調査情報部
本稿では、7月号で報告した加工・業務用野菜需要に対する産地の取り組みに係るアンケート結果を踏まえ、国内産地における加工・業務用野菜の安定供給に向けた生産面・取引面の課題を整理し、今後の対応策について考察したい。
単身世帯、高齢者世帯の増加や女性の社会進出によるライフスタイルの変化などに伴い、食の外部化が進展している(図1)。こうした動きを背景として、わが国の野菜需要においては、加工・業務用需要が増加傾向にあり、農林水産政策研究所の推計によると、平成17年度のその割合は55%(加工用30%、業務用25%)に達している(図2)。
消費者がスーパーなどで野菜を購入し、家庭で調理して消費する家計消費需要が減少し、カット野菜などの加工原料や外食・中食(パック入りのサラダ、総菜など)企業の食材で使用される加工・業務用需要が着実に増加しているのであり、この傾向は今後も継続するものと予想される。
さらに重要な点は、この加工・業務用需要の増加が輸入品利用の増加と結び付きながら進行していることである。図3に見られるように、平成17年度の家計消費用の自給率が98%であるのに対し、加工・業務用のそれは68%にとどまっている。平成2年度から17年度の15年間で、加工・業務用需要の自給率は20ポイントも低下し、3分の1を輸入品が占める状況となっている。
こうした中、中国製冷凍ギョーザ事件などを契機とした輸入食品の安全性に対する懸念から、近年の景気低迷による低価格志向の影響を受けつつも、消費者の国産志向が高まっている。また、食品製造業・外食産業においても、消費者の志向を反映して、使用する野菜について「今後国産の割合を増やしたい」という回答が8割以上を占めている(図4)。
以上のような消費者ならびに加工・業務用野菜の実需者の国産志向の高さを踏まえるならば、国内産地の加工・業務用野菜生産への積極的な取り組みが期待されるのであり、加工・業務用に国産野菜を安定的に供給することは、野菜自給率や食料供給力の向上を図る上でも重要な課題として位置付けることができる。
以下、本年1月から3月にかけて実施した「加工・業務用野菜需要に対する産地の取り組みについて」のアンケート1結果から得られた生産面・取引面における課題とその対応策について検討するとともに、対応策を実践している事例について、当機構が農林水産省と共催している「国産野菜の生産・利用拡大優良事業者表彰」受賞者の取り組みの中から紹介する。
1 「加工・業務用野菜需要に対する産地の取り組みについて」のアンケート:野菜の販売・取扱がある農業協同組合(以下JA)475団体、農業生産法人(以下、生産法人)306団体の計781団体を対象に実施。有効回答数はJA164団体、生産法人88団体の合計252団体。アンケート結果は「野菜情報」7月号に掲載。
(1) 安定した契約数量の確保や担い手確保などが大きな課題
アンケート結果では、加工・業務用対応の生産面における課題として、「取引先の求める数量を安定的に生産することが難しい」(40.9%)が最も多く、次いで「加工・業務用に対応できる生産者が少ない」(27.8%)、「生産者が高齢化しているので対応できない」(21.0%)、「加工・業務用対応のために設備投資が必要となる」(20.6%)、「強力なリーダーシップをとる人がいない」(13.1%)の順となっている。安定した契約数量の確保が一番の課題であるが、担い手確保や設備投資などを課題とする産地も多い状況がうかがえた(図5)。
そのほかにも、「加工に取り組みたいが、コンテナなどの資材が不足している」、「安定供給のための余剰生産分が極力少なくて済む生産技術が不足している」、「実需者から新品種の開発生産が求められる」などを課題とする回答が得られた。
(2) 安定した契約数量の確保
① 課題
表1に見られるように、加工・業務用実需者(JA・生産法人の取引先)がその取引に際して最も重視しているのは、「数量確保」(81.9%)である。これについて留意すべきは、加工・業務用実需者の場合、量販店などの小売企業に比べて「数量確保」に対する要求が相対的に厳しい点である。家計消費用の場合、不作などで出荷量が少ないときは、2分の1カットや4分の1カットといった小売企業側の販売単位の変更による柔軟な対応が可能である。これに対して、加工・業務用の場合、外食・中食メニューなどの短期間での変更は困難であること、加工施設の稼働率の維持を図る必要があることなどにより、量販店などの小売企業に比べてその仕入れ行動は非弾力的であり、周年安定供給に対する要求が強い。
