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調査報告


GAP導入が野菜流通に及ぼす効果と問題点
~野菜産地と小売業者の視点から~

東京農工大学大学院 共生科学技術研究院 農業市場学研究室
准教授 野見山 敏雄


1.はじめに
  食品の偽装表示や残留農薬問題を契機として、消費者の食の安全・安心への関心はますます高まっている。そうした中で、農産物の安全性を確保するため、適切な農業生産の管理点を整理し、それを実践し、記録する取り組みが増えている。その代表的手法がGAP手法(Good Agricultural Practice、農業生産工程管理手法、以前は適正農業規範)である。農林水産省のホームページによれば、「GAP手法とは、農業者自らが、(1)農作業の点検項目を決定し、(2)点検項目に従った農作業を行い、記録し、(3)記録を点検・評価し、改善点を見出し、(4)次回の作付けに活用するという一連の「農業生産工程の管理手法」(プロセスチェック手法)のこと」と説明している。現在、国や地方自治体と農業団体が一緒になってGAP手法の普及に取り組んでおり、GAP手法の重要性は多く語られているが、GAP導入による野菜流通における効果と問題点については、報告がほとんどないのが現状である。

 そこで、本稿では野菜産地と小売業者の視点からそれらの点を明らかにする。調査対象はいばらき農産物流通研究会とその主要な取引先である株式会社いなげやである。

2.GAP手法の取組状況―農林水産省のアンケート調査から―
  2007年11月、農林水産省がGAP手法に取り組んでいる事業体を対象にしたアンケート調査を公表した注1)。興味深い結果が出ているので、その中から主要項目を紹介する。

 まず、産地においてGAP手法に取り組む目標(複数回答)は、「安全な作物を生産したい」が最も多く99%であった。このほか、「環境と調和がとれた農業」が36%、「作業者の労働安全を確保」が25%であった(図1)。

図1 産地としてGAP手法に取り組む目標


出所:農林水産省農産安全課「GAP手法の取組状況アンケート結果」より転載

 次に、産地において、GAP手法の導入のため、合意形成を図るに当たって、農業者が最終的に納得し、取り組むに至った理由(複数回答)では、「産地の信頼確保」が最も多く90%であった(図2)。また、苦労した点としては、①GAPの重要性を認識してもらうのに多大な労力を費やした、②生産者にこれだけの手間をかけて、どれだけの見返りが期待できるのか、具体的なものを提示できない状況下で説得しなければいけない、③生産者間の取り組みへの温度差があったため、合意形成に苦労した、④一人当たりの生産規模が小規模で生産者が多いことから、周知徹底に時間がかかったなどをあげており、今後GAPを導入予定の産地には参考になる示唆である。

図2 産地の合意形成


出所:農林水産省農産安全課「GAP手法の取組状況アンケート結果」より転載

 次に、取り組み成果として、目標以外で成果があったかの質問(複数回答)では、「特になし」と回答した産地が62%であった(図3)。ただし、2年以上の取り組みを行っている事業主体では、65%が目標以外の成果があったと回答している。その具体的な成果を列挙すると次のとおりである。

図3 目標以外の取り組み成果


出所:農林水産省農産安全課「GAP手法の取組状況アンケート結果」より転載

① 
出荷時に使用する段ボール箱等の衛生管理を行うことにより、作物の個別包装が不要となり、包装資材のコストが削減できた。

生産コストを5~10%削減できた。

品質のバラツキが少なくなった。

異物混入が、5割減少した。

栽培方法等の一元化により品質の底上げが図られた。

条件の良い販売先と契約が成立した。

組織内の安全・安心に対する意識が向上し、特別栽培農産物の生産にも同時に取り組めた。

 最後に、GAP手法に取り組む際に生じた課題への対応を抜粋すると次のとおりである。

① 
記帳時間を短縮するため、具体的な取組事項と判断基準を明確化した。

生産履歴と同時記帳及びチェックを行った。

記帳に手間がかかり、チェックリストのチェックのみ行うよう簡素化した。

チェックリストをカレンダー様式にした。

チェックリストの項目をなるべく集約し、項目を整理した。

研修会等においてチェックリストを配付し、よく説明した上でチェックしてもらった。

 このことから、GAP手法に取り組んだ産地は、様々な苦労をしてGAPに取り組んだことがうかがえる。そして、目標として掲げた「安全な作物を生産したい」以外の成果はほとんど無いのが現状のようである。ただし、2年以上の取り組みを行っている産地では、「目標以外の成果」があったと回答しているのは興味深い結果である。


