔵保管し、たい肥製造業者へ引き渡すとともに、食品リサイクル野菜を全量買い入れて確実に販売すること
② 生産者(JAあいち経済連):優良なたい肥を製造・利用するための指導監督を徹底すること
③ たい肥製造業者(D.I.D):安定的に良質なたい肥を製造すること
 さらに、食品関連事業者は、グループ参加のメリットを予め連携先に提示する必要があり、グループ構築の障壁となる事項については、食品関連事業者がリーダーシップを取って全面的に取り組むことも必要である。
 一方、連携先である生産者、たい肥製造業者は、食品リサイクルのみの「損得」で考えるのではなく、食品関連事業者と連携するメリットを自らの事業全体で考えることが必要である。ユニーグループの場合、生産者は高い生産技術を持つ農業協同組合組織であること、たい肥製造業者は従前から取引がある一般廃棄物収集運搬業者であることが、この取り組みを円滑にしている。
 また、市町村が行う一般廃棄物の処理コストと比較して、再生利用事業者が行うリサイクルの処理コストが割高である現状では、思った以上にリサイクル原料が集まらないなど、再生利用事業の採算は厳しいと考えられる。
 しかしながら、ユニーグループでは、参加する3者の努力によって、食品リサイクル野菜は、「環境問題に対応した循環型農業」という価値に、「生産者の顔が見える野菜」という新たな価値を加えて販売され、消費者の理解を得ることに成功している。食品リサイクル野菜が全量買い取られ、かつ、付加価値販売によって高い収益性を生み出すこの取り組みは、生産者の経営安定に資するという観点からも意義深いと考えられる。
 資源が限られている中にあって、食品リサイクルの取り組みは、資源循環型の農業生産を進めていくため、今後ますます広げる必要があると思われる。

(取材協力)
 ユニー株式会社 環境社会貢献部
 愛知県経済農業協同組合連合会 園芸部、営農総合室
 株式会社D.I.D 尾西営業所 バイオマスリサイクルセンター


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