先に見たように、産地の加工・業務用対応の生産面における課題として、「取引先の求める数量を安定的に生産することが難しい」が最も多く挙げられていたが、これは、上記の加工・業務用実需者の仕入れ行動の特徴を背景としたものである。
② 対応策
では、安定的な契約数量の供給を行うに当たって特に問題となる不足時について、どのような対応が行われているであろうか。
アンケート調査で、加工・業務用取引における不足時の対応について質問したところ、「取引先と協議の上、数量を変更する」(68.1%)が最も多く、次いで「卸・仲卸・商社など中間事業者が手当てを行う」(16.7%)、「契約数量に対して1~4割増しの余裕作付けをしている」(15.9%)、「中間事業者を介した協力産地から不足分の手当てをしてもらう」(10.9%)となっている(表2)。
そのほかにも、「契約数量を生産能力に対し2~3割に抑えている」、「出荷期間を延長してもらう」、「市場出荷分の振替出荷により対応している」などの回答が得られ、契約数量を確保するために、さまざまな努力や工夫を行っていることがうかがえた。また、契約を結ぶ際の数量の取り決めについて、「面積買い」にして圃場で取れた作物について等階級にかかわらず全量買い取ってもらうことで、生産者の販売リスクを軽減する取り組みも見られた。
以上のような不足時の対応のほかにも、安定供給やリスク軽減などに向けた、次のような対応も重要である(表3)。
1 産地間連携の構築による周年安定供給
加工・業務用実需者から要求される周年安定供給に対応するためには、1産地だけの取り組みでは限界がある。まず、出荷期間の点から、年間を通した供給を1産地で対応するのは困難であり、他産地と連携したリレー出荷体制の構築が必要である。また、特定の時期に限ったとしても、天候などによる作柄変動リスクなどを考慮するならば、安定供給を図るためには複数産地からの供給が必要とされることも多い。
従って、周年安定供給を図るためには、産地間連携が重要な取り組み事項となるのであり、切れ目のないリレー出荷体制の構築を含め、輸入品が入ってくるすき間を作らないようにする体制づくりが重要である。
2 不作時・豊作時を念頭に置いたリスク軽減措置の実施
また、不作時・豊作時を念頭においたリスク軽減措置として、契約数量をどの位にするかといった産地戦略や不作時でも契約数量を確保できるような余裕作付けのほか、当機構が実施している契約野菜安定供給制度の活用を挙げることができる。この制度は、生産者と実需者(最終実需者だけでなく卸売業者などの中間事業者との契約取引も含む)が書面により契約取引を行う際のリスクを軽減して契約取引を推進することを目的としたものであり、過剰生産分の出荷調整経費や不作時に卸売市場などから購入して契約数量の確保を図る場合の掛かり増し経費などについて、一定の条件の下で補てん金が交付される。
3 中間事業者の機能を活用したサプライチェーンの構築
上記に加えて、周年安定供給やさまざまな状況変化などへの機動的な対応を図るためには、産地と実需者を取り結び、実需者ニーズなどの伝達や等階級別・用途別の販路調整、産地間リレー出荷の調整などの機能を果たす中間事業者と連携した生産・供給体制(サプライチェーン)の構築が有効である。
③ 対応策を実践している事例
「ちゃんぽん」や「ギョーザ」などの原料キャベツの契約取引に当たり、契約当事者3者の協力によって柔軟性のある取引量の調整・確保を可能にしている事例として、茨城中央園芸農業協同組合、(株)リンガーハット、丸仙青果(株)の取り組みが挙げられる(表4)。
(3) 担い手確保
① 課題
アンケート結果では、加工・業務用対応の生産面における課題として、「加工・業務用に対応できる生産者が少ない」、「生産者が高齢化しているので対応できない」、「強力なリーダーシップをとる人がいない」といった担い手確保を課題とする回答も多く得られた。
アンケート結果では、加工・業務用野菜の取り扱いのあるJAにおいて、全体の32.4%が加工・業務用野菜の専門部会を設置しているものの、残りの62.7%が専門部会を設置せずに市場出荷と共通の出荷体制となっている。現段階では加工・業務用専門の生産体制を整えているJAは少ないことも、加工・業務用に対応できる生産者が少ないといった回答につながっているものと考えられる。
