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専門調査報告


冷凍えだまめの輸入・国内生産および業務用の需要動向

宮城大学食産業学部
教授  小田 勝己


 未熟な大豆を枝ごと収穫し食用としたのが「えだまめ」になる。えだまめは、水田転作の奨励作物として各地で生産され、生鮮状態で収穫・出荷されるえだまめには、山形県の「だだ茶豆」、「新潟県の茶豆」等、品種特性を活かしブランド化の取り組みが進んでいるが、年間を通して安定的な供給を求める業務用には、北海道の冷凍食品メーカーによる冷凍えだまめが対応してきた。

 ところが、近年、価格条件や供給の安定性等の面から台湾あるいは中国等の東南アジアからの輸入が増加し、北海道での冷凍えだまめの生産量が低迷する状況となっている。本稿では、冷凍えだまめの国内生産、輸入、外食での需要動向を概観してみることとする。

1.冷凍えだまめの輸入動向
(1) 輸入量の推移
 図1は、1990年以降の冷凍えだまめの輸入総量とCIF価格(以下輸入価格)の推移を示したものである。これによると1990年の輸入総量は40千トンであったが、その後、輸入価格が323円/kgから200円台に低下するとともに1992年44千トン、1993年51千トン、さらに1997年には60千トンに増加した。

 1998年には、輸入価格が前年の211円/kgから215円/kgに上昇したが、輸入総量の増加に衰えはみられず、同年には68千トン、1999年になると輸入価格が再び186円/kgに低下したこともあり73千トンに、2000年には75千トン、2001年になると77千トン(1990年比で1.9倍)と過去最高の輸入を記録した。

 その後の2年間については、2002年に発生した「中国産冷凍ほうれんそう」の残留農薬問題の影響から低下したが、2004年になると70千トンと回復の兆しをみせはじめ、2005年は輸入価格173円/kgで69千トンの輸入実績となっている。


資料:独立行政法人農畜産業振興機構『野菜の輸入動向』より作成

(2) 原産国別の動向
 次に、原産国別の構成比をみていくと、輸入総量が40千トン前後であった1990~91年頃は、その95%以上が台湾からの輸入であったが、1992年からは中国からの輸入が増加し始めている。同年の輸入総量(44千トン)に占める中国のシェアは7.6%(3.3千トン)であったが、輸入の増加に伴って中国の占めるシェアが高まり、輸入総量が57千トンに達した1996年には43.3%(25.1千トン)と台湾(42.3%、24.5千トン)を上回るまでになった。その後もこの傾向は続き、2001年には45.0千トンと輸入総量に占めるシェアが58.2%にまで達した。そこで、1990年から2001年の輸入総量の増加に、台湾と中国からの輸入の増減がどの程度影響したか寄与率を算出してみると、台湾が▲43.4%であったのに対して、中国からの輸入は120%と極めて大きかった。


資料:独立行政法人農畜産業振興機構『野菜の輸入動向』より作成

 2002年には、前述の「冷凍ほうれんそうの残留農薬問題」から、輸入量が34.6千トン(前年比23.0%減)、翌年には20.6千トン(同40.5%減)にまで落ち込んだが、2004年になると29.0千トンと回復基調となり、2005年には31.0千トンとなり輸入総量に占めるシェアも44.6%に回復している。

 また、中国からの輸入ほどではないが、同期間にタイからの輸入も増加している。1990年には0.8千トンにしかすぎなかったが、1994年になると4.8千トン(輸入総量に占めるシェア8.4%)、1996年には7.8千トン(同13.6%)となった。
 その後もこの傾向が続き、2001年には7.8千トン(同11.6%)となり、1990年から2001年の輸入総量の増加に対する寄与率は18.6%を示した。更に、中国からの輸入が激減した2002~2003年にかけては、代替需要が台湾産とタイ産に向かったことから、両年ともに11.2千トンの輸入の輸入実績となった。

