調査情報部
わが国における野菜の需要は、女性の社会進出や単身世帯の増加などによる食の外部化の進展により、加工・業務用需要が増加傾向にあり、平成17年度の農林水産政策研究所の推計によるとその割合は55%に達した。また、加工・業務用に仕向けられる輸入野菜の割合も増加している。こうした中、最近では、中国製冷凍ギョーザ事件などを契機とした国産野菜の需要の増加により、加工・業務用野菜の実需者からは、国内産地の積極的な対応が求められている。
このような状況を踏まえ、農林水産省は、平成20年7月以降開催している「今後の野菜政策に関する検討会」において、野菜をめぐる諸課題について対応を検討し、特に加工・業務用需要に対しては、国産野菜の安定供給を図ることが、食料供給力、食料自給率を向上させるうえで重要な課題と位置付けたところである。
当機構としても、加工・業務用野菜の安定供給のためにはどのような課題があるのかという視点から、国内産地における加工・業務用野菜に関する取り組みの現状を把握するとともに課題を整理するために、東京農工大学野見山敏雄教授をはじめとする農業市場学研究室グループと共同調査を実施した。
当月号では、本年1月から3月にかけて実施した「加工・業務用野菜需要に対する産地の取り組みについてのアンケート」の結果について報告する。そして、次月号では、本アンケート結果を踏まえ、国内産地における加工・業務用野菜に関する取り組みの現状、今後の課題、解決策などについて報告したい。
野菜の販売・取扱がある農業協同組合(以下、JA)475団体、農業生産法人(以下、生産法人)306団体の計781団体を対象に、郵便・ファクシミリによるアンケート調査を実施した。
その結果、JAについては164団体(回収率34.5%)、生産法人については88団体(回収率28.8%)の有効回答が得られた(表1)。
以下、回答のあった252団体の概要について述べる。
① 地域分布~「関東」「東北」に多く分布~
地域分布を見ると(図1)、JA・生産法人ともに「関東」「東北」の割合が多い。JAは「関東」(25.0%)、「東北」(15.9%)「九州」(14.0%)と続いており、生産法人は「東北」(23.9%)、「関東」(19.3%)、「北陸」(14.8%)となっている。
② 野菜販売額~JAは「5~10億円未満」、生産法人は「1000万円未満」に多く分布~
野菜販売額を見ると(図2)、JAは「5~10億円未満」が16.5%と最も多く、次いで「10~15億円未満」が13.4%となっている。また、生産法人は「1000万円未満」が34.1%と最も多く、次いで「5000万~1億円未満」が13.6%となっている。
③ 加工・業務用野菜の出荷の有無~出荷「有」が半数以上~
加工・業務用野菜の出荷の有無を見ると(表2)、「有」が54.8%(138団体)と半数以上を占めている。JAについては全体の6割以上、生産法人については4割以上が加工・業務用野菜の出荷を行っているとの回答が得られた。
以下、加工・業務用野菜の出荷の有無について、「有」と回答した138団体を対象に、加工・業務用野菜の生産状況について調査結果を見ていきたい。
生鮮品を含めた野菜の販売総額と加工・業務用野菜の販売額から、各団体別に加工・業務用野菜の販売割合を作成した(図3)。
JA・生産法人別の販売割合の分布を見ると、JAは8割弱が「10%未満」に集中しており、ほとんどが「30%未満」に分布している。一方、生産法人は加工・業務用野菜販売に特化した「100%」まで広く分布しているが、やはり約6割が「30%未満」に分布している。
加工・業務用需要に安定的に対応するためには、全体の取引の3割以内が一つの目安となっている可能性がうかがえる。
加工・業務用に出荷を行っている代表的な作付品目(1品目)を質問したところ、「キャベツ」(14.5%)が最も多く、次いで「たまねぎ」(10.9%)、「だいこん」(9.4%)、「トマト」(7.2%)、「ほうれんそうなど」(6.5%)となった(表3)。
地域別に見ると、「キャベツ」「たまねぎ」はほぼ全国から回答があり、「だいこん」「トマト」は東日本を中心に、「ほうれんそうなど」は西日本を中心に回答があった。