② 対応策
では、担い手確保のためにどのような対応策が考えられるであろうか。
後述のとおり、加工・業務用においては、実需者から定時・定量・定品質・定価格
での原材料の安定供給が求められるほか、品質・規格だけをとっても品目ごと用途ごとに求められる特性はさまざまである。
従って、以下のような実需者ごとに異なる多様な品質、規格などのニーズに対応できる体制づくりが必要となる。
1 担い手の育成
普及センター、農協営農指導員および種苗会社などと連携し、その専門技術や知見を活用した家計消費用とは異なる栽培技術の普及体制の構築による生産者の育成(営農指導体制の充実化)が重要である。
2 生産者のグループ化や専門部会の設置による生産体制の確立
また、生産者のグループ化(小グループ化)、専門部会の設置、生産者部会の実需者別部会への再編なども重要な取り組み事項である。これにより用途別ニーズに対応した、品種の選定および株間の取り方や施肥設計を含む大型規格の栽培方法などを普及させるとともに、供給責任の明確化を図りながら、実需者ニーズに機動的に対応できる生産・出荷体制を整備していくことが重要である。
③ 対応策を実践している事例
国産野菜を利用したサラダの原料レタスの調達について、加工業務用に理解を持つ生産者グループをとりまとめ、綿密な生産指導の実施などにより安定した長期取引を実現している事例として、全農いばらき県西VFS・JA常総ひかり石下地区契約レタス部会、(株)サラダクラブ、MCプロデュース(株)の取り組みが挙げられる(表5)。
(1) 再生産価格の確保や取引先の求める多様なニーズへの対応などが大きな課題
アンケート結果では、加工・業務用対応の取引面における課題として、「取引先が求める価格が低すぎる(再生産価格に達しない)」(33.3%)が最も多く、次いで「取引先の求める出荷条件・規格などに対応することが難しい」(18.3%)、「取引先を見つけることができない(新規の取引先を開拓するのが困難である)」(17.5%)、「市場価格が高くなると生産者が勝手に市場に持って行ってしまうことがある」(14.3%)が続いた(図6)。
そのほかにも、「取引先の契約数量が安定しない」、「生産者が個々に販路を持っているため加工・業務用対応の数量をまとめるのが難しい」などを課題とする回答が得られた。
(2) 再生産価格の確保
① 課題の分析
一般的に、加工・業務用野菜の取引は、取引単価が安いことから、産地にとって経営的に割が合わないのではないかといったイメージがある。今回のアンケート調査でも、前述のとおり、JA・生産法人の加工・業務用対応の取引面における課題として、「取引先が求める価格が低すぎる」(33.3%)が最も多く挙げられた。
しかし、一般的な野菜生産と比較した場合の相違がどの程度であるかに関する資料は少なく、今後、加工・業務用野菜の安定供給を推進していく上では、単価・単収(10a当たり収量)の傾向を把握することは重要であると思われる。
そこで、今回のアンケート結果から、加工・業務用と一般的な野菜生産との「単価」・「単収」の相違について整理してみたい。
図7と表6~7は、加工・業務用と一般的な野菜生産との単価・単収の相違を見るためにアンケート結果から主要品目の単価・単収の係数状況をまとめたものである。
係数は加工・業務用と一般的な野菜生産の単価・単収を比較したもので、どちらも係数が1.0より大きければ加工・業務用の単価、単収が野菜生産全体の単価、単収より高いことを示している。
●「単価」の係数状況~一般的な野菜生産全体の単価より2~4割程度低い状況~
まず、単価の係数状況を見ると(図7・表6)、「0.8~1.0未満」(33.3%)、「0.6~0.8未満」(29.4%)の近傍に多く分布しており、出荷時期の違いなどによる差異を考慮する必要があるが、一般的な野菜生産全体の単価より2~4割程度低いケースが多くなっている。単純に加工・業務用の単価が高いか低いかだけを見ると、アンケートの有効回答(n=51)の84.3%は係数が1.0未満となっており、単価については加工・業務用野菜の方が低い団体が多い結果となった。
●「単収」の係数状況~一般的な野菜生産全体の単価より2~4割程度高い状況~