(3) 原産国別にみた輸入価格
 上述のように、1990年頃には輸入総量の90%以上が台湾からであったが、その後は中国からの輸入に大きくシフトした。その背景には台湾と中国との輸入価格の差が影響していると考えられる。

 図3は、主要原産国別にみた輸入価格の推移を示したものである。1990年頃の輸入価格は、輸入総量の90%以上を輸入価格(325円/kg)が高い台湾産が占めていたことから323円/kgであった。その当時、わずか300トン程度の輸入量でしかなかった中国産は、低賃金労力を背景に197円/kgと台湾産の60%水準の価格で輸入されていた。このような価格差が、それまで台湾から輸入していた多くの冷食メーカーを、より低価格で輸入が可能な中国に向かわせることとなった。


資料:独立行政法人農畜産業振興機構『野菜の輸入動向』より作成

 中国からの輸入が輸入総量を押し上げた1992年以降においても、中国産の冷凍えだまめの輸入価格は常に最も低い水準で推移し、1995年には150円/kgにまで低下し輸入総量の40%にまでシェアを拡大させた。1998年には一時的に206円/kgとなったが、その後の2年間は再び輸入価格が低下し、2000年には160円/kgとなり、輸入量も1999年が39.1千トン(前年比11.4%増)、2000年が39.8千トン(同1.6%増)、2001年には44.9千トン(同13.0%)に達した。

 すでに述べたとおり、2002年には輸入減となったが、2004年頃になると従来からの150円/kgを下回る価格競争力と、中国国内でえだまめ生産の安全性に関する管理体制が強化され国内需要部門の中国産に対する抵抗感が薄れたことで、再び輸入を増加させた。

(4) 台湾並びに中国のえだまめ生産
 国内に輸入される冷凍えだまめのシェアは、大手冷食メーカーがほとんどを扱っている。その1つである企業担当者からのヒアリングによれば、台湾のえだまめ用大豆の栽培は高雄から雲林地区に集中しており、1970年代後半に日本から持ち込まれた品種により栽培が開始されたとのことである。現在、秋作(9月上旬から10月上旬に播種し11月下旬から1月上旬に収穫)、春作(1月から2月中旬に播種し3月上旬から4月下旬に収穫)ともに鶴の子系(292種)と緑光(756種、753種)を栽培しており、中国でも同様の品種が多いのではないかとのことであった。また、台湾でのえだまめの収量は800kg/反と高く、原料大豆を冷凍えだまめに処理した時の製品歩留まりは60%とのことであった。


資料:独立行政法人農畜産業振興機構『野菜の輸入動向』より作成


 台湾では、えだまめ生産の機械化が進んでおり、収穫をハーベスターで行い集荷後30分以内にHACCPシステムを導入している指定工場に搬入、即日「ブランチング処理」し糖度の高い製品を製造している。また、10年ほど前から、「茶豆」の栽培とそれを原料としたえだまめの製造も進んでおり、ヒアリングを行った冷食メーカーは取扱数量の25%が「茶豆」のえだまめとのことであった。

 一方、中国のえだまめは広東省、福建省、淅江省での生産が多く、台湾と同様の品種を公司や行政府の野菜生産基地等で栽培し、収穫後に日本企業との合弁等による冷凍食品工場に搬入され、即日「ブランチング処理」が行われている。

 また、台湾、中国ともに原料大豆を収穫する3日前と収穫当日、「ブランチング処理」後の3回、サンプルによる残留農薬検査を実施し安全性の確保に努めている。

 えだまめの製造は、収穫→工場搬入→「ライン投入」→(目視による異物、1粒除さやの除去)→「ブランチング処理」→(目視検査による異物、1粒サヤの除去)→「急速冷却」という工程で処理され、「バルク形態」で冷凍保管される。

 えだまめの製造は、原料大豆の作型により11月下旬から1月上旬あるいは3月上旬から4月下旬に集中するが、過去3年間に輸入された冷凍えだまめの月別動向を図4でみると、5月から9月の月平均輸入量は7.5~8.2千トン(年間を通した月平均は5.1~5.8千トン)、年間輸入総量に占めるこの時期のシェアが約60%に達しており、生産期と需要期がかならずしも一致していないことが分かる。