① 過去5年間の生産動向~全体としては増加傾向~
代表的な加工・業務用野菜品目(1品目)の過去5年間の生産動向について見ると(表4)、31.9%が「増加傾向」、15.2%が「減少傾向」、23.2%が「変化なし」であり、JA・生産法人ともに大きな違いはなく、全体としては「増加傾向」とする回答が最も多かった。
また、品目別に上位5品目を見ると、「キャベツ」「たまねぎ」「ほうれんそうなど」は「増加傾向」が「減少傾向」を上回り、反対に「だいこん」「トマト」は「減少傾向」が「増加傾向」を上回った。
② 作付面積~JAは「10~30ヘクタール未満」、生産法人は「3ヘクタール未満」に多く分布~
代表的な加工・業務用野菜品目(1品目)の1団体当たりの作付面積について見ると(表5)、「10~30ヘクタール未満」が15.9%と最も多く、次いで、1ヘクタール未満が10.1%となっている。
JA・生産法人別に見ると、JAが「10~30ヘクタール未満」(20.6%)を中心に分布しているのに対し、生産法人はJAと比べると規模が小さく、「1ヘクタール未満」に25.0%が集中し、次いで「2~3ヘクタール未満」(13.9%)と、生産法人では「3ヘクタール未満」が44.5%を占めている。
③ 農家戸数~JAは「11~20戸」が多く、生産法人は「10戸以下」が半数以上~
代表的な加工・業務用野菜品目(1品目)の1団体当たりの農家戸数について見ると(表6)、「10戸以下」が全体の24.6%と最も多くなっている。JA・生産法人別に見ると、やはりJAの方が加入組合員の農家戸数が多いため、「11~20戸」(16.7%)が最も多かったのに対し、生産法人は「10戸以下」(55.6%)に半数以上が集中している。
④ 年間生産量~JAは大規模層を中心に分布、生産法人は小規模層を中心に分布~
代表的な加工・業務用野菜品目(1品目)の1団体当たりの生産量について見ると(表7)、全体では「500~1000トン未満」(12.3%)と「10~30トン未満」(12.3%)の2つに大きく分布した。JA・生産法人別に見ると、JAは「500~1000トン未満」(16.7%)など大規模層を中心に分布し、生産法人は「10~30トン未満」(22.2%)など小規模層を中心に分布している。
⑤ 年間販売額~「500万円未満」に最も多く分布~
代表的な加工・業務用野菜品目(1品目)の1団体当たりの販売額について見ると(表8)、全体では「500万円未満」(22.5%)が最も多く、次いで「1000~3000万円未満」(17.4%)、「3000~5000万円未満」(12.3%)と続いている。
組織別に見ると、JAは「500万円未満」(18.6%)と「1000~3000万円未満」(16.7%)の2つに大きく分布し、それ以外は比較的大規模層にも分布している。生産法人については「500万円未満」(33.3%)と「1000~3000万円未満」(19.4%)の2つに大きく分布し、それ以外は中小規模層を中心に分布している。
生産者との集荷体制については(表9)、JAは92.2%と9割以上が「構成員から集荷」している。一方、生産法人については、69.4%とほぼ7割が「自社生産」を行っている。
加工・業務用野菜の取り扱いのあるJAにおいては、全体の32.4%が加工・業務用野菜の専門部会を設置している(表10)。残りの62.7%は、専門部会を設置せずに市場出荷と共通の出荷体制となっており、現段階では加工・業務用専門の生産体制を整えているJAが少ないことが分かる。
専門部会を設置しているJAのうち、加工用の専門部会を組織しているJAは(表11)、全体の84.8%(単独60.6%+併設24.2%)を占める。一方で、業務用の専門部会を組織しているJAが全体の33.3%(単独9.1%+併設24.2%)にとどまっていることから考えると、加工用については専門部会を設置する必要性やメリットが大きいことがうかがわれる。
JA・生産法人と生産者間の覚書など契約文書の取り交わしの有無については(表12)、61.6%が「無」と回答しており、口頭による約束が大半を占めていることが分かる。品目別に見ると、「ばれいしょ」(75.0%)「トマト」(50.0%)、「たまねぎ」(46.7%)は比較的文書契約の割合が高い。