次に、単収の係数状況を見ると(図7・表7)、「1.0~1.2未満」(21.6%)、「0.8~1.0未満」(19.6%)の近傍に多く分布しており、一般的な野菜生産の単収より2~4割程度高いケースが多くなっている。加工・業務用野菜の場合、基本的には、加工歩留まりを高めるため一般的な家計消費用野菜よりも大型の規格が求められる。単収増は、この大型規格による生産を反映させたものといってよい。単純に加工・業務用の単収が高いか低いかだけを見ると、アンケートの有効回答(n=51)の64.7%は係数が1.0以上となっている。2.0以上の係数も散見され、単収については加工・業務用野菜の方が高い団体が多い結果となった。
以上のとおり、加工・業務用野菜の単価は一般的な野菜全体の単価と比較して低いものの、歩留まり重視の大型規格であるため単収は高くなっており、単価安を単収増でカバーしている状況がうかがえた。
今回のアンケート調査ではサンプル数が少なく、必ずしも十分な情報内容とはいえない面があるものの、単価安を単収増でカバーすることができるならば、加工・業務用野菜生産は、一般的な野菜生産と比較しても、産地にとって十分なメリットを望むことができるといってよい。
アンケート結果でも、加工・業務用野菜の取引価格の満足度について、「十分に達している」は7.2%と少ないものの、「ほぼ希望価格に達している」が65.2%、「達していない」が22.5%となっている(表8)。これを単価・単収などの分布結果と併せて解釈すると、現状では、取引単価は低いものの単収などを勘案すれば、加工・業務用の野菜生産は、多くの産地にとって再生産可能な状況であることを示しているといえよう。
② 対応策
では、再生産価格を確保するためにどのような対応が考えられるであろうか。
一般的に単価の低い加工・業務用について、家計消費用と同じ作り方での対応では産地側にとってのメリットが少ない。再生産価格を確保した上で、実需者から求められる低価格での供給を可能にするために、以下の対応が挙げられる(表9)。
1~3 生産コストの低減や選別・調製・流通コストの低減
まず、生産コストや実需者が求める価格水準を正確に把握し、加工歩留まりの高い大型規格の多収栽培体系や機械化体系などの確立による生産コストの低減が挙げられる。また、加工・業務用野菜は市場出荷のように規格の等階級分けが少ないため、出荷規格の簡素化による選別・調製作業コストの低減が可能である。
さらに、無包装・ばら詰め・通い容器などを利用すれば流通コストの低減を図ることも可能である。アンケート結果でも、加工・業務用の荷姿について、「無包装もしくは簡易包装の上でコンテナ出荷している」という回答が多く得られ、簡素化・省力化によりコスト削減を図っている取り組みが見られた。
4 商品化率の向上
上記に加えて、多様な等階級品の販路の確保による商品化率の向上に向けた取り組
みも重要である。商品化率が低い場合、産地は単当たりの目標販売額水準を確保するため、程度の差はあれ販売できない分も上乗せした単価設定を行わざるを得ない。このため、取引単価を若干高めに設定することとなるが、商品化率を向上させることができるならば、産地にとって無理のない範囲で取引単価を相対的に低く設定することが可能になる。多様な等階級品を無駄なく販売できるような仕組みづくりが重要であり、柔軟な規格などによる販売が可能な直売所の活用も視野に入れる必要があろう。
以上のように、加工・業務用野菜の取引単価の安さについては、大型規格の多収栽
培などによる生産コストの低減、出荷規格の簡素化や通い容器の利用などによる選別・調製・流通コストの低減、および商品化率の向上などを図ることによって、収益の点で十分カバーすることができ、産地側にとってもメリットがあるものと考える。
③ 対応策を実践している事例
「ごま合え」などの原料ほうれんそうの契約取引に当たり、家計消費用並みの収入の安定的な確保を可能にした事例として、㈲テンアップファーム、(株)セブン―イレブン・ジャパン、横浜丸中青果(株)の取り組みが挙げられる(表10)。
(3) 実需者から求められる多様なニーズへの対応
① 課題の分析
アンケート結果では、取引面における課題として、「取引先の求める出荷条件・規格などに対応することが難しい」といった、実需者から求められる多様なニーズへの対応を課題とする回答も多く得られた。
加工・業務用と家計消費用において、実需者から求められる出荷条件や規格などはどのような点で異なるのか。