注1) 農林水産省消費・安全局が2007年8月に、食の安全・安心交付金を活用してGAP手法に取り組んだ事業実施主体を対象に調査したものである。調査方法は、アンケート調査票を送付し、事業実施主体にて記入したもので、回答数は88事業実施主体であった。次のホームページから資料を入手できる。
http://www.maff.go.jp/syohi_anzen/gap/index.htm



3.野菜産地におけるGAPの導入事例
(1) 産地の概要
  いばらき農産物流通研究会(以下、「いばらき農流研」)は、茨城県行方市や茨城町、小美玉市など県中央から北部の生産者41名と5社の農業生産法人を会員とする任意出荷組合である。また、大手種苗会社や農薬メーカーなど10社が賛助会員企業となっている。

 いばらき農流研は2006年1月に結成された若い組織であるが、その事業内容は、①農産物の商品開発、販路開発、②農産物の販売、集荷、配送、③JGAP注2)に基づく統一農場管理基準の運用、グループ内における内部審査組織による自己点検などである。つまり、単なる出荷組合ではなく、商品開発とJGAPの運用と点検を行っているところにこの組織の特徴がある。

 いばらき農流研の会員農家の平均的な経営をみると、露地野菜栽培面積が5~6ha、施設栽培面積が1haである。経営主の年齢は30歳後半から60歳代で平均は約55歳になる。主要な栽培品目別の出荷量(2006年)を列挙すると、ごぼう460t、にら280t、さつまいも215t、みずな200t、ちんげんさい130t、こまつな100t、にんじん100tなどである。葉茎菜類や根菜類のほかにも果菜や米も出荷している。2006年度の売上高は約8,000万円であり、主な出荷先は外食・中食向け食品卸50%、株式会社いなげや(以下「いなげや」)25%、マミーマート25%である。

(2) GAP導入の経緯
  現在、いばらき農流研の事務局長を務める玉造洋祐氏は2005年10月、新しい出荷組織のコンセプトを考えていた頃、つくば市で開催されたGAPの国際会議に参加し、GAPの存在を知り、日本の生鮮野菜流通においてGAPは重要なツールになると直感したそうである。

 その後、JGAPの前身であるJGAI(Japan Good Agricultural Initiative)協会からGAPの説明を受け、本組織の基盤にGAPを据えることを決めた注3)

 2006年には、茨城県からGAP導入交付金200万円を受けて、生産者の集合研修を合計9回開催した。同年夏にJGAPの審査を経て39名が認証を受けた。研修から認証を受けるまでの期間に個人差があったが、2007年3月末時には46名すべてが認証を受けることができた。この認証を受ける過程で、仕入れ基準が明確になり、公正な評価を得られるということで、いなげやとの取引が始まったという。

 ところで、JGAPの認証が取れるまでに、いばらき農流研は独自にマニュアルを作成している。これは玉造氏が作成したもので、内容は100%達成しなければならない必須事項、95%達成の重要事項、特に規程がない努力目標に分かれている。項目数は全部で150あり、農場管理についてが100、生産工程に関するものが50となっている。このマニュアルはいまも組織の内部審査に利用されている。なお、JGAPの団体審査の場合、内部審査委員会を設置する必要があるが、いばらき農流研には内部審査員は10名おり、うち2名はJGAPの審査員の資格を持っている。

 生産者グループが組織基盤をつくる上で、GAPの審査の過程で指摘された事項を生産者と審査員が一緒になって継続的に解決することが必要であるが、この点はGAPも国際標準化機構で策定された国際規格ISOも概念は同じである(写真3)。