 そのために、「バルク保管」したえだまめを、日本からの受注(OEM対応)に応じ居酒屋等の業務用需要には1kgパック、量販店等の一般小売向けには400~500gパックに包装し、40フィートリーファーコンテナ(22~23トン積み)で輸出される。

 また、日本向けに製造される冷凍えだまめは、1つのサヤに2粒以上を条件指定し1粒サヤやサヤズレの混入率を30%以内に設定していることが多く、グレードの高い製品では混入率を8~10%以内に指定することもある。

 また、製造工程において除去された1粒サヤは、製品歩留まりを高めるために「ムキ豆」に処理し、「ひじき」、「サラダ」等の惣菜類の原料として出荷している。

2.国内における冷凍えだまめの生産状況
(1) えだまめの作付面積と収穫量の推移
 北海道農林水産統計年報(資料1)によれば、1975年には作付面積859haで4,649トンを収穫していた北海道のえだまめ生産は、大手冷凍食品メーカーが冷凍えだまめの調達先を北海道から台湾にシフトさせたことから10年後の1985年には作付面積551ha、出荷量2,293トンに減少し、1990年代に入ると作付面積が400haを割り込み、収穫量も2,000トン以下の水準にまで落ち込んだ。(図5)


資料:北海道農林水産統計年報より作成

 2000年以降については、この統計が1999年までしか入手できていないため確認できないが、1998年から2年間については、作付面積、収穫量ともに幾分増加傾向をみせた。

 また、北海道内における大豆の栽培は稲作地域で多く栽培されている。一方、冷凍えだまめ用は品質保持のために適熟期に迅速な収穫・ブランチング処理を行うため、冷凍工場の周辺地域の圃場で栽培することが多く、地域別には十勝河西郡芽室町が作付面積29.2%(1999年産)、収穫量の25.5%(同)を占め、次いで同河西郡中札内町が面積で10.1%(同)、収穫量で9.9%(同)を占めている(資料2)。

(2) 北海道における冷凍えだまめの

製造工場と生産量

 国内で、冷凍農産物を生産している工場は、原料調達面から北海道に立地していることが多い。しかし、生産量の面からはポテト、コーン、カボチャ、さらにそれらを原料としたコロッケ類と比較しえだまめの生産量は大きくはない。比較的生産量が多かった1976年でさえ、総生産量(661.7千トン)の1.2%を占めるにすぎない(資料3)。

 この当時、冷凍えだまめを製造していた工場数は、図6が示すように15工場で年間生産量752トン、1工場平均では年間50トンしか製造していなかった。その後は、台湾からの輸入が増加する中で製造数が減少しはじめ、1980年には4工場で年間生産量332トン、1984年には3工場で年間生産量が28トンにまで減少した。1990年代に入ると、上述のように輸入えだまめの原産国が台湾から中国にシフトし、一層低価格の冷凍えだまめが大衆的な居酒屋チェーンや量販店の定番商品として販売されるようになった。


資料:(社)北海道冷凍食品協会編資料より作成

 その一方で、この頃から消費者の安全・安心志向を背景に国産製品指向が強い生協等の量販店や、外食市場の成熟化により国産食材にこだわった居酒屋チェーン等からの需要が徐々に強まったことと、道庁、北海道冷食業界、生産者団体等による機械化による収穫作業の効率化や規格の見直しや品種改良による食味改善等の取り組みもあり、生産量が幾分回復の兆しをみせ、1994年には5工場で1,054トン、2000年には同じく5工場で1,189トン、「中国産冷凍ほうれんそう」の残留農薬問題が発生した2002年には6工場で1,344トンとなった。しかし、2003~4年にかけては中国産の輸入が再び増加基調となったことも影響し1,000トン以下の生産量に低迷している。