この点について質問したところ、「荷姿の相違有」(57.2%)が最も多く、次いで「規格の相違有」(43.5%)、「品種の相違有」(18.8%)、「栽培方法の相違有」(13.0%)が続いており、品種面の違いよりも規格面での相違が多く挙げられている(表11)。
このうち、品種面の相違については、ジュース用のトマトや漬物用のだいこんなどが相違の具体例として示されている。ジュース用のトマトは、メーカーが品種指定した「赤系」であり、わが国で一般的に流通している「ピンク系」とは、品種面でも栽培方法の面でも異なるものである。また、漬物用だいこんについては、浅漬用の場合、生産量が多い青首品種が使用されているが、本漬用では白首品種を指定した契約栽培による原料調達が基本となっている。
一方、規格面での違いについて、多くの品目で共通しているのが、加工・業務用の場合、加工歩留まりの向上や作業効率性を重視して家計消費用よりも大型規格となっている点である。例えば、キャベツの芯抜き作業一つをとっても、同じ10キログラムのキャベツを加工する場合、玉数が少ない方が作業回数も少なくて済み、大量に加工処理する場合には、その作業時間に大きな差が生じることになる。この大型規格の加工・業務用野菜を生産するためには、品目によって必ずしも一様ではないが、基本的には在圃性が高い2品種を選定し、家計消費用よりも株間を広げて栽培することが必要であると指摘されている。
2 在圃性が高い:収穫適期からの生育がゆっくりしており、収穫期の幅が広いため、大型規格の収穫につながる。
以上の点を踏まえた上で、ここでは、今回のアンケート調査で産地が取り組んでいる加工・業務用野菜の代表的品目として最も多く回答の得られたキャベツとたまねぎについて、加工・業務用実需者からのヒアリング調査をもとに利用状況の実態を概観するとともに、その課題と基本的対応を簡単に見ることとする。
●キャベツに求められる家計消費用との相違
周知のように、キャベツの品種は、巻きが硬く葉質がしっかりしていて水分含有率が低い寒玉系と、巻きが緩く葉質が軟らかで水分含有率が高い春系に大別される。
実需者や用途に応じて、寒玉系、春系のそれぞれの特徴を活かした利用が行われているが、一般に、硬めの食感や加工歩留まりを重視する場合や加熱調理用の場合には寒玉系が好まれ、一方、軟らかな食感や生食での甘さ、緑色の濃さを重視する場合には春系が好まれる(また、浅漬用の場合、春系が多く使用されている)(表12)。
代表的な事例を見ると、外食チェーンA社は、年間を通じて寒玉系を使用している。
寒玉系を使用する理由は、加工歩留まりや作業性に加え、店持ちの良さを評価しているからである。調達するキャベツの基本的な規格は、1玉1.3キログラム超の大型規格(6~8玉/10キログラム)、直径25センチ以上、外葉3枚となっている。加工歩留まりを高めるために大玉が必要とされるが、直径25センチ以上という要求は、加工作業ライン(ベルトコンベア)が、幅が25センチで両端を弾力性のあるゴム製のベルトで挟んで固定する仕組みとなっており、直径25センチ未満のキャベツを挟むことができないためである。
この外食チェーンの場合、4~5月の国産寒玉系が不足する時期においても、国産の貯蔵品の利用や国内産地との契約栽培による調達で対応しており、輸入品は使用していない。
しかし、国産寒玉系の貯蔵品使用に際しては、変色した葉を取り除く必要が生じた場合に歩留まりが低下すること、また貯蔵に要する費用が加算されることなどにより割高になるため、輸入品を利用する実需者も見られる。
●キャベツの課題と基本的な対応
4~5月の国産寒玉系の生産については、抽苔、裂球などが発生しやすく、実需者が必要とする大きさでの生産が難しいことから、国産の寒玉系の不足が指摘されている。しかし、この点については、在圃性の高い品種の開発や栽培技術の改善などが進んでおり、種苗会社や試験研究機関とも連携して、産地の環境に適した品種、栽培方法などの導入・普及が求められている(表13)。
●たまねぎに求められる家計消費用との相違
たまねぎについては、加工・業務用の場合、サラダ用や加熱調理用などのいずれの用途においても、大玉たまねぎ(腰高でL大ないし2L以上のサイズ)が基本となっている。