写真1 いばらき農流研の会員組織の一つ、ユニオンファームの事務室にあるパネル




写真2 事務局長の玉造さん(左)

写真3 JGAP協会からの認定証

(3) 導入のメリットと今後の課題
  いばらき農流研は、GAP導入のメリットとして次の3点をあげている。

 第1は、農家は自信と安心をもって野菜を出荷することができるようになったことである。例えば、みずなのように痛みやすい野菜は、生産・出荷記録によって出荷時の状況を遡及して調べることができるので、取引先からのクレームに対しても適切に対応できるようになった。つまり、痛みの原因究明を行うことによって何が問題か明確になったという。消費者の安心以上に農家の安心が確保されたという。

 第2は、最近は雇用労働が多い経営が増えており、経営者の目が届かないところにクレームの原因が潜んでいる場合もあるが、それを減らすことができたことである。GAPを導入することで組織のルール作りを行い、雇用労働者の意識を統一することでクレームを減らすことができる。

 第3は、新しい販路の拡大である。GAP手法を導入した農産物を欲しいという新規取引先が増えている。いなげやとの取引もその一つである。小売業者や消費者の食品への不安を背景として、いばらき農流研メンバーを増やし、「適量多品目」の産地形成を計ろうとしている。

 一方、いばらき農流研の玉造氏は、GAPは付加価値を生まない「ゼロ品質」ととらえており、安全な農産物生産のためにはGAPに取り組むことを当たり前と考えている。GAP導入による安全をまず基礎とした上で農産物の品質、特に食味を向上させることを大きな目標としている。具体的には、葉物野菜に含まれる硝酸態窒素を減少させること、ポリフェノールやβカロテンなどの抗酸化物質の含量を増やすことである。また、取引業者とともに品質表示や健康機能性について研究を進め、加工・業務用野菜の出荷割合を高める努力も続けている。


注2) JGAPはNPO法人日本GAP協会が運営する基準であり、それぞれの農家(農場)による自己審査を基本としつつも審査認証制度も提供している。2006年から審査を開始し、2008年3月末現在、86カ所の農場・団体の認証を行い、219箇所の認証農場がある。ちなみに、日本GAP協会のホームページには「人間と地球と利潤の間に矛盾の無い農業生産の確立と、生産・流通・消費の信頼関係構築を目指します。」と述べている。

注3)2006年5月、JGAI協会はNPO法人日本GAP協会に名称を変更した。


4.いなげやにおけるGAPの取り組み

(1) 会社の概要
  いなげやは、本社を東京都立川市に構える食品を中心としたスーパーマーケットチェーンである。有価証券報告書によれば、従業員数は1,810人、この外にパートタイマーが約9,000人いる。いなげや(単体)の2006年度(第59期)の売上高は1,684億円、経常利益は23億5,800万円であり、近年は横ばいで推移している。店舗数は125店(2008年2月末現在)である。

 同社の沿革を簡単に紹介する。1900年(明治33年)、塩干物の引き売りをしていた猿渡浪蔵氏が現在のJR立川駅前に「稲毛屋魚店」を開業した。1948年に株式会社に改組し、1956年には東京都で最初のスーパーマーケットを開設した。その後急速に店舗展開を行い、1984年には年商1,000億円を突破し、一部上場を機に、社名を「稲毛屋」から「いなげや」に変更して現在に至っている。資本金は89億8,100万円で、東京証券取引所第一部に上場している。

 同社の青果物の年間売り上げ(2007年1月~12月)を見ると、野菜が176.5億円、果物が81.5億円であり、前年比ともに100.5%となっている。仕入れは、立川市の青果センター船橋市の青果センター、武蔵村山市の青果センター、武蔵村山市の生鮮センターが経由するのが9割、残り1割が卸売市場からの出荷である。また、青果物関係のバイヤーは全体で11名いる。