 次に、2000年以降に生産された冷凍えだまめを業務用と家庭用に分けてみると、北海道で生産される冷凍えだまめは、2000年(生産量1,189トン)の69.6%を家庭用が占め、2001年(同620トン)、2002年(同1,344トン)には83%を占めていた。また、2003年(同969トン)、2004年(同587トン)においても63%以上を家庭用が占める実態となっている。このことは、居酒屋チェーン等の業務用需要は、中国や台湾等の価格条件の良い冷凍えだまめとの結びつきが強く、北海道で生産される冷凍えだまめは、業務用市場と比較して価格水準が高い生協、スーパー等の量販店との結びつきが強いことが推定される(資料4)。


資料:譖北海道冷凍食品協会編資料より作成

(3) 冷凍食品メーカーにおける

えだまめの生産概要

 1)冷凍食品Aメーカー
 北海道上川郡に立地するこの企業(資本金2,400万円、従業員230名(パートを含む)、年間出荷額27億6,000万円)は、原料農産物の調達面で地元の生産者団体等と密接な連携を進める冷食メーカーである。製造品目はポテト、キャロットが全生産量の60%程度を占め、その他にアスパラ、ほうれんそう、インゲン、えだまめ、かぼちゃ、スイートコーンの加工製造を行っている。

 これら冷凍野菜の原料は、ほぼすべてを中札内の農協等から調達しており、えだまめについても、JA美瑛管内の圃場10haで栽培された45トン(単収450kg/10a)を調達し、さらに、JA美瑛と協議し2006年からの5ヵ年についてビートの後作としてインゲン(70ha)、えだまめ(30ha)を品種、栽培内容を指定し取引することに合意している。



写真1 えだまめの圃場

写真2 収穫期を迎えたえだまめ

 現在、原料調達しているえだまめの品種は、工場の処理能力(15トン/日)を考慮しながら作型の異なる「サッポロミドリ」(極早生系)と「ユキミドリ」(早生系)を組み合わせ、5月22日に最初の播種を行い、工場のインゲンの冷凍処理後に合わせるように調整しながら8月25日頃から収穫を開始し、即日(4時間以内)処理を行い、秋蒔き小麦(9月10日頃)に間に合うように収穫・工場処理を終えるようにスケジュール化している。

 えだまめの収穫には、JA美瑛が導入した9台(800万円/台)のハーベスター(インゲンとえだまめ用)を、工場の稼働計画と圃場の熟度を見ながら計画運用している。

 工場への搬入に当たっては、農家が「さや」を通い容器(プラコン、10kg)形態で直接搬入(2粒以上、厚み8.5~9.5m)し、工場では、泥、夾雑物等のチェックし、農家単位でブランチング処理→(目視検査)→冷却→(目視検査)→凍結を連続処理している。なお、工場への搬入数量の製品歩留まりは70~75%といわれている。

 えだまめの製造処理は、栽培農家の後作スケジュールだけでなく、工場においてもスイートコーン加工が直前に迫った時期での加工となるため、1週間程度で処理を終えるようにしている。

 製造したえだまめは、大手食品メーカーのOEM製品として、北海道産のえだまめにこだわった居酒屋チェーンに輸入価格の3倍弱の価格水準で出荷している。

 2)冷凍食品Bメーカー
 北海道河西郡に立地するこの企業(資本金3万円、従業員100名、年間出荷額63億円)は、大手食品メーカー系列の冷食メーカーで、スイートコーンを中心に、かぼちゃ、ほうれんそう、ブロッコリー、ばれいしょ、にんじん、いんげん、えだまめ等の冷凍野菜を製造しているが、これら冷凍野菜の生産額に占めるえだまめのシェアは1.6%にすぎない。

 同社は、原料部の中に圃場、農家を専門的に巡回する10名のフィールドマンを配置し、地区内の1,000戸を上回る農家との間で協議会を組織し、スイートコーンをはじめとする原料農産物について、栽培指導、作柄確認、収穫期の判定と収穫スケジュールの調整を図りながら、工場の稼働スケジュールに適合させた安定的・計画的な原料調達を行っている。