サラダ用としては、水分含有率が高く甘みがある品種が好適であるが、加熱調理用の場合、基本的には水分含有率が低い品種が実需者から求められる。たとえば、水分含有率が高いたまねぎをそのままかき揚げ用に使用すると、コゲの原因になりやすいとの声が聞かれる。なお、煮込み用の場合、たまねぎの形を残す必要があるか否かによって実需者から求められる品質内容は多様である。煮込んだ際に、たまねぎの形を残すためには、硬めで水分含有率が低い品種が必要とされる。ただし、カレー(特にレトルトカレー)の中で、たまねぎの形を残さなくてもよいものについては、生鮮たまねぎではなく、たまねぎソテーが利用されることが多い(表14)。
●たまねぎの基本的な課題
加熱調理用として、北海道産から府県産に切り替わる時期などを中心に、水分含有率が低い輸入たまねぎを使用する実需者も見られる。このため、カット野菜原料用を含む加工・業務用国産たまねぎの供給対応において、①大玉たまねぎの低コスト供給(適正品種の選定と大型規格の多収栽培などによる低コスト生産)、②府県産たまねぎの加熱用途向け品質改善(品種選定、乾燥及び貯蔵方法などの一層の工夫)などが求められている(表15)。
② 対応策
以上簡単に見てきたように、加工・業務用においては、実需者からは定時・定量・定品質・定価格での原材料の安定供給が求められるほか、品質・規格一つとっても品目ごと用途ごとに求められる特性はさまざまである。
表16は、加工・業務用野菜と家計消費用野菜の基本的特性の相違を示したものである。こうした実需者別・用途別にきめ細かな品質面での対応を図るためには、家計消費用の余剰分や規格外品での対応ではなく、末端実需者のニーズをはじめから意識した次のような対応が必要である(表17)。
1 は種前の販売先の確保
作ってから売るのではなく、は種前に販売先を確保し、品質内容や規格、数量、価格、出荷期間など実需者のさまざまなニーズに合わせて計画的に生産・出荷する契約栽培の取り組みが必要となる(「できたものを供給する体制」から「事前に販売先を確保してから生産・供給する体制」への転換)。
聞き取りでは、積極的な営業展開により、は種前に出荷予定量の約7割の販売先をすでに確保し、出荷予定量・予定日から逆算した綿密な生産・出荷計画をは種の半年前から立てている産地の事例も見られた。
2 実需者ニーズに機動的に対応できる産地体制づくり
また、マーケティング担当者の育成や専門部署の設置などにより営業・販売力を強化し、実需者ニーズをきめ細かに把握したり、商談の好機を逸しない迅速な意思決定ができる仕組み作りが必要となる。
具体的な対策としては、実需者ごとに異なる多様な品質、規格などのニーズに対応できる生産者の育成(営農指導体制の充実化)やグループ化などが挙げられる。部会についても、実需者別部会への再編などを図り、大型規格、株間の取り方、施肥設計、品種の選定など用途別ニーズに対応した生産指導なども含め、実需者ニーズに機動的に対応できる生産・出荷体制を整備する必要がある。
また、加工・調理現場を視察することによって、実際の作業工程を確認し、なぜ要求された規格が必要なのかということを作業工程に即して把握していくことも重要である。
③ 対応策を実践している事例
大手百貨店向けの総菜用野菜調達について、新規品目のテスト栽培やその素材に合わせたメニュー開発などにより、供給量の確保や取引品目の拡大を図っている事例として、農業生産法人有限会社四位農園、(株)ロック・フィールドの取り組みが挙げられる(表18)。
(4) 取引先の確保(新規取引先の開拓)
① 課題
アンケート結果では、加工・業務用対応の取引面における課題として、「取引先を見つけることができない(新規の取引先を開拓するのが困難である)」といった取引先の確保を課題とする回答も多く得られた。
国内産地の多くは、これまで、家計消費用野菜の卸売市場流通を中心とした生産・出荷を進めてきており、卸売市場卸売業者に対する委託出荷を基本としてきた。従って、産地自らが加工・業務用実需者と直接商談する機会は必ずしも多くなかったといえる。
② 対応策
では、取引先を確保するためにどのような対応策が考えられるであろうか。
現在、加工・業務用取引を行っているJA・生産法人が加工・業務用野菜の取引を開始したきっかけとしては、「中間事業者から働き掛けがあった」が最も多く32.6%、次いで、「経済連などを通して」が23.2%となっており、JA・生産法人ともに加工・業務用野菜の取引開始のきっかけには多様な販路を持つ中間事業者が大きな役割を担っていることがうかがえる(表19)。
このうち、JAは「中間事業者から働き掛けがあった」(30.4%)、「経済連などを通して」(30.4%)が多くなっており、卸売市場などを含む中間事業者もしくは系統からの働き掛けがきっかけになっている。