JA・生産法人と生産者間の数量の取り決めについては(表13)、「おおむねの数量が決まっているが、オーダー状況で変動」が44.2%と最も多く、次いで「契約数量を決めて引き取り」が28.3%、「面積買い(全量引き取り)」が18.8%となっている。
JA・生産法人と生産者間の取引では、文書契約も少なく、取引数量もやや柔軟に設定されており、緩やかな契約的関係で取り引きが行われていることがうかがわれる。数量調整なども組織全体の中で行われていると考えられる。
品目別に見ると、「面積買い」が比較的多いのは「トマト」(40.0%)、「契約数量を決めて引き取り」が比較的多いのは、「はくさい」(50.0%)、「たまねぎ」(46.7%)となっている。
JA・生産法人と生産者間の価格の取り決めについては(表14)、「シーズン定価格」が68.8%と最も多く、次いで、「週・月ごとの定価格」が14.5%となっており、全体の8割以上が期間ごとに価格を設定していることが分かる。次いで、「市場価格連動」が5.8%、「上限・下限を設定した変動価格」が2.2%となっている。
「その他」として、「加工向けはシーズン定価格、業務向けは市場価格連動と分けている」、「お好み焼き用キャベツはシーズン定価格、学校給食用キャベツは上限・下限を設定した変動価格と分けている」などの回答が得られた。
① 生食用対応との労働負担の比較~「大きい」が4割強、「変わらない」も4割近く~
市場出荷・量販店向けなど生食用と比較した加工・業務用対応における生産者およびJA・生産法人の生産・販売対応者の労働負担の大きさについては(表15)、「大きい」が44.4%と全体の4割強を占めた。一方、「変わらない」とする回答も35.7%と4割近くを占めた。JA・生産法人別に見ると、JA(50.0%)の方が生産法人(34.1%)よりも負担が大きいと感じていることがうかがえる。
取引先別に見ると、「カット野菜メーカー」「加工食品メーカー」など加工需要に対応しているJA・法人が「大きい」とする割合は30%台と比較的少なく、加工需要対応は業務需要対応などに比べて生産サイドは労働負担を大きいと感じていないことがうかがえる。
② 作業の中で労働負担の大きいもの ~「数量調整作業」、「出荷作業」の順に負担大~
生食用対応と比較して加工・業務用対応の中で負担の大きい具体的な作業としては(図4)、「数量調整作業」が最も多く58.0%、次いで「出荷作業」(34.8%)、「市場出荷用と加工・業務用を分けたことによる事務処理作業」(29.5%)、「欠品対応などの作業」(28.6%)、「クレーム対応」(25.9%)、「契約企業との契約条件の調整」(22.3%)、「検品・検査」(18.8%)、「調製作業」(16.1%)、「生産履歴管理作業」(14.3%)、「新規企業との契約獲得」(12.5%)となっている。「その他」として、「人員体制の確立」などの回答が得られた。
組織別に見ると、JAは「数量調整」「事務処理作業」「クレーム処理」「契約企業との契約条件の調整」などが生産法人より多くなっており、加工・業務用対応の“事務処理面”の負担が大きいと感じられている。
一方、生産法人は、「出荷作業」「調製作業」「生産履歴の管理作業」「収穫作業など」
“フィールドでの実際の作業”の負担が大きいと感じられている。
これはJAの担当者は事務作業および管理作業を中心に行っており、生産法人の担当者は実際のフィールドでの作業を中心に行っているためと考えるが、JAはこれまで市場流通対応を中心に行ってきたため、加工・業務用対応の取引面でのノウハウがまだ蓄積されていないことも一因であると思われる。今回は、あくまでアンケート結果であり、個別の実態は分からないため、詳細の検討は今後の課題としたい。
次に、前節で整理した加工・業務用野菜の代表的品目について、その「最も取扱量の多い取引先」別の取引状況を中心に、加工・業務用野菜の取引の特徴をまとめた(以下、「取引先別」は、JA・生産法人の「最も取扱量の多い取引先別」を指す)。