 最近の野菜流通の動向として、商品素材の販売が厳しくなっていることがある。1個、1本の単位での販売が減り、二分の一や四分の一にカットされた野菜が増え、売上高は伸び悩んでいる。その一方で、カットサラダが増えており、売上高は野菜総額年間売上高の3%を占め、それはなす単品と同じ売上高である。また、野菜炒めセット、鍋セットのようなカットする手間を省いた野菜セットは年間の売上高の0.6%を占め、大葉やセルリー単品と同じ売上高になっている。

(2) プライベートブランド商品(以下「PB商品」)の展開とGAPの取り組み
  いなげやのPB商品として、GAPを導入した指定農場商品と生産者限定商品がある。指定農場商品の開発の契機は、安全・安心を切り口とした商品が競合他社に比較して弱かったことに起因する。これは、有機栽培の野菜生産量が少なく、特別栽培農産物の基準は曖昧であるので、導入を避けていた経緯がある。しかし、客から農産物に使用する農薬に関する問い合わせが増えたり、食の安全性への関心が高まっており、新たなこだわり商品の開発を模索していた。

 2005年に株式会社ケーアイ・フレシュアクセス(以下、KIFA)からGAP手法の紹介があった。GAPは農薬の管理が明確であり、GAPを取得する農場が増えることで、消費者の食に対する不安が少なくなる可能性があると評価した。また、地産地消運動が広がり消費者の地場野菜の要望が高まる中でそれに対応できる店舗が限られる。そのための代替のカテゴリーとして指定農場商品を位置づけることにしたのである。そして、2006年7月からGAPを導入した農場の野菜の取扱いを開始した。現在、いばらき農流研以外の指定農場は、和郷園(千葉県)、健農うまかクラブ(茨城県、栃木県、千葉県)、くくむ農園(愛知県)、マルワ農事(長野県)、新福青果(宮崎県)の6農場である。

 一方、生産者限定商品は年間14品目で、主なものはトマト、きゅうり、ばれいしょ、かぼちゃ、にんじんなどがある。2006年度野菜売上高に占めるシェアは7%である。生産者限定トマトのように店頭で表示しており、産地との直接取引で、周年取扱いできるようにしている(写真4、写真5)。

(3) 指定農場商品の効果と課題
  いなげやで指定農場商品を扱っている店舗は125全店舗のうち20店舗に過ぎない。店頭では、最初「JGAP認証」の表示をしていたが、EUREPGAPとの同等性が問題とされ、JGAP協会からの指示で表示は中止した注4)。当初、指定農場商品の売上構成比の目標は3%、月額8,000万円だったが、商品コンセプトを客にアピールできないため苦戦している。店舗によってばらつきがあり、実際の売上高構成比は0.5~2.5%となっている。そのため、目標を1.2%まで下げた。立地では郊外よりも都市部の店舗がよく売れる。また、リピーターがついているものの、新規の客を獲得する必要がある。大きな店舗でスーパー・スーパーマーケットと呼ぶSSMは、客層が広いので今後の売上が増える可能性は高い。取扱いの店舗をSSMの40店舗に増やしたいと考えている。

 また、次の納品があるまで売り切るよう、かつ、値頃感と農家の手取額を下げないように粗利益率は若干低めに設定せざるを得ない。

 以上のように、指定農場商品の問題点は次のように整理できる。①店舗による展開にばらつきがある、②ロスが多い、③一般品との価格差が出る、④客へのアピールが弱い、などである。

 指定農場商品の導入効果は、こだわりを重視した商談が最初からできることである。安全が担保できているので商品本来の味が一番のメリットと考えている。ただし、GAPに取り組む産地は増えているというが、いまのGAPは品質や味は二の次であるので、小売業者側にはなかなか見えてこないのも事実である。今後はGAP手法による農作物を前提として、おいしさや品質が付加されるものがPB商品の基軸になっていくと思われる。



写真4 いなげやに出荷する
「指定農場」の商品ラベル

写真5 いなげや指定農場商品(GAP)売場にて


表1 いなげやにおけるこだわり商品の比較


出所:いなげやの資料から転載(一部改変)