 冷凍えだまめの製造を開始した歴史は浅く、1983年から製造に着手し2年後から本格的な生産を開始している。原料のえだまめは、芽室、幕別地区の12集団98戸の農家から調達しており、毎年12月にJA農指導部、各地区責任者と次年度における原料生産に関する全体計画について協議し、2~3月にかけて製品の生産計画から逆算した原料調達数量を地区別に巡回説明している。

 5月に入ると、収穫適熟が一時期に集中しないよう作型の異なる3品種(「サッポロミドリ(極早生)」、「オオソデ(早生系)」、「サヤムスメ(中早生系)」)を使い分けながら、各農家別の品種と播種日、作付面積を確認している。

 播種後においても、フィールドマンが農家別、圃場別に巡回し、生育状況の確認や施肥等の肥培管理を助言するとともに、栽培内容の記録にも努め、着花からの日数を考慮しながら収穫時期が近づいた圃場の熟度確認と収穫日の各農家への伝達調整を行っている。

 収穫時期となる8月下旬から9月上旬には、インゲンとの兼用のハーベスター15台(同社が所有2台、地元農所有13台)を収穫計画に基づいて各農家に貸与し、3粒を基本に2粒以下が10%以内を基準に各農家に出荷調整を依頼し、通いコンテナ(プラコン10kg)で工場に搬入してもらっている。なお、農家からの買い上げ価格から、この地区の単収(500~600kg/10a)を考慮すると10~12万円/反の所得につながっている。

 搬入された原料えだまめは、泥や夾雑物を検品し、収穫量が工場の処理能力を上回らない限り搬入当日にブランチング処理する。収穫作業のピーク時には、検品後の原料えだまめを一時的に冷蔵保管することがあるが、それでも翌日には「ブランチング処理」→「急速冷却」→「パッキング」→「冷凍保管」している。なお、このメーカーえだまめの原料歩留まりは70~75%とのことである。

 また、製造後の製品は、輸入えだまめの2~3倍の価格水準で生協のOEM製品として店舗や共同購入商品として出荷している。

3.えだまめの業務用需要の動向
 外食産業の中で、冷凍えだまめの需要部門は居酒屋になる。客単価とメニュー構成の異なる4タイプの居酒屋を展開しているC社は、通年で「えだまめ」を販売している。

 15年程まえから、冷食メーカーを窓口に海外産えだまめを調達しており、以前は夾雑物、1粒の混入率、色等の面で品質が安定していなかったが、2~3年前から国産えだまめと比較して遜色のない品質のえだまめが入荷するようになり、現在は主に中国産を使用している。

 冷食メーカーとは、年間を通した仕入量と価格を決め、月あるいは週単位の発注で各店舗に納入させており、使用量は年間6~7トン(特定業態で夏だけ利用する国産で生の茶豆を利用するえだまめを含む)とのことである。

 冷凍えだまめは1年を通してメニュー(360円/150g)に掲載しているが、外気温が上昇しビール消費量が高まる6月~9月に年間需要量の70~80%が消費され、10月以降の需要量は20~30%にとどまっている。

 また、商社系列の居酒屋チェーンを全国展開するD社は、親会社を窓口に中国「廈門」周辺で栽培された「黒大豆」を原料としたえだまめを指定工場で製造させている。

 平成13年に国内マーケットで「茶豆」ブームとなった時、「茶豆」を上回る品質の黒大豆のえだまめを低価格で確保する狙いから、中国からの調達を開始した(現在の調達量は155トン/年)とのことである。

 原料黒大豆は、冷食メーカーの野菜供給基地等で春(4~5月)と秋(10~11月)の年2回、手作業により収穫し、袋詰めの状態で工場に搬入する。搬入された原料えだまめは、その日のうちに検品(夾雑物と1粒さやの除去)→「ブランチンング」処理→急速冷却→(目視検査)→「バルク冷凍保管」している。中国の指定工場では、月単位での受注に応じバルクから500~1kgにリパックし、リーファーコンテナで出荷している。