代表的な加工・業務用野菜品目の「最も取扱量の多い取引先」の業種について見ると(表16)、レトルト・冷凍・缶詰・漬物野菜などの「加工食品メーカー」が36.2%と最も多く、次いで卸・仲卸・商社など「中間事業者」が19.6%、「カット野菜メーカー」が16.7%、「外食業者」が13.8%、「中食・総菜業者」が5.1%となっている。
組織別に見ると、「加工食品メーカー」についてはJA(39.2%)が生産法人(27.8%)を上回っている一方、「外食業者」については生産法人(25.0%)がJA(9.8%)を上回っている。
JAは漬物業者など従来からの加工需要との結び付きがうかがわれ、生産法人などの新規参入者は外食業者などとの取引が多い状況がうかがえる。
JA・生産法人と代表的取引先とは、表17のとおり、「直接取引」が50.0%と全体の半分を占め、「卸売市場経由」が25.4%、「その他流通業者経由」が21.0%となっている。加工・業務用取引においては、取引先との直接取引が多く、特に生産法人においてその割合が高くなっている。
また、取引先別に見ると、「加工食品メーカー」(54.0%)、「外食業者」(52.6%)は直接取引が50%を超えており、一方、「カット野菜メーカー」「中間事業者」は直接取引も多いものの、卸売市場経由もほかと比べて比較的多くなっている(「カット野菜メーカー」(34.8%)「中間事業者」(37.0%))。
JA・生産法人が加工・業務用野菜の取引を開始したきっかけとしては(表18)、「中間事業者から働き掛けがあった」が最も多く32.6%、次いで「経済連などを通して」が23.2%となっており、JA・生産法人ともに加工・業務用野菜の取引のきっかけには中間事業者が大きな役割を担っていることがうかがえる。
JAは「中間事業者から働き掛けがあった」(30.4%)、「経済連などを通して」(30.4%)が多くなっており、系統もしくは卸売市場などを含む中間事業者からの働き掛けが販売のきっかけになっている。
一方、生産法人もやはり「中間事業者から働き掛けがあった」(38.9%)が最も多いが、「最終実需者から働き掛けがあった」(22.2%)、「自ら取引先を開拓している」(22.2%)はJAを上回っており、生産法人は、中間事業者を活用しつつ、独自の販売チャネル確保に努力していることがうかがえる。
次に、取引先別に見ると、「経済連など」からの働き掛けがほかと比べて比較的多いのは、「カット野菜メーカー」(34.8%)、「加工食品メーカー」(30.0%)であり、「中間事業者から働き掛け」が比較的多いのは「中食・総菜業者」(57.1%)となっている。また、「外食業者」は「自ら取引先を開拓している」(31.6%)がほかと比べて多く、生産法人などからの売り込み先の受け皿になっている可能性がうかがえる。
JA・生産法人と代表的取引先間の覚書など契約文書の取り交わしの有無については(表19)、「有」が38.4%、「無」が45.7%となっており、生産者間との契約文書の有無(29.0%が「有」と回答)と比較して契約文書を交わしている割合が高いものの、口頭による約束が5割近くを占めている。
取引先別に見ると、「加工食品メーカー」(46.0%)、「外食業者」(47.4%)では比較的文書契約の比率が高く、一方で「中食・総菜業者」は文書契約は全くなかった。
JA・生産法人と代表的な取引先との契約数量の取り決めについては(表20)、「おおむねの数量が決まっているが、オーダー状況で変動」が41.3%と最も多く、次いで「契約数量を決めて引き取り」が35.5%、「面積買い(全量引き取り)」が18.1%となっている。
また、JAと生産法人を比べると、JAは「数量契約」(41.2%)、「面積契約」(20.6%)など、全量取引もしくは数量が決まった「固定的な」取引が多いのに対して、生産法人はオーダー状況で変動する「流動的な」取引が多くなっている(63.9%)。