注4) GAPは、世界的には、欧州小売業組合が作成したEUREPGAPが最も普及している。2007年9月、
EUREPGAPはGLOBALGAPに名称を変更した。

5.むすびに代えて―農産物市場とGAPの心性論―
  GAP手法は農業生産管理を適切に行い、チェックするための仕組みであり、付加価値を生むものではない。ミニマム・スタンダードである。同時に、GAP手法によって生産された農産物が特別おいしいわけでもない。これは、いばらき農流研もいなげやともに主張していたことである。その一方、種々の帳簿の記帳やその事務管理労働に要するコスト負担は相当のものになる。また、第三者認証機関に定期的に審査を受ける費用も発生する。この点は先に紹介した「産地アンケート調査」でも同様の苦境を述べている。

 ところで、筆者は本誌に投稿した論文でGAP導入の効果を高く評価した注5)。その際、①実践者のほ場や倉庫は整理整頓ができるようになり、農薬や肥料などの生産資材の場所が誰でもわかるようになったこと、②生産管理がきちんと行えるようになったこと、③売上高が拡大した、などの経営上のメリットを述べた。

 また、前述したとおり、いばらき農流研でも、①出荷時の状況を遡及して調べることができるので、クレームに対しても適切に対応でき、農家が自信と安心をもって野菜を出荷できるようになったこと、②雇用労働者が増えているので、GAPを導入することで社内のルール作りができ、雇用労働者の意識を統一することできたこと、③新しい販路が拡大でき、今回事例として紹介したいなげやとの取引が増えたことなどをメリットとしてあげている。

 いなげやでは、GAPを取得した農場の農産物が増えることで、消費者の不安がなくなると判断し、2006年7月からGAP手法による野菜の取扱を開始し、リピーターも増えているという。

 価格や味に反映されない、消費者がGAPを理解していないなどGAP導入にはまだまだ問題を抱えているが、農業者自らが適切な農業生産の管理点を整理し、それを実践し、記録することは、食の安全性の確保に寄与する手段のひとつであると思われる。

 しかし、ISO9001やHACCPの認証を受けた工場で食品表示の偽装が後を絶たないことも事実である。これら品質管理システムは人が作ったものであり、作為的に誤魔化すことも可能で、リスクコントロールの手法にも限界があると言わざるを得ない。特に、輸送や小分け、商品陳列などの流通過程で遭遇するリスクは範囲外である。

 ここで、孟子や荀子の心性論を農産物市場に適用するなら次のように整理できよう。開放された農産物市場においては性悪説をとっている。つまり、人は無限の欲望を持ち、放任しておけば他人の欲望と衝突して争いを起こし、社会は混乱に陥る。性の悪なる人間を善に導くためには、作為によって規制しなければならない。世界市場化のもとで商品を評価する場合は性悪説をとらざるを得ないし、消費者の商品選択のための権利を保証するためには、基準・認証・表示の行政を整備し、明確化する必要はあるだろう。そんな手間を経て小売業者は生産方法が確かな農産物を安心して、仕入れることができるのである。

 このように性悪説の下で生み出されたGAP手法であるが、今一度性善説へ回帰することも検討されて良いであろう。生産者が作っている農産物の健全性は本人を信頼することにより担保され、日常の活動によりその関係性は高められるため、特別の情報開示のための記帳や事務作業は基本的に必要ない。つまり、消費者が作った人、売る人を信用し、安心して食べものを買うことができる社会こそ私たちはめざすべきではないだろうか。

 とは言っても、経済グローバリゼーションが進み、国境を越えて生鮮・冷凍食品が大量に輸入されている現状では、性善説を基盤とした農産物市場に転換することは困難である。当面はGAP手法を導入し、消費者の安心を確保するとともに、地産地消や産直を少しずつ広げながら、生産者と消費者相互の信頼を培っていく必要があると考える。


注5)  野見山敏雄「野菜生産におけるGAPの導入と課題―九州地域の事例から―」、『野菜情報』2007年2月号

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