 調達した冷凍えだまめは、各店舗で通年メニュー(250円/100g)として提供しており、夏季と冬季の注文数の差は10%程度とのことである。

 まとめ
 冷凍えだまめとして国内に供給されているものは、そのほとんどが冷食メーカーにより開発輸入された海外産となっている。当初は、北海道産のえだまめをOEMで使用していた冷食メーカーが、作柄の不安定性と価格問題から国内品種を台湾南部に持ち込み、栽培・加工指導による開発輸入を1970年代に活発化させた。その後に台湾の賃金水準が高まる中で、改革開放を進めた中国に生産拠点をシフトさせてきた。

 2005年には、67千トンの輸入量の44.9%を中国、34.1%が台湾、15.8%がタイから輸入され、国産の1/2~1/3の価格水準でスーパーの冷凍食品や居酒屋等の業務用向に供給されている。

 また、中国等の海外産地でも、数年前から「茶豆」、「黒大豆」等の高級えだまめの生産が増加傾向にあり、本稿で取り上げた居酒屋D社のように、使用しているえだまめの全てが中国産の「黒大豆のえだまめ」というところもみられるようになっている。

 一方、冷凍えだまめの主産地である北海道では、海外産の冷凍えだまめの輸入が増加し始めた1970年代の後半からえだまめの作付面積、収穫量が減少傾向となり1990年頃には1975年の半分にまで減少することとなった。

 このような状況の中で、道庁、北海道冷凍食品業界、生産者団体等が一体となり、冷凍えだまめに適した品種開発や収穫作業の効率化のためのハーベスターの導入等を進めたことから、1990年代の中頃に減少傾向に一定の歯止めがかかり、「中国産冷凍ほうれんそう」の残留農薬問題から国産への関心も高まったため、1990年代後半から幾分回復の兆しを始めている。

 しかし、スーパー、業務用需要とも、国産冷凍えだまめへの増産を求める傾向にあるものの、十勝の多くの畑作農家は、ビートの後作として秋蒔小麦までに収穫するとの位置づけでえだまめ栽培を行っており、同じく冷凍原料として栽培されているインゲンと収穫期が重なるため大幅な作付面積の拡大は前後の作付けとの関係から一定の限界がある。

 これらの原料えだまめを契約により購入している冷食メーカーの課題は、年間生産計画の中で大きなウエイトを占め、えだまめと同様に適熟期に迅速な収穫と「ブランチング処理」が必要なスイートコーンと収穫・加工時期が重なること、工場ラインの稼働の面で競合するインゲンとの調整である。

 ここ数年間については国産冷凍えだまめへの需要が強まっているが、価格競争力のある中国等の海外産えだまめも年々栽培管理、製品の品質管理を高めていることもあり、冷食メーカーからは積極的な増産意向は聞かれなかった。さらに、居酒屋チェーン等の業務用需要部門でも客単価の高い業態では国産を使用するが、多店舗展開をする大口需要者では引き続き中国等の冷凍えだまめへの依存度が強く、企業によっては国内でも高級商品となる「黒大豆のえだまめ」を中国から調達している実態もある。

 このような状況から、冷凍えだまめの国内への供給は引き続き中国、台湾産が中心的な役割を担うことになると予想されるが、輸入を手がける冷食メーカーも、リスク分散のために国内を含めタイあるいはベトナム等の新たな海外産地を開発する動きもあり、中国を主原産国としながら多様なルートで調達する傾向が強まるのではないだろうか。

 参考文献
資料1 農林水産省北海道統計・情報事務所編『北海道農林水産統計年報(総合)』
資料2 農林水産省北海道統計・情報事務所編『北海道農林水産統計年報(青果物編)』
資料3 (社)北海道冷凍食品協会編「北海道の冷凍食品生産高」各年度
資料4 (社)北海道冷凍食品協会編
    『平成13年度地域食品高度化推進事業ー市場開拓推進報告書(冷凍えだまめ)

 



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