取引先別に見ると、「加工業者」は「面積契約」(34.0%)が多くなっており、「中食・総菜企業」は「数量契約」(57.1%)が多くなっている。どちらの業種も工場生産などの工程が含まれおり、計画的な調達が必要であることがうかがわれる。一方、「外食業者」(68.4%)、「カット野菜メーカー」(60.9%)などの日々の売り上げが大きく変化する業種では、オーダー状況で数量が変動する流動的な取引が多くなっている。
取引先との「価格」の取り決めについては(表21)、「シーズン定価格」が73.9%と最も多く、次いで、「週・月ごとの定価格」が15.9%となっており、全体のほぼ9割が期間ごとに価格を設定していることが分かる。次いで、「市場価格連動」が5.8%、「上限・下限を設定した変動価格」が1.4%となっている。
取引先別に見ると、全ての業種で「シーズン定価格」が多くなっているが、「中間事業者」(25.9%)、「加工業者」(22.0%)では「週・月ごとの定価格」が、「外食業者」では「市場価格連動」(15.8%)が多くなっている。
取引価格の満足度については(表22)、「十分に達している」は7.2%と少ないものの、「ほぼ希望価格に達している」が65.2%、「達していない」が22.5%となっており、全体的に満足度が高いことが分かる。
取引先別に見ると、「外食業者」は「十分に達している」(26.3%)の割合が高いが、「達していない」の割合も26.3%と「中間事業者」(29.6%)と並んで比較的高くなっている。
JA・生産法人の日々の出荷数量の確定報告や不作時などの相談先は(表23)、「最終実需者」が49.3%と半数近くを占めているが、卸・仲卸・商社などの「中間事業者」も44.9
%を占めており、中間事業者が契約取引の調整を果たす役割が大きいことが分かる。
取引先別に見ても「最終実需者」に直接相談する場合と、「中間事業者」に相談する場合が、おおむね半々になっている。「加工食品メーカー」については、「最終実需者」と直接相談する場合が64.0%となっている。
加工・業務用の数量確保に向けた取り組み(天候不順などで納入数量が不足した場合、どのように不足数量の手当てを行っているか)については(表24)、「取引先と協議の上、数量を変更する」が最も多く68.1%、次いで「卸・仲卸・商社など中間事業者が手当てを行う」が16.7%、「1~4割増しの余裕作付けをしている」が15.9%、「協力産地から不足分の手当てをしてもらう」が10.9%、「自らが必要量を購入して別途手当てする」が8.0%となっている。
取引先別に見ても「取引先と協議の上、数量を変更する」がおおむね多くなっている。この設問は、前述した4の「取引先との数量の取り決め」の設問と表裏であり、契約取引的なイメージが強い加工・業務用野菜でも、最終的な数量決定は、実需者・生産者ともにぎりぎりまで待って擦り合わせを行い、両者の数量のギャップを最小限に抑えるよう取引されていることがうかがわれる。
また、「その他」として、「市場出荷分の代替出荷により対応」、「出荷期間を延長してもらう」、「契約量を多く設定しない(不作時でも出荷できる数量しか契約しない、契約数量を生産能力に対し2~3割としている)」、「契約数量による前渡し金の返金」などの回答が得られた。
代表的取引先が加工・業務用野菜の取引に当たって重視している点については(表25)、「数量確保」が81.9%と最も高く、次に「栽培履歴・トレーサビリティの管理」など安全面に対する要望が50.0%、「サイズの一定性」が36.2%、「低価格であること」が28.3%となっている。加工・業務用野菜の取引にあたっては、数量確保が不可欠であることが分かる。
また、取引先別に見ると、おおむねほとんどの業種で「数量確保」の重要度が高いが、中食・総菜業者では「サイズの一定性」(57.1%)、「低価格」(42.9%)を、加工食品メーカーでは「栽培履歴・トレーサビリティ」(66.0%)、「異物混入のチェック」(26.0%)をそれぞれ重視している。
① 市場出荷品との相違 ~「サイズ」「荷姿」面の相違大~
加工・業務用野菜と市場出荷品との相違に関して、「品種」、「栽培方法」、「サイズ」、「荷姿」の4点について質問し、「相違有」とした回答者の割合のみを抜粋してまとめた(表26)。