一方、生産法人もやはり「中間事業者からの働き掛けがあった」(38.9%)が最も多いが、「最終実需者から働き掛けがあった」(22.2%)、「自ら取引先を開拓している」(22.2%)がJAを上回っており、生産法人は、中間事業者を活用しつつ独自の販売チャネル確保に努力していることがうかがえる。
以上のような、中間事業者の活用や自らの働き掛けによる取引先の確保のほかにも、次のような対応が挙げられる。
1 マーケティング担当者の育成や専門部署の設置
加工・業務用需要への対応を強化するためには、産地戦略における加工・業務用対応の位置付けを明確にした上で、加工・業務用実需者のニーズなどを見据えたマーケティング活動の強化が必要である。このため、マーケティング担当者の育成や専門部署の設置が不可欠であり、これら専門の担当窓口を通じた加工・業務用需要に関する情報受発信機能や取引先の開拓などを含む営業・販売力の強化を図る必要がある。このマーケティング活動の強化においては、アンケート結果にもある通り、卸売市場卸売業者などの中間事業者と連携した取り組みも重要であるが、その場合でも、産地自らが末端実需者を把握し、実需者ごとの用途や特徴などを明確にした上で、生産・供給を行うことが大切である。
2 実需者や中間事業者との信頼関係の構築
現在、加工・業務用取引を行っている産地からは、取引がうまく開始できた、または継続している理由として、「実需者との信頼関係を構築できた」という回答が最も多く得られた(図8)。
聞き取りでは、現在取引を行っている加工・業務用実需者や中間事業者と信頼関係を構築することにより、新規の取引先の紹介を得ることができ、新たな販路拡大につながったという回答も得られている。生産者と実需者が情報交換を頻繁に行うなど、お互いの顔が見える関係を構築し、たゆみなく切磋琢磨する姿勢が重要である。
3 「加工・業務用野菜産地と実需者との交流会」の活用
また、当機構は農林水産省と共催で、国産野菜を求める中食・外食業者などの実需者を招いて生産者やJA、種苗会社が各ブースで農産物をPRする「加工・業務用野菜産地と実需者との交流会」を毎年4回程度開催している。この交流会では生産者と実需者が取引交渉を行う商談スペースも設けており、こういった交流の場を積極的に活用することも有効であると考える。
以上、本年1月から3月にかけて実施したアンケート結果を基に、国内産地における加工・業務用野菜の安定供給に向けた生産面・取引面の基本的な課題を見てきた。
今回のアンケート調査によって、加工・業務用野菜に取り組む産地の現状だけでなく、安定的な数量確保や再生産価格の確保、多様な実需者ニーズへの対応など、産地が抱えるさまざまな課題をあらためて確認することができた。
アンケート結果では、産地の野菜の取扱高に占める加工・業務用野菜の契約取引の割合は「30%未満」が大半を占めており、加工・業務用を主体とする取り組みは、現時点ではまだ少ない状況である。
その一方で、聞き取りを通じて、加工・業務用の出荷を優先し、余剰分を量販店の特売商品に充てるなど、外食産業、食品加工製造業と契約を締結し、安定した価格と収益の実現に積極的に努めている動きも把握することができた。
アンケート結果では、今後の意向について、「加工・業務用野菜取引を拡大(開始)したい」という意欲的な回答のほかにも、「マッチングの機会を増やし、お互いの不安材料をなくす取り組みをしていきたい」、「選別作業などでも、実需者にとって省略可能なものがあれば、それらを調査して先方の理解を促すなど、生産者と実需者の調整を図り、それらの情報を提供して欲しい」など、加工・業務用取引の拡大に向けた前向きな意見や要望がたくさん寄せられた。
こうした意見・要望に応えつつ、今後とも、当機構としては、加工・業務用野菜の取引拡大に取り組んでいる産地、およびこれから加工・業務用需要にも取り組もうと考えている産地などに対して、何らかのヒントとなるようなさまざまな情報提供に努めていきたい。
東京農工大学 大学院 農業市場学研究室 教授 野見山 敏雄
農林水産省 農林水産政策研究所 企画広報室 企画科長 小林 茂典
財団法人 食の安全・安心財団附属機関外食産業総合調査研究センター 研究員 松﨑 俊
社団法人 農協流通研究所 調査研究部 研究員 種市 豊
独立行政法人 農畜産業振興機構 調査情報部 調査課 係長 藤戸 志保