市場出荷品との「相違有」の割合は、「品種」(18.8%)、「栽培方法」(13.0%)は15%前後にとどまったが、「サイズ」(43.5%)、「荷姿」(57.2%)については4~6割と高くなっている。
品目横断的な資料のため、大まかな傾向であるが、加工・業務用野菜と市場出荷品の違いは、「品種」「栽培方法」面では少なく、「サイズ」「荷姿」面では大きい可能性がうかがえる。
② 相違の具体的な内容 ~歩留まり重視、作目大型化の傾向~
「品種」、「栽培方法」、「サイズ」、「荷姿」における加工・業務用野菜の市場出荷品との相違の具体的な内容を見ると(表27)、基本的には歩留まり重視、作目の大型化を実現するための変更であり、そのために市場出荷品との相違が生じている傾向がうかがわれた。
まず、「品種」については、多収量品種・大型品種が選択されており、一部では食味・糖度などから選択されている。
「栽培方法」についても、畝間を広くする、定植幅を拡大するなどの栽培方法が選択されている。取引条件となっている有機栽培に取り組んでいるという回答者もあった。
「サイズ」については、歩留まり重視・作目大型化の傾向がそのまま、市場出荷品との違いとなっている。
「荷姿」については、「無包装もしくは簡易包装の上でコンテナ出荷」という回答が多く得られ、簡素化、省力化、コスト削減の面から選択されている取り組みが見られた。
加工・業務用対応がうまく開始できた、または継続している理由としては(図5)、「取引先と信頼関係の構築ができた」が最も多く42.0%、次いで「生産者の手取りが事前に計算可能」(39.1%)、「契約数量を安定して出荷できる体制が構築できた」(30.4%)、「生産者の手取りが向上した」(25.4%)となっている。加工・業務用取引推進に当たり、取引先との信頼関係の構築が重要であることがうかがえる。
「その他」として、「経済連・JA県本部による出荷推進」、「品質の安定」などの回答が得られた。
加工・業務用対応の取引面における課題としては(図6)、「取引先が求める数量を安定的に生産することが難しい」が最も多く40.9%、次いで「取引先が求める価格が低すぎる(再生産価格に達しない)」(33.3%)、「取引先の求める出荷条件・規格などに対応することが難しい」(18.3%)、「取引先を見つけることができない(新規の取引先を開拓するのが困難である)」(17.5%)、「市場価格が高くなると生産者が勝手に市場に持っていってしまうことがある」(14.3%)が続いた。
「その他」として、表28の回答が得られた。
加工・業務用対応の生産面における課題としては(図7)、「加工・業務用に対応できる生産者が少ない」が最も多く27.8%、次いで「生産者が高齢化しているので対応できない」(21.0%)、「加工・業務用対応のために設備投資が必要となる」(20.6%)、「生産者がまとまらない。強力にリーダーシップをとる人がいない」(13.1%)、となっている。
「その他」として、表29の回答が得られた。
JA・生産法人の加工・業務用野菜取引の今後の意向については(表30)、「拡大(開始)したい」が全体の43.3%、「現状維持」が38.1%、「縮小(停止)したい」が5.2%となっており、今後拡大したいと考えているJA・生産法人が半分近くを占めている。
一方、JA・生産法人の加工・業務用野菜取引の今後の見通しについては(表31)、「拡大(開始)」が全体の29.0%、「現状維持」が46.8%、「縮小(停止)」が6.3%となっている。
拡大したい意向があっても、産地の高齢化などを踏まえた現実的な見通しとしては「現状維持」という回答も含まれていると思われる。今後の「意向」をいかに現実的な「見通し」につなげていくかの支援策などを考える必要があると思われる。
本アンケートの自由記入欄に記載のあった回答のうち一部を以下に抜粋した(表32)。
以上が本年1月から3月にかけて実施した「加工・業務用野菜需要に対する産地の取り組みについてのアンケート」の集計結果のとりまとめである。アンケート調査の実施に当たり、ご協力をいただいた全国の農業協同組合および農業生産法人関係者の方々に、この場を借りて厚くお礼を申し上げる